「やりたくない家事」を頼むのが秘訣!?発達障害の高校生息子との家事分担で実践した、お互い助かる逆転の発想【実体験】

ライター:丸山さとこ
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神経発達症(発達障害)がある高校生の息子は、家事を「みんなで分担するもの」として少しずつ担当しています。そんなわが家で大切にしている、母直伝の子育てハックについて書きました。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。

わが家のお手伝い事情は、現在こんな感じです

息子のコウはフットワーク軽く家事を引き受けてくれますが、家事の負担を感じないわけではないようです。面倒だと言いながら弁当箱を洗うこともしばしばです
息子のコウはフットワーク軽く家事を引き受けてくれますが、家事の負担を感じないわけではないようです。面倒だと言いながら弁当箱を洗うこともしばしばです
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「家事の分担」として行われている、お手伝いのこと

以前のコラムでも書きましたが、わが家では、家事を「家を使って生活している人が、それぞれできる範囲で分担するもの」として扱っています。
神経発達症(発達障害)がある息子のコウも、小学生の頃から高校生になった現在に至るまで、ずっと家事を分担してくれています。

彼が担当してくれた最初の家事は、『朝にカーテンを開けて、夕方に閉める』ことでした。それくらいシンプルな家事でも、時間や外の明暗を気にすること、カーテンを下に引かずに横に引く動作など、意識するポイントはたくさんあります。そのため、少しずつ練習して覚えていきました。

息子は将来、一人暮らしをしたいそうで、最近では「今のうちから慣れておきたい」と言い、料理も一人でするようになりました。

「負担がないからやっている」わけではないようで……?

一見フットワーク軽く家事を引き受けているように見える息子も、基本的に『家事は面倒だ』と感じているようです。
特に弁当箱を洗うのは苦手らしく、寝る前になって思い出すと、「あ~やってなかった~」と渋い顔をしています。

ただ、息子も「自分がやらなかった家事は、誰かがやる作業になる」ということは分かっています。
そのため、渋々ながらも洗ったり、洗浄スプレーを吹きつけてから寝たりしています。

息子に家事を頼むうえで、ふたつの軸があります

そんな息子に家事を頼む時、私にはふたつの軸があります。
ひとつは、「本人ができそうなことから、スモールステップで覚えていくこと」
そしてもうひとつは、「私が本当にやりたくない作業を頼むこと」です。

前者は、息子に神経発達症(発達障害)があることが分かり、接し方を試行錯誤していく中で意識していたことです。
後者は、ある時に母から聞いた話がきっかけで、取り入れるようになった軸でした。

母直伝!?「本当にやりたくないことを頼む」という子育てハック

子どもの頃の私は、お手伝いをする度に、何度も母に「助かる?」と聞いていました
子どもの頃の私は、お手伝いをする度に、何度も母に「助かる?」と聞いていました
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私は、母に「助かった?」と何度も聞く子どもでした

私が子どもの頃、母に頼まれて家事を手伝うと、母はいつも「ありがとう、助かる」と言ってくれました。
私はそれが好きで、何度も「助かった?」と聞いていました。

今思うと、感謝されること自体もうれしかったのですが、「ありがとう」「助かったよ」という、決まったパターンの会話を繰り返すやり取りそのものも好きだったのだと思います。
息子も幼い頃、「お母さん、〇〇って言って」と、気に入ったやり取りを何度も繰り返していました。

そんな私に、母は「しつこい」と嫌がることなく、何度でも「本当に助かるよ」と言い、どう助かるかを具体的に教えてくれました。

「食器乾燥機が空だと、洗おうと思った時にすぐ取りかかれる」
「玉ねぎの皮がむいてあると、包丁を持つ手を止めなくていい」
「鍋を見ていてくれると、その間別のことができる」

それらの理由を聞きながら、私は「些細なことばかりだけど、自分は家で役に立っているんだな」と思っていました。役に立つ実感があるのは、気分の良いことでした。

「助かるなって思うから、それをそのまま言ってただけ」

そんなお手伝いの思い出を、ふと母に話したことがあります。まだ幼かった息子が『カーテン係』を担うようになった頃でした。

「あの頃の私、『助かった?』ってしつこかったよね?よく何度でも『助かる』って言ってくれたね」と感心していたら、母はこともなげに言いました。
「自分が本当にやりたくないことをやってもらうのよ。そうすると、心の底から感謝できる」と。
母とお茶をしている際に聞いた「お手伝いを頼む上でのコツ」に、私は深く感心しました
母とお茶をしている際に聞いた「お手伝いを頼む上でのコツ」に、私は深く感心しました
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「助かるなって思うから、それをそのまま言ってただけ」と笑う母の言葉に、私は「なるほどね~!」と深く納得しました。

それ以来、私は「息子が今できること、できるようになりそうなこと」と、「私が本当にやりたくないこと」の重なる部分(積集合)を探して、家事を頼むようになりました。

面倒でも、生活から切り離せない家事だから

家事を通して視界に入る、他者の都合

現在、炊飯とお風呂掃除は、ほぼ息子の担当です。
たまに手伝うのではなく『担当』になっていることで、息子にとって意識するのが難しい『他人の都合』にも目が向きやすくなっているようです。

「今日の夕飯は何?」
「何時までに炊けるといい?」

と聞いてくれますし、私が炊飯釜や中蓋を洗っておくと、「ありがとう、すぐご飯炊けるね」と言います。
米を研ぎながら「何時までに炊けるといい?」と聞いてくれる息子
米を研ぎながら「何時までに炊けるといい?」と聞いてくれる息子
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そして、私がご飯を炊いておくと、それだけで感謝してくれます。
家事が、『誰かが勝手にやっておいてくれるもの』ではなくなっているのかもしれません。

先日、新しい炊飯器を買った時には、「今度の炊飯器、いいよね。前のよりこっちのご飯のほうが好きだな」と感想を言っていました。
そして、胸に手を添えて「おいしいでしょう?私が炊きました」と言うので、私はお礼を言いながら、思わず笑ってしまいました。

家事の負担と大切さを知っている彼だから、人がした家事に感謝をし、自分がした家事に対しても「功績をアピールしていかないとね」と言えるのだな、と思いました。

押しつけではなく、分担として

子どもが家事を手伝うことは、近年ではヤングケアラーの問題もあり、難しい部分もあるなと思います。どのラインまでがヤングケアラーなのか、自立していくための家事の練習なのか、迷うこともあります。

そんな時は、「時間や労力の負担により、息子のプライベートな時間が削れていないか」「息子が担当の家事を休んだ時に困るほど頼っていないか」と考えるようにしています。
この基準で絶対に安全なラインを守れているかどうかは分かりませんが、ある程度の目安にはなっているかな?と思います。

また、定期的に「今の家事の量に負担はないか」を聞いたり、様子を見たりもしています。そうしていく中で、炊飯や弁当箱の洗浄のように増えた家事もあれば、タオルたたみのように減ったものもあります。

先に書いた通り、自分がやらない家事を誰かに押しつけるのは、避けたい行為です。
だからこそ、「分担するもの」として頼み、できる範囲で引き受けてもらうことが大事なのかもしれません。
家事を頼むことが「面倒な家事を押しつける」にならないよう、気をつけていきたいです
家事を頼むことが「面倒な家事を押しつける」にならないよう、気をつけていきたいです
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「家事が大好きです!」という方は別として、多くの人にとって家事は面倒な作業だと思います。
大掃除や模様替えのような大きな作業に比べて、日々の家事は達成感も控えめです。

だからこそ、『本当に助かった』という気持ちから出てくる「ありがとう」は、助け合って家事を回すために大切なのかもしれませんね。
執筆/丸山さとこ

専門家コメント 藤井明子先生(小児科医)

コラムを拝読し、家事を「手伝ってもらう」だけではなく、コウさんの成長や自立につながる機会として丁寧に考えられていることが伝わってきました。「本人ができそうなことからスモールステップで覚えていくこと」、そして「自分が本当にやりたくない作業を頼むこと」というふたつの軸は、とても素敵な視点だと思います。特に、心から感謝できる家事をお願いすることで、コウさん自身も「誰かの役に立てた」という達成感を得やすくなります。その積み重ねが自信となり、さらに新しいことに挑戦する力を育んでいくのではないでしょうか。
また、家事分担とヤングケアラーの問題についても丁寧に考えられていた点が印象的でした。「プライベートな時間が削られていないか」「休んだ時に家族が困るほど頼っていないか」という視点は、とても大切な目安だと感じます。家事を押しつけるのではなく、コウさんの負担になりすぎないよう配慮しながら役割を任せているからこそ、自立に向けた良い経験になっているのでしょう。親子で試行錯誤しながら、無理のない形で成長を支えていく様子が伝わってきました。(監修:小児科医 藤井明子先生)
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35031088
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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