3歳過ぎても色の名前が覚えられない?「言えない」は「分かっていない」ではなかった、周りと比べて焦った私に伝えたいこと

ライター:ぴーたん
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こんにちは。ぴーたんです。長男の太郎は2004年生まれ。耳から聞いたことを覚えておくのが苦手で、のちに発達検査でワーキングメモリに弱さがあることが分かりました。読み書きにも苦手さがあります。
太郎が保育園に通っていた3歳から4歳の頃、なかなか覚えられないものがありました。それは、色の名前です。今回は、周りの子と比べて焦り、太郎に色の名前を教え続けていた頃のお話です。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
子どものこころ専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。

3歳を過ぎても、「色の名前」がなかなか覚えられない

長男の太郎は保育園に通っていた3歳から4歳の頃、色の名前をなかなか覚えられませんでした。

一度教えただけで分かるようになった色は、1つもありません。それでも時間をかけて繰り返すうちに、赤、黒、ピンク、白、茶色は少しずつ言えるようになりました。
ところが、黄色、青、緑はいつまでたっても出てきません。

「これは黄色だよ」

そう教えた直後には答えられても、次の日に同じ色を見せると、また黙り込んでしまいます。
振り返ると、この頃の太郎は、色に限らず名前を覚えることが苦手でした。毎日一緒に過ごしている保育園の友だちの名前も、なかなか覚えられません。

けれど当時の私は、それらを太郎に共通する苦手さとして捉えてはいませんでした。
色のカードを前に、答えられず困っている太郎
色のカードを前に、答えられず困っている太郎
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「同年代の子は信号の色を言えるのに」と焦った私

保育園の送り迎えのとき、ほかの保護者の方と立ち話をすることがありました。ある日、同年代の子が信号の色を言えるという話になりました。

「信号を見ると、『赤だから止まる』『青だから渡る』って言うんですよ」
「もう信号の色が分かるんですね」

何げない会話だったと思います。けれど私は、胸がざわつきました。

その頃私は、一般的には2歳頃から「赤はどれ?」と聞かれて指差しができるようになり、2歳半~3歳頃には色の名前を言える子も増えてくる、という発達の目安を知りました。
もちろん、子どもの発達には個人差があります。それでも当時の私は、「太郎はもう3歳を過ぎているのに」と焦りました。

色の名前は、毎日の生活のなかでも使います。信号の色もその1つです。
周りの子より遅れているのではないか。このまま覚えられなかったらどうしよう。そんな不安が強くなっていきました。
信号を見ながら不安になる母と、あまり気にしていない太郎
信号を見ながら不安になる母と、あまり気にしていない太郎
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色カードで1日1〜2時間練習。それでも覚えられない

その頃から、私は太郎に色を教えることに必死になりました。

太郎が年少の頃には、1日1〜2時間ほど、色の練習に取り組んだ時期もあります。
使ったのは色のカードです。

「これは何色かな?」

カードを1枚ずつ見せて尋ねます。答えられなければ、色の名前をもう一度伝え、しばらくしてから同じカードを見せました。
けれど、何度繰り返しても覚えません。

「さっき教えたばかりなのに、どうして言えないのだろう……」
時間をかけて繰り返せば、いつか覚えられるはず。そう思い、私はますます教えることに力を入れていました。
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色の名前は言えないのに、塗り絵では正しい色を選べた太郎

そんな太郎を見ていて、不思議に思うことがありました。

太郎は、色そのものを見分けられないわけではなかったのです。
テレビで見ていたヒーローの塗り絵を渡すと、キャラクターに合った色を自分で選んで塗っていました。どの部分にどの色を使うのか、間違えることはありませんでした。

塗り方は大ざっぱで、力を入れて濃く塗り、線から大きくはみ出すこともよくありました。
それでも、選んでいる色は合っていました。

色の名前を言うことはできなくても、色の違いは分かり、正しい色を選ぶことはできていたのです。
ヒーローの塗り絵を、正しい色で塗り分けている太郎
ヒーローの塗り絵を、正しい色で塗り分けている太郎
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ワーキングメモリの弱さを知り、過去の困りごとがつながる

のちに専門機関で発達検査を受けた際、太郎は耳から聞いた情報を一時的に記憶・処理することが苦手で、ワーキングメモリ(作業記憶)に弱さがあることが分かりました。

専門書籍や医師のアドバイスなどを通じて知ったのですが、ワーキングメモリの弱さは、耳で聞いた言葉(名称)を記憶にとどめたり、必要な場面で検索して口に出したりする難しさにつながることがあるそうです。
当時、色や友だちの名前をなかなか覚えられなかったことも、こうした太郎なりの特性や言葉の処理の仕方が関係していたのかもしれない、と後になって気づきました。

太郎は、色が見えていなかったわけでも、何も分かっていなかったわけでもありません。目の前の色と耳で聞いた名前を結びつけ、それを覚えておき、尋ねられたときに名前を思い出して答えることが難しかったのではないかと思います。

けれど当時の私は、色の名前を言えないことを「色が分かっていない」と受け取っていました。そして、「言えるようにすること」ばかり考えていたのです。

周りの子と比べて焦っていた当時の私に言いたいこと

いま同じ状況になったら、いきなり色の名前を言ってもらうのではなく、

「赤いカードはどれ?」
「このキャラクターと同じ色はどれかな?」

など、まずは選べるかどうかを見てみます。

言葉で答えることが難しくても、指差しや色選びなら、理解していることを示せるかもしれないからです。
そして、できないことが続いて気になったら、その子が何を理解できていて、どこでつまずいているのかを調べ、保育園の先生方や専門家にも相談すると思います。

太郎は、色の名前を言えなくても、正しい色を選べていました。
あの頃の私は、「言えないこと」に気を取られ、太郎がすでにできていたことを見落としていました。
周りの子と比べて焦っていた自分に、いまなら「言えないことと、分かっていないことは同じではないよ」と伝えたいです。

言えないことと分かっていないことは違う……このときの気づきは、その後、太郎の「数の概念」のつまずきに向き合う際にも、私を支える大切な視点となりました。

執筆/ぴーたん

専門家コメント 藤井明子先生(小児科医)

色を「言える」ということの中にも、視覚的に色を捉える、色とその名前を結びつける、言葉を思い出して答えるなど、いくつもの段階があることが分かりますね。「言えない=分かっていない」と捉えるのではなく、どの段階でつまずいているのかを見ていく視点は、子どもの発達を理解するうえでとても大切です。できないことだけを見るのではなく、その背景にある「できていること」に目を向けることの大切さも、改めて教えていただきました。ありがとうございました。(監修:小児科医 藤井明子先生)
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https://h-navi.jp/column/article/35031137
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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