発達特性による睡眠障害・腹痛頭痛などにどう向き合う?対応策は?【小児科医・石井隆大先生に聞く/第73回日本小児保健協会学術集会】

ライター:発達ナビ【編集部Eye】
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2026年6月19日(金)~21日(日)に大阪にて開催される「第73回日本小児保健協会学術集会」。発達に特性のあるお子さんを育てる中で、「心身の不調」に日々悩まれている保護者の方は多いのではないでしょうか。そうした症状を前にすると、つい「どうにかして治さなければ」と焦ってしまいがちです。
今回は、久留米大学病院の小児科医であり、本大会で「災害時の子ども支援を学ぶ・話す・つながる ー発達に特性ある子どもと家族を支えるためにー」のシンポジウム座長を務められる石井隆大先生にお話を伺いました。

目次

2026年6月19日(金)~21日(日)に「第73回日本小児保健協会学術集会」が開催。小児科医・石井隆大先生にお話を伺いました。

2026年6月19日(金)~21日(日)に大阪市中央公会堂にて開催される「第73回日本小児保健協会学術集会」。発達に特性のあるお子さんを育てる中で、睡眠の乱れや腹痛・頭痛といった「心身の不調」に日々悩まれている保護者の方は多いのではないでしょうか。そうした症状を前にすると、つい「どうにかして治さなければ」と焦ってしまいがちです。

今回は、久留米大学病院の小児科医であり、本大会で「災害時の子ども支援を学ぶ・話す・つながる ー発達に特性ある子どもと家族を支えるためにー」のシンポジウム座長を務められる石井隆大先生にお話を伺いました。表面的な症状だけでなく子どもの生活全体を見つめることの大切さや、「正解を一つに決めない」家庭でのしなやかなケアのあり方、そして保護者と医療・学校との上手な連携のヒントについて、当事者の声に寄り添う温かい視点から語っていただきました。
第73回日本小児保健協会学術集会
第73回日本小児保健協会学術集会
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特性に伴う「困りごと」と学会の議論

LITALICO発達ナビ編集部(以下――)発達障害に伴いやすい「睡眠障害」や「腹痛・頭痛(心身症)」は、保護者の切実な悩みです。本学会で扱われる最新の知見が、こうした日常のケアにどう反映されていくと期待されますか?

石井隆大先生(以下、石井):発達に特性のあるお子さんでは、睡眠の乱れや、腹痛・頭痛といった心身症状が併存しやすく、保護者の方にとって非常に切実な悩みになりやすいと思います。こうした症状は、単独の問題として現れているように見えても、実際には感覚特性、緊張の高さ、不安、生活リズム、学校での適応、家庭内での疲労の蓄積など、さまざまな要因が重なって生じていることが少なくありません。そのため、単に「眠れない」「お腹が痛い」という症状だけを見るのではなく、子どもの生活全体を広い視野で捉えることが大切です。つまり、症状そのものだけでなく、そのお子さんが日々どのような環境で生活し、何に困り、どのような社会の中で過ごしているかまで含めて見つめることが、小児保健では重要だということです。

日本小児保健協会は、小児保健の進歩と発展を通じて社会福祉に貢献することを目的に、保健・医療・教育・福祉の多職種が協力しながら子どもと家族を支える活動を続けてきました。学術集会は、まさにその強みが集まる場であり、個々の診療科や職種だけでは見えにくい課題に対して、新しい切り口や支援の方向性を見出す大きな機会です。
例えば、睡眠障害や心身症への支援を考える際にも、医療的な評価だけでなく、学校での過ごしにくさ、家庭での負担、地域資源の活用、支援体制の作り方まで含めて議論できることに大きな意義があります。別の小児保健課題への取り組みの中から、見えにくい困難への理解や、効果的な関わり方のヒントが得られることも少なくありません。そして、すぐにすべてが解決しなくても、お子さんの見立て方や関わり方が変わることで支援や保健体制は前進します。

また、この学会の大きな特色は、会員だけで完結するのではなく、当事者や家族、支援者の声を大切にしている点です。子どもを支える営みは、専門職だけで成り立つものではありません。学会で深められた知見が、数年後に家庭での支え方や地域の支援の形を変えていくこともあります。そういう意味で、本学会での議論は、保護者の日常の悩みに対して、より実践的で、より希望につながる形で還元されていくものと期待しています。

そして、学会は難しい話をする場と思われがちですが、最終的には家庭や学校でのお子さんをどのように支えるかに戻ってくるべきですし、本学会はそのような視点を大切にしている学会です。

「睡眠障害」や「心身症」への向き合い方

――睡眠障害や心身症などに関する最新のご知見を踏まえ、「家庭でのケア」や「医療機関との上手な付き合い方」で、保護者に伝えておきたい考え方を教えてください。

石井:発達に特性のあるお子さんの睡眠障害や腹痛・頭痛などの心身症状に向き合うとき、まず大切なのは「正しい対応を一つに決めようとしすぎないこと」だと思います。小児保健の先には、子どもを支える大人たちがつくっている社会があります。研究や学会では、変化する社会環境のなかで、子どもたちが健やかに成長・発達するために何が重要かを見つめ、議論し続けることが大切です。しかし一方で、知識や理論だけが先行して、子ども本人や家庭の実情とずれてしまえば、よりよい医療・福祉・教育にはつながりません。だからこそ、子どもに近い立場にいる保護者や支援者の実感と、専門的な知見とを丁寧にすり合わせていくことが重要だと常に考えています。

家庭でのケアでは、正しさだけを追い求めるのではなく、その子の実情に応じたしなやかさが求められます。睡眠についても、科学的な根拠に基づいて生活リズムを整えることは大切ですが、不安の強さ、感覚特性、疲れやすさ、学校生活での負荷などを踏まえ、その子に無理の少ない形を探っていくことも大切です。心身症状についても、「気のせい」や「甘え」と考えるのではなく、その子なりの苦しさの表現として受け止めることが出発点になると思います。

また、医療機関や教育機関、福祉・行政とうまく付き合うためには、家庭で見えている実情を率直に伝え、立場の違いから生じる難しさも見える形で共有することが大切です。どのような介入が効果的かという知見はあっても、それが現実の生活のなかでどう機能するかは別の問題です。だからこそ、支援者側も一方的な正論ではなく歩み寄る姿勢を持ち、保護者も遠慮しすぎずに困りごとを伝えてよいと思います。それぞれの立場や事情を持ち寄りながら、子どもたちにとって何が最善かを共通の目標にして対話を重ねることが、よりよい支援につながると考えています。

医療と教育・家庭の橋渡しについて

――本学会の大きな目的である「地域社会全体で支える」という点において、保護者が学校や医師と連携する際のポイントや、先生が本学会を通じて実現したい理想の支援体制についてお聞かせください。

石井:学校や医療機関、家庭が連携するうえで大切なのは、「この子の保健について、皆で話し合おう」という姿勢だと私は考えています。私が学会をより有意義で活発なものにするために参画させていただいている若手による小児保健検討委員会でも、繰り返し議論しているのは、研究者や支援者だけで小児保健は成り立たないということです。保健とは何か、誰のために行うものなのか、独りよがりになっていないか。そうした問いを持ち続けることが、小児保健に携わる者には大切だと思っています。

小児保健は、当事者であるお子さんなしには成り立ちません。ご家族や支援者なしには支えられませんし、それをよりよくしていくためには研究者の視点も必要です。つまり、小児保健は誰か一部の専門職だけでつくるものではなく、当事者、家族、支援者、研究者が、それぞれの立場を持ちながらも、できるだけ同じ目線で共につくり上げていくものだと思います。日本小児保健協会は、そうした「小児保健はみんなでつくるもの」という考え方を、長く大切に伝え続けてきた学会だと感じています。

実務的には、お子さんが何に困っているのか、どのような状況にあるのか、親御さんの視線から何が心配で、何が大変で、何に悩んでいるのかを、きれいに整理しきれていなくても伝え合うことが大切です。そして、学校、医療、福祉、それぞれの持ち場で何を担うのがよいのかを一緒に考えていくことが、連携の出発点になると思います。

私が本学会を通じて実現したいのは、医療、教育、福祉、行政、家庭が別々に動くのではなく、子どもたちと家族を中心にしながら、共に保健を支えるという視点でつながる支援体制です。それぞれの立場の違いを越えて、「この子にとって何が支えになるか」を共有し続けられる地域のあり方こそ、これからの小児保健に求められる姿だと考えています。

石井先生のご発表テーマとその見どころ

――今大会において、石井先生が座長として発表される「災害時の子ども支援を学ぶ・話す・つながる ー発達に特性ある子どもと家族を支えるためにー」ですが、発達が気になる子の保護者にとってどのような学びや希望につながるか、見どころを教えてください。

石井:今回、「第73回日本小児保健協会学術集会」では、若手による小児保健検討委員会のシンポジウムに座長として参加させていただく予定です。今回のシンポジウムでは、「みんなで考える小児保健」をコンセプトに、災害時の子ども支援、そして神経発達症の特性をもつお子さんとご家族をどのように支えるかをテーマに、市民参加型で開催します。災害時には、環境の急な変化や見通しの立ちにくさ、感覚面の負担などによって、発達特性のあるお子さんの困りごとがいっそう表れやすくなるため、その視点から支援を考えることには大きな意味があると考えています。

私たちがこの企画で大切にしているのは、専門家が一方的に答えを示すのではなく、支援者、研究者、当事者、ご家族など、さまざまな立場の方々とともに、正解や視点を一つに固定せずに考えることです。その場にいる一人ひとりが、自分にできること、みんなでできることを考え、保健を協働してつくっていく体験を分かち合えたらと思っています。座長としても、異なる立場の声が安心して交わされ、それぞれの気づきが次の支えにつながるような場にしたいと考えています。

見どころの一つは、長く被災者支援に携わり、ご自身も被災経験をお持ちの古川恵美先生、そして東日本大震災後の東北で10年以上にわたり心のケアに従事されてきた福地 成先生から、実践に裏打ちされた知見を教えていただけることです。さらに、被災当時を経験されたご家族の体験や思いも共有いただいたうえで、参加者全体で具体的な場面をもとに考え、学び、つくり上げることの大切さを体験していただける点も、このシンポジウムの大きな特徴です。

発達が気になるお子さんの保護者の方にとっては、新しい知識を得ることはもちろんですが、それだけでなく、自分が日々感じている不安や懸念、あるいはすでに実践している工夫にも大きな意味があるのだと感じていただける機会になるのではないかと思います。知らなかったことを知ることも大切ですが、これまであまり言葉になってこなかった大切な視点が活かされる場にしたいと考えています。学会にあまりなじみのない方にも、ぜひ関心を持っていただけたらうれしいです。

小児保健は専門家だけのものではなく、当事者や家族を含めたみんなでつくるもの

「小児保健は専門家だけのものではなく、当事者や家族を含めたみんなでつくるもの」。そのお言葉に、家庭で孤軍奮闘しがちな保護者の方々も、ふっと肩の力が抜け、心強い味方を得たように感じられたのではないでしょうか。知識や「正しさ」だけを追い求めるのではなく、子どもが発するサインの背景に目を向け、それぞれの家庭に合ったペースで対応していくことの大切さが深く伝わってきました。

「第73回日本小児保健協会学術集会」では、石井先生が座長を務められる「災害時の子ども支援」をテーマにした市民参加型シンポジウムが開催されます。専門家からの教えを一方的に受けるのではなく、当事者や家族の体験を共有し、正解のない課題に対して「みんなで共に考える」貴重な場となっています。これからのよりよい支援体制をご自身の目で見て、肌で感じる機会として、ぜひ会場へ足を運んでみてください。

学会概要

『第73回日本小児保健協会学術集会』
  • 会頭:濱﨑考史先生(大阪公立大学大学院医学研究科 発達小児医学 教授)
  • 日時:令和8(2026)年6月19日(金)~21日(日)
  • 会場:大阪市中央公会堂(〒530-0005 大阪市北区中之島1丁目1番27号)
  • テーマ:みんなで育む子どもの未来
※ボタンをクリックすると第73回日本小児保健協会学術集会公式Webサイトに遷移します
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
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