ウェクスラー式知能検査(WISC・WAIS)の内容や費用など【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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ウェクスラー式知能検査は、児童期や成人期における代表的な知能検査のひとつです。ウェクスラー式知能検査にはWIPPSI(ウィプシ)・WISC(ウィスク)・WAIS(ウェイス)といった種類があり、それぞれ対象や検査内容などが異なっています。
今回は年齢ごとに異なる検査の種類や検査の受け方、結果の活用方法など、その概要を分かりやすくご紹介します。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。
目次

ウェクスラー式知能検査とは

ウェクスラー式知能検査は、1939年刊行のウェクスラー・ベルビュー知能検査を起源とする、70年以上の歴史を持つ知能検査です。この検査は、児童期や成人期において、現在日本でよく使われている知能検査のひとつです。

ウェクスラー式知能検査には、年齢に応じて幼児用のWPPSI(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence)、児童版のWISC(Wechsler Intelligence Scale for Children、通称ウィスク)、成人用のWAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale、通称ウェイス)の3種類があります。いずれも、専門家(公認心理師や臨床心理士など)が受検者と1対1で行う個別式の検査です。

知能検査の活用方法

ウェクスラー式などの知能検査は、知的発達の程度を測ることを目的とするほか、対象者の知的発達における得意なこと・苦手なことを知るために実施されることもあります。保護者が子どもの得意不得意を理解することにつながるだけでなく、年齢などによっては子ども自身が自分の得意不得意を理解することにもつながります。

得意を活かして苦手さをフォローするにはどうしたらよいか、得意を活かしより力を発揮できる環境設定のためには何が必要かなど、学校や家庭での支援において手立ての精度を上げるために活用されることもあります。

必要に応じて、数値や傾向などが書かれた検査報告書をもらうことができます(※費用については、受検する施設ごとに異なります)。

ウェクスラー式知能検査の対象年齢や検査内容

ウェクスラー式知能検査には対象年齢などにより以下の3つの種類があります。
・WIPPSI(2歳6ヶ月〜7歳3ヶ月)
・WISC(5歳0ヶ月~16歳11ヶ月)
・WAIS(16歳0ヶ月~90歳11ヶ月)

WISC(ウィスク)とは

WISCは、5歳0ヶ月~16歳11ヶ月の子どもを対象としています。検査にはWISC-ⅣまたはWISC-Ⅴを使用します(機関によって異なります)。
ここでは2021年に発行されたWISC-Ⅴについて紹介します。

◆WISC-Ⅴの基本情報
・適用範囲:5歳0ヶ月~16歳11ヶ月
・実施時間:45分~
・実施機関:公的機関(教育支援センター、児童相談所、学校など)、医療機関(児童精神科、小児科)、民間のカウンセリングルームなど
・検査費用:検査を取る機関によってさまざま
・保険適用の可否: 保険適用のこともある
・診断書もしくは報告書を書いてもらう場合には、別途料金がかかることがあります。
◆WISC-Ⅴの検査内容
全般的な知能を表す合成得点と特定の領域の知的能力を表す5つの主要指標得点、それに5つの補助指標得点を算出することができます。

1.全検査IQ
IQ100を同年齢集団の平均としたとき、知的発達の水準がどの程度であるか。

2.主要指標
・言語理解指標(VCI)
・視空間指標(VSI)
・流動性推理指標(FRI)
・ワーキングメモリー指標(WMI)
・処理速度指標(PSI)

3.補助指標
・量的推理指標(QRI)
・聴覚ワーキングメモリー指標 (AWMI)
・非言語性能力指標(NVI)
・一般知的能力指標(GAI)
・認知熟達度指標(CPI)

WAIS(ウェイス)とは

WAISの適用年齢は、16歳0ヶ月~90歳11ヶ月です。検査ではWAIS-ⅢまたはWAIS-Ⅳを使用します(機関によって異なります)。
ここでは2018年に発行されたWAIS-Ⅳについて紹介します。

◆WAIS-Ⅳの基本情報
・適用範囲: 16歳0ヶ月~90歳11ヶ月
・実施時間: 60分~90分
・実施機関: 医療機関(精神科)、大学の相談室、民間のカウンセリングルームなど
・検査費用:検査を取る機関によってさまざま
・保険適用の可否: 保険適用のこともある
※診断書もしくは報告書を書いてもらう場合には、別途料金がかかることがあります。
◆WAIS-Ⅳの検査内容
WAIS-Ⅳは成人向けの知能検査で、全般的な知能を表す合成得点と、特定の領域の知的機能を表す4つの合成得点を産出することができます。全部で15の検査があり、基本検査が10、補助検査が5となっています。

1.全検査IQ
IQ100を同年齢集団の平均としたとき、知的発達の水準がどの程度であるか。

2.指標得点(4つ)
・言語理解指標(VCI)
・知覚推理指標(PRI)
・ワーキングメモリー指標(WMI)
・処理速度指標(PSI)
それぞれに基本検査と補助検査があります。
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ウェクスラー式検査を受けたいときは? 受検場所や費用

知能検査の受診を検討する際、就学後のお子さんの場合は学校の先生、スクールカウンセラー、地域の相談機関に相談してみましょう。就学前の場合は、子育て支援センターなどの機関にまず相談してみましょう。大人の場合は発達障害者支援センターなどで相談することができます。何れの場合もすぐに検査をするのではなく、知能検査が必要だと判断された場合に受検となります。

実施機関によってはウェクスラー式知能検査をはじめとした心理検査の費用に保険が適用されます。なお、検査報告書は無料ではなく費用がかかる場合が多いようです。あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
また、子どもか大人かによって、相談機関が違うので、以下を参考にしてみてください。

【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・教育支援センター(教育相談)
・公立小中学校のスクールカウンセラー
・児童相談所
・発達障害者支援センター
・医療機関 など

【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所
・医療機関 など

自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談をすることができる場合もあります。Webサイトなどを確認しましょう。

ウェクスラー式知能検査の注意点

受検者が事前に検査の内容を知ってしまうと正しい結果が得られないため、詳しい検査情報は公開されていません。こういった理由から、一般の方がウェクスラー式知能検査を購入することはできず、検査を自分で行うことはできません。

検査を行える人については、心理アセスメントに関する知識と経験を持つ専門家に限られています。WPPSI、WISC、WAISのいずれも、関連分野の博士号や公認心理師・臨床心理士・特別支援教育士・学校心理士・臨床発達心理士の有資格者、医療関連国家資格所有者などの専門性の高い検査者が行うこととされています。

もし必要があって同じ検査を再度受検する場合には、できれば2年程度の間隔を空けることが好ましいとされています。なぜなら、同じ問題を繰り返し受けることにより、受検者が回答を覚えてしまい、正確な結果が出なくなる恐れがあるためです。

また、ウェクスラー式知能検査では測れない事柄もあります。例えば、漢字やひらがなの書字などLD・SLD(限局性学習症)の有無はウェクスラー式知能検査単独では分かりません。また、実行機能(計画を立てて実行する能力)については詳細には測定できないと言われています。
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