ADHD(注意欠如多動症)は遺伝する確率があるの?兄弟、父親、母親との関係は?【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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ADHD(注意欠如多動症)は先天性の障害なので、遺伝が関係してるのではないかという研究結果が発表されています。自分自身やパートナー、家族がADHD(注意欠如多動症)の場合、子どもに遺伝する確率がどれぐらいあるのか気になりますよね。発現の確率や男女の違いについての研究結果をご紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

ADHD(注意欠如多動症)は親から子どもへ遺伝するの?確率は?

ADHD(注意欠如多動症)は、不注意、多動性、衝動性などの特性があり、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。特性のあらわれ方によって多動・衝動性の傾向が強いタイプ、不注意の傾向が強いタイプ、多動・衝動性と不注意が混在しているタイプなど主に3つに分けられ、これらの症状が12歳になる前に出現します。特性の多くは幼い子どもにみられる特徴と重なり、それらと区別することが難しいため、幼児期にADHD(注意欠如多動症)であると診断することは難しく、就学期以降に診断されることが多いといわれています。また、個人差はありますが、年齢と共に多動性が弱まるなど、特性のあらわれ方が成長に伴って変化することもあります。

ADHD(注意欠如多動症)は遺伝的要因と環境要因が複雑に影響して発現するといわれており、親から子どもにADHD(注意欠如多動症)が100%遺伝するわけではありません。また、しつけや育て方は原因にはなりません。
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ADHD(注意欠如多動症)の3つのタイプとは?【専門家監修】

ADHD(注意欠如多動症)の特性が問題行動やトラブルを引き起こしてしまうことが多くあり、親のしつけ不足や愛情が足りていないせいだ、育て方が悪いからだ、と言われた経験のある親も多いと思います。しかし、決してしつけ不足や愛情不足、育て方が直接の原因ではないと考えられています。原因ははっきりと解明されていないですが、ADHD(注意欠如多動症)は先天的な脳の機能障害によるものとされています。

脳の機能障害には、遺伝的要因が関連するという研究結果もあります。現段階では親からの遺伝が原因となって発現する可能性を確率によって表すことはできませんが、ゼロであるとは言い切れないと考えられています。また、現在進められている中に、家族性についての研究があります。
「家族性」とは、ADHD(注意欠如多動症)のある人がいる家系の場合、ない家系より発現しやすい傾向があるということですが、これもまだ研究段階ではっきりと確率が出ているわけではありません。

家族間では遺伝による体質と、生育環境が似ているため、このような傾向が出るのではないかと考えられていますが、ADHD(注意欠如多動症)は体質や環境要因が相互に、複雑に影響して発現します。つまり、単純に親がADHD(注意欠如多動症)だからといって、子どもにADHD(注意欠如多動症)が遺伝するということではありません

ADHD(注意欠如多動症)の原因は何?

ADHD(注意欠如多動症)の症状が起こる確かな原因はまだ解明されていませんが、「脳障害の説」「環境要因の説」があり研究されています。近年の研究から、行動等をコントロールしている神経系に原因がある脳の機能障害、特に前頭葉の働きが弱いことが関係していると考えられています。

前頭葉は脳の前部分にあり、物事を整理整頓したり論理的に考えたりする働きをします。この部位は注意を持続させたり行動などをコントロールしたりします。ADHD(注意欠如多動症)の人は、こうした注意集中や行動制御の機能に何らかのかたよりや異常があり、前頭葉がうまく働いていないのではないかと考えられています。

前頭葉がうまく働くためには、神経伝達物質のドーパミンがニューロンによって運ばれなくてはいけません。しかしADHD(注意欠如多動症)の人場合うまくニューロンによってドーパミンが運べず、前頭葉の働きが弱くなってしまうと考えられています。それが原因で「多動」「衝動」「不注意」の3つの特徴が表れます。

ADHD(注意欠如多動症)の人は五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまう傾向がありますが、それも前頭葉の働きが弱いからだと言われています。思考よりも五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまい感覚を過剰に感じてしまうので、論理的に考えたり集中するのが苦手となる傾向があります。

これらの脳機能の障害の素因が先天的にあり、それが出生後の脳機能の発達や環境的な要因と相互に影響して発現するというのが、ADHD(注意欠如多動症)の原因として現在有力とされる説の一つです。
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きょうだい(兄弟・姉妹)でADHD(注意欠如多動症)になる確率は?

ADHD(注意欠如多動症)と遺伝子の因果関係はまだまだ解明されていない部分が多く、研究や議論がなされています。きょうだいでADHD(注意欠如多動症)になる確率は現段階ではわかっていません。しかし、遺伝がADHD(注意欠如多動症)の原因ではないとは言い切れないため、確率は0%ではないという見解が多く、またきょうだいでADHD(注意欠如多動症)が発現しやすい傾向を報告する研究もあります。
ですが、遺伝子が一致する一卵性双生児でも100%の確率で発現しないことからも、単純にADHD(注意欠如多動症)のきょうだいがいるからといって本人がADHD(注意欠如多動症)であるとは限りません。
次ページ「ADHD(注意欠如多動症)は男女で発現率が違う?」

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