「バナナ6本」で倒れた!?ASD・大学院生の息子が一人フィールドワークへ。連日電話で聞く珍事件に母は…
ライター:寺島ヒロ
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大学院生の息子が初めて一人で沖縄へフィールドワークに出発。専門分野の研究なので、本人も楽しみにしており、やる気十分で出発しました。さぞ楽しい旅行になるだろう……と思いきや、待っていたのは食事にまつわる珍事件の連続だったのです。
監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。
現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
研究漬けになれるチャンス!パックのご飯を大量に買う
わが家のASD(自閉スペクトラム症)息子、タケルは大学院生。先日初めて一人で沖縄へフィールドワークに行きました。
いつもは4人家族が暮らす狭いアパートのこたつでパソコンを叩いている息子、本人は「ホテルで一人なら、誰にも邪魔されず作業ができる!」と、張り切って出発しました。
ところが、沖縄は台風シーズン。雨の合間を見ながら現地でデータを集め、ホテルに戻るとひたすら集計作業。思っていた以上に忙しかったようです。
いつもは4人家族が暮らす狭いアパートのこたつでパソコンを叩いている息子、本人は「ホテルで一人なら、誰にも邪魔されず作業ができる!」と、張り切って出発しました。
ところが、沖縄は台風シーズン。雨の合間を見ながら現地でデータを集め、ホテルに戻るとひたすら集計作業。思っていた以上に忙しかったようです。
そして、その忙しさ以上に問題だったのが「食事」でした。
「せっかく研究漬けになれるチャンス、食事のことに煩わされたくない」と思ったタケルは、初日に近くのコンビニで納豆とパックご飯を大量に購入。「これで数日は問題なし!」と、それから3日間、朝昼晩ずっと同じメニューで過ごしていたそうです。
「せっかく研究漬けになれるチャンス、食事のことに煩わされたくない」と思ったタケルは、初日に近くのコンビニで納豆とパックご飯を大量に購入。「これで数日は問題なし!」と、それから3日間、朝昼晩ずっと同じメニューで過ごしていたそうです。
しかし、4日目になると、「なんだか調子が悪い」と感じ始めました。
台風のせいでお惣菜が買えない!
「そうだ!栄養バランスだ!肉と野菜を食べよう」と思い立ち、小さな地元のコンビニに行ったものの、台風で野菜のお惣菜はストックが届かず品切れ。
トンカツはかろうじて一枚買えましたが、ソースもドレッシングも付いていなかったそうです。でも小袋も売り切れ、卓上サイズのボトルを買うのはもったいない。
結局、付け合わせの紅しょうがだけで何とか食べ切ったそうです。
トンカツはかろうじて一枚買えましたが、ソースもドレッシングも付いていなかったそうです。でも小袋も売り切れ、卓上サイズのボトルを買うのはもったいない。
結局、付け合わせの紅しょうがだけで何とか食べ切ったそうです。
「紅しょうが嫌いなんだけどね……」とタケル。
いや、栄養バランスは……?
いや、栄養バランスは……?
バナナ1房食べちゃった事件
翌5日目、やっぱり体調が悪い。しかも低気圧のせいか頭も重い。
そこでタケルは考えました。
「こういう時はカリウムだ!」
そこでタケルは考えました。
「こういう時はカリウムだ!」
息子は生物学部です。知識はあるのです。
そしてちょっと遠くのスーパーでバナナを1房購入。
そしてちょっと遠くのスーパーでバナナを1房購入。
ちょうどその頃、台風が心配だったので様子をうかがうため電話をかけました。
「バナナ6本食べて倒れた」
第一声がこれです……!
「大丈夫、この程度なら寝ていれば治るから」
「バナナ6本食べて倒れた」
第一声がこれです……!
「大丈夫、この程度なら寝ていれば治るから」
息子は、もちろんカリウムを一度に摂りすぎると吐き気やしびれなどの症状が出ることがあるのは知っていました。でも、なぜか食べてしまったのです。知識と体験が結びつかないというのはこういうことなのでしょう。
(重症化すると不整脈や心停止に至ることもあるので、みなさんは本当に気をつけてくださいね)
おにぎりをおかずに白飯を食べる
6日目。体調も戻り、タケルは「今日こそスーパーで総菜を買おう」と決意しました。
ところが、この日も台風の影響で商品が入荷しておらず棚は空っぽ。
結局また件のコンビニへ戻り、おにぎりと白いパックご飯を買い、おにぎり1個分の具をおかずに白飯を食べたそうです。
結局また件のコンビニへ戻り、おにぎりと白いパックご飯を買い、おにぎり1個分の具をおかずに白飯を食べたそうです。
7日目は雨がやみ、ここぞとばかりにフィールドワークを頑張りました。
しかしホテルへ戻る頃には、まためまい。
「これは水分不足だ!」
ホテルで水をたくさん飲んで一安心……と思ったら、今度は足がつったそうです。どうやら塩分まで不足していたようでした。
「これは水分不足だ!」
ホテルで水をたくさん飲んで一安心……と思ったら、今度は足がつったそうです。どうやら塩分まで不足していたようでした。
「どうしたらいい?また足がつるかもしれないから外に出るのは嫌。ルームサービスは非常に高いので頼みたくない」
と電話がかかってきたので
「ホテル内の自動販売機でオニオンスープかスルメを買ってください」
と、伝え、これでなんとか事なきを得ました。
と電話がかかってきたので
「ホテル内の自動販売機でオニオンスープかスルメを買ってください」
と、伝え、これでなんとか事なきを得ました。
何気ない日常を支えてくれるもののありがたさ
そして最終日。
午前中にフィールドワークを終え、午後は空港で仕事の続きをしながら、やっと「まともなごはん」にありつけました。
午前中にフィールドワークを終え、午後は空港で仕事の続きをしながら、やっと「まともなごはん」にありつけました。
その時タケルは
「お水!ありがてえ!」
「味のついた汁もの!!ありがてえ!」
「血糖値をギュッとあげてくれる甘いもの!!ありがてえ!」
「飲食店ってすごいんだ!」
今まで当たり前だと思っていた食環境のありがたさを、しみじみ実感したそうです。
「お水!ありがてえ!」
「味のついた汁もの!!ありがてえ!」
「血糖値をギュッとあげてくれる甘いもの!!ありがてえ!」
「飲食店ってすごいんだ!」
今まで当たり前だと思っていた食環境のありがたさを、しみじみ実感したそうです。
親としては心配の連続でしたが、一人で行程を組んで研究をやり遂げ、失敗を糧にして生活を振り返ることのできた今回の旅は、タケルにとって良い経験になっただろうと思います。
執筆/寺島ヒロ
専門家コメント 室伏佑香先生(小児科医)
初めての一人でのフィールドワークを最後までやり遂げたタケルさん。数々のハプニングも含めて、大きな学びのある旅になりましたね。興味のあることに集中するあまり、空腹や疲労といった身体からのサインを見落としたり、食事の優先順位が下がったりすることは、誰にでもありますよね。神経発達症のある方では、集中の切り替えの難しさや身体感覚への気づきにくさなどから、こうした傾向がより強く表れることがあります。
また、栄養についての知識があっても、その場の状況に合わせて具体的な行動へ結びつけることは、別の難しさを伴います。今回の経験を振り返り、次に向けた工夫につなげられたことも、タケルさんにとって大きな成長ですね。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
また、栄養についての知識があっても、その場の状況に合わせて具体的な行動へ結びつけることは、別の難しさを伴います。今回の経験を振り返り、次に向けた工夫につなげられたことも、タケルさんにとって大きな成長ですね。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。