震災をきっかけに見直した家族の防災。息子の成長とともにアップデートされる備蓄、新たな悩みも?
ライター:かなしろにゃんこ。
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わが家は有事に備えて結婚当初から私が勝手に防災用品や備蓄を用意していましたが、ADHD(注意欠如多動症)とASD(自閉スペクトラム症)の息子リュウ太が小6のときに東日本大震災の強い揺れと計画停電があってから見直すことにしたんです。
監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。
多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」の制作スタッフ。
繰り返す揺れを体験して備えを見直すことに……
わが家は有事に備えて結婚当初から私が勝手に防災用品や備蓄を用意して、夫や息子リュウ太に「ここに入っているからね!」と伝えてきました。そもそも私が心配性だからなのでした。オムツや粉ミルクや3日分の水分と食料などもリュックに入れて玄関に置いていました。
息子が小6のときに東日本大震災の強い揺れと計画停電(地震と津波による原発の事故などに伴い電気が足りなくなって街全体が真っ暗になるのを防ぐため、電力会社がエリアを分けて順番に電気を止めるものです)を体験してからは防災品を見直しました。
息子が小6のときに東日本大震災の強い揺れと計画停電(地震と津波による原発の事故などに伴い電気が足りなくなって街全体が真っ暗になるのを防ぐため、電力会社がエリアを分けて順番に電気を止めるものです)を体験してからは防災品を見直しました。
そして、3月11日のあとに揺れが続く中、米もなく電気もなく、ごはんがないので灯りのない暗い街中を息子と歩いて夜食を買いに行きました。
普段はなにかと親の指示や提案に反抗する息子でしたが、このときは協力的でした。往復4キロをだまって歩いてくれました。「いつもよりも夜空の星がきれいに見えてステキだね」なんて息子と会話をしましたが、大きく被災していなかった街だからそんなことを言えるのだよなと感じました。
自分の足元が危険な状態のときは灯りがないと何もできないのだと、計画停電は想像する時間を与えてくれました。
普段はなにかと親の指示や提案に反抗する息子でしたが、このときは協力的でした。往復4キロをだまって歩いてくれました。「いつもよりも夜空の星がきれいに見えてステキだね」なんて息子と会話をしましたが、大きく被災していなかった街だからそんなことを言えるのだよなと感じました。
自分の足元が危険な状態のときは灯りがないと何もできないのだと、計画停電は想像する時間を与えてくれました。
東日本大震災のあとも地震が続く中で、息子は恐がったりせずに変わらず生活をしていましたが身体に異変が出てきました。鼻血を頻繁に出すようになり、ひと月続きました。病院へ行くと原因は不明で「おそらく地震などのストレスで自律神経に影響があるかもしれません」とのことでハッキリは分からなかったのですが、もしかしたら顔や態度には出しませんでしたがストレスを感じていたのではないかと思います。
普段聞きわけがない息子ですが、この時期は非常事態を感じていたのか親の指示に素直に従うなど協力的だったのです。息子は今でも3月11日のことを話します。忘れられない出来事として心に焼き付いたそうです。
普段聞きわけがない息子ですが、この時期は非常事態を感じていたのか親の指示に素直に従うなど協力的だったのです。息子は今でも3月11日のことを話します。忘れられない出来事として心に焼き付いたそうです。
また、各被災地に訪れることがあり、地域の人から災害の話を聞く機会もありました。体験談から備えに対する個人の力が大事であると感じました。
そこから、できる範囲で備えようと家族で話し合うようにしました。
そこから、できる範囲で備えようと家族で話し合うようにしました。
息子が中学生になると「スマホが使えないと不便だろな」という意見から電池でスマホに充電できる充電器と電池を備蓄品に加えることにしました。
夫は過去、ボーイスカウトの経験から「水のほかに、飲料水ではない水でもろ過して飲めるボトルを用意しよう」とか「エマージェンシーシートと大型のゴミビニール袋を2つ使うとあたたかいよ」など提案があり、かさばらないものをチョイスして防災品に加えました。
夫は過去、ボーイスカウトの経験から「水のほかに、飲料水ではない水でもろ過して飲めるボトルを用意しよう」とか「エマージェンシーシートと大型のゴミビニール袋を2つ使うとあたたかいよ」など提案があり、かさばらないものをチョイスして防災品に加えました。
息子が専修学校2年のときは学校の実習でも使用している物を提案してくれました。「マスクは粉塵対策ができるタイプのマスクにしよう」や「ゴーグルもあると目を守れるんじゃない」とアイデアを出してくれました。
家族でワイワイとアイデアを出していくと、防災品と備蓄品はリュックには収まりきれない量になってしまったので、現在は宅配ボックスを購入して庭に置き、その中にリュックを加えて3人で分配して移動の際に持てる量にしました。
家族でワイワイとアイデアを出していくと、防災品と備蓄品はリュックには収まりきれない量になってしまったので、現在は宅配ボックスを購入して庭に置き、その中にリュックを加えて3人で分配して移動の際に持てる量にしました。
最近では息子が「お母さん、災害系有事は現金も必要じゃないか」と、支払いに電子マネーばかり使用して現金を持たない私に衝撃の一言でした。ごもっともです。
しかし……庭の備蓄ボックスに現金を入れておくのは心配です。こんなときどうしたらいいでしょうか?
しかし……庭の備蓄ボックスに現金を入れておくのは心配です。こんなときどうしたらいいでしょうか?
執筆/かなしろにゃんこ。
専門家コメント 新美妙美先生(小児科医)
ご家庭で長年にわたり防災について話し合い、その時々の生活や経験に合わせて備えを見直してこられた様子を聞かせてくださりありがとうございます。東日本大震災や被災地でのお話をきっかけに、ご家族それぞれがアイデアを出し合いながら備えを充実させていく過程は、とても参考になりました。
発達特性のあるお子さんは、災害時の急激な環境の変化や見通しの立たない状況に強い不安を感じたり、パニックになったりすることが少なくありません。そのため、防災用品を準備することだけでなく、「災害が起きたらどうするか」「何を持って避難するか」「家族はどう動くか」を日頃から具体的に話し合い、イメージできるようにしておくこと自体が、とても大切な備えになります。準備やシミュレーションを重ねることで、「想定外」を少しでも減らし、いざという時にも落ち着いて行動しやすくなることが期待できます。
また、お母さんだけが備えるのではなく、ご主人や息子さんもそれぞれの経験や視点から提案を出されていたことも印象的でした。家族で話し合うことで、一人では思いつかない視点が加わり、より現実的で実用的な備えにつながります。災害への備えを「お母さん一人の仕事」にしないという点でも、とても理想的な形だと感じました。
記事の最後にあった「現金も必要では?」という息子さんの提案も、とても大切な視点ですね。災害時には停電や通信障害で電子決済が使えなくなることもありますので、ある程度の現金を準備しておくことは安心につながります。ただし、庭の防災ボックスの中に保管するよりは、防犯面も考えて、すぐ持ち出せる場所に分散して保管しておく方が現実的でしょう。例えば、玄関近くの決まった引き出しや、普段持ち出すバッグの中など、「家族全員が場所を知っていて、すぐに持ち出せる場所」をいくつか決めておくといいかもしれないですね。
防災は、一度準備したら終わりではなく、家族の成長や生活の変化に合わせて少しずつ見直していくことが大切です。今回の体験談は、その積み重ねこそが何よりの備えであることを教えてくれる、とても心強い内容でした。(監修:小児科医 新美妙美先生)
発達特性のあるお子さんは、災害時の急激な環境の変化や見通しの立たない状況に強い不安を感じたり、パニックになったりすることが少なくありません。そのため、防災用品を準備することだけでなく、「災害が起きたらどうするか」「何を持って避難するか」「家族はどう動くか」を日頃から具体的に話し合い、イメージできるようにしておくこと自体が、とても大切な備えになります。準備やシミュレーションを重ねることで、「想定外」を少しでも減らし、いざという時にも落ち着いて行動しやすくなることが期待できます。
また、お母さんだけが備えるのではなく、ご主人や息子さんもそれぞれの経験や視点から提案を出されていたことも印象的でした。家族で話し合うことで、一人では思いつかない視点が加わり、より現実的で実用的な備えにつながります。災害への備えを「お母さん一人の仕事」にしないという点でも、とても理想的な形だと感じました。
記事の最後にあった「現金も必要では?」という息子さんの提案も、とても大切な視点ですね。災害時には停電や通信障害で電子決済が使えなくなることもありますので、ある程度の現金を準備しておくことは安心につながります。ただし、庭の防災ボックスの中に保管するよりは、防犯面も考えて、すぐ持ち出せる場所に分散して保管しておく方が現実的でしょう。例えば、玄関近くの決まった引き出しや、普段持ち出すバッグの中など、「家族全員が場所を知っていて、すぐに持ち出せる場所」をいくつか決めておくといいかもしれないですね。
防災は、一度準備したら終わりではなく、家族の成長や生活の変化に合わせて少しずつ見直していくことが大切です。今回の体験談は、その積み重ねこそが何よりの備えであることを教えてくれる、とても心強い内容でした。(監修:小児科医 新美妙美先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。