「距離を置く」で物理的に逃走!?暗黙のルールが分からない小6・ASDの息子への上手な距離感の教え方
ライター:星あかり
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息子のスバルはASD(自閉スペクトラム症)です。困り事の1つに「言葉を文字通りに受け取りやすい」傾向があります。私がなんとなくで済ませた曖昧な説明がそのまま実行されることもしばしば。普段はそれほど困らないのですが、人間関係の悩みを相談された時、私の曖昧な日本語が、スバルの思いもよらない行動に繋がるのでした。
監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。
現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
スバルなりの「距離の置き方」
息子が小学6年生の時の交流級のクラスメイトに機嫌が悪くなると暴言を吐くAくんという子がいました。何度か大きな問題になったこともあります。そんな中、多くのクラスメイトたちは、Aくんが機嫌の悪い時には少し距離をとったり、言葉を受け流したりしながらクラスメイトとして普通に付き合っているように見えました。そうした距離感は誰かに教わったというよりも子どもたちが経験の中で自然になんとなく身に付けたものだと感じました。
ところがASD(自閉スペクトラム症)のスバルにはその「なんとなく」が難しく、Aくんとの付き合い方に苦戦していました。もはや挨拶がわりのように繰り出される暴言でしたが、スバルは受け流すことができず毎回言葉の通りに正面から受け取ってしまうのでした。そこで私はスバルに「Aくんと距離をおいたら?」と助言しました。スバルは少し悩んで「やってみる」と言いました。
次の日、スバルはAくんを見るやいなや走って逃げました。そう、物理的に「距離を置いた」のです。この態度はAくんの逆鱗に触れ、大騒動になりました。
ところがASD(自閉スペクトラム症)のスバルにはその「なんとなく」が難しく、Aくんとの付き合い方に苦戦していました。もはや挨拶がわりのように繰り出される暴言でしたが、スバルは受け流すことができず毎回言葉の通りに正面から受け取ってしまうのでした。そこで私はスバルに「Aくんと距離をおいたら?」と助言しました。スバルは少し悩んで「やってみる」と言いました。
次の日、スバルはAくんを見るやいなや走って逃げました。そう、物理的に「距離を置いた」のです。この態度はAくんの逆鱗に触れ、大騒動になりました。
距離を置く練習をしてみると……
言われてみれば確かにその通り。
大人同士であれば「距離を置く」は「必要以上に関わらない」「相手の言動に振り回されない」「嫌な言葉は受け流す」くらいの意味で通じると思います。しかし、言葉のままに意味を捉えやすい特性があるスバルが母の指示を忠実に再現すると走って逃げるに繋がるのです。これは私のミスでした。改めて「クラスメイトとして挨拶はする。話しかけられたら答える。授業中の話し合いなどはきちんと話す。でもこちらからは近づかない。機嫌が悪そうな時はそっと離れる。走って逃げない」など細かく言語化して伝えました。
またほかの同級生とのトラブルで「嫌なこと言われても無視しなよ」とのアドバイスに対し、その子の存在を無視して立ち去るパターンもありました。私は「嫌な言葉に反応しない」という意味で言ったのに、スバルは存在そのものを無視したのです。仲良くしろとは言いませんが、これは新たなトラブルを巻き起こしそうな気配がします。
私は改めて「返事はするけど言い返さない。嫌なことを言われたら言い返さずにそっとその場を離れる。走って逃げない」など細かく伝え直しました。学校の先生にも相談し、あえて先生の協力と見守りのもと「距離を置く」練習をさせたのは数か月後に迫った中学を見据えてのことでした。今よりもっと多くの人間関係のトラブルが予想できるので上手な距離の取り方は今学んでおくべき重要事項だと思いました。この練習は必ずしも上手くいくわけではありませんでしたが、必要だったと思います。
大人同士であれば「距離を置く」は「必要以上に関わらない」「相手の言動に振り回されない」「嫌な言葉は受け流す」くらいの意味で通じると思います。しかし、言葉のままに意味を捉えやすい特性があるスバルが母の指示を忠実に再現すると走って逃げるに繋がるのです。これは私のミスでした。改めて「クラスメイトとして挨拶はする。話しかけられたら答える。授業中の話し合いなどはきちんと話す。でもこちらからは近づかない。機嫌が悪そうな時はそっと離れる。走って逃げない」など細かく言語化して伝えました。
またほかの同級生とのトラブルで「嫌なこと言われても無視しなよ」とのアドバイスに対し、その子の存在を無視して立ち去るパターンもありました。私は「嫌な言葉に反応しない」という意味で言ったのに、スバルは存在そのものを無視したのです。仲良くしろとは言いませんが、これは新たなトラブルを巻き起こしそうな気配がします。
私は改めて「返事はするけど言い返さない。嫌なことを言われたら言い返さずにそっとその場を離れる。走って逃げない」など細かく伝え直しました。学校の先生にも相談し、あえて先生の協力と見守りのもと「距離を置く」練習をさせたのは数か月後に迫った中学を見据えてのことでした。今よりもっと多くの人間関係のトラブルが予想できるので上手な距離の取り方は今学んでおくべき重要事項だと思いました。この練習は必ずしも上手くいくわけではありませんでしたが、必要だったと思います。
数々の修羅場を経験し、基本の「距離を置く」をマスターしたスバルですが、臨機応変を求められるとまだまだ難しいようです。
距離を置く練習をしていて気づいたことは、一言に「距離を置く」と言ってもさまざまなパターンがあることです。仲が良い人との距離、悪い人じゃないけど気が合わない人との距離、立場上付き合いは辞められないけど近づきたくない人との距離。相手が複数人だったら、学校だったら、公園だったら……。スバルを見ていると、私がいつの間にか自然とこなしている距離の取り方はずいぶん高度なことだったのだと思い知らされます。
距離を置く練習をしていて気づいたことは、一言に「距離を置く」と言ってもさまざまなパターンがあることです。仲が良い人との距離、悪い人じゃないけど気が合わない人との距離、立場上付き合いは辞められないけど近づきたくない人との距離。相手が複数人だったら、学校だったら、公園だったら……。スバルを見ていると、私がいつの間にか自然とこなしている距離の取り方はずいぶん高度なことだったのだと思い知らされます。
日本語の難しさを痛感
今回のことで日本語って思った以上に意味が多いしふわふわしていて難しいなと思いました。スバルには「距離を置く」より「用事がなければ近づかない」、「無視をする」より「返事はするけど言い返さない」といった取扱説明書的な説明を心がけています。それでも「これって何て言い換えたら良いの?」と悩むことは少なくありません。耳にタコはできないし、猫を飼っていなくても猫の手を借りたい日はあるし、「頭を冷やしなさい」と言われても保冷剤は必要ないことを伝えるそんな毎日です。
執筆/星あかり
執筆/星あかり
専門家コメント 室伏佑香先生(小児科医)
私たちは「距離を置く」「無視する」といった言葉の意味を、その場の状況や相手との関係性から自然に読み取っていますが、ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの中には、そのような言葉に含まれる曖昧なニュアンスを直感的に理解することが難しい場合があります。そのため、経験を積み重ねながら、「どんな場面で、どのように行動すればよいのか」を1つひとつ具体的に整理し、知識として積み上げていく支援が有効です。
このような、言葉にされない人との距離感や暗黙のルール、日本語のニュアンスを言語化して教える作業は、想像以上に時間と根気を要します。あかりさんが、「返事はするけれど言い返さない」「用事がなければ近づかない」「走って逃げない」など、実際の行動レベルまで落とし込んで伝え直し、学校とも連携しながら練習を重ねられたことは、経験的な学びを支える素晴らしいアプローチだと思います。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
このような、言葉にされない人との距離感や暗黙のルール、日本語のニュアンスを言語化して教える作業は、想像以上に時間と根気を要します。あかりさんが、「返事はするけれど言い返さない」「用事がなければ近づかない」「走って逃げない」など、実際の行動レベルまで落とし込んで伝え直し、学校とも連携しながら練習を重ねられたことは、経験的な学びを支える素晴らしいアプローチだと思います。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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