「あと1本だけ」が止まらない?子どもも大人も注意したいショート動画依存【専門家コラム】

ライター:今高城治
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獨協医科大学 小児科学教授の今高誠治先生による解説企画。デジタル機器の普及に伴い、子育ての悩みも大きく変化しています。小児科領域でゲーム依存やデジタル機器の影響について研究されている今高先生に、最新の医学的知見や科学的データをもとに、デジタル時代の子育てのヒントを執筆いただきます。

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執筆: 今高城治
獨協医科大学医学部小児科学教授 Imataka Lab/GAME-Fプロジェクト代表
獨協医科大学医学部小児科学教授。医学博士、MBA。子どもの発達や神経疾患の診療・研究に携わり、ゲーム・SNS・生成AIなど子どもを取り巻くデジタル環境についてGAME-F(https://game-f.org/)を提唱。研究室サイトhttps://imataka.labby.jp/

テレビでは「来週まで待つ」ことができた

「あと1本だけ」と思っていたのに、気がつけば30分、1時間――。Instagramのリール、TikTok、YouTube Shortsなど、短時間で次々と視聴できる「ショート動画」を見ていて、そんな経験はないでしょうか。いま私は、子どもだけでなく大人も陥る「ショート動画依存」という問題を知っておく必要があると考えています。

少し昔のテレビを思い出してみましょう。連続ドラマの最後には「次回予告」がありました。主人公に何かが起こりそうな場面で終われば、当然、続きが気になります。しかし、どれほど気になっても、続きを見るには基本的には翌週まで待たなければなりませんでした。映画の予告編も同じです。面白そうな場面を見て「この映画を見たい」と思っても、同じような刺激が数秒おきに際限なく繰り返されるわけではありません。いわば予告を見ることは、それ自体が一つの「楽しみな情報」でした。

ところが、スマートフォンのショート動画では事情が大きく異なります。画面を指で一度スワイプすれば、数秒後には次の動画が現れます。さらに、視聴履歴や反応などをもとに、その人が興味を持ちそうなコンテンツが次々と提示されます。いわゆる「アテンション・エコノミー」という、私たちの注意や時間そのものが経済的な価値を持つ仕組みです。

特に、ドラマや物語の一部分だけを見せ、「このあとどうなるの?」というところで終わるショート動画コンテンツがたくさん流れてきます。一部は無料ですが、範囲を超えて続きをもっと見ようとすると課金が必要になる仕組みです。

これは単に「動画が短くなった」だけではありません。いつでも手元にあり、スワイプすればすぐ次を見られるスマートフォンの特性と、「続きが気になる」という人間の心理を組み合わせた、一つのビジネスモデルともいえます。動画制作会社や配信事業者にとっては、視聴者により長く見てもらい、その一部を有料コンテンツへ導くことが収益につながります。

テレビでは「次回を来週まで待つ」ことができた。スマートフォンでは「続き」が数秒後に目の前に現れる。この違いを認識することは、脳科学を考えるうえでとても重要な知見だと私は考えています。

「未来」よりも「目の前の報酬」を選んでしまう?

2026年9月に『Computers in Human Behavior』で報告された中国の研究によると、平均15.4歳の青年1,567人を対象として、6か月ごとに3回、1年間にわたる追跡調査が行われました。研究者らが注目したのは、

  • ショート動画依存(Short-Form Video Addiction:SFVA)
  • 未来を考える力(Future Time Perspective)
  • 学習上の失敗や困難から立ち直る力(Academic Buoyancy)

の3つの関係です。その結果、ショート動画への依存傾向が強いことは、その後の学習上の立ち直る力の低下を予測し、その関係には「未来を考える力」の低下が関わっていました。

もちろん、観察研究ですから、ショート動画が直接これらの能力を低下させたと断定することはできません。しかし、ショート動画との付き合い方を考えるうえで興味深い知見であり、特に小児神経科医として注目したいのが、この「未来を考える力」です。

子どもから青年期は、目の前の欲求を調整して、「明日のために今日は早く寝よう」「試験があるから今は勉強しよう」と、現在の行動を将来の目標につなげる力を育てている時期でもあります。一方、ショート動画では数秒から数十秒という短い間隔で、次の刺激や楽しみが提示されます。「明日のために今はやめる」という選択と、「あと1本だけ見る」という目の前の報酬が、同じスマートフォンの画面の前で競争しているとも考えられるのです。

特に注意したいのは「夜」

医学的にもう一つ見逃せないのが、睡眠です。2024年に報告された中国の高校生1,629人を対象とした研究では、ショート動画依存傾向と睡眠の問題との間に有意な関連が認められ、社会的不安がその関係の一部を媒介している可能性も示されました。横断研究のため因果関係を証明するものではありませんが、ショート動画の過剰利用と睡眠との関係を考えるうえで重要な報告です。

夜、ベッドの中で「あと1本だけ」を繰り返せば、就寝時刻そのものが後ろにずれていきます。翌朝起きられない、学校で眠い、集中できない、イライラする――。こうなると、問題はもはや「何分スマートフォンを見たか」だけではありません。睡眠、学校生活、仕事、家族との時間など、日常生活の機能そのものに影響が及んでいます。
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「ショート動画依存」を子どもだけの問題にしない

ここで強調したいのは、これは子どもだけの問題ではないということです。電車の中、待合室、そして寝る前のベッド。私たち大人も、無意識にスマートフォンを開き、ショート動画を次々と見ていることがあります。大人がスマートフォンを見続けながら、子どもだけに「スマホをやめなさい」と言っても、なかなか説得力はありません。また、ショート動画そのものを悪者にする必要もありません。楽しい動画もあれば、短時間で新しい知識を得られる有益な動画もあります。大切なのは、自分で「見る・やめる」を選択できているかです。

「あと1本だけ」が何度も続く。寝る時間になってもやめられない。宿題や仕事を始められない。家族との会話より画面を優先してしまう。そんなときには、単なる「スマートフォンの見過ぎ」ではなく、「ショート動画依存」という視点から、自分たちの生活を見直してみることも必要ではないでしょうか。

「寝る前には見ない」「スマートフォンを寝室に持ち込まない」「食事中は家族全員がスマートフォンを置く」。まずは大人も子どもも一緒にできることから始めてみてください。これは子どもの「意志が弱い」から起こる問題ではありません。「もう少し見たい」と感じる人間の心理と、スマートフォンの即時性、そして私たちの注意を引きつけようとするビジネスの仕組みの中で、私たちは動画を見ています。だからこそ、まずその仕組みを知ることが大切です。

私たちがショート動画を選んでいるのか、それともショート動画に私たちの時間が選ばされているのか。昨今のショート動画市場のビジネス戦略を勘案すると、「あと1本だけ」の先に何があるのかを、大人も子どもも、一緒に考える時期に来ていると思います。
Xiong G, et al. No future vision, no present perseverance: How short-form video addiction erodes academic buoyancy in adolescents. Computers in Human Behavior. 2026;182:109023.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0747563226001202
Jiang L, Yoo Y. Adolescents' short-form video addiction and sleep quality: The mediating role of social anxiety. BMC Psychology. 2024;12:369.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38943173/
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