小学校教諭をしていたときのできごとです。
教員1年目、担任をしていた2年生が使う女子トイレの便器の中からトイレットペーパーが見つかりました。紙1枚、などではなく、まだ新品のものがまるごと1個投げ捨てられていたのです。そのできごとは何度か起こり、低学年ブロックの先生たちと話し合いを続けていました。
何度か繰り返していくうちに、あることに気づきました。「先生! トイレットペーパーがまた捨てられています!」と伝えに来てくれる子が毎回同じ女の子Aさんなのです。そのことを先輩教員に相談したところ、「トイレットペーパーのことには触れず、1対1でその児童と話をしてみたら良い。」と助言していただきました。私は、他の児童たちが給食の配膳をしている間に、Aさんを違う教室に呼び、話をすることにしました。「最近、疲れるなあって思うことない?」と切り出して。
Aさんは、天真爛漫で、お話をすることがとても好きな可愛らしい児童です。双子の弟がいて、家では「お姉ちゃん」としてお手伝いをしているようでした。学習は苦手ですが、Aさんの保護者が教育熱心な方で、お母さんの手作り問題がのった家庭学習ノートを毎日、提出していました。土日も関係なく、毎日です。
「最近、疲れるなあって思うことない? Aさん、毎日、家庭学習出してくれててすごいけど、疲れないかなあと思って。」と切り出すと、Aさんはすぐに頷きました。「『疲れる』には2種類あって、寝たら治る『疲れる』と寝ても治らない『疲れる』があるんだけど、Aさんはどっち?」と聞くと「寝ても治らない『疲れる』だ。」と答えて、家庭でのことを私に話してくれました。毎日の家庭学習が大変だということ、家庭学習の他にもドリルをたくさんやっていること、「お姉ちゃんなんだから」と言われて我慢しなければいけないことがたくさんあること、お父さんにもお母さんにももっと甘えたいこと等、彼女の「疲れる」原因であるものをすべて吐き出してくれました。話していくうちに、彼女はトイレットペーパーを便器に何度も投げ入れてしまったことを自分から告白してくれました。何もかもが嫌になって、でも、それを誰にも言えなくてやってしまったとのこと。「ストレス」というものの名前も知らず、どこに吐き出したら良いか分からない「疲れ」を彼女は便器に吐き出していたのでした。すべてを話した後、彼女は「すっきりした。」と呟いていました。
私は、告白をしてくれたことに感謝をし、それでもやってはいけないことはあるということを伝えました。そして、また「疲れる」ことがあったら、トイレに向かわずに、担任と「秘密会議」をすることを約束しました。その後、トイレットペーパー事件はなくなり、Aさんは何度か「秘密会議をしたい。」と私の元へ訪れるようになりました。
何週間かたちました。Aさんは「秘密会議」でストレスを発散することはできていましたが、根本的な解決には至っていませんでした。解決するためには、家庭との連携が大切です。先輩教員に相談したところ、「すぐに家庭に連絡するのでなく、Aさんに確認してから連絡するべき。」と助言していただきました。Aさんの考えを尊重することが大切だということを念頭に置きながら、Aさんとの秘密会議を開きました。「このままではちゃんとした解決にならないから、おうちの人と話してみよう。Aさんが自分で言うのが無理なら、先生が連絡する。」と相談してみると、「先生から伝えてほしい。」とのことでした。
保護者には、トイレットペーパー事件のことも含め、すべてを話しました。保護者は非常に理解を示してくれて、「Aと今後のことについて話してみる。」とおっしゃってくれました。その後、家族会議を開いてくれたようで、「日曜日の勉強はお休み。家族の時間。」という方針に固まったようです。家族会議が開かれてからは、担任との「秘密会議」はなくなり、もちろん事件も起きなくなりました。Aさんは今まで溜まっていたものを担任や保護者など周りのおとなに話すことができたからか、以前よりも生き生きとした表情を見せるようになりました。
子どもたちの悩みのベクトルは個々で違います。きちんと寄り添って、話を聴くことがとても大切だということを改めて感じたできごとでした。
おとなはストレスを感じたとき、発散の方法が自分でわかります。しかし、子どもたちは「ストレス」という名前もわからないまま、寝ても取れない疲れを抱えているかもしれません。
小学校でたくさんのことをがんばってきていると思います。少し息抜きできるような、のんびりできるような環境をアンフィニは提供して参ります。
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2024年2月オープン
児童発達支援・放課後等デイサービス
アンフィニ
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アンフィニでは1週間を通しての活動になります
工作や運動、学習などを活動に取り入れています。
教師による「オーダーメイドの療育」
日々変化する利用者様のコンディションを見極め、「個性をのばす」「個性を活かす」活動を行って参ります。
就学に向けて自分でできることをひとつひとつ増やして参りませんか。
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「ストレス」児発・放デイ アンフィニ 小学校教諭
教室の毎日
25/06/13 16:09
