実は手先が不器用だった娘

無事にスプーンを使ってごはんを食べられるようになった娘ですが、娘がごはんを食べているところを見ると、ごはんを3回すくったうち1回くらいしか口の中に入れられていないことに気が付きました。他の2回はごはんを全部スプーンから落としており、結果としてごはんを3分の1くらいしか食べられていませんでした。
療育(児童発達支援)の先生に相談したところ、注意力が散漫でスプーンに集中していないことと同時に、手首のひねりの動作が苦手なことを指摘されました。
そこでごはんを食べる時にはテレビを消し、「スプーンを見て」と声かけをしたり、お砂場でおもちゃのスプーンを使っておままごとをしたり、お風呂に入るときにお玉でおもちゃやスーパーボールをすくう遊びをしたりして、すくう動きを練習するようにしました。その結果、段々とスプーンも上達していきました。
お玉でおもちゃやスーパーボールをすくう遊びをしたりして、すくう動きを練習するように
お玉でおもちゃやスーパーボールをすくう遊びをしたりして、すくう動きを練習するように
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こども園でもごはんが食べられるように

そしてこども園に入園し、給食が始まりました。また1人だけ緊張してごはんが食べられないのではないかと心配していましたが、加配の先生が横に付いていたものの、特に手伝うことなく1人で給食を食べたとのことで驚きました。しかも娘はそれまで色のついたごはんを嫌がり白いごはんしか食べられなかったのですが、カレーライスを全部食べたと聞きさらに驚きました。やはりみんなと一緒に食べるといろいろ刺激があって良かったのだろうと思いました。今では娘は箸も使えるようになり、小学校で楽しく給食を食べています。
カレーライスを全部食べたと聞き驚き!
カレーライスを全部食べたと聞き驚き!
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専門家コメント 室伏佑香先生(小児科医)

りんさんがスプーンを使えるようになるまでの試行錯誤がとても丁寧に綴られていて、ご家族の方がどれほど悩みながら工夫を重ねてこられたのかが伝わってきました。

スプーンを使って食べるという行動は、一見単純なようですが、実は子どもにとってさまざまな力を必要とします。食べ物に興味を持つこと、食具を手に取ること、食べ物をすくうこと、スプーンをなるべく水平に保ちながら口まで運ぶことなど、いくつもの細かな動作が組み合わさっています。手首を滑らかに動かす力以外に、腕や手、口など自分の身体の位置関係を把握して動きを調整する力なども関わっています。こうした部分に苦手さがあると、「すくった食べ物を途中でこぼしてしまう」「口までうまく運べない」といったことが続き、スプーンの使い方を身につけるまでに時間がかかることがあります。

そのため、一つの動作を細かく分け、まず本人ができる部分だけを経験してもらい、成功体験を積みながら少しずつ自分で行う部分を増やしていくという考え方は、発達支援のさまざまな場面で役立ちます。お砂場でスプーンを使ったり、お風呂でお玉を使っておもちゃやボールをすくったりと、食事以外の場面で「すくう」動きを練習した遊びもとても参考になりますね。

苦手な動きを食事の時間だけに練習するのではなく、遊びの中で楽しく経験することで、本人への負担を減らしながら必要な動きを身につけることができます。こうした遊びは、発達特性の有無にかかわらず、スプーンの練習を始める時期のお子さんにもぜひ取り入れてみたい方法ですね。

発達に特性のあるお子さんのできないことの背景には、単なる「やる気」の問題ではなく、感覚や運動に関わる特徴や、注意の向けにくさ、動作の見通しの持ちにくさなど、お子さんそれぞれの理由が隠れていることがあります。その理由を探りながら、今できるところから少しずつ経験を積ませてあげたいですね。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
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https://h-navi.jp/column/article/35031159
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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