園や学校の先生にわかってほしい。障害のある子を持つ親の気持ち

ライター:立石美津子
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幼稚園や保育園の先生が「あの保護者はいくら話をしても子どもの障害を認めようとはしない」と嘆いていることがあります。でも、先生は他人です。自身の子どもが「発達障害かも?」と言われたらどう感じるでしょう?そもそも、先生と親とでは受け止める気持ちのレベルが違うと思うのです。

こんにちは。『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子です。

私は講師として幼稚園、保育園の講演会に招かれることがあります。そんなとき私が息子の障害を受け入れている態度をみて、先生たちに次のように言われることが度々あります。

「立石さんのように子どもの障害を素直に受け入れてくれる親ならばいいけれども、園側からいくら話をしても『そんなことはありません!うちの子は普通です。個性が強いだけ!』と言い張って、聞く耳をもってくれない保護者がいて困っているんです・・・・」

私は「ちょっと待った!」と言いたいんです。

当事者の親の気持ち

さて、私が園で行った講演会のお題は“発達障害児の親の気持ちセミナー“でした。
なぜ、私がそんなテーマで呼ばれるのかって?
それは、当事者の親であるからこそ伝えられることがあるからです。

私は単なるおばさんです。臨床心理士でもなければ児童精神科医でもありません。
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もし、あるとしたら
・特別支援学校の教員免許を持っていて少し知識がある
・子どもが自閉症である
・幼稚園、保育園の現場を知っている

この3点だけなんです。でも、これは重要なポイントで専門家では伝えられない現実を伝えることが出来ると自負しています。

現場で働く園の先生方が“発達障害児とは”の基礎知識を持つことは大事です。でも、これらはネットや書籍を読めばわかること。わざわざ講演会に出かける必要もありません。

現場が知りたいのは次の2点
・保育中、集団行動をとれない子にどう対処すればいいか
・保護者にどう伝えればいいか

だと感じています。

親が障害を受け入れられない理由

障害を素直に受け入れる親は「受け入れざるを得ないほど子どもの障害がある程度、重い」のだと思います。

ですから、3歳で幼稚園に入園するずっと以前に、例えば1歳の頃に「目が全く合わない、抱っこしても反りかえって拒否する」など顕著な状態があって、既に病院で診断を受けていたりします。

そして、幼稚園に入園したときにはもう障害を受け入れていて「うちの子は自閉症なので宜しくお願いします」という状態になっています。

こうなると実に園側も対処しやすくなります。

例えば、他の保護者から「躾のできていない園児がいてうちの子が集中できない」とクレームを受けた場合も「どうしてウロウロ動き回るのか」を園側からきちんと説明して納得してもらうことができるからです。

けれども、軽度の子どもを持つ親は、定型発達児により近い我が子の障害を受容できない気持ちになっています。

「今は集団行動がとれなくて言葉もうまく喋れないけれども、頑張らせればなんとか皆と同じように出来るようにきっとなるに違いない」と期待していたりします。
実際、1~2歳の軽度の子どもを病院に連れて行っても「まだわからないのでしばらく様子を見ましょう」なんて医師から言われて、打つ手もなく、ほおり出され悶々とした日々を過ごしている人も多くいます。

ですから、だから園から言われてもなかなか受け入れるのは難しいのです。

園の先生は親の気持ちを理解してほしい

お腹を痛めて生んで、子どもの将来に夢や希望を持っていたのに、「なんだか他の子どもと違う・・・どうしてうちの子だけ遅れているんだろう・・・」

そんな気持ちでいるとき「お子さんの行動が気になりますので一度、専門機関に行ってみてください」と言われたらどうでしょうか。

もし、自分の子どもがそう言われたら、親としてどう感じるかわかってほしいのです。

「はい、そうですか。わかりました」と素直に受け入れられないと思います。だから、「あの親は理解してくれない」と嘆いてほしくありません。

家庭内の背景を知る

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=30700000068
家庭内ではどうなっているのか背景を知ることも大切です。

ママはお嫁さんとして、育てにくい子どもに対して日々、悪戦苦闘しています。それなのに夫や姑からこんな暴言を浴びせられているかもしれないのです。

夫「お前の躾の仕方が悪いから、園で集団行動がとれないんだ」
姑「○○家にこんな子どもが生まれるわけがない。あんたの家の血筋が悪い」

母親は外にも家庭内にも居場所がなく孤立無援状態。実際、鬱になってしまって精神安定剤を服用している人もいます。離婚してしまう人もいます。

そこへ園の先生から同じようなことを言われたら、奈落の底へ落とされた気持ちになってしまいますよね。

子どもの成長を長期的に見てほしい

園の先生たちの中には保護者との関係の悪化を恐れて、子どもの問題を先送りにする方もいるように感じます。

幼稚園・保育園・・・小学校にいけば何とかなるだろう
小学校・・・中学にいけば何とかなるだろう
中学・・・同上
高校・・・就労させる、そのための訓練に必死

このように分断されています。実際、幼稚園、保育園の先生が園児のことが気になっても小学校に見に行くことは出来ません。

でも、子どもの長い人生を見据えて今を支援してほしいのです。

学校は18歳までだが、人生は長い

学校は18歳で終了します。けれども、高等部を卒業してからの人生が長いのです。

88歳まで生きるとしたら70年もあります。先生も親もその時はもうこの世にはいないのです。

さて、企業には法定雇用率があるので障害者を雇います。

けれども就労先の人たちがどれくらい”自閉症”について正しい理解をしているでしょうか。

“鬱病”と混同している人もいます。そして、孤立し虐められ退職してしまう人がとても多い現実があります。

「就労!就労!」のスローガンを挙げて特別支援学校高等部も次のような時間割で訓練の日々ですが「就労させて、はい、さようなら」としないでほしいのです。

保護者にこんな言葉をかけていませんか?

幼稚園、保育園の先生方、ついついこんな曖昧な助言をしていないでしょうか?

「長い目でみましょう。しばらく様子をみましょう。」
“長い目で見る”はとても便利な言葉。長い目で見るのならば、将来を見据えて幼児期から特性に合った支援をしなければならないのに・・・

「大器晩成タイプですから。」
「そのうち出来るようになりますから」は便利な言葉。でも、大器晩成”する子はきちんと支援されてきた子ども。自然にスキルは身に付かず、時間ばかりがいたずらに過ぎて行く。

「子どもはみんなそういうものです。」
“個性”って便利な言葉。個性・性格では片付けられない特性が確かにあるのに、この言葉でくくってしまう。
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