環境変化で眠れない・食べられないASDの娘。服薬開始は不安だったけど…生活を取り戻すための決断とその後

ライター:スパ山
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わが家は転勤族で、子どもたちは環境が大きく変わる経験を何度もしてきました。
今回は、ASD(自閉スペクトラム症)と睡眠障害、場面緘黙のある長女・姉子の服薬について、親として悩んだり迷ったりしながら、投薬治療を始めることになったときのお話です。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
子どものこころ専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。

眠れない、食べられない日々

「お薬を使うことも、1つの選択肢です」 そう言われたとき、私はちょっと身構えました。これまで子どもたちには、「お薬は、つらいときに助けてくれる味方だよ」と伝えてきました。でも、いざ自分の子どもの心や眠りを助ける薬となると、やっぱり不安や戸惑いがありました。

姉子には、学校に行けない時期がありました。 そのころは夜になっても眠れなかったり、眠っても途中で起きてしまったり。眠れない日々と重なるように、食欲もどんどんなくなっていきました。 1日に1食食べるか食べないか。食べられたとしても、小さいおにぎりや、おやつを少し口にしたり、うどんを数本食べるくらい。 もともと小柄で華奢な子だったので、体重が減っていくのを見ているのは、親としてかなり心配でした。
眠れない、食べられない日々が続きました
眠れない、食べられない日々が続きました
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「私がもっと頑張れば」と思っていた

当時通っていた児童精神科では、カウンセリングや心理療法を中心に支援してもらっていました。薬も使いましたが、まずは漢方薬からでした。そうした支援の中で、一時的に少しずつ回復していきました。

ところが、そんな矢先にすぐに転勤……!新しい土地、新しい学校、新しい環境。それでも、やっぱり眠れない。食べられない。そんな日々が続きました。その頃に、服薬による治療を考えることになりました。

正直、悩みました。「お薬に頼るのって、どうなんだろう?」そんなふうにも思ってしまいました。

親として、もっとできることがあるんじゃないか。環境をもっと整えたらいいんじゃないか。声かけを変えたり、発達特性に合わせた関わり方を工夫したり、私がもう少し頑張れば、何か変わるんじゃないか。もしかして、薬で解決しようだなんて軽率なんじゃないか……?そんなことをぐるぐる考えていました。
「お薬に頼るのって、どうなんだろう?」私は正直、悩みました
「お薬に頼るのって、どうなんだろう?」私は正直、悩みました
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それに、薬そのものへの怖さもありました。風邪薬なら、熱が下がる、咳が楽になる、鼻水が止まるなど、「こういうときに、こう助けてくれる薬」というイメージがあります。でも、心や眠りに関わる薬は、私にはよく分かりませんでした。

子どもの心や脳に作用する薬って、どんなものなんだろう?身長や発育に何か影響はないのかな。副作用は?などなど……。今思えば、怖かったのは薬そのものというより、「知らないこと」だったんだと思います。

ここでまさかの「お薬は味方」伏線回収

そんな私とは対照的に、当の姉子は意外と薬に抵抗がありませんでした。もちろん、薬を飲む理由は姉子にもきちんと説明していて、本人も「飲んでみたい」と言ってくれました。お医者さんからは「嫌がったらアイスやゼリーに混ぜてもいいですよ」とアドバイスもいただいていましたが、拍子抜けするくらい、すんなり飲んでくれたんです。

そういえば、わが家では小さい頃から、薬をかなり褒めたたえており……(笑)、
風邪薬を飲んで少し楽になったら、「すっごーい!お薬のおかげだね!」
虫刺されの薬を塗ってかゆみが落ち着いたら、「お薬の力すごいね~!」
そして、頑張って飲めたこと、塗れたことなんかも「ちゃんとできたね!えらい!天才~!」とちょっと大げさなくらい褒めていました。

「お薬は、痛かったり、しんどかったりするときに、自分を助けてくれる味方なんだよ」そんなふうに伝えてきたことが、もしかしたら薬への抵抗の少なさにつながっていたのかな、と思います。
小さい頃からの積み重ねがあって……!?
小さい頃からの積み重ねがあって……!?
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飲み始めたからといって、翌日から見違えるほど元気になったわけではありません。でも、少しずつ調子のいい日が増えていきました。そして、当初の目的だった「食べる」「眠る」という生活も、少しずつ取り戻していき、減ってしまった体重も、ギリギリではありますが標準の範囲まで戻すことができました。

私は、これでよかったんだなと思うようになりました。もちろん、薬だけで何もかも解決したわけではありません。環境を整えることも、本人に合った関わり方を考えることは、今でも大切なことです。でも、「親がもっと頑張る」ことと「お薬の力を借りる」ことは、どちらか1つを選ばなければいけないものではなかったんだと思います。
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薬があることで、ちょっと心強かった

もう1つ、服薬していてよかったなと思ったのが、宿泊学習や帰省の旅行など、環境が変わるときでした。薬を持って行ける。それだけで「何かあっても大丈夫か」と私は少し安心できました。

実際にどれくらい薬の効果があったのかは、正直なところ分かりません。もしかしたら、私の気休めだったのかもしれません。姉子にとっても、「お薬があるから大丈夫」と思えることが、ちょっとした心の支えになっていたんじゃないかなと思います。
宿泊学習や帰省の旅行など環境が変わるときも「お薬があるから」と私は少し安心できました
宿泊学習や帰省の旅行など環境が変わるときも「お薬があるから」と私は少し安心できました
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あのころの私は、「服薬を始める」ということにすごく悩みました。でも今振り返ると、薬に頼ったというより「食べて、眠る」という、人間としての生活を取り戻すために、薬にも力を貸してもらったんだと思います。

薬は、魔法ではありません。それでも、必要なときに自分を助けてくれる味方。子どもたちにそう伝えてきた私自身が、姉子の服薬を経験してやっとその意味を実感できたような気がしています。
執筆/スパ山

専門家コメント 藤井明子先生(小児科医)

コラムを拝読し、「薬への怖さは、実は『知らなかったこと』から生まれていた」という気づきが、とても印象に残りました。漠然とした不安から服薬を避けるのではなく、説明を聞き、姉子さん自身も納得したうえで始められたことは、とても大切なことだと思います。お薬ですべてが解決するわけではありませんが、生活をよりスムーズに過ごすための選択肢の1つです。いざという時に頓服として使えるお薬があることや、「薬があるから大丈夫」と思えることが安心につながるお子さんもいます。今まさに内服治療に不安を感じている親御さんにとっても、薬との付き合い方を考えるきっかけになる、とても参考になるコラムだと思いました。ありがとうございました。(監修:小児科医 藤井明子先生)
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https://h-navi.jp/column/article/35031162
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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