「挨拶ができない」アスペルガーの息子が話してくれた理由

ライター:鈴木希望
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想像力や脳の実行機能の問題により、挨拶が苦手とされる自閉症スペクトラムの子どもたち。小学生の息子・ハルもご多分に漏れず、でした。しかし時が経つにつれ、冒頭に挙げた以外の問題でつまずいていることがわかったのです。それもまた自閉症スペクトラムらしい理由であり、同時に、わたしとの血の繋がりを妙に感じさせるものでした。

挨拶ができないのは状況理解ができないから?

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小学1年生の息子・ハル。

アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)である彼は、自閉傾向のある子の多くがそうであるように、挨拶が苦手でした。

無理強いしたところで定着するものではない、と知っていたので、

「まずはわたしが挨拶している姿を見てもらって、ゆっくり伝えていこう」と構えていたのです。

息子と同じアスペルガー症候群のわたしも、同じような道を歩んできましたからね。
あいさつができない自閉症の子の特性について知っておきたい理解と対応
http://www.taira8.com/blog/archives/1996.html
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長らく、「挨拶すべき状況を理解できていない」という雰囲気だった息子が、あるときから、挨拶をされると困惑したような表情を見せるようになりました。

「どうした?」

わたしが問うても返事はなし。

「んー、じゃあ、気が向いたら教えてよ」

そしてしばらく経ったある日のこと、息子はわたしに質問してきました。

「ねえ、のん(わたしの呼び名)!

朝は何時から何時まで?

昼は何時から何時までで、夜は何時から何時まで?」

その質問でわたしはピンと来ました、息子は「時間に適した挨拶をしなければならない」ということにこだわっていたのです。

案の定、このように続きました。

朝はおはよう、昼はこんにちは、夜はこんばんはっていうんだよね?

でもさ、ハルが思ってる朝は、他の人も朝と思ってるかもしれないし、昼かも知れないでしょ?

わかんないからさ……もし時間が決まっているなら、ちゃんとわかっておきたいんだよ!」

曖昧さを許したからこそ、新たな疑問が出てきてしまったのです…。
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「曖昧」が許せなかった息子。変えてくれたのは保育士さんでした

「こんにちは」って何時から何時まで?

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わたし:「じゃあ、前にわたしが調べたものを教えるよ。

朝は午前6時から午前9時ぐらいまで、夜は午後6時から午前6時ぐらいまで。

昼ははっきりきまっていないんだけど、まあ、朝と夜の間なんだろうね」

ハル:「どこで知ったの?」

わたし:「気象庁のサイト。わたしもハルと同じことが気になったんだよね、前に」
時に関する用語
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/toki.html
ハル:「……そっか。でもさ、午後5時に“こんばんは”って言ってる人をみたことあるし、のんは午前5時に“おはよう”っていってたことあるけど、あれはどうして?」

わたし:「太陽が出ているかどうかで判断する人もいるからね」

ハル:「うん……じゃあさ、おはようとこんにちはとこんばんは、のんはどうやって言いわけてるの?」

わたし:「ん?テキトー!」

ハル:「えっ……!ちゃんと言えないの、嫌じゃない?」

わたし:「そりゃあ最初はね……」

今の息子とそっくりだった子ども時代のわたしは、時間帯に合った挨拶をすることにこだわるあまり、

なかなか挨拶ができませんでした。

思い切って挨拶をしたら、昼なのに「おはよう」と返されたり、まだ夜じゃないのに「こんばんは」と言われたり…

初めはたいそう混乱しました。

そんなことを繰り返して気づいたのは、挨拶を間違ったところでたいして困らないという事実。

やがて、始業時間なら夜であっても「おはようございます」が飛び交うおかしな大人の世界があることを知り、一気にどうでも良くなったのです。(笑)

わたし:「……だからさ、もし挨拶したくなったら、“これかな?”って思うやつ、言ってみたらいいよ。もちろん無理強いはしないけど」

ハル:「うん、言ってみようかな……」

少しずつ挨拶するように

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しばらく経ったある夕方、息子とふたりで近所の公園へ出向くと、そこには小学校の同級生と、そのお母さんの姿がありました。

息子はふたりの方へと駆け寄り、
「こんにちは!」
と大きな声で挨拶をしたのです!

それを聞いて
「ハル君、今は午後5時だから“こんばんは”じゃない?」

と笑顔を浮かべる同級生君に、

「あれ?“こんばんは”だったかなあ?“こんにちは”って言っちゃったよ!」

と大笑いする息子。

直後走り出すふたりの背中を眺めながら、息子が大きな一歩を踏み出す瞬間を目にできたなと、わたしは感慨にふけっていました。

自閉傾向があるからこその感慨に。

今でも挨拶をし忘れたり、躊躇の末しそびれてしまう場面がときどきあります。

だけどわたしは焦らず急かさず、彼なりに進んで行けることを信じてやみません。
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「ありがとう」が言えなかった息子に、街のお豆腐屋さんは…


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