自閉スペクトラム症 (Autism spectrum disorder: ASD) の特性には、社会的コミュニケーションの障害や限局された反復的行動が挙げられますが、一方で、一部の意思決定能力に優れている (もしくは健常者と同等である) ことが明らかにされています。
Vella et al. (2018) は、ASD診断者38名とASD診断歴のない40名を対象として、意思決定に関する3つの課題をそれぞれ実施しています。課題は、ポジティブもしくはネガティブな情報に基づいた意思決定を測定できるIowa Gambling Task (IGT) と、柔軟性に関する意思決定を測定できるCambridge Gambling Task (CGT)、情報収集能力を測定できるInformation Sampling Task (IST) を用いています。
その結果、ASD診断者はそうでない者と比較して、CGTにおける意思決定が遅く、逆にIGTの成績は有意に高かったことが分かっています。
また、服薬をしている対象者を除外すると、ASD診断者の情報収集能力は保たれていることも示されました。これらの結果は、意思決定に対するより論理的なアプローチ (情報に基づいた意思決定) や配慮などの重要性、およびASDの長所をも示しています。
参考文献
Vella, L., Ring, H. A., Aitken, M. R., Watson, P. C., Presland, A., & Clare, I. C. (2018). Understanding self-reported difficulties in decision-making by people with autism spectrum disorders. Autism, 22, 549-559.
【自閉スペクトラム症の特性 (3)】
研修会・講演会
23/01/20 12:35