同じ事のくり返し…自閉症の特性ではなく「強迫観念神経症」かも

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同じような儀式的行為を繰り返す、自閉症の行動特性。これと一見似た行為が見られる“心の病”である「強迫観念神経症」という病気があります。ぱっと見の行動が同じでも、その理由が違ったら、異なる対処法が必要です。自閉症があり、同時に強迫観念神経症に苦しむ息子の治療を通して学んだことをお話します。

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立石美津子
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一見同じような「繰り返し行動」、治療が必要な時は?

こんにちは。『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子です。

自閉症の子どもは同じ行為を繰り返したり、儀式的なパターンにこだわったりします。それが本人にとって居心地がいいからです。

ですが、自閉症は“病気”ではないので、こうした繰り返し行為を無理やりやめさせる必要はありません。

むしろ、このこだわりに寄り添ってやることが大切で、それによって本人も安定し、幸せに過ごすことができるのです。

一方で、同じような繰り返し行為でも、“心の病”として対処が必要な場合があります。

それは、「強迫観念神経症」です。

子どもが自閉症だった場合、“同じことを繰り返す”という行動特性が、強迫観念神経症の症状と酷似しているので、見分けが難しく、私の息子もそのパターンで、いま強迫観念神経症を患っています。

強迫観念神経症の場合は、繰り返し行為をするとき、本人がとても苦しく辛いのです。

私も30年前、同じ病気にかかり1年間入院治療していたことがあるので、息子の様子をみて「これは自閉症からくるものではないぞ」と、いち早く気が付くことができました。

手洗いがやめられない…強迫観念神経症の悪循環

強迫観念神経症とは、本人の意思と無関係に頭に浮かぶ、不快感や不安感を生じさせる「強迫観念」と、それを打ち消したり振り払うために繰り返す「強迫行為」からなる病気です。

強迫観念神経症の症状にはさまざまなものがありますが、代表的なのは「不潔恐怖」です。
洗っても洗ってもまだ、汚れているような気がして手洗いを止められません。

手を洗い終えても蛇口を触ることでまた汚れたと思い、永遠に手洗いが続くのです。石けん1個なくなるまで手洗いをし、手がボロボロになります。外出もできなくなります。

蛇口やノズルを触って再び汚れるのを恐れて風呂に入らなくなり、かえって不潔になってしまうという、おかしな結果になるケースもあります。

その他にも、たくさんの種類があります。

確認恐怖: ガスの元栓や鍵の締め忘れが不安になり、何度も戻って確認する

数症恐怖: 特定の数字を見聞きすることを異様に恐れ、外出がままならなくなる

加害恐怖: 運転中、人をひいてしまったのではないかと何度も車の下を確認する

疾病恐怖: 健康なのに癌の不安から逃れられず、受診を繰り返す

不完全恐怖: あるべきところに物を置かないと不安になる

醜貌恐怖: 自分の容姿が人に不快な思いをさせていると思い込む

不安を振り払うための強迫行為は不合理なものですが、それをやめるとまた不安や不快感が起こるためなかなか止めることができません。

息子の「忘れ物恐怖」に、医師が教えてくれたこと

今、息子には強迫観念神経症の様々な症状が出ており、治療のため精神科に通わせています。

たとえば忘れ物恐怖があり、学校のカバンに入れたものを何度も出し入れし、確認しては不安になり…の繰り返しで、異常に準備に時間がかかってしまうのです。

そんな息子に対して、自分がかつて同じ病気に罹患し苦しんだのにも関わらず、一番よくない対応をしていました。

例えば、
・「いい加減、確認行為は止めなさい」と禁止する
・「また、お母さんが一緒に忘れ物していないか見てあげるから」と強迫行為を手伝う

などと、禁止したり協力したり、実に一貫性のない対応をしていました。

本人だって“不条理なことをやっている”という自覚があります。

一番苦しいのは本人なのです。

それなのに、強迫行為を無理やり止めさせようとしたり、助長させるような行為をしていました。
一方、主治医の先生は「○○君(息子の名前)5回の持ち物確認を4回に減らせるよう一週間、頑張ってみようか」と、息子に優しく伝えました。そして家でも母親の私が同じ対応をするように言われました。

「学校の道具を入れたら確認は4回にしてみようね。

確認したい気持ちになっても、ちょっとだけ堪えて4回だけにしよう。

先生とも約束したからね」と、私も家でそう伝えるようにしました。

そして、確認行為が4回で済んだら「頑張ったね。偉かったね」と褒めるのです。

さらに「確認したい不安はあっても我慢してそのままにしておこうね」と言いました。こうしたスモールステップで、少しずつ症状が改善していくのです。

これは、「認知行動療法」という、ものの“見方を変える”治療法の一種だそうです。

本人と約束しながら、少しずつ我慢して確認回数を減らし、自信をつけさせる。“あれ、僕は確認しないで済んだ”という経験をさせて、自信をつけさせていくのです。

子育て全般に通じる、子どもの自信の育みかた

主治医と息子の関わりを見て、これって普段の子育てでも同じことだと痛感しました。

「いい加減に片付けなさい。どうして何度言っても出来ないの!」

と、散らかしている行動を真っ向から否定したり、親が全部片付けてしまったらダメなのです。

片づけていない状況は本人が一番わかっているし、遊びたい気持ち、片付けるのが面倒だという気持ちが勝っているから片付けないのです。

そこで、親からそこをほじくり返されるきつい言葉を言われたらとても不愉快になるのです。

こんなときは、子どもが積木を1個でも片付けたら
「まだ遊びたかったのに1個でも片付けて偉かったね。お母さんも嬉しいよ」と心から褒めてやればいいのです。

食事を残すことを叱るのではなく、少しでも食べたら一緒に喜んでやるのです。

当たり前の子育て一般論のように聞こえますが、改めてこれはとても大事なことだと思いました。

「3歩進んで2歩下がる」、でも焦らない

精神や心の病は坂を上っていくように急にはよくはなりません。何年もかかります。3歩進んで2歩下がる。そうしてだんだんと改善します。

主治医の先生は、

「お母さん、確認行為が5回から4回に減り3回、そして2回になって減っても、また後退して3回に増えることもあります。でも、落胆しないようにしてください。こうして 行きつ戻りつしながら治っていくのです」と言いました。

一時期、2回まで減った確認行為が3回に増えたとしても、「最初の5回よりも減ったのだからよい」と本人も私自身が思わなくてはならないのです。

精神科の治療法を通して「本人の気持ちに寄り添ってやり、出来たことを褒めることって重要なポイントなんだなあ」と、今さらながら思いました。

この本を書いた人の著書

立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
立石美津子(著),市川宏伸(監修)
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