「挨拶ができない」アスペルガーの息子が話してくれた理由
ライター:鈴木希望
想像力や脳の実行機能の問題により、挨拶が苦手とされる自閉症スペクトラムの子どもたち。小学生の息子・ハルもご多分に漏れず、でした。しかし時が経つにつれ、冒頭に挙げた以外の問題でつまずいていることがわかったのです。それもまた自閉症スペクトラムらしい理由であり、同時に、わたしとの血の繋がりを妙に感じさせるものでした。
挨拶ができないのは状況理解ができないから?
小学1年生の息子・ハル。
アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)である彼は、自閉傾向のある子の多くがそうであるように、挨拶が苦手でした。
無理強いしたところで定着するものではない、と知っていたので、
「まずはわたしが挨拶している姿を見てもらって、ゆっくり伝えていこう」と構えていたのです。
息子と同じアスペルガー症候群のわたしも、同じような道を歩んできましたからね。
アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)である彼は、自閉傾向のある子の多くがそうであるように、挨拶が苦手でした。
無理強いしたところで定着するものではない、と知っていたので、
「まずはわたしが挨拶している姿を見てもらって、ゆっくり伝えていこう」と構えていたのです。
息子と同じアスペルガー症候群のわたしも、同じような道を歩んできましたからね。
長らく、「挨拶すべき状況を理解できていない」という雰囲気だった息子が、あるときから、挨拶をされると困惑したような表情を見せるようになりました。
「どうした?」
わたしが問うても返事はなし。
「んー、じゃあ、気が向いたら教えてよ」
そしてしばらく経ったある日のこと、息子はわたしに質問してきました。
「ねえ、のん(わたしの呼び名)!
朝は何時から何時まで?
昼は何時から何時までで、夜は何時から何時まで?」
その質問でわたしはピンと来ました、息子は「時間に適した挨拶をしなければならない」ということにこだわっていたのです。
案の定、このように続きました。
「朝はおはよう、昼はこんにちは、夜はこんばんはっていうんだよね?
でもさ、ハルが思ってる朝は、他の人も朝と思ってるかもしれないし、昼かも知れないでしょ?
わかんないからさ……もし時間が決まっているなら、ちゃんとわかっておきたいんだよ!」
曖昧さを許したからこそ、新たな疑問が出てきてしまったのです…。
「どうした?」
わたしが問うても返事はなし。
「んー、じゃあ、気が向いたら教えてよ」
そしてしばらく経ったある日のこと、息子はわたしに質問してきました。
「ねえ、のん(わたしの呼び名)!
朝は何時から何時まで?
昼は何時から何時までで、夜は何時から何時まで?」
その質問でわたしはピンと来ました、息子は「時間に適した挨拶をしなければならない」ということにこだわっていたのです。
案の定、このように続きました。
「朝はおはよう、昼はこんにちは、夜はこんばんはっていうんだよね?
でもさ、ハルが思ってる朝は、他の人も朝と思ってるかもしれないし、昼かも知れないでしょ?
わかんないからさ……もし時間が決まっているなら、ちゃんとわかっておきたいんだよ!」
曖昧さを許したからこそ、新たな疑問が出てきてしまったのです…。
「曖昧」が許せなかった息子。変えてくれたのは保育士さんでした
「こんにちは」って何時から何時まで?
わたし:「じゃあ、前にわたしが調べたものを教えるよ。
朝は午前6時から午前9時ぐらいまで、夜は午後6時から午前6時ぐらいまで。
昼ははっきりきまっていないんだけど、まあ、朝と夜の間なんだろうね」
ハル:「どこで知ったの?」
わたし:「気象庁のサイト。わたしもハルと同じことが気になったんだよね、前に」
朝は午前6時から午前9時ぐらいまで、夜は午後6時から午前6時ぐらいまで。
昼ははっきりきまっていないんだけど、まあ、朝と夜の間なんだろうね」
ハル:「どこで知ったの?」
わたし:「気象庁のサイト。わたしもハルと同じことが気になったんだよね、前に」
ハル:「……そっか。でもさ、午後5時に“こんばんは”って言ってる人をみたことあるし、のんは午前5時に“おはよう”っていってたことあるけど、あれはどうして?」
わたし:「太陽が出ているかどうかで判断する人もいるからね」
ハル:「うん……じゃあさ、おはようとこんにちはとこんばんは、のんはどうやって言いわけてるの?」
わたし:「ん?テキトー!」
ハル:「えっ……!ちゃんと言えないの、嫌じゃない?」
わたし:「そりゃあ最初はね……」
今の息子とそっくりだった子ども時代のわたしは、時間帯に合った挨拶をすることにこだわるあまり、
なかなか挨拶ができませんでした。
思い切って挨拶をしたら、昼なのに「おはよう」と返されたり、まだ夜じゃないのに「こんばんは」と言われたり…
初めはたいそう混乱しました。
そんなことを繰り返して気づいたのは、挨拶を間違ったところでたいして困らないという事実。
やがて、始業時間なら夜であっても「おはようございます」が飛び交うおかしな大人の世界があることを知り、一気にどうでも良くなったのです。(笑)
わたし:「……だからさ、もし挨拶したくなったら、“これかな?”って思うやつ、言ってみたらいいよ。もちろん無理強いはしないけど」
ハル:「うん、言ってみようかな……」
わたし:「太陽が出ているかどうかで判断する人もいるからね」
ハル:「うん……じゃあさ、おはようとこんにちはとこんばんは、のんはどうやって言いわけてるの?」
わたし:「ん?テキトー!」
ハル:「えっ……!ちゃんと言えないの、嫌じゃない?」
わたし:「そりゃあ最初はね……」
今の息子とそっくりだった子ども時代のわたしは、時間帯に合った挨拶をすることにこだわるあまり、
なかなか挨拶ができませんでした。
思い切って挨拶をしたら、昼なのに「おはよう」と返されたり、まだ夜じゃないのに「こんばんは」と言われたり…
初めはたいそう混乱しました。
そんなことを繰り返して気づいたのは、挨拶を間違ったところでたいして困らないという事実。
やがて、始業時間なら夜であっても「おはようございます」が飛び交うおかしな大人の世界があることを知り、一気にどうでも良くなったのです。(笑)
わたし:「……だからさ、もし挨拶したくなったら、“これかな?”って思うやつ、言ってみたらいいよ。もちろん無理強いはしないけど」
ハル:「うん、言ってみようかな……」
少しずつ挨拶するように
しばらく経ったある夕方、息子とふたりで近所の公園へ出向くと、そこには小学校の同級生と、そのお母さんの姿がありました。
息子はふたりの方へと駆け寄り、
「こんにちは!」
と大きな声で挨拶をしたのです!
それを聞いて
「ハル君、今は午後5時だから“こんばんは”じゃない?」
と笑顔を浮かべる同級生君に、
「あれ?“こんばんは”だったかなあ?“こんにちは”って言っちゃったよ!」
と大笑いする息子。
直後走り出すふたりの背中を眺めながら、息子が大きな一歩を踏み出す瞬間を目にできたなと、わたしは感慨にふけっていました。
自閉傾向があるからこその感慨に。
今でも挨拶をし忘れたり、躊躇の末しそびれてしまう場面がときどきあります。
だけどわたしは焦らず急かさず、彼なりに進んで行けることを信じてやみません。
息子はふたりの方へと駆け寄り、
「こんにちは!」
と大きな声で挨拶をしたのです!
それを聞いて
「ハル君、今は午後5時だから“こんばんは”じゃない?」
と笑顔を浮かべる同級生君に、
「あれ?“こんばんは”だったかなあ?“こんにちは”って言っちゃったよ!」
と大笑いする息子。
直後走り出すふたりの背中を眺めながら、息子が大きな一歩を踏み出す瞬間を目にできたなと、わたしは感慨にふけっていました。
自閉傾向があるからこその感慨に。
今でも挨拶をし忘れたり、躊躇の末しそびれてしまう場面がときどきあります。
だけどわたしは焦らず急かさず、彼なりに進んで行けることを信じてやみません。
「ありがとう」が言えなかった息子に、街のお豆腐屋さんは…