【中学進学の悩み】「みんなと同じ通常学級に行きたい」息子と、「手厚い特別支援学級に行ってほしい」母…中学選びの葛藤と選択

ライター:星あかり
【中学進学の悩み】「みんなと同じ通常学級に行きたい」息子と、「手厚い特別支援学級に行ってほしい」母…中学選びの葛藤と選択のタイトル画像
Upload By 星あかり

中学校も自閉症・情緒障害特別支援学級を選択すると、今とはまた別の学区へ行くことになります。
中学校就学の時期になり「みんなと同じでありたい」という気持ちから今の小学校と同じ学区の中学の通常学級に行きたいスバルと、今とは別の学区の自閉症・情緒障害特別支援学級で手厚い支援を受けてほしい母とで意見が分かれるのでした。

監修者初川久美子のアイコン
監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

特別支援学級で過ごした6年間

スバルは小学校の6年間を自閉症・情緒障害特別支援学級で過ごしてきました。私の住んでいる地域は自閉症・情緒障害特別支援学級が多くなく、現在も特別支援学級がある学区外の小学校まで通学しています。クラスの半分以上が学区外から通学していました。良くも悪くも個性的な人たちが集まり少人数で濃密な時間を過ごすので、相性によっては最高の1年間も、どん底の1年間もありました。

一番荒れた年には、多くの仲間が去っていきました。我が家も通常学級への移籍や元の校区への転校を本気で悩みました。それでも結局、自閉症・情緒障害特別支援学級を選んだ一番の理由はDCD(発達性協調運動症)による不器用で、道具を使用する授業では先生の補助が必要なことでした。

自閉症・情緒障害特別支援学級にはスバル以外にもDCD(発達性協調運動症)と診断されている子がいましたが、図工を先生とマンツーマンで行うスバルレベルの不器用はほかにいませんでした。私が出会った中でトップクラスの不器用な男、それがスバルなのです。

小学校に入学する前から、困り事のトップ3の中に「不器用」が入っていましたが、学年が上がるにつれて年相応の身体の動きとの差が大きくなっていきました。もちろんスバルもできることがたくさん増えましたが、年相応に求められるレベルがどんどん高くなり、今ではお手上げ状態です。作業療法士さんのリハビリにも通いはじめ、そこで身体の使い方を学びました。私や作業療法士さんから見れば、感動するほどステップアップしたスバルですが、世間レベルで見たら、まあ、ねえ?

そんなわけでどん底の1年も乗り越え、スバルに必要な支援が受けられる自閉症・情緒障害特別支援学級で6年過ごすことになりました。

特別支援学級に対するスバルの心の変化

一番荒れた1年を乗り越え、クラス替えが行われた後は波長の合う年上の友だちと出会い、楽しく過ごしました。幼少期から「みんなと同じでありたい」「できないことを隠したい」という気持ちが強かったスバルですが、このクラスでお互いに自分の障害の話ができるようになり、少し心が軽くなりました。

「DCD(発達性協調運動症)による不器用で、交流級の中で自分だけ補助の先生に手伝ってもらっている」話はスバルにとっては恥ずかしい事実でしたが、このクラスの中では「ぼくたちのあるあるネタ」くらいのノリで話せるようになりました。

3~4年の頃のスバルは、みんなと同じでありたいという気持ちから「中学校では通常学級に行きたい」と言っていました。しかしスバルより先に中学生になったこの時のクラスメイトたちは、中学校でも自閉症・情緒障害特別支援学級を選択したので「自閉症・情緒障害特別支援学級もいいな」と思うようになりました。先輩の背中がスバルに安心を与えてくれました。

私や先生、その他のスバルに関わる大人たちの中ではほぼ自閉症・情緒障害特別支援学級一択だったので、スバルの気持ちの変化にホッとしました。そして畳みかけるように自閉症・情緒障害特別支援学級への就学準備を進めていきました。
自閉症・情緒障害特別支援学級への就学準備を進めていきました
自閉症・情緒障害特別支援学級への就学準備を進めていきました
Upload By 星あかり
6年生になり特別支援学級の仲良しの先輩が卒業してしまうと、ガラッと環境が変わり、いろいろあって交流級での友だちが一気に増えました。

トラブルも増えましたが、スバルにとっては「それすらも青春!」と言わんばかりに刺激的な毎日を楽しむようになりました。スバルが友だちと遊ぶようになり、喜ばしい気持ちでいっぱいでしたが心の奥底で心配がありました。スバルが「みんなと同じ中学の通常学級に行きたい」と言い出すことです。

現在も自閉症・情緒障害特別支援学級がある学区外の小学校まで通学していますが、自閉症・情緒障害特別支援学級がある中学校はまた今とは違う学区へ行くことになります。なので自閉症・情緒障害特別支援学級を選択すると今の友達と離れ離れになってしまうのです。
1学期の終わりごろ「みんなと同じ中学へ行きたい!」とスバルに告げられ、私の心配は大当たりしてしまうのでした。

それでも必要な支援

スバルの気持ちは本当に分かります。私もできることなら友だちと引き離したくありません。しかし今のスバルには支援が必要なのです。

家族で何度も、お互いにいろいろな切り口で話し合いをしました。
家族で何度も、お互いにいろいろな切り口で話し合いをしました
家族で何度も、お互いにいろいろな切り口で話し合いをしました
Upload By 星あかり
私が一番丁寧にスバルに伝えたのは「中学校へ行ったら、もっと難しい授業がいっぱいあるんだよ」ということでした。

6年間、道具を使う授業では先生がマンツーマンで補助してくれました。それはスバルにとって隠したいつらい事実でした。けれどうまくいかないことでも先生の手を借りれば最後までやり遂げられる自分もいました。1人では得られなかった達成感も味わいました。
先生がそばにいるという事実は恥ずかしさだけではなくなっていきました。

スバルは長い期間、そんな思いを行ったり来たりし、特別支援学級を選ぶという答えを静かに受け入れていきました。みんなと離れ離れになる決心がついたスバルは、仲の良い友だちに発達障害のことや学校が変わってしまうことを打ち明け「だからみんなと思い出をいっぱい作りたいんだよね」と伝えました。

中学生活に向けてスバルなりに準備をしているのだと思います。私は、本人と相談している風でありながら実際には私の意見に傾くように誘導した後ろめたさを抱えています。特別支援学級のどん底も経験した身から言うと、この選択が最適かどうかなんて蓋を開けてみないと分かりません。それでも今一番必要な支援を手放すわけにもいきません。

どうかどうか、スバルの中学校生活が素晴らしいものになりますように。

執筆/星あかり

念のため、本当に念のためこっそり「今の学区に自閉症・情緒障害特別支援学級の新設の予定はありませんかね……?」と問い合わせましたが、予定はありませんでした。

専門家コメント 初川久美子先生(臨床心理士・公認心理師)

スバルくんの中学校進学先にあたってのコラムをありがとうございます。小学校は自閉症・情緒障害特別支援学級で過ごし、「どん底」を経験し転校も検討されながらも、DCDゆえの著しい不器用さへの支援を受けながら道具を使った単元も取り組み、支援の先生がそばにいる形で恥ずかしい思いもしたけれど、しかし一人ではたどり着かなかった達成感を味わうこともできた。学校生活としてはそんな6年だったのですね。スバルくんの苦手なところに対して、まさに痒い所に手が届くような支援がなされた場が自閉症・情緒障害特別支援学級だったということですね。

6年生になり、以前のコラムにも上がっていましたが、交流級の仲良しができたことでスバルくんの心境に変化があったのですね。
仲の良い友だちと一緒の学校に進学したいと願うことはとても自然な願いですね。ただ、あかりさんも悩まれたように「できることなら友だちと引き離したくない」けれど、「支援が必要」というところ。通常学級でも、必要な支援を受けられる環境であればよいのですが、現状そこがなかなか難しいのが実情です。中学校は基本的には学習の場で、仲間がいれば乗り越えられることもあるとは思いますが、仲間たちも授業中は自分の学習で手一杯になるのも大人からすると予想できてしまいます。

「私は、本人と相談している風でありながら実際には私の意見に傾くように誘導した後ろめたさを抱えています。特別支援学級のどん底も経験した身から言うと、この選択が最適かどうかなんて蓋を開けてみないと分かりません。それでも今一番必要な支援を手放すわけにもいきません。」、ここのあかりさんの思いの吐露に、共感される読者の方は多いだろうと感じました。本当は子どももすっきり納得した決断をしたい。しかしそんなにうまくはいかないことが実際には多かろうと思います。

通常学級か、学区外の特別支援学級か。どちらかしかない選択肢がそもそもつらいところです。最後に書かれていた「どうかどうか、スバルの中学校生活が素晴らしいものになりますように」、私も同じくここを願わずにはいられません。スバルくんの100点の決断ではなかったかもしれないですが、これから始まる中学校生活が、きっと時に山あり谷ありになっても、総じて「楽しかった」「よかった」と振り返れる日々になることを祈っています。(監修:臨床心理士・公認心理師 初川久美子先生)
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030958
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ライフバナー

追加する

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。