発達障害の高3息子が初めてのアルバイト!特性にマッチした職場環境で得た自信と、3カ月の成長記録
ライター:あき
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わが家の息子コチ丸は、小学3年生のときにASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)と診断されました。中学・高校と、特性に合わせた「学びの多様化学校」や寮生活を経て、現在は自分の進路を見据えて歩んでいます。
高校を卒業し、地元に3カ月ほどいる間にコチ丸はアルバイトデビューしました。
初めてのバイトは「いつ始めるのか?」「何をやるのか?」コチ丸はもちろんですが、私もかなり頭を悩ませました。
監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。
多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」の制作スタッフ。
発達の特性を持っていても大丈夫!なアルバイト先とは?
高校の寮が山奥にあり、物理的にバイトができなかったコチ丸にとって、高校卒業後のこの期間は念願の「資金集め」のチャンスでした。本人も非常に意欲的で、まだ寮にいるうちから「何のバイトがいいかなー」と相談してくるほどでした。
しかし、親としての私の心境は複雑でした。高校ではインターン活動もあり、働くということがまったく未経験だったわけではありませんが、「お金をもらって働く」という社会人体験の始まりに失敗を経験して、マイナスイメージをもってほしくなかったからです。
ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)と診断されているコチ丸は、大きな音が苦手で騒がしい場所では疲弊してしまうという特性や、興味がないと集中を欠いてしまうため身体を使う仕事では「うっかり」による怪我の恐れがあるという懸念がありました。ほかにもコチ丸独自の「自分ルール」もあり……心配し始めたらキリがありません。
本人は「3カ月だけの短期間だけだし、すぐ入れるから」と引っ越し業のバイトを考えていましたが、コチ丸の特性を考えると、うっかり怪我をして次の進路に響くのでは……と怖くなった私。ひっそりと「コチ丸に合うバイト先」を探し始めました。
しかし、親としての私の心境は複雑でした。高校ではインターン活動もあり、働くということがまったく未経験だったわけではありませんが、「お金をもらって働く」という社会人体験の始まりに失敗を経験して、マイナスイメージをもってほしくなかったからです。
ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)と診断されているコチ丸は、大きな音が苦手で騒がしい場所では疲弊してしまうという特性や、興味がないと集中を欠いてしまうため身体を使う仕事では「うっかり」による怪我の恐れがあるという懸念がありました。ほかにもコチ丸独自の「自分ルール」もあり……心配し始めたらキリがありません。
本人は「3カ月だけの短期間だけだし、すぐ入れるから」と引っ越し業のバイトを考えていましたが、コチ丸の特性を考えると、うっかり怪我をして次の進路に響くのでは……と怖くなった私。ひっそりと「コチ丸に合うバイト先」を探し始めました。
周りに振り回されない、穏やかに過ごせる環境で働く
なかなか良いアルバイトがないなーと困っていたとき、家の近所で私も時々行く居酒屋さんがインターネットでバイトを募集しているのを見かけました。ちょうど飲みに行く予定があったので、コチ丸がまだ帰ってくる前ではありましたが、私のほうから声をかけさせていただきました。慣れてきた頃に辞めてしまうことになるので、難しいことは重々承知していました。が、なんとなく、このお店でコチ丸が最初にアルバイトをする姿がしっくりくる感じがしたのです。
こちらのお店は繁華街から外れた住宅街の中にありました。席数も少なく、客層も年配の方が中心。オーナーが一人で回しているため、バイトの業務内容もドリンクづくりやオーダー聞きがメインとシンプルです。この落ち着いた雰囲気のお店であれば、感覚過敏問題もクリアできて、コチ丸も慌てずに仕事ができるのではないか?と思ったのです。
穏やかな人柄のオーナーは、二つ返事でOKしてくれました。この時点ではまだコチ丸には話をしていなかったので、「私の希望だから、息子に話してみてやってみたいと言ったらぜひお願いします」と伝え、オーナーさんも「息子さんが良ければ、いいタイミングでご自身からお電話をいただけますか」と言っていただけました。
その話をコチ丸に伝えると、「やってみたい!」ということだったので、本人から直接電話をさせ、北海道から戻ってきた後に面接を経て採用が決まりました。
こちらのお店は繁華街から外れた住宅街の中にありました。席数も少なく、客層も年配の方が中心。オーナーが一人で回しているため、バイトの業務内容もドリンクづくりやオーダー聞きがメインとシンプルです。この落ち着いた雰囲気のお店であれば、感覚過敏問題もクリアできて、コチ丸も慌てずに仕事ができるのではないか?と思ったのです。
穏やかな人柄のオーナーは、二つ返事でOKしてくれました。この時点ではまだコチ丸には話をしていなかったので、「私の希望だから、息子に話してみてやってみたいと言ったらぜひお願いします」と伝え、オーナーさんも「息子さんが良ければ、いいタイミングでご自身からお電話をいただけますか」と言っていただけました。
その話をコチ丸に伝えると、「やってみたい!」ということだったので、本人から直接電話をさせ、北海道から戻ってきた後に面接を経て採用が決まりました。
「当日欠勤は迷惑がかかる」芽生えたプロ意識
ちょうど1月の正月ムードが落ち着いて、お店自体は閑散期だったので、スタートはありがたいことにゆっくりでした。先輩と1、2回一緒に入って内容を教えてもらった後はすぐにオーナーさんとマンツーマンのシフトになったので、最初は大変だったと思いますが、任せてもらえたということに対してのやりがいもあったのではないかと思います。
私はというと、初めてのバイト体験に、コチ丸が「やりたくない」とか「もう辞めたい」とか言い出さないかとハラハラしていました。そんな心配をよそに、3カ月のうち、休んだのは自動車免許の試験でクタクタになって帰ってきた日だけでした。その日もちゃんと自らオーナーに連絡して、欠勤する旨を伝える姿を見てほっとしました。
基本はバイトが一人だけのお店なので「当日欠勤は迷惑がかかる」と、少し疲れが出ている日でも夕方までに自分でコンディションを整えて出勤していく姿は、ちゃんと責任感を持って仕事をしているんだなと頼もしかったです。
私はというと、初めてのバイト体験に、コチ丸が「やりたくない」とか「もう辞めたい」とか言い出さないかとハラハラしていました。そんな心配をよそに、3カ月のうち、休んだのは自動車免許の試験でクタクタになって帰ってきた日だけでした。その日もちゃんと自らオーナーに連絡して、欠勤する旨を伝える姿を見てほっとしました。
基本はバイトが一人だけのお店なので「当日欠勤は迷惑がかかる」と、少し疲れが出ている日でも夕方までに自分でコンディションを整えて出勤していく姿は、ちゃんと責任感を持って仕事をしているんだなと頼もしかったです。
短期間でも感じることができた、息子の「働く」に対する成長
先日、もうアルバイトに行く日数も残りわずかとなった頃、コチ丸パパと二人でアルバイト先に飲みに行ってきました。こんなふうに息子がバイトしている姿を見ることも、今後はないかもしれないということで行ってみたのですが、コチ丸パパは接客するコチ丸の姿を見て、目を潤ませていたのが印象的でした。
私はコチ丸がバイトを始めたばかりの頃に冷やかしで一度行っていたのですが(笑)、やはり3カ月経つと成長するもので、コチ丸の経歴に興味を持った常連のお客さんに、高校で勉強してきたことや将来について丁寧に説明しながら受け答えしている姿は頼もしく、親としても誇らしかったです。そして、特性に関わらず、自分の好きなものへの情熱は「対人関係を築く強い武器」になるのだと再確認した瞬間でした。
私はコチ丸がバイトを始めたばかりの頃に冷やかしで一度行っていたのですが(笑)、やはり3カ月経つと成長するもので、コチ丸の経歴に興味を持った常連のお客さんに、高校で勉強してきたことや将来について丁寧に説明しながら受け答えしている姿は頼もしく、親としても誇らしかったです。そして、特性に関わらず、自分の好きなものへの情熱は「対人関係を築く強い武器」になるのだと再確認した瞬間でした。
完璧でなくていい。人との繋がりが「うっかり」を救う
私自身にも「うっかり」の特性があり、社会で働く大変さを知っています。単純なミスで評価が下がってしまう悔しさも経験してきました。だからこそ、コチ丸にはこのバイトを通じて学んでほしかったことがあります。それは、「人との繋がりが、失敗をカバーしてくれることもある」ということです。
自分の特性を理解し、働く上で自分は何が苦手で、何を注意しておかなくてはいけないのかを学ぶのも大切だと思います。メモを取る、確認を徹底するといった具体的な工夫はもちろん必要です。しかし、それ以上に「一生懸命働く姿」や「誠実なコミュニケーション」があれば、周りは手を差し伸べてくれます。
今回の短期バイトで、彼はオーナーや常連さんに可愛がられ、確かな成功体験を積むことができました。「ちょっと失敗もあったけどね、コチ丸くんは一生懸命やっているから」と言っていただいたオーナーの言葉が印象的でした。「ちょっと失敗」は育てている私が想像できる内容ではありますが(笑)、きっとそれをもコチ丸の頑張りがカバーしてくれたんだな、とコチ丸にも、オーナーやお客さんにも感謝の気持ちでいっぱいでした。
次のコチ丸のアルバイト先は、私の目の届かぬところで自分で決めていくことになりますが、コチ丸にとって楽しく、一生懸命学べ、将来自分がどんな働き方をしたら良いかを知ることができる、良い出会いがまた見つかることを祈っています。
自分の特性を理解し、働く上で自分は何が苦手で、何を注意しておかなくてはいけないのかを学ぶのも大切だと思います。メモを取る、確認を徹底するといった具体的な工夫はもちろん必要です。しかし、それ以上に「一生懸命働く姿」や「誠実なコミュニケーション」があれば、周りは手を差し伸べてくれます。
今回の短期バイトで、彼はオーナーや常連さんに可愛がられ、確かな成功体験を積むことができました。「ちょっと失敗もあったけどね、コチ丸くんは一生懸命やっているから」と言っていただいたオーナーの言葉が印象的でした。「ちょっと失敗」は育てている私が想像できる内容ではありますが(笑)、きっとそれをもコチ丸の頑張りがカバーしてくれたんだな、とコチ丸にも、オーナーやお客さんにも感謝の気持ちでいっぱいでした。
次のコチ丸のアルバイト先は、私の目の届かぬところで自分で決めていくことになりますが、コチ丸にとって楽しく、一生懸命学べ、将来自分がどんな働き方をしたら良いかを知ることができる、良い出会いがまた見つかることを祈っています。
執筆/あき
専門家コメント 新美妙美先生(小児科医)
初めてのアルバイトという大きな一歩を、お子さんの特性に合わせて丁寧に支えられたご経験を聞かせてくださりありがとうございます。発達特性のあるお子さんにとって、「働く」という経験は大きな成長の機会である一方で、最初の体験がうまくいかなかった場合に自信を失いやすい側面もあり、保護者として慎重になるお気持ちはとてもよく分かります。
今回のように、期間があらかじめ決まっている短期のアルバイトは、初めての経験としてとても良い選択だったと感じます。長期前提のアルバイトは、合わなかった場合に辞めにくさが負担になることもありますが、短期であれば「まずやってみる」というハードルを下げやすく、成功体験にもつなげやすいからです。
また、落ち着いた環境や業務内容のシンプルさなど、お子さんの特性に合わせて職場を選ばれた点も非常に重要です。一般的に高校生の年代のアルバイトは接客業が多いですが、人とのやり取りが好きであれば適していますし、反対に緊張しやすい場合には負担が大きくなることもあります。品出しや軽作業、農作業、ポスティング、短期イベントスタッフなど、探してみると多様な選択肢がありますし、最近では1日単位で働けるアプリなどを活用することで、より柔軟に経験を積むことも可能です。
さらに印象的だったのは、働く中で責任感や対人関係の力が自然に育っていった点です。発達特性のある方では「うっかり」やミスを完全になくすことは難しいこともありますが、誠実な姿勢や周囲との関係性がそれを補ってくれることも少なくありません。「人とのつながりが失敗を支える」という経験は、今後社会の中で生きていくうえで大きな財産になるでしょう。
アルバイトは、単にお金を得る手段にとどまらず、「働くイメージを持つ」「自分の得意・不得意を知る」「自分で得たお金を使う喜びを知る」といった意味でも重要な経験です。今回の体験は、その第一歩として非常に実りあるものだったのではないでしょうか。今後も無理のない範囲で様々な経験を重ねながら、ご本人に合った働き方を見つけていかれることを願っています。(監修:小児科医 新美妙美先生)
今回のように、期間があらかじめ決まっている短期のアルバイトは、初めての経験としてとても良い選択だったと感じます。長期前提のアルバイトは、合わなかった場合に辞めにくさが負担になることもありますが、短期であれば「まずやってみる」というハードルを下げやすく、成功体験にもつなげやすいからです。
また、落ち着いた環境や業務内容のシンプルさなど、お子さんの特性に合わせて職場を選ばれた点も非常に重要です。一般的に高校生の年代のアルバイトは接客業が多いですが、人とのやり取りが好きであれば適していますし、反対に緊張しやすい場合には負担が大きくなることもあります。品出しや軽作業、農作業、ポスティング、短期イベントスタッフなど、探してみると多様な選択肢がありますし、最近では1日単位で働けるアプリなどを活用することで、より柔軟に経験を積むことも可能です。
さらに印象的だったのは、働く中で責任感や対人関係の力が自然に育っていった点です。発達特性のある方では「うっかり」やミスを完全になくすことは難しいこともありますが、誠実な姿勢や周囲との関係性がそれを補ってくれることも少なくありません。「人とのつながりが失敗を支える」という経験は、今後社会の中で生きていくうえで大きな財産になるでしょう。
アルバイトは、単にお金を得る手段にとどまらず、「働くイメージを持つ」「自分の得意・不得意を知る」「自分で得たお金を使う喜びを知る」といった意味でも重要な経験です。今回の体験は、その第一歩として非常に実りあるものだったのではないでしょうか。今後も無理のない範囲で様々な経験を重ねながら、ご本人に合った働き方を見つけていかれることを願っています。(監修:小児科医 新美妙美先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。