田中ビネー知能検査、就学児版 田中ビネー知能検査について【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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知能検査は、個人の知的能力を測定することを目的として作られた検査です。福祉サービスに関する判定、発達支援や教育相談など、さまざまな支援・相談の場におけるアセスメント・ツールとして活用されています。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)、LD・SLD(限局性学習症)など、発達の遅れや偏りのある子どもの状態を把握し、支援方法や指導内容を検討することにも使われています。この記事では、さまざまな支援・相談の場で使用されることの多い、田中ビネー知能検査についてご紹介します。

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監修: 日戸由刈
相模女子大学 人間社会学部 人間心理学科教授
博士(教育学)。公認心理師。臨床心理士。臨床発達心理士。横浜市総合リハビリテーションセンター発達精神科外来に心理職として20年勤務し、同センター児童発達支援事業所「ぴーす新横浜」の園長を経て、2018年より現職。
目次

田中ビネー知能検査とは?

田中ビネー知能検査は、子どもの知的側面の発達状態を客観的に捉えるための検査です。

決められた手順と教示に則って出題される課題によって、知的発達のペースや水準(遅れているのか早いのか、その遅速の程度はどれくらいか)を簡便に把握することができます。また、課題への反応に加えて子どもの生活史や背景も考慮し、子どもが課題解決という目標にどのように向かっていくかを観察・精査します。

こうして得られた結果は、医学的診断や福祉サービスに関する判定、発達支援、就学・教育相談などの場で活用されています。1947年に開発されて以降、改訂を重ね、2003年に第5版にあたる「田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)」が刊行されました(以下、田中ビネー知能検査と表記します)。

「知能検査」、「発達検査」、「認知検査」の違い

発達のアセスメントに使われることの多い心理検査は、「発達検査」「知能検査」「認知検査」と、大きく3つに分けることができます。それぞれ、どのように違うのでしょうか。

知能検査は、新しいことを学習したり問題を解決したりする能力、過去の経験から学んだことの積み重ねに基づく能力(知識など)といった認知機能を中心に評価するもので、検査結果は精神年齢(Mental Age:MA)や知能指数(Intelligence Quotient:IQ)、指標得点などで示されます。

発達検査は、知能検査と一部重複する認知機能の評価も含みますが、それ以外に姿勢・運動の発達や言語・社会性の発達など幅広い領域にわたって評価するもので、検査結果は発達年齢(Developmental Age:DA)や発達指数(Developmental Quotient:DQ)で示されます。

認知検査は、知能検査で測定された能力をさらに要素に分けて精査するもので、知能検査の結果をさらに掘り下げるためのものと位置づけられます。

子どもの発達の評価にあたってどの検査を用いるかは、評価の目的やこれまでの経過を踏まえて、医師または検査者が判断します。

田中ビネー知能検査の特徴

田中ビネー知能検査は個別式(検査者と受検者が1対1で行う)の検査です。検査課題には、日本人の文化やパーソナリティ特性、生活様式に即した内容が採用されており、検査への抵抗を軽減するだけでなく、本来の子どもの能力を発揮させやすい要件を備えた構成となっています。

検査者は、決められた手順と教示に則って問題を提示し、子どもの回答だけでなく反応全般を、分析的かつトータルに観察します。

対象者が2歳から13歳の場合

検査結果は、精神年齢(Mental Age:MA)および知能指数(Intelligence Quotient:IQ)で表されます。知能の発達が年齢との関係で変化していく傾向の見られる幼児期・学齢期において、精神年齢や知能指数といった尺度は、子どもの知的発達水準をイメージしやすく、支援を考える手がかりとして活用しやすいのです。

対象者が14歳以上の場合

検査結果は原則として、偏差知能指数(Deviation Intelligence Quotient:DIQ)で表されます。DIQとは、同年齢集団の中での相対評価で知的発達を捉える尺度です。知能は、生活年齢が高くなるにつれて年齢との関係だけでは捉えられなくなるため、田中ビネー知能検査では、このように結果の表し方が年齢によって異なっています。

就学児版 田中ビネー知能検査V(ファイブ)

田中ビネー知能検査には、就学に関して特別な配慮が必要であるか否かの診断に特化した「就学児版 田中ビネー知能検査Ⅴ」というバリエーションもあります。この検査の適用年齢は5歳~6歳です。ただし、“就学に関する相談や評価ではこの「就学児版」を使わなければならない”というわけではありません。どの検査を用いるかは、実施機関が判断します。
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