ADHD(注意欠如・多動性障害)は遺伝する確率があるの?兄弟、父親、母親との関係は?

2016/06/10 更新
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ADHDは先天性の障害なので、遺伝が関係してるのではないかという研究結果が発表されています。自分自身やパートナー、家族がADHDの場合、子どもに遺伝する確率がどれぐらいあるのか気になりますよね。発現の確率や男女の違いについての研究結果をご紹介します。

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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
専門行動療法士
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員
公認心理師
目次

ADHD(注意欠如・多動性障害)は親から子どもへ遺伝するの?確率は?

ADHD(注意欠如・多動性障害)は英語でAttention Deficit Hyperactivity Disorderの略で、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。ADHDが認識されてまだ20数年程度しかたっていないので、まだ解明されていないことが多く、現在でも引き続き議論・研究がなされています。
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ADHDの特性が問題行動やトラブルを引き起こしてしまうことが多くあり、親のしつけ不足や愛情が足りていないせいだ、育て方が悪いからだ、と言われた経験のある親も多いと思います。しかし、決してしつけ不足や愛情不足、育て方が直接の原因ではないと考えられています。原因ははっきりと解明されていないですが、ADHDは先天的な脳の機能障害によるものとされています。

脳の機能障害には、遺伝的要因が関連するという研究結果もあります。現段階では親からの遺伝が原因となって発現する可能性を確率によって表すことはできませんが、ゼロであるとは言い切れないと考えられています。また、現在進められている中に、家族性についての研究があります。

ADHDの原因は、医学的にはまだはっきりとはわかっていません。
しかし、「家族性」があることや、周囲の「環境」にも原因があると考えられています。

ADHDには、「家族性」があることがわかっています。 家族性というのは、家族に糖尿病や近視の人がいると、自分もそうなる確率が高くなるという意味です。 病気の遺伝子を受け継いだ子どもが、親と同じ病気を発症する「遺伝」とは少しニュアンスが違います。

アメリカで行われたある調査によると、父親か母親のどちらかにADHDがあると、その子どもにADHDがあらわれる確率は最大50%だといわれてます。

出典:http://www.dr-maedaclinic.jp/dq140.html
「家族性」とは、ADHDのある人がいる家系の場合、ない家系より発現しやすい傾向があるということですが、これもまだ研究段階ではっきりと確率が出ているわけではありません。

家族間では遺伝による体質と、生育環境が似ているため、このような傾向が出るのではないかと考えられていますが、ADHDは体質や環境要因が相互に、複雑に影響して発現します。つまり、単純に親がADHDだからといって、子どもにADHDが遺伝するということではありません

ADHDの原因は何?

ADHDの症状が起こる確かな原因はまだ解明されていませんが、「脳障害の説」「環境要因の説」があり研究されています。近年の研究から、行動等をコントロールしている神経系に原因がある脳の機能障害、特に前頭葉の働きが弱いことが関係していると考えられています。

前頭葉は脳の前部分にあり、物事を整理整頓したり論理的に考えたりする働きをします。この部位は注意を持続させたり行動などをコントロールしたりします。ADHDの人は、こうした注意集中や行動制御の機能に何らかのかたよりや異常があり、前頭葉がうまく働いていないのではないかと考えられています。

前頭葉がうまく働くためには、神経伝達物質のドーパミンがニューロンによって運ばれなくてはいけません。しかしADHDの人場合うまくニューロンによってドーパミンが運べず、前頭葉の働きが弱くなってしまうと考えられています。それが原因で「多動」「衝動」「不注意」の3つの特徴が表れます。

ADHDの人は五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまう傾向がありますが、それも前頭葉の働きが弱いからだと言われています。思考よりも五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまい感覚を過剰に感じてしまうので、論理的に考えたり集中するのが苦手となる傾向があります。

これらの脳機能の障害の素因が先天的にあり、それが出生後の脳機能の発達や環境的な要因と相互に影響して発現するというのが、ADHDの原因として現在有力とされる説の一つです。

きょうだい(兄弟・姉妹)でADHDになる確率は?

ADHDと遺伝子の因果関係はまだまだ解明されていない部分が多く、研究や議論がなされています。きょうだいでADHDになる確率は現段階ではわかっていません。しかし、遺伝がADHDの原因ではないとは言い切れないため、確率は0%ではないという見解が多く、またきょうだいでADHDが発現しやすい傾向を報告する研究もあります。

兄弟姉妹にADHDの子どもがいる場合、いない子に比べ5~7倍の率で発症するというデータもあります。 しかし多動・衝動的な行動に対しては、周囲の対処の仕方で症状の出方は大きく変わります。 ADHDの家族性がある一卵性双生児でも、両方の子が発症する確率が100%ではないのは、成育環境などの影響によるものと考えられます。

出典:http://www.dr-maedaclinic.jp/dq140.html
これらの数値は報告されている様々な研究の一例ですが、きょうだいでADHDの可能性が高くなる理由としても、「家族性」が関係しているのではないかと推測されています。ですが、遺伝子が一致する一卵性双生児でも100%の確率で発現しないことからも、単純にADHDのきょうだいがいるからといって本人がADHDであるとは限りません。

ADHDは男女で発現率が違う?

男女の違いによって、かかりやすい病気の違いや発症率の差があるようにADHDも男女によって発現率の違いがみられます。男女による違いは男:女の比率は4:1とされています。この比率の差は脳の働きや仕組みが男女によって異なるからではないかと推測されています。

また、性別によって症状にも違いがあります。男の子は多動の症状が多く見られており、女の子は不注意の症状が多く見られています。この症状の差から女の子の場合、ADHDの症状が分かりづらいため、見逃されてしまうことも少なくありません。そのため、この4:1という男女の比率の差は実際はもう少し小さいのではないかとも言われています。

ADHDであることが診断される年齢が男の子は8歳前後、女の子が12歳前後と差があります。この診断年齢の差も、女の子の場合は発達障害であることに気づくことが遅れやすいことに関係があるとされています。

ADHDを検査する方法はあるの?

妊娠中に病気や障害を知るための検査として超音波検査・NIPT・絨毛検査・NT超音波検査・母体血清マーカー・羊水検査・新出生前診断・胎児ドッグなど様々な出産前診断があります。出産前診断は近年めざましい発達をしていますが、出生前にADHDの可能性を知るための検査は現在ではまだありません。

ADHDは脳の働きや神経伝達物質の働きが原因であると言われていますが、身体に特徴的なものもなく、出生後にも生理学的な検査だけではADHDの診断はできません。

現在は、アメリカ精神医学会で定められている判断基準である『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)を用いて診断がなされます。本人への面談や問診、行動評価、知能・発達・神経学的検査などから、ADHDかどうかが総合的に診断されています。
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ADHDの原因はまだ解明されていない

ADHDは古くから症状としてはありましたが、障害として認識されてはいませんでした。ADHDという障害として研究され認識されるようになってまだそれほど時間がたっていません。脳の前頭前野周辺である脳の前側の部分の働きのかたよりや神経伝達物質の働きの低下など研究が進められてはいますが、ADHDの発現の原因はまだはっきりとは解明されていません。

しかし少なくとも、以前によく言われたような、育て方やしつけ、愛情不足などが原因ではないことは判明しています。ADHDの症状が原因で子どもが問題行動やトラブルを引き起こしてしまうことが多くあり、周りから親のしつけ不足や愛情が足りていないせいだとか、育て方が悪いと言われることもあります。中には子どものADHDの症状をみて、自らに責任を感じてしまうご両親もいるとは思いますが、育て方や単純な遺伝が原因ではないということを知っておきましょう。また周りの人々も育て方やしつけが原因ではないということを理解し、パパ・ママや子ども本人のサポートをしましょう。

ADHDは特性のひとつです。その子にあった環境を整えたり、接し方を工夫することで、逆にその特性を強みとして活かすことができます。ADHDの人の行動力や自由な発想、興味のあることををつきつめる集中力は目を見張るものがあります。その子らしく生きられるように、子どもがのびのびと育つことができる環境を、周りが整えられるように心がけましょう。
図解 よくわかるADHD
榊原 洋一 (著)
ナツメ社
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