年齢は番号、先生は枚!?数字にこだわり、言葉が独特な発達障害の息子が独自の世界を組み立てていた日々
ライター:スパ山
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長男ハジュは、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)です。小さい頃のハジュは、言葉の使い方がちょっと独特だったり、数字に不思議なこだわりがあったりしました。
監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
世界の仕組みを研究していた長男ハジュ
子どもの言葉を聞いていると、「この子の中では、いま世界がどう組み立てられているんだろう」と考えることがあります。
小学6年生になったハジュも、小さい頃は目の前の世界を一生懸命理解しようとしていました。時に大人の想像を軽く飛び越えながら、彼なりの筋道で世界を組み立てていたように思います。そんなハジュとの日々を振り返ると、思わずクスッとしてしまうような言葉がいくつも思い出されます。
小学6年生になったハジュも、小さい頃は目の前の世界を一生懸命理解しようとしていました。時に大人の想像を軽く飛び越えながら、彼なりの筋道で世界を組み立てていたように思います。そんなハジュとの日々を振り返ると、思わずクスッとしてしまうような言葉がいくつも思い出されます。
お父さんには番号がついている
お父さんの誕生日をお祝いしている時、突然「お父さんには番号がついてる」と言い出しました。どうやら年齢のことを番号だと認識したようで、数字が大好きなハジュはそれがとても気に入った様子でした。
3歳年上の姉子が、「お姉ちゃんは7番だよ」と教えると、大喜びして、それからしばらく、ハジュは人に会うたびに「お父さんは○○番で、お姉ちゃんは7番!」と教え、さらに「何番?」と年齢を聞いて回るようになりました。
「いくつ?」や「何歳?」というより、何かを確かめているような聞き方でした。
ある日、私に向かっても同じように聞いてきました。
「お母さんは何番?」うっ……答えてしまうと世界に私の年齢が大公開されてしまう……と答えに詰まっていると、隣にいた姉子が私の様子を察し、気をつかって「20番だよ」と言いました。
「えっ」思わず声が出ました。そんなわけない(笑)。でもハジュは、特に疑うこともなく「へー!!」とニコニコ。ああ、ちょっと心が痛い(笑)。その頃のハジュにとって、「年齢」は人を知るための大事な手がかりだったのかもしれません。
3歳年上の姉子が、「お姉ちゃんは7番だよ」と教えると、大喜びして、それからしばらく、ハジュは人に会うたびに「お父さんは○○番で、お姉ちゃんは7番!」と教え、さらに「何番?」と年齢を聞いて回るようになりました。
「いくつ?」や「何歳?」というより、何かを確かめているような聞き方でした。
ある日、私に向かっても同じように聞いてきました。
「お母さんは何番?」うっ……答えてしまうと世界に私の年齢が大公開されてしまう……と答えに詰まっていると、隣にいた姉子が私の様子を察し、気をつかって「20番だよ」と言いました。
「えっ」思わず声が出ました。そんなわけない(笑)。でもハジュは、特に疑うこともなく「へー!!」とニコニコ。ああ、ちょっと心が痛い(笑)。その頃のハジュにとって、「年齢」は人を知るための大事な手がかりだったのかもしれません。
おとなのこ!
また別の日には、「男の子」「女の子」という言葉を覚え始めていました。ただ、まだ使い方が少しあやふやなようで、私が「お母さんは男の子?女の子?」と聞くと、「おとのこ(男の子)」と答える。まあ、おじさんみたいになってる瞬間もあるけども……(笑)。
こんな調子で、私は何度か「ハジュは男の子だよ」と教えていました。すると今度は、オウム返しのように「ハジュはオトノコダヨ」と言うようになりました。ちゃんと分かっているのか、それとも私の言葉をそのまま真似しているだけなのか、その頃の私にはよく分かりませんでした。
そんなある日、療育センターでのことです。療法士の先生がハジュに、「ハジュくんは男の子?女の子?」と尋ねました。
するとハジュは、すぐには答えませんでした。少し考えるような顔をして、何かを思い出そうとしている様子です。私にはまるで、「あ、この質問知ってる」「お母さんが言ってたやつだ」「えーと……”おとこのこ”と”おんなのこ”、どっちだっけ……」と、頭の中の引き出しを一生懸命探しているように見えました。
そして数秒後、パッと顔を輝かせて「おとなのこ!」と、にっこり。
惜しい~!いや、惜しくもないのかもしれません。でも、その時の真剣な表情があまりにも可愛らしくて、先生と顔を見合わせて思わず笑ってしまいました。どうやらこの頃のハジュは、まだ「男の子」と「女の子」の研究の真っ最中だったようです。惜しいような、惜しくないような、でも本人はとても真剣でした。
こんな調子で、私は何度か「ハジュは男の子だよ」と教えていました。すると今度は、オウム返しのように「ハジュはオトノコダヨ」と言うようになりました。ちゃんと分かっているのか、それとも私の言葉をそのまま真似しているだけなのか、その頃の私にはよく分かりませんでした。
そんなある日、療育センターでのことです。療法士の先生がハジュに、「ハジュくんは男の子?女の子?」と尋ねました。
するとハジュは、すぐには答えませんでした。少し考えるような顔をして、何かを思い出そうとしている様子です。私にはまるで、「あ、この質問知ってる」「お母さんが言ってたやつだ」「えーと……”おとこのこ”と”おんなのこ”、どっちだっけ……」と、頭の中の引き出しを一生懸命探しているように見えました。
そして数秒後、パッと顔を輝かせて「おとなのこ!」と、にっこり。
惜しい~!いや、惜しくもないのかもしれません。でも、その時の真剣な表情があまりにも可愛らしくて、先生と顔を見合わせて思わず笑ってしまいました。どうやらこの頃のハジュは、まだ「男の子」と「女の子」の研究の真っ最中だったようです。惜しいような、惜しくないような、でも本人はとても真剣でした。
単位はお好みで……?
またある時には、先生の人数を数えながら「先生が3枚いた!」と教えてくれたことがありました。当時のハジュは、なぜか何でも「枚」で数えていました。
私はそのたびに「先生は3人って数えるんだよ」と訂正していたのですが、本人は特に気にする様子もありません。
最近になって当時のことを聞いてみたところ、「だって、人にも単位があるのは知ってたけど、枚でも個でも人でも好きなのを使っていいと思ってた」とのこと。なるほど、ルールを間違えていたのではなく、単位は自由に選ぶものだと思っていたらしいです。
私はそのたびに「先生は3人って数えるんだよ」と訂正していたのですが、本人は特に気にする様子もありません。
最近になって当時のことを聞いてみたところ、「だって、人にも単位があるのは知ってたけど、枚でも個でも人でも好きなのを使っていいと思ってた」とのこと。なるほど、ルールを間違えていたのではなく、単位は自由に選ぶものだと思っていたらしいです。
年齢には数字がある。
人には呼び方がある。
単位は好きなのを選べる。(と思っていた)
そんなふうに、見つけたルールを一つひとつ繋ぎ合わせながら、ハジュは世界の仕組みを組み立てていたのかもしれません。当時はそのたびに訂正したり説明したりしていましたが、どれも間違いというより、研究途中の仮説だったのかもしれません。
そう考えると、あの頃の数々の珍回答も、ハジュなりに世界を理解しようとしていた記録なのかもしれないなぁ、と思うのです。
人には呼び方がある。
単位は好きなのを選べる。(と思っていた)
そんなふうに、見つけたルールを一つひとつ繋ぎ合わせながら、ハジュは世界の仕組みを組み立てていたのかもしれません。当時はそのたびに訂正したり説明したりしていましたが、どれも間違いというより、研究途中の仮説だったのかもしれません。
そう考えると、あの頃の数々の珍回答も、ハジュなりに世界を理解しようとしていた記録なのかもしれないなぁ、と思うのです。
執筆/スパ山
専門家コメント 初川久美子先生(臨床心理士・公認心理師)
長男ハジュくんの幼少期の言葉の使い方や数字や単位に関するエピソードをありがとうございます。幼い頃の子どもたちは、自分なりに推理・想像しながら、言葉や数字、数え方などを身につけようとしますね。特性もあって、数字が好きだったのかなと想像しますが、「歳」よりも、順番としての「番」のほうがハジュくんとしては好きだった(しっくりきた)のかなと思いました。お子さんなりの世界の理解、面白いですね。多くの場合、生活していく中で、だんだん「こういうときは、こう言うものだ」と察しがついたり、大人に修正されたりする中で、標準的な語用になっていきます。6年生になったハジュくんは当時のことを振り返って、説明してくれる(説明できるほどに成長した)のも素敵です。
お子さんの独特な言葉の使い方はある意味期間限定だからこそ、お子さんが世界をどう理解し、自分の好きなもの(例えば数字など)と世界(家族や周囲の人の年齢など)とを結びつけながら、「新しい発見」に満ちた日々を過ごしているのかを知るきっかけになりますね。幼いお子さんを今まさに育てていらっしゃる方々は、ぜひ注目していただければと思います。(監修:臨床心理士・公認心理師 初川久美子先生)
お子さんの独特な言葉の使い方はある意味期間限定だからこそ、お子さんが世界をどう理解し、自分の好きなもの(例えば数字など)と世界(家族や周囲の人の年齢など)とを結びつけながら、「新しい発見」に満ちた日々を過ごしているのかを知るきっかけになりますね。幼いお子さんを今まさに育てていらっしゃる方々は、ぜひ注目していただければと思います。(監修:臨床心理士・公認心理師 初川久美子先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。