「曖昧」が許せなかった息子。変えてくれたのは保育士さんでした
ライター:鈴木希望
周囲の方のご理解なくしては円滑な日常を送れない、アスペルガーの息子とわたし。困ったときはすぐに助けを求めるようにしています。でも元はというと、親子揃って不器用で人に頼るのが不得手。そんなわたしたちの心を、柔らかくしてくださった保育士さんの話です。
アスペルガー症候群の6歳息子、ハル。
現在小学1年生ですが、話は保育園時代にさかのぼります。
迎えに行ったある日、担任のY先生が
「お聞きしたいことがあるのですが」と
私に声をかけてこられました。
「ハル君は
“物事には白黒以外の選択肢もある”とか
“例外もある”ということを
理解するのが苦手なんですよね?
実は今日ですね…」
現在小学1年生ですが、話は保育園時代にさかのぼります。
迎えに行ったある日、担任のY先生が
「お聞きしたいことがあるのですが」と
私に声をかけてこられました。
「ハル君は
“物事には白黒以外の選択肢もある”とか
“例外もある”ということを
理解するのが苦手なんですよね?
実は今日ですね…」
白黒つけたがる息子
給食に出てきた子どもたちに人気のデザート、『みかんプリン』。
それはみかん風味のミルクをゼラチンで固めたものだそう。
そのとき、
「ミルクを使っているからこれはプリン」派と
「ゼラチンの味がするからこれはゼリー」派で
議論が始まったそうです。
Y先生が栄養士さんに確認した結果
ゼラチンは使っているけど、
メニューの名前は『みかんプリン』だ、ということがわかりました。
「そうだったんだ」と
ほぼ全員が納得するなか
しかめっ面の子がひとり…
そう、息子です。
「ゼリーって名前は
ゼラチンで固めたものだからなんでしょ?
ゼラチンを使っているのに
プリンだなんておかしいよ!」
…頑として譲らずエキサイトする姿が容易に想像できました。
先生:「ハル君が納得できるような
説明ができなくて……」
わたし:「言いそうですね、うちの子。
ご迷惑をおかけしました。
そうですね…
例え話をしてから本題に誘導すると
納得する場合が多いですね」
先生:「ありがとうございます!
ハル君にはわたしもそんなふうに伝えてみます!」
それはみかん風味のミルクをゼラチンで固めたものだそう。
そのとき、
「ミルクを使っているからこれはプリン」派と
「ゼラチンの味がするからこれはゼリー」派で
議論が始まったそうです。
Y先生が栄養士さんに確認した結果
ゼラチンは使っているけど、
メニューの名前は『みかんプリン』だ、ということがわかりました。
「そうだったんだ」と
ほぼ全員が納得するなか
しかめっ面の子がひとり…
そう、息子です。
「ゼリーって名前は
ゼラチンで固めたものだからなんでしょ?
ゼラチンを使っているのに
プリンだなんておかしいよ!」
…頑として譲らずエキサイトする姿が容易に想像できました。
先生:「ハル君が納得できるような
説明ができなくて……」
わたし:「言いそうですね、うちの子。
ご迷惑をおかけしました。
そうですね…
例え話をしてから本題に誘導すると
納得する場合が多いですね」
先生:「ありがとうございます!
ハル君にはわたしもそんなふうに伝えてみます!」
「りんごってどんな色で、どんな形?」息子と一緒に考えてみた
その夜わたしは、息子に質問してみました。
わたし:「ハル、いきなりなんだけど
今りんごを思い浮かべてくれるかな?
それはどんな色で、どんな形をしている?」
ハル:「えっとね、赤くて丸い!」
わたし:「ありがとう。でもさ、
りんごには緑色や黄色のものもあるよね?」
ハル:「あるね」
わたし:「切って、
皮をむいた状態で出てくるかも知れない」
ハル:「食べるとき、
そうやってでてくることあるね」
わたし:「そうだね。だからさ、
“りんご”って聞いても
赤くて丸いものを思い浮かべる人ばかりだとは限らないの。
緑色だったり黄色だったり、
皮をむいたり切ったものを思い浮かべる人もいるんだよ」
そこで何かに気づいたらしく、パチンと手を合わせてからわたしの顔を見つめ
……「あ!」
ハル:「同じことでも、
自分と違うふうに考える人もいる
ってことだ!」
わたし:「うん。
もしハルの意見を聞いた人に
“違う!りんごは黄色で半分に切ってあるやつだ!
赤くて丸いなんておかしい!”
って言われたら、どう思う?」
ハル:「悲しい。
だって、どっちもりんごじゃん」
わたし:「悲しいね。
……あのね、
“赤信号は止まれの色”っていうふうに
決まっていることもあるけど、
そうじゃないものもたくさんあるんだよ」
“みんながそうだから、何となく”が苦手なアスペルガー症候群の息子。
困惑したような表情でうつむき
ゆっくりと口を開きました。
ハル:「どうしたら
その違いがわかるの?」
わたし:「…わからなくなったらさ
保育園ならY先生、
そうじゃないときはわたしに聞いて。
ゆっくり違いを覚えていこうよ」
わたし:「ハル、いきなりなんだけど
今りんごを思い浮かべてくれるかな?
それはどんな色で、どんな形をしている?」
ハル:「えっとね、赤くて丸い!」
わたし:「ありがとう。でもさ、
りんごには緑色や黄色のものもあるよね?」
ハル:「あるね」
わたし:「切って、
皮をむいた状態で出てくるかも知れない」
ハル:「食べるとき、
そうやってでてくることあるね」
わたし:「そうだね。だからさ、
“りんご”って聞いても
赤くて丸いものを思い浮かべる人ばかりだとは限らないの。
緑色だったり黄色だったり、
皮をむいたり切ったものを思い浮かべる人もいるんだよ」
そこで何かに気づいたらしく、パチンと手を合わせてからわたしの顔を見つめ
……「あ!」
ハル:「同じことでも、
自分と違うふうに考える人もいる
ってことだ!」
わたし:「うん。
もしハルの意見を聞いた人に
“違う!りんごは黄色で半分に切ってあるやつだ!
赤くて丸いなんておかしい!”
って言われたら、どう思う?」
ハル:「悲しい。
だって、どっちもりんごじゃん」
わたし:「悲しいね。
……あのね、
“赤信号は止まれの色”っていうふうに
決まっていることもあるけど、
そうじゃないものもたくさんあるんだよ」
“みんながそうだから、何となく”が苦手なアスペルガー症候群の息子。
困惑したような表情でうつむき
ゆっくりと口を開きました。
ハル:「どうしたら
その違いがわかるの?」
わたし:「…わからなくなったらさ
保育園ならY先生、
そうじゃないときはわたしに聞いて。
ゆっくり違いを覚えていこうよ」
『みかんプリン事件』再び!
「お母さん、聞いてください!すごい事件があったんですよ!」
“事件”だなんて物騒な単語を使いながらも、Y先生が顔をほころばせていたのは、卒園を間近に控えた3月でした。
また『みかんプリン事件』が勃発したのだそうです。
「プリンだよ!ミルクを使ってるもん!」
「たまごが入っていないからプリンじゃない!ゼリーだ!」
やはりプリン派もゼリー派も譲らず。
またもや言い合いでヒートアップしそうだったので、Y先生が止めに入ろうとしたとき、誰かがボソッとつぶやきました。
「どっちでもいいじゃん…」と。
それは、
言い合いに加わらず、ずっと黙っていた誰か。
前回は人一倍ヒートアップし、意見していた誰か。
そう、うちの息子、ハルでした。
それから息子は、こう続けたのだそうです。
「名前を決めるのは簡単だけど、
食べてゼリーだって思う人もいて、
プリンだって思う人もいるでしょ?
その人が
思ったことを大事にすればいいじゃん。
思ったことは、その人の絶対じゃん。」
先生:「すごいですよね!
今まではどちらかに決めないと辛かったハル君が
そんなふうに言ってくれるなんて!
しかも間合いが絶妙で
わたし吹き出してしまって、
みんなも笑ってて…
みんなで「そうだね、どっちでもいいよね」って…」
“事件”だなんて物騒な単語を使いながらも、Y先生が顔をほころばせていたのは、卒園を間近に控えた3月でした。
また『みかんプリン事件』が勃発したのだそうです。
「プリンだよ!ミルクを使ってるもん!」
「たまごが入っていないからプリンじゃない!ゼリーだ!」
やはりプリン派もゼリー派も譲らず。
またもや言い合いでヒートアップしそうだったので、Y先生が止めに入ろうとしたとき、誰かがボソッとつぶやきました。
「どっちでもいいじゃん…」と。
それは、
言い合いに加わらず、ずっと黙っていた誰か。
前回は人一倍ヒートアップし、意見していた誰か。
そう、うちの息子、ハルでした。
それから息子は、こう続けたのだそうです。
「名前を決めるのは簡単だけど、
食べてゼリーだって思う人もいて、
プリンだって思う人もいるでしょ?
その人が
思ったことを大事にすればいいじゃん。
思ったことは、その人の絶対じゃん。」
先生:「すごいですよね!
今まではどちらかに決めないと辛かったハル君が
そんなふうに言ってくれるなんて!
しかも間合いが絶妙で
わたし吹き出してしまって、
みんなも笑ってて…
みんなで「そうだね、どっちでもいいよね」って…」