引越し先での「新たな環境」がストレスになる前に!体験とルーティンで乗り切る環境適応術【大人の発達特性】
ライター:くろまる
神戸で猫と一緒に暮らしているくろまるです。幼少期から発達の凸凹があり生きづらさを感じていて、大学時代に双極性障害(双極症)を発症。ひきこもりと就労移行支援の利用を経て就職し、現在は自立訓練(生活訓練)事業所の支援員をしています。最近、生まれ育った東京を離れて神戸に移住しました。かなり大きな変化だったので、今回は新しい環境になれるまでに工夫したことを紹介します。
監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。
1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。
東京から神戸へ、新しい環境で工夫したこと
環境の変化への適応って難しいですよね。仕事や住居が変わるたびに思います。今回私は東京から神戸へ移住しました。生まれ育った東京を離れて、まったく新しい環境へのチャレンジです。
近場への引越しだとしても環境の変化は心身に影響を及ぼします。それが移住ともなると変化の大きさに目がくらむようでしたが、約2ヶ月たった現在は落ち着いて生活できています。今回は大きな環境の変化への適応について書いていきたいと思います。
近場への引越しだとしても環境の変化は心身に影響を及ぼします。それが移住ともなると変化の大きさに目がくらむようでしたが、約2ヶ月たった現在は落ち着いて生活できています。今回は大きな環境の変化への適応について書いていきたいと思います。
段階を踏んで
適応のためにまずは段階を踏みました。大きな変化は大きなストレスとなります。でも、その変化を小分けにできれば、一度に受けるストレスも小さくできるはずです。というわけで、本格的な移住より先に体験できる部分は体験しておくことに。
今回は職場の異動による移住だったので、移住前に配属予定の職場を見学させてもらいました。職場の中を見せてもらい、一緒に働くスタッフに挨拶をしたおかげで不安が軽減されました。
それと、住む予定の駅から職場の駅まで電車で行ってみることもしました。新幹線の駅からはかなり離れていて時間もお金もかかりましたが、必要なコストだと思い実行しています。
実際に職場や通勤経路の体験をすることで、モヤがかかっていた部分が少しずつ晴れていき、移住前にかなり安心できたことを覚えています。
今回は職場の異動による移住だったので、移住前に配属予定の職場を見学させてもらいました。職場の中を見せてもらい、一緒に働くスタッフに挨拶をしたおかげで不安が軽減されました。
それと、住む予定の駅から職場の駅まで電車で行ってみることもしました。新幹線の駅からはかなり離れていて時間もお金もかかりましたが、必要なコストだと思い実行しています。
実際に職場や通勤経路の体験をすることで、モヤがかかっていた部分が少しずつ晴れていき、移住前にかなり安心できたことを覚えています。
移住してからも体験重視で
実際に移住してからは生活に関わる体験を優先的にしていきました。具体的には最寄駅の飲食店、コンビニとスーパー、現実的に使える路線の確認などです。
いわゆる「生活圏」ですね。おそらく多くの人が引越しした後に気にするところだと思いますが、私はとにかく「体験する」ことを重視しました。例えば徒歩圏内の駅には全部歩いて行ってみて、電車にも乗ってみます。飲食店やスーパーなども東京にもあるチェーン店だとしても、一度利用してみます。
いわゆる「生活圏」ですね。おそらく多くの人が引越しした後に気にするところだと思いますが、私はとにかく「体験する」ことを重視しました。例えば徒歩圏内の駅には全部歩いて行ってみて、電車にも乗ってみます。飲食店やスーパーなども東京にもあるチェーン店だとしても、一度利用してみます。
情報ではなく体験
なぜそこまで体験にこだわるのか、自分自身でもあまり分からず実行していました。が、振り返ってみるとインターネットや人から聞いた情報だけだと私の中では「不確定」のままなんだと気づきました。例えば電車では乗換案内でいくらでも調べられます。今は駅の構内図も簡単に確認できるでしょう。
でも実際に駅に行ってみて、電車に乗ってみると事前に思っていたのと何かが違います。それが何なのかはよく分かりません。ちょっとした空気感とかなんだと思います。言語化できない部分。でも私にとっては大切な要素です。
でも実際に駅に行ってみて、電車に乗ってみると事前に思っていたのと何かが違います。それが何なのかはよく分かりません。ちょっとした空気感とかなんだと思います。言語化できない部分。でも私にとっては大切な要素です。
立ち返る場所を確保する
電車だけでなくほかのスーパーなども同じ理由でとにかく行ってみます。値段がどうとかではなく、空気感を感じるために。私は空気感によって「気に入る」「気に入らない」があります。同じチェーンのコンビニでも「なんとなく気に入らない」と感じる店が出てくるんですよね。自分の中でそういった分類ができて初めて「不確定」が「確定」になります。外からの情報だけではダメなんです。
そして、一通り生活圏のあれこれを体験した後に、利用したい場所をいくつか選んでおきます。そういった場所があると安心するんですよね。立ち返る場所というか、疲れたときなどに迷わず行ける場所というんでしょうか。
不調のときは頭の中に無数の考えが浮かぶたちなので、考えなくてもいいもの(今回では場所)が確保できると落ち着きます。それらを複数確保することが私にとっての適応だと考えています。
そして、一通り生活圏のあれこれを体験した後に、利用したい場所をいくつか選んでおきます。そういった場所があると安心するんですよね。立ち返る場所というか、疲れたときなどに迷わず行ける場所というんでしょうか。
不調のときは頭の中に無数の考えが浮かぶたちなので、考えなくてもいいもの(今回では場所)が確保できると落ち着きます。それらを複数確保することが私にとっての適応だと考えています。
重りから錨へ
私は特性から頭の中が忙しく、いろいろなものに目移りする傾向があります。新しい環境だとその対象が多くなるので、気持ちを落ち着けることがいつも課題でした。そのため自分の中で立ち返るものを確保するという対策を作り上げていきました。その時々によって具体的な行動は変わりますが、引越しでいえば生活圏内のお店や駅を体験することです。それは東京から神戸への移住でも変わりませんでした。
これまではそういった迷いなくできるものを「重り」と呼んでいました。頭がふわふわしていくのを抑えるものといった意味です。でもこれからは「錨(いかり)」と呼びたいと思います。せっかく神戸に移住したので。何もしなければ波にさらわれてしまう船を、港に停泊させておくようなイメージです。
これまではそういった迷いなくできるものを「重り」と呼んでいました。頭がふわふわしていくのを抑えるものといった意味です。でもこれからは「錨(いかり)」と呼びたいと思います。せっかく神戸に移住したので。何もしなければ波にさらわれてしまう船を、港に停泊させておくようなイメージです。
新しい環境へ適応する手段を用意しておく
ほかにも新しい環境へ適応するための手段をいくつか持っておくと役立つと思います。私の場合は料理が得意なので、前回も書きましたが「お弁当を持っていく」対策もよくしています。
お弁当をつくることでランチのお店選びの手間や同僚とのやり取りの幅を減らせるんですよね。同じ容器を複数買っておき、日曜日にまとめてつくって冷凍するので負担もそれほどありません。スーパーを安さで選んでいないぶん、お弁当で節約をするという意味もあります。
こうした工夫をしたおかげで、移住に転勤にとダイナミックな環境の変化にも対応できました。今は落ち着いているので、普段とは違うお店に行ったり、同僚とのやり取りにも変化をつけたりと少しずつ楽しめるようになってきました。
執筆/くろまる
お弁当をつくることでランチのお店選びの手間や同僚とのやり取りの幅を減らせるんですよね。同じ容器を複数買っておき、日曜日にまとめてつくって冷凍するので負担もそれほどありません。スーパーを安さで選んでいないぶん、お弁当で節約をするという意味もあります。
こうした工夫をしたおかげで、移住に転勤にとダイナミックな環境の変化にも対応できました。今は落ち着いているので、普段とは違うお店に行ったり、同僚とのやり取りにも変化をつけたりと少しずつ楽しめるようになってきました。
執筆/くろまる
専門家コメント 鈴木直光先生(小児科医)
発達に凸凹があり環境の変化が苦手な人であっても、ご本人に合った環境が整うことで落ち着いて過ごせることは多くあります。そのために、事前に見通しを持つための「予習」が大きな助けとなります。旅行に行く際や卒業式などの行事の前に、行き先の風景や昨年の式典の様子などを動画などで一緒に見ておくだけでも、「どんなことをするのか」が分かり、安心につながりやすいです。
今回の記事のエピソードでは、事前に実際の場所で体験をされているので、動画で見る以上の大きな安心感につながったのだと思われます。
記事の中で、ルーティンにすることを「錨」と名づけられたことに、頷きながら拝読しました。ただ、時にはその錨の場所を移動させる必要が出てくるかもしれません。その時も、決して焦らず少しずつ、スモールステップで動かしていくのが良いでしょう。(監修:小児科医 鈴木直光先生)
今回の記事のエピソードでは、事前に実際の場所で体験をされているので、動画で見る以上の大きな安心感につながったのだと思われます。
記事の中で、ルーティンにすることを「錨」と名づけられたことに、頷きながら拝読しました。ただ、時にはその錨の場所を移動させる必要が出てくるかもしれません。その時も、決して焦らず少しずつ、スモールステップで動かしていくのが良いでしょう。(監修:小児科医 鈴木直光先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。