10年越しの答え合わせ

プレ幼稚園の頃感じていた「どうして私の同時通訳がないと、先生の指示が通らないの?」という疑問の答えを10年経って本人の口から聞けるとは思いませんでした。あの時のスバルは聞いていなかったわけでも、やる気がなかったわけでも、反抗的だったわけでもなく、ちゃんと指示を聞こうとする気持ちはあったのだと思います。
だから私の同時通訳を聞いて「大変だ大変だ」とばかりに大慌てで片付けを始めていたのだと思います。

自分の気持ちが話せるようになった今なら、「これが苦手なのは特性だから」とひとまとめにせず、スバルの中で起こっている困り事としてたくさん話し合うことができるんだなと思いました。今の私ならあの頃のスバルにどんな言葉をかけるかな?と思うのでした。

専門家コメント 室伏佑香先生(小児科医)

スバルさんが「一斉指示が通りにくい」背景について、幼児期から中学生になるまでの経過を共有してくださり、ありがとうございます。「一斉指示が通りにくい」というご相談はよくありますが、その経験をお子さん自身の言葉で聞くことができたことはとても貴重です。

ASD(自閉スペクトラム症)のあるお子さんの中には、周囲にある多くの音や声の中から、自分に必要な情報だけを選び取ることが難しい場合があります。これはADHD(注意欠如多動症)にみられる注意の特性とも重なりますが、感覚過敏によって雑音が大きく聞こえること、雑音の中で音声の意味をまとめにくいこと、一斉指示を「自分に向けられた言葉」として捉えにくいことなどが関係している場合もあります。先生の近くや雑音の少ない席にしたり、板書、絵、文字、手順表など視覚情報を併用したりすることで、理解しやすくなることもあります。

幼い頃には本人も説明できなかった困り事を、成長して自分の言葉で伝えられたことはとても嬉しいことですね。スバルさんの言葉は、周囲がお子さんの行動の背景を考え、より合った支援につなげるための大切なヒントになったのではないかと思います。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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