忘れ物、感覚過敏、こだわり…「発達ユニーク」な子の見え方と生きやすくなる関わり方【精神科医さわ先生】

ライター:【FOCUS】発達ナビ書籍ガイド
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忘れ物が多い、落ち着きがない、こだわりが強い、音や匂いに敏感、友だちとの会話がうまくいかない――。大人から見ると「困った行動」に見えることも、子ども自身は「どうしてもできない」「分かってもらえない」と苦しんでいるのかもしれません。精神科医さわ先生は、発達障害のあるお子さんを育てる母でもあります。著書『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』を手がかりに、発達特性のある子どもの見え方と、大人ができるサポートについて考えます。

「発達ユニーク」とは?診断名よりも、その子が生きやすくなる方法を考える

精神科医さわ先生は、5歳以上の子どもから大人までを対象としたメンタルクリニックの院長です。本書では、「忘れっぽい」「落ち着きがない」「感覚が過敏」「こだわりが強い」「勉強が苦手」などの特性によって、まわりになじみにくい子どもたちの困りごとを、子どもの心の声からひもといています。

タイトルにある「発達ユニーク」という言葉には、さわ先生の思いが込められています。
子どもの発達については、「発達障害」「グレーゾーン」「定型発達」「知的障害」など、さまざまな言葉で分類されることがあります。もちろん、診断がつくことで、親や子ども自身が安心したり、学校や支援機関でサポートを受けやすくなったりすることもあります。

けれど、さわ先生が大切にしているのは、診断名だけで子どもを見るのではなく、すべての人にある「その人にしかない発達の過程」に目を向けることです。

診断がつかないから困っていない、というわけではありません。「病名がないから大丈夫」ではなく、困っているなら支援が必要。その考え方が、もっと社会の中に広がってほしい――。そんな願いから、本書では「発達ユニーク」という言葉が使われています。
一方で、「発達ユニーク」は、単に「個性だから大丈夫」「支援はいらない」という意味ではありません。
発達のユニークさは、人間関係、感情の表現、学習、生活習慣など、さまざまな場面にあらわれます。ときには、「空気が読めない」「怠けている」「わがまま」と誤解され、子ども自身が自信をなくしてしまうこともあります。

だからこそ必要なのは、子どもを型にはめることではなく、その子自身のユニークさを知り、理解し、必要なサポートをすることです。

さわ先生自身も、発達障害の診断があるお子さんを育てる母です。本書では、長女にASD(自閉スペクトラム症)、次女にADHD(注意欠如多動症)とLD・SLD(限局性学習症)があること、精神科医としての知識があっても、親としての子育ては手探りだったことが語られています。

だからこそ、本書にある言葉は、単なる“専門家からの解説”ではありません。
「診断がつくかどうか」よりも、 「その子がどうすれば生きやすくなるか」 を一緒に考えていく。この視点が大切にされています。

「忘れっぽい」のは、わざとじゃない――叱るより、見える工夫を

忘れ物が多い。何度言っても片づけない。話を聞いていないように見える。予定や約束をすぐ忘れてしまう。こうした姿を見ると、大人はつい、「やる気がない」 「ちゃんと聞いていない」 「何度言えば分かるの」と言いたくなりますよね。

けれど本書の第2章には、子どもの困りごととして、
「『忘れっぽい』のは、わざとじゃないんだ……」
という言葉が出てきます。

口頭で言われたことが記憶に残りにくい子どももいます。人の話を聞きながらメモを取るような、いわゆるマルチタスクが苦手な子どももいます。目の前に気になるものが入ると、そちらに注意が向いてしまう子どももいます。
そうした子に「忘れないようにしなさい」と言い続けても、うまくいかないことがあります。むしろ、「自分は何をやっても怒られる」と感じ、自信をなくしてしまうことも。

本書では、こうした子どもへのサポートとして、目で見て分かる工夫、つまり視覚支援が紹介されています。
子どもを変えようとする前に、環境を変える。 それだけで、親子の衝突が少し減ることがあります。
『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』P46-47
『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』P46-47
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今日からできること

忘れ物やミスが多い場合には、「注意する」より「仕組みをつくる」ことを意識します。

「持ち物リストを見える場所に貼る」
「朝の準備をチェック表にする」
「口頭だけでなく、紙やホワイトボードに書く」
「学校と家庭で連絡方法を決める」
「必要に応じて、教科書を家庭用と学校用で2冊用意することを相談する」

“できない”を責めるのではなく、“できる形”に変えていくことが大切です。

「わがまま」ではなく、感覚のつらさや不安かもしれない

発達ユニークな子どもの中には、音、光、匂い、味、肌ざわりなどの感覚に強い苦痛を感じる子がいます。

「教室のざわざわした音がつらい」
「給食の匂いで気持ち悪くなる」
「服のタグや靴下の縫い目が気になる」
「まぶしい光が苦手」
「特定の食感のものがどうしても食べられない」

大人から見ると、「我慢すればいい」「好き嫌いが多い」「わがまま」と見えることも、本人にとっては本当に耐えがたい刺激かもしれません。

本書の第3章には、

「音がうるさくて耐えられない!」
「『わがまま』って言われても、こんなの絶対にムリ!」
「どうしてこのつらさがわかってもらえないんだろう」

といった子どもの困りごとが並びます。
『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』P78-79
『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』P78-79
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また、第4章では、こだわりや変化への不安についても語られています。
『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』P100-101
『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』P100-101
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「予定が変わると不安になる」
「いつもの道順でないと落ち着かない」
「学校行事やイベントの前に体調を崩す」
「好きなことには強く集中するけれど、それ以外にはなかなか気持ちが向かない」

こうした姿も、周囲からは「融通がきかない」「わがまま」と見えることがあります。けれど、本人にとっては、不安を小さくし、安心して過ごすための手がかりになっていることもあります。

今日からできること

感覚のつらさやこだわりがありそうなときは、まず観察してみます。

「どの音がつらい?」
「どの服なら大丈夫?」
「先に分かっていると安心できることはある?」

そのうえで、できる範囲で調整します。

「イヤーマフや耳栓を試す」
「苦手な服の素材やタグを避ける」
「予定を紙やカレンダーで見える形にする」
「学校に感覚過敏や予定変更への不安について共有する」
「全部ではなく、一部だけ参加する方法を相談する」

“みんなと同じように我慢する”ことだけを目標にせず、その子が安心して過ごせる形を探していくことが大切です。
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