【発達障害のある息子】「お母さんに英才教育されてる」と語る真意は?外出先やスーパーで母が行った特性を活かす「学びの下地」作りの工夫

ライター:丸山さとこ
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神経発達症があるコウは、提出物管理や反復練習が苦手なため、学業への適性は高いとは言えないかもしれません。一方、勉強や授業は概ね楽しいそうで「英才教育を受けているからね」と笑ったりします。今回は、そんな彼の『英才教育』について振り返りました。

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監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。 現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。

自称『英才教育を受けている』コウです

「お母さんに英才教育を受けている」と笑うコウですが、実際のところはどうでしょうか?
「お母さんに英才教育を受けている」と笑うコウですが、実際のところはどうでしょうか?
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「僕はお母さんに英才教育を受けているからね」

神経発達症がある息子のコウは現在高校生です。彼は、提出物が出せなかったり反復練習に飽きやすかったりするため、学業そのものへの適性は高いとは言えないかもしれませんが、勉強はやや得手な方です。授業を受けることも概ね楽しいと言います。

そんな彼が、以前、勉強がやや得手なことについて「僕は、お母さんに英才教育を受けているからね」と笑ったことがあります。それを聞いて、私は「うーん、半分は当たっているけれど、半分は違うな」と感じました。

成績を上げるための教育ではなく……?

確かに、私はコウの学習に関して、意識的な関わり方をした部分はあります。コウが好きな本を使ってクイズ(問題)を出したり、外出中に看板や植物や商品など目にしたものについて話したりして、彼の興味を広げる返答を心がけたりはしていました。
けれども、それは『成績を上げるための教育』を意図したものではありませんでした。

学びやすさを整えるための、小さな工夫

「知らないこと」に関わるための足がかり

それらの教育的な関わり方には、複数の目的がありました。そのひとつは、「学習の下地を作ること」です。幼い頃の彼は、まったく知らない状態で初めて触れる情報よりも、少しでも見覚えがある状態のほうが、それを足がかりに取り組みやすいところがありました。

現在のコウは、当時を振り返って「知らないことへの耐性が低かった」と言います。今では、知らないことに対して興味の足がかりを持ったり、「分からない」「どうしたらいい?」と考えたり聞いたりしやすくなったそうです。確かに、その通りだなと思います。
幼い頃を振り返ったコウは、「あの頃は知らないことへの耐性が低かった」と言いました
幼い頃を振り返ったコウは、「あの頃は知らないことへの耐性が低かった」と言いました
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「知ってること」を前向きに受け止める練習

また、知っていることに対して、ポジティブな反応をする習慣をつけたいとも思っていました。「もう知ってる。つまらない」と感じて退屈になったり流したりするのではなく、「あ、これ知ってる」「そうだよね」と受け止められるほうが、授業中も教室に居やすくなるだろうと考えたのです。

これは、『知ってることを言いたくなる衝動性』を強める可能性もあるため、どうするべきか、少し迷うところでもありました。ですが、その衝動性は知っていることが少なければ抑えられるというものでもないだろうと思い、知っていることによる安心や興味のきっかけのほうを重視することにしました。

外出先での暇との付き合い方

そして、何よりも大きな目的は、外出中の暇対策でした。多くの子どもにとって『暇な時間』は、耐えがたいことのひとつですが、コウの場合は暇さが不安やイライラにつながることも多く、そのままパニックに発展することもありました。

それを防ぐために、外出先ではできるだけ『見るもの』や『知るもの』を楽しむようにしていました。
コウは文字が好きだったので、看板や、公園の植栽につけられた解説や、スーパーの食品の産地などを使っての暇つぶしをしていました。もしコウが乗り物が好きなら乗り物を、色が好きなら色を、暇つぶしの材料にしただろうと思います。

そうして暇に対処していくことにより、コウは少しずつ自力での暇つぶしも可能になっていきました。
スーパーでカボチャを見て、「ニュージーランド産」と言うコウ
スーパーでカボチャを見て、「ニュージーランド産」と言うコウ
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それと同時に、見ることや知ることに取り組み続けて疲れてしまわないよう、休むことも意識的に取り入れていました。

遠くの雲や鳥を見ることで目の体操としたり、呼吸を整えてぼんやりしたり。それらを「頭の休憩」として行うことで、刺激から離れる方法も一緒に覚えていけたらいいなと思っていました。

英才教育と呼ぶにはささやかな、小さい足がかりを探す毎日でした

字が好きな一方で、運動は苦手なコウでした

こうして並べてみると、やっていたことは英才教育というよりも、『コウの興味に沿うこと』『コウが興味を持てるように、足がかりを作ること』に近かったのだろうと思います。その結果として、今はたまたま学習がスムーズに進んでいる部分はあるのかもしれません。

これは、『親の関わり方が良かったから子どもの成績が上がった話』ではありません。「たまたまその辺りが影響したのかもな~?」という話です。コウは元々字が好きでしたし、やや勉強への適性が高かったのだと思います。
スイミングスクールでの様子を見ると、スモールステップで分かりやすそうでしたが……
スイミングスクールでの様子を見ると、スモールステップで分かりやすそうでしたが……
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一方、運動関連は、体育の時間が苦痛でないようにすること、運動を嫌いにならないようにすることが精一杯でした。体操教室やスイミングスクールなど、運動系の習い事にてスモールステップで丁寧に教えていただいても、それらの習得にはかなり時間がかかりました。

『英才教育』とは言えない緩さでしたが

それでも、運動を嫌いにならないように、『難しいこと』が『嫌なこと』にならないようにと意識して関わっていました。それが功を奏したのか、コウ本人のノンビリした気質のおかげか、今のコウは「運動はできないけど、嫌いじゃない。バスケとか、運動が苦手な子たちで集まってワチャワチャやってると楽しい」と言います。

運動に関して、私が働きかけてできるようになった具体的なことは……滑り台や階段を怖がらなくなったことくらいでしょうか。そんな私の関わりは、到底『英才教育』とは言えない、緩い『教育めいた何か』だっただろうと思います。

それでも、「僕はお母さんに英才教育を受けているからね」と今のコウが笑えているのなら、それは彼にとって、いくらかは良いことだったのかもしれません。そうであったらいいなと思っています。

執筆/丸山さとこ

監修コメント 室伏佑香先生(小児科医)

コウさんとの日々の関わりや、その中で大切にされてきた視点を丁寧に言葉にしてくださりありがとうございます。お子さんの「学び」や「関わり方」に悩んでいるご家族にとっても、多くの共感やヒントにつながる内容だと思いましたし、私自身も大変勉強になりました。
その子にとって学びやすい形を整える関わりは、お子さんの様子を丁寧に見つめ、日々試行錯誤を重ねてこられたご家族の努力の積み重ねの中で育まれてきたものだと思います。そうした関わりが、今のコウくんの学ぶことを楽しめる姿勢につながっていると感じました。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
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https://h-navi.jp/column/article/35030996
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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