知能検査とは?知能指数(IQ)や検査の種類、結果の活かし方など【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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知能検査は、主に物事の理解、知識、課題を解決する力といった、認知能力を測定するための心理検査の一つです。一人ひとりの特性を把握するための手段として、発達支援や学習指導、就学相談などで活用されています。知能検査は種類が複数あるとともに、その問題の内容が非公開なこともあり、いまいち分からないという方もいるのではないでしょうか。今回のコラムでは、WISCなどの知能検査の種類、受けられる機関や費用、結果の活かし方のほか、知能指数についても解説します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

WISC、WAISといった知能検査と知能指数とは

知能検査とは、主に物事の理解、知識、課題を解決する力といった、認知能力を測定するための心理検査の一つです。いくつか種類があり、日本ではウェクスラー式知能検査や田中ビネー知能検査などがよく使われています。

心理検査は単に知能指数(IQ)を測るだけでなく、具体的な得意な領域、苦手な領域を知ることができます。そのため、その人に合った発達支援や環境調整、学習指導の方向性を検討する目的などでも利用されます。

知能検査の検査形態は、「個別検査」と「集団検査」に分けられます。どちらかだけではなく両方を扱う検査もあります。
個別検査は、受検者と検査者の一対一で行うものです。今回の記事では個別検査について取り上げます。

知能検査の内容

知能検査ではどのような問題が出題されるか気になる方もいると思います。しかし、知能検査では問題をあらかじめ知っていると結果に影響が出ることから、問題は原則非公開になっています。

知能検査の目的は、得意や不得意を正確に把握して、適切な支援や学習につなげていくことです。そのためにも、結果を左右するような事前情報は入れずに受けることが大事です。

知能指数(IQ)とは

知能検査を受けると、知能指数(IQ)という数値で結果が算出されます。知能指数とは、知能や発達の程度を数値で表したもので、知能の判断基準になるとともに、知的障害(知的発達症)の診断の目安にも使用されています。

知能指数(IQ)の平均は100で、一般的に70~75以下だと平均水準以下とされています。ただ、知能指数(IQ)は年齢や知能検査を受けた時の状況によって変わります。また、知能指数(IQ)の数値だけで障害などの判断はできません。あくまで診断や支援などの判断材料の一つととらえておくとよいでしょう。

知能検査の種類

知能検査の種類は多数あり、地域や機関によって使われるものは異なりますが、「ウェクスラー式知能検査(WAIS・WISC・WPPSI)」「田中ビネー知能検査」「鈴木ビネー知能検査」などが使われているようです。どの知能検査を行うかは、最終的に専門家(医師、臨床心理士・公認心理師など)が判断します。

ウェクスラー式知能検査

ウェクスラー式知能検査は1939年に発行されたウェクスラー・ベルビュー検査Ⅰを期限とする知能検査です。
年齢によって3つの種類があり、幼児用のWPPSI(通称ウィプシィ)、児童用のWISC(通称ウィスク)、成人用のWAIS(通称ウェイス)があります。それぞれの最新版は、2017年発行のWPPSI-Ⅲ、2021年に発行されたWISC-Ⅴ、2018年発行のWAIS-Ⅳです。

各検査の対象年齢は以下になります。
・WPPSI:2歳6ヶ月~7歳3ヶ月
・WISC:5歳0ヶ月~16歳11ヶ月
・WAIS:16歳0ヶ月~90歳11ヶ月

検査の種類によって詳細は異なりますが、児童用のWISCでは、同じ年齢の子と比べて知能が高いか低いかといった点だけでなく、言語理解や視覚認知、処理速度など子どもの知的発達の凸凹(個人内差)を知るために実施されることが多いのが特徴です。

「得意を生かして、苦手をフォローするにはどうしたらいいのか」「特性を生かせるために、どんな環境を整えるべきか」など、学校や家庭での支援をブラッシュアップするための重要な情報となります。
ウェクスラー式知能検査(WISC・WAIS)の内容や費用など【専門家監修】のタイトル画像

ウェクスラー式知能検査(WISC・WAIS)の内容や費用など【専門家監修】

田中ビネー知能検査

1947年に心理学者の田中寛一によって開発されたもので、日本人の文化や生活様式に即した内容が特徴です。子どもが興味を持てるように、検査に使われる道具も工夫されています。時代に沿って改良が行われ、2003年には『田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)』が発行されています。ほかにも、学校の就学児健診などに使用される「就学児版田中ビネー知能検査Ⅴ」という種類もあります。

基本的に精神年齢と生活年齢の比である比例知能指数(比例IQ)を算出するものとなっていますが、近年の動向を反映し、偏差IQを算出することもできます(14歳以上に関しては、比例IQは算出せず、偏差IQのみ算出)。

単に海外の知能検査を翻訳したものではなく、日本人の文化や生活に沿った問題が出されるので、スムーズに検査に取り組みやすいという特徴があります。
田中ビネー知能検査、就学児版 田中ビネー知能検査について【専門家監修】のタイトル画像

田中ビネー知能検査、就学児版 田中ビネー知能検査について【専門家監修】

鈴木ビネー知能検査

1930年に心理学者の鈴木治太郎によって開発された知能検査です。取り組む姿勢を尊重し、その人の特質を診ることを目的としているため、検査自体に制限時間はありませんが、検査の所要時間はおおむね30~50分ほどで、受検する人の集中力を維持しながら短時間で測定できるという特徴があります。2歳0ヶ月~18歳11ヶ月までが対象となっています。

2007年は『改訂版 鈴木ビネー知能検査』が発行されており、現代の子どもの発達や生活様式に即した問題内容になっています。

知能検査の結果の生かし方

知能検査を受けると、報告書と面談などにより検査結果が伝えられます。子どもが受けた場合はまず知能指数(IQ)の数字に目が行くかもしれませんが、大事なのは検査結果を踏まえて今後の支援などに生かしていくことです。

知能検査では全体的な結果だけではなく、言語理解や処理速度など各領域ごとに結果が出ます。得意や不得意を把握することで、得意を活かして苦手をカバーしていく方法を具体的に考えることができるようになります。

例えば先生の話を最後まで聞くことができないという子どもも、その要因は口頭での指示理解が難しいのか、それとも注意が別のものにそれやすいためなのかなど異なっています。知能検査で要因が分かれば、口頭での理解が難しい場合は視覚的な情報伝達を多くする、注意がそれやすいのであれば教室での座席を工夫するなど、適切な対策を立てやすくなるでしょう。
家庭だけでなく、学校の先生や支援者とも連携しながら、知能検査の結果も材料の一つとして活かしていきましょう。

また、知能検査の結果は、発達障害(神経発達症)や知的障害(知的発達症)の診断をする時の材料の一つとして、また特別支援教育への就学相談などにも活用されます。
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