【大学中退後の就労】20歳の息子の壁は「コミュニケーション」。精神科受診から「就労移行支援」に繋がるまで

ライター:ゆたかちひろ
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大阪で暮らすアラフィフおばちゃん、ゆたかちひろです。私自身、ADHD(注意欠如多動症)の診断を受けています。2026年現在、長男と次女はADHD(注意欠如多動症)とASD(自閉スペクトラム症)です。20歳になった長男は大学を中退したばかりで、この先どうしていくか考えることがたくさんあります。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

大学中退、ではそのあとは?

とうとう20歳になった長男。名実ともに成人男性ですが、現在は大学を中退し、何者でもなくなってしまいました。
強いて言うなら、フリーター?とはいえ、大学に通いだした頃からずっと続けているアルバイトなので、大学生でなくなった今の労働時間は週に10時間程度。果たして「フリーター」と名乗っていいものなのか……(笑)。
とりあえず、いずれは実家を出てひとりで暮らしていけるように、まずは仕事を見つけてもらわないといけません。
現在の息子は「フリーター」?まずは仕事を見つけてもらわなければ!
現在の息子は「フリーター」?まずは仕事を見つけてもらわなければ!
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そもそもなぜ大学中退に至ったかというと、いちばん大きな問題はコミュニケーションの障害です。
報告・連絡・相談が一切できず、二度留年したので、退学を選択するしかなくなりました。

やるべき課題がクリアできないときに、相談できない。確認が必要なことも、手をつけられず確認しそびれてしまう。支援があるとはいえ、支援してくれる方の呼びかけにも答えられない。こういった調子で、大学では単位を取り進めることが難しくなっていきました。

想像以上に大きな障害

社会に出るにあたって、コミュニケーション障害は、実際に直面してみると想像以上に大きな壁として立ちはだかっています。
まず、バイト先で「シフトを提出して」と言われても締切を守れない……といった日常のささいなやりとりにも、難しさが隠れています。それでも、息子の発達障害を理解してくれている今のバイト先の社員さんは、ゆるく見守ってくれています。
遅刻も日常茶飯事。周囲の温かい配慮のおかげで働けているけれど……
遅刻も日常茶飯事。周囲の温かい配慮のおかげで働けているけれど……
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現在は短時間のアルバイトなので、周囲の温かい配慮のおかげで働けているのですが、これがフルタイム就労となると、きっとさまざまな迷惑がかかってしまうので、今のように大目に見てもらえることも減ってくると思います。
遅刻や、報告、連絡、相談ができないことは、社会人としては致命的です。
こんな状況で、果たしてフルタイム就労が可能なのか?そもそも面接に受かるのか?不安ばかりが募りますが、当の本人は相変わらずで、なかなか自分の想いを言葉にすることができません。

必死に、自分の内面と向き合うものの……

長男と話していて、「どうするのがいいと思う?何がいや?二択ならどっち?」と、あの手この手で質問してみるも、ちょっとした軽い質問にまで、まるで取調室の容疑者みたいに完全黙秘(笑)。
別に責めているわけでもなく、和やかに話していてもそんな状態になってしまいます。
かといって、強めに言っても変わらず、目も合わせずにだんまり。

どうしてそうなってしまうのか、「自分でも原因は分からないの?」と問いかけたところ、必死に考えた結果、こう話しました。

「頭の中にたくさんの引き出しがあって、趣味の雑談とか『今日は何が食べたい』といった当たり障りのない会話ならすぐに引き出しは開くんだ。だけど、自分の想いや考えが入っている引き出しには、鍵が何重にもかかっていて。開けようとしても中にまた小さな鍵のかかった引き出しが入っている。なかなか答えにたどり着けなくて黙るしかなくなるんだよ。そして、その間も頭の中では必死に引き出しを開け続けている」
自分の想いが入っている引き出しには何重もの鍵が
自分の想いが入っている引き出しには何重もの鍵が
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言いたいことは分からなくもないけど……ごめん!感覚は分かるんだけど、やっぱり「完全に理解する」のは難しいわぁ~(笑)。
でも、その原因を突き止めるか、解決しようと動かない限り、今後自分が困るだけだよね。ということで、医療の手を借りるべきなのか、それともほかに相談する場所があるのか、考えていこうということになりました。
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まずは医療に頼る!

まずは「現状、こんな状態なのです」という話を精神科で主治医に話したところ、次のようなアドバイスをもらいました。
  • IQや経歴から見て、適性の合う職であれば能力を発揮することはできそう 
  • 継続できるのであれば投薬も手段の一つ。しかし現在本人が調子が良くなったと感じていた薬(コンサータ)は流通が不安定で処方できない 
  • 想いをアウトプットできない悩みについてはカウンセリングも有効ではあると思う 
  • いきなりフルタイムで働くのは、アルバイトでも現状はハードルが高いかもしれない 
続けて「就労移行支援を利用してはどうか」と提案してくれました。以前も調べて検討したことはありましたが、そのときは実際に相談や見学までは行ってみようとはならなかったんです。でも今回、医師から勧められたこともあり、長男本人も乗り気になったようでした。
いくつかのチラシやパンフレットをもらい、帰宅してからネットでも調べて、コミュニケーションの改善に強そうな就労移行支援事業所をピックアップ。
幸い、大阪の中心地へのアクセスが良い場所に住んでいるので、早速その場で2件の相談予約を申し込みました。
就労移行支援事業所の相談予約を実行!
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それがちょうどゴールデンウィーク前だったので、今後どうなるか分かりませんが、今頃は新しい一歩を踏み出せているのかなと思います。
就労も可能なら特性を伝えた上で「オープン就労」を選び、適切な配慮を受けられる環境に出合えるといいのですが……果たしてどうなることやら!もう、ここまできたら「なるようになれ~!」ですね。

まだまだ人生これから。多少グイグイ引っ張らないと動きそうにない成人男性に育ってしまったので、まだまだ私の子育て、一段落しそうにありません(笑)。

執筆/ゆたかちひろ

専門家コメント 鈴木直光先生(小児科医)

精神科では就労支援やリワークに力を入れているところもあるため、定期的な診察を通して相談してみるとよいでしょう。民間でも就労支援を行っている所があるので、ご自身に合ったコミュニケーションの方法を学んでいくことも可能です。一方で、無理にコミュニケーションスキルを習得しようと頑張りすぎる必要はなく、なるべくコミュニケーションの負担が少ない職場を選ぶというのも一つの手です。
主治医の先生がおっしゃるように、現在コンサータは流通が不安定で薬局さんによっては安定供給ができていない状況が続いています。しかし、ADHD(注意欠如多動症)のお薬はコンサータだけではなく、成人向けにはアトモキセチンやインチュニブといった選択肢もあります。主治医と相談しながら、まずはご自身に合うお薬を見つけて「日々の困りごとを和らげていく」ことから始めてみると、少し肩の荷が下りるのではないでしょうか。(監修:小児科医 鈴木直光先生)
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https://h-navi.jp/column/article/35030971
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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