「曖昧」が許せなかった息子。変えてくれたのは保育士さんでした

ライター:鈴木希望
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周囲の方のご理解なくしては円滑な日常を送れない、アスペルガーの息子とわたし。困ったときはすぐに助けを求めるようにしています。でも元はというと、親子揃って不器用で人に頼るのが不得手。そんなわたしたちの心を、柔らかくしてくださった保育士さんの話です。

アスペルガー症候群の6歳息子、ハル。

現在小学1年生ですが、話は保育園時代にさかのぼります。

迎えに行ったある日、担任のY先生が

「お聞きしたいことがあるのですが」と
私に声をかけてこられました。

「ハル君は
“物事には白黒以外の選択肢もある”とか
“例外もある”ということを
理解するのが苦手なんですよね?

実は今日ですね…」

白黒つけたがる息子

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11015204680
給食に出てきた子どもたちに人気のデザート、『みかんプリン』

それはみかん風味のミルクをゼラチンで固めたものだそう。

そのとき、

「ミルクを使っているからこれはプリン」派と
「ゼラチンの味がするからこれはゼリー」派で

議論が始まったそうです。


Y先生が栄養士さんに確認した結果

ゼラチンは使っているけど、
メニューの名前は『みかんプリン』だ、ということがわかりました。


「そうだったんだ」と
ほぼ全員が納得するなか
しかめっ面の子がひとり…

そう、息子です。

「ゼリーって名前は
ゼラチンで固めたものだからなんでしょ?
ゼラチンを使っているのに
プリンだなんておかしいよ!


…頑として譲らずエキサイトする姿が容易に想像できました。

先生:「ハル君が納得できるような
説明ができなくて……」


わたし:「言いそうですね、うちの子。
ご迷惑をおかけしました。

そうですね…
例え話をしてから本題に誘導する
納得する場合が多いですね」

先生:「ありがとうございます!
ハル君にはわたしもそんなふうに伝えてみます!」

「りんごってどんな色で、どんな形?」息子と一緒に考えてみた

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その夜わたしは、息子に質問してみました。


わたし:「ハル、いきなりなんだけど
りんごを思い浮かべてくれるかな?
それはどんな色で、どんな形をしている?

ハル:「えっとね、赤くて丸い!

わたし:「ありがとう。でもさ、
りんごには緑色や黄色のものもあるよね?」

ハル:「あるね」

わたし:「切って、
皮をむいた状態で出てくるかも知れない」

ハル:「食べるとき、
そうやってでてくることあるね」

わたし:「そうだね。だからさ、
“りんご”って聞いても
赤くて丸いものを思い浮かべる人ばかりだとは限らないの。

緑色だったり黄色だったり、
皮をむいたり切ったものを思い浮かべる人もいるんだよ」


そこで何かに気づいたらしく、パチンと手を合わせてからわたしの顔を見つめ

……「あ!」

ハル:「同じことでも、
自分と違うふうに考える人もいる

ってことだ!」

わたし:「うん。
もしハルの意見を聞いた人に
“違う!りんごは黄色で半分に切ってあるやつだ!
赤くて丸いなんておかしい!”
って言われたら、どう思う?」


ハル:「悲しい。
だって、どっちもりんごじゃん」

わたし:「悲しいね。
……あのね、
“赤信号は止まれの色”っていうふうに
決まっていることもあるけど、

そうじゃないものもたくさんあるんだよ」

“みんながそうだから、何となく”が苦手なアスペルガー症候群の息子。

困惑したような表情でうつむき
ゆっくりと口を開きました。

ハル:「どうしたら
その違いがわかるの?


わたし:「…わからなくなったらさ
保育園ならY先生、
そうじゃないときはわたしに聞いて。

ゆっくり違いを覚えていこうよ」

『みかんプリン事件』再び!

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10323002319
「お母さん、聞いてください!すごい事件があったんですよ!」

“事件”だなんて物騒な単語を使いながらも、Y先生が顔をほころばせていたのは、卒園を間近に控えた3月でした。

また『みかんプリン事件』が勃発したのだそうです。

「プリンだよ!ミルクを使ってるもん!」
「たまごが入っていないからプリンじゃない!ゼリーだ!」

やはりプリン派もゼリー派も譲らず。
またもや言い合いでヒートアップしそうだったので、Y先生が止めに入ろうとしたとき、誰かがボソッとつぶやきました。

「どっちでもいいじゃん…」と。

それは、
言い合いに加わらず、ずっと黙っていた誰か。

前回は人一倍ヒートアップし、意見していた誰か。

そう、うちの息子、ハルでした。
それから息子は、こう続けたのだそうです。

「名前を決めるのは簡単だけど、
食べてゼリーだって思う人もいて、
プリンだって思う人もいるでしょ?

その人が
思ったことを大事にすればいいじゃん
思ったことは、その人の絶対じゃん。」


先生:「すごいですよね!
今まではどちらかに決めないと辛かったハル君が
そんなふうに言ってくれるなんて!

しかも間合いが絶妙で
わたし吹き出してしまって、
みんなも笑ってて…

みんなで「そうだね、どっちでもいいよね」って…」
次ページ「「どっちでもいいじゃん」言えたのは、先生が不安を消してくれたから」

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