息子なりの「人とのつながり」があった

改めて考えてみると、息子には「友だちがいない」わけではありませんでした。特別支援学級では、年上のお兄さんやお姉さんにかわいがってもらっています。それに、新しくクラスに加わった低学年の子たちもいます。そして交流級にも、息子のことを気にかけてくれる子がいます。困っていると手助けしてくれたり、息子の様子を見て声をかけてくれたりします。

そして、放課後等デイサービスでは、週1回ではあるものの、一緒に遊べる友だちができました。そう考えてみると、息子の周りには、私が思っていたよりもちゃんと人とのつながりがありました。

ただ、それは私が幼稚園の頃にイメージしていた「友だち」とは少し違います。いつも一緒にいる同級生がいて、放課後に約束して遊ぶ。そんな関係だけが「友だち」なのだと思っていたのかもしれません。息子には、息子なりの人との関わり方がある。

そして、友だちと過ごす時間を増やすことだけが、息子の世界を広げる方法でもない。そう考えると、これまで「1人で過ごしている」と見えていた時間も、少し違って見えてきました。

低学年の頃はゲームをプレイヤーとして遊ぶだけだった息子が、クリエイター側になって自分でゲームをつくろうとする。動画編集や音楽制作にも挑戦するなど、驚くような変化が起こっていました。
1人で過ごす時間の中にも、息子自身が興味を持って動き出す瞬間がある。私は、「友だちが増えれば、息子の世界も広がる」と思っていたのですが、どうやら世界の広がり方は、それだけではないようです。
気づけば遊ぶ側からつくる側へ
気づけば遊ぶ側からつくる側へ
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友だちとの時間も、1人の時間も

今の私は、息子に「もっと友だちをつくってほしい」とは、以前ほど思わなくなりました。

もちろん、これから先、気の合う相手ができたらうれしいです。でも、本人が「週1回でいい」と言っているのに、親が「もっと友だちと過ごそう」と機会を増やし続ける必要もないのかな、と今は考えています。

以前の私は、1人で遊んでいる息子を見て、「世界が狭いのではないか」と心配していました。
でも、ゲームをするだけだった息子がゲームをつくり、動画を撮って編集し、音楽までつくり始めた姿を見ていると、息子の世界では、狭く深く興味を掘り下げていくことが、今とても楽しいんだろうなと思います。

「友だちと遊んでこない」という事実だけを見ると、周りの子と比べて心配になることはあります。それでも今は、友だちと過ごす時間も、1人で好きなことをする時間も、どちらも息子にとって大切なのだと思っています。

親としては、つい「もっと」と思ってしまうけれど。

息子が今大切にしているものを見ながら、その時々のちょうどいい友だちとの距離を、一緒に探していければいいのかなと思っています。

執筆/河野りぬ
息子なりの人との繋がり
息子なりの人との繋がり
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専門家コメント 新美妙美先生(小児科医)

息子さんの友だち付き合いについて、「このままでいいのかな」と迷いながらも、ご本人の様子を丁寧に見つめ直していかれた過程を聞かせてくださりありがとうございます。特別支援学級で過ごすことで同年代の子との関わりが少なくなり、通常学級の子どもたちの「放課後に友だちと遊ぶ」という姿を見聞きすると、親として焦ってしまうお気持ちはよくわかります。
発達特性のあるお子さんでは、同世代の子どもとの関わりが少ないことを心配して、親が「もっと友だちと遊ぶ機会をつくってあげなければ」と考えることがあります。一方で、同年代の子との交流そのものが負担になるお子さんもいます。大切なのは、「友だちが何人いるか」「放課後に友だちと遊ぶか」という形だけでなく、本人が人との関わりをどう感じているのか、安心して楽しく過ごせているかを見ることではないでしょうか。

今回のように、放課後等デイサービスが、ある程度大人の支援を受けながら、気の合う子と出会える場になることもあります。最初は「行きたくない」と言っていた息子さんが、時間をかけてその場に慣れ、友だちと楽しく遊べるようになったことは、とてもよい経験だったと思います。ただ、それを「もっと増やしたい」と本人が思っているとは限らない。週1回で十分という本人の感覚を尊重されたことも、とても大切だと感じました。

また、友だちとの交流だけが「世界を広げる」方法ではありません。ゲームで遊ぶだけだったところから、自分でゲームをつくったり、動画編集や音楽制作に興味を広げたりしている姿は、まさに本人の世界が深く、豊かに広がっている姿でもあります。
無理をして幅広く人と関わることを増やすより、まず本人が楽しいと思えることを十分に楽しみ、そこを深めていく。その過程で、いずれ興味や感覚の合う人と出会うこともあります。「友だち」と呼ぶ関係の形も1つではありません。親が思い描く「友だち」の形に当てはめるのではなく、本人にとって心地よい人との距離を一緒に探していくという筆者さんの姿勢は、とてもすてきだと思いました。(監修:小児科医 新美妙美先生)
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https://h-navi.jp/column/article/35031193
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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