【専門家監修】ADHD(注意欠如多動症)の子どもの育て方は?具体的対処法など
ADHD(注意欠如多動症)の症状がみられる子どもの子育ては、さまざまな困難があるものですよね。しかし、ADHD(注意欠如多動症)の特性を理解し、接し方を少し変えるだけで状況は大きく改善します。ADHD(注意欠如多動症)あるの子どもへの接し方と、困難への対処法を具体的な例をあげて紹介します。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ADHD(注意欠如多動症)の子どもの生活での9つの困難と対処法
このコラムで分かること
- 「片付けができない」「宿題をやらない」「癇癪(かんしゃく)」など、生活場面でよくある9つの困りごとへの具体的な対処法
- 言葉だけでなく「視覚的な工夫」を取り入れるなど、子どもの特性に合わせた伝わりやすい指示の出し方
- 子どもを傷つけない叱り方のポイントや、保護者自身のストレスを溜めないための考え方
- 「できないこと」を責めるのではなく、「得意なこと」や「できたこと」を伸ばすためのポジティブな関わり方
以下に、よくある9つの困りごとと、それぞれの対処法を紹介します。
1. 部屋を散らかしっぱなしにして片付けられない
いきなりきちんと整理整頓するのはかなりハードルが高いものです。例えば家の中でおもちゃを出していいゾーンや部屋を決めましょう。こうすることで家中が散らかされてしまうことを防ぐことができます。そして、例えばその「ゾーンから出たおもちゃなどは、ママのおもちゃにします」などと子どもと約束しましょう。そうすることによって、子どもも約束を守ろうと思うはずです。またゾーン内だけでおもちゃを出して遊べたら褒めてあげましょう。
また、部屋の隅などに大きな箱を置くなど、おもちゃを片づけるスペースのルールを作り、片づけの仕方を分かりやすくします。多くの場所に色んなものを片付けるより、子どもにとってルールが守りやすくなります。また、片付ける箱や入れ物に中に入れるべきものの絵や写真を貼ると、何をどうするべきなのかより理解しやすくなります。
片づけられたら、「ちゃんと片付けられたね、えらい!」と忘れずに褒めましょう。片づけ終わった時から時間が経ってから褒めるのではなく、その場で褒めてあげることを心がけましょう。
2. 宿題を何度言ってもやらない
・宿題よりもやりたいことを優先してしまう
・宿題をやっている最中に気が散ってしまう
・宿題があることを忘れてしまう
・学校の勉強に集中できないので、宿題が分からない
大きな原因としては、この4つが考えられます。一つずつの対処法を見ていきましょう。
まず気が散って宿題ができない場合には、子どもが集中しやすい環境を作ってあげることが大切です。勉強するスペースを部屋の端にしたり、ついたてを使って視覚的な刺激が入らないようにし、注意が他のところに行かないような環境を作りましょう。机の上は片づけ、宿題をするのに必要なものだけを準備すると、やるべきことに集中できます。
次に、宿題があることを忘れてしまう場合には、しっかり管理する方法を子どもと一緒に見つけましょう。例えば、宿題は必ず決めたファイルに入れるというルールを決めることで、そのファイルを見るだけで宿題があるかどうかが分かります。連絡帳や宿題ノートに書いたり、担任の先生に協力してもらうのもの一つの手ですね。
また、本人が好きな活動を先に始めてしまうと、それを中断して宿題をするのが難しくなることがあります。その場合は、まず「ご飯の前に宿題をする」「ゲームは宿題が終わってから」など、いつ宿題をするか、明確なルールを子どもと一緒に決め約束します。
そしてスケジュールなどを活用して、できるだけ最初に宿題に取り組むように習慣づけていきましょう。長い時間集中できない場合は、タイマーやスケジュールを活用し、休憩をはさむようにしたり、教科や課題を変えて新しい気分で取り組めるようにしたりするなどの工夫が効果的です。
最後に、授業に集中できないため宿題が分からないのであれば、学校に協力してもらい、授業にも集中できる環境を用意してもらいましょう。一番前の席に座ってできるだけ注意が散漫にならないようにしたり、先生にこまめに声かけしてもらうようお願いしましょう。
勉強が苦手な場合には、毎日時間を決めて親が一緒に勉強を教えたり、個別指導塾や家庭教師を検討するのもよいでしょう。
3. 突然飛び出す。すぐにどこかへいなくなる
飛び出しに危険が伴う場合には、子どもの命を守ることが第一です。まだ幼い年齢の時にはハーネスなどを使ったり、歩くと音が鳴るサンダルなどで動きがわかるようにするのもおすすめです。万が一に備え、GPS機器などを持たせてもよいでしょう。
原則としては、飛び出した時に単に叱るだけではなく、親や周囲の人に行き先を伝えてから行動するように習慣づけることが大切です。
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4. 友達に乱暴をしてしまう
その上で、乱暴をする以外で問題を解決できる行動を提案してみましょう。「次からは○○しないで(言わないで)って言ってみたらどうかな?」などです。ルール化して、絵や文章にして明示しておくとよいでしょう。なかなかすぐには改善できないかもしれませんが、諦めずにわかりやすい方法で伝えてください。
5. ゲームに熱中してやめない
まずは宿題の後にゲームをするという約束を定着させることから始めましょう。それまではゲームに熱中しすぎて約束の時間を少し過ぎたとしても叱らないようにしましょう。この約束が定着してきたら、ゲームの終了時間を定着するために約束を守らせましょう。約束は1つずつすることがコツです。
6.癇癪を起こして暴れる
暴れているときに叱っても、子どもの心には届きません。一度トラブルの原因がある場所から離して、しばらく別の部屋などに移動させ、大人も少し距離をとってクールダウンを促します。
負けて悔しい、と思う気持ち自体は悪くないので、落ち着いて話を聞ける状態になったら、「悔しかったんだね。」と子どもの気持ちを受けとめてあげましょう。その上で、子どもの態度は問題にせず、論理的にわかりやすく何がいけなかったかを伝えます。癇癪を起こすのではなく、別の方法で悔しさを表現したり落ち着き方を学べるように一緒に解決法を考えましょう。
7. 落ち着きなく動き回る
ADHD(注意欠如多動症)の症状の一つ、落ち着きのなさは、不慣れな場所や緊張を強いられる場所、刺激の多い場所で起きやすいのが特徴です。不安な気持ちら引き起こされるので、強く注意されると、より緊張してコントロールが難しくなります。
外出先などで静かにしてほしい時やおとなしく待ってほしい時は、好きな絵本やDVDなどを見せる、絵が好きならお絵セットを持って行って描かせるなどの工夫をするとよいでしょう。
また、ADHD(注意欠如多動症)のある子どもは筋力やバランス感覚の弱いことも考えられます。姿勢を保つのが難しく疲れやすいことも、じっとしていられない原因の一つなのです。動き回ったり、休憩したり、リラックスできる時間を意識して取り入れましょう。日頃から筋力やバランス感覚をつけるように運動機能面のトレーニングをしてみてもよいでしょう。
また、多動をおさえられたときにタイミングよくほめるのも効果的です。おとなしく座っていられたら「頑張ったね。おとなしくしていられたね」と肯定し、頑張りをほめます。最初は2、3分からスタートし、少しずつじっとしていられる時間を伸ばしていくようにします。
8. 忘れ物が多い
学校の準備などは子どもと一緒に確認しながら進めます。イラストや写真入りの持ち物メモをつくり、チェックするのもおすすめです。荷物はできるだけひとまとめにしたり、ノートは全教科で1冊にしたり、工夫して持ち物を少なくするのもよいでしょう。繰り返し、根気よく続けることで、こまめに確認する習慣をつけることが大切です。
9. 声が大きく、いつもしゃべっている
また、声に出して言うべきことと心の中で言うべきことの違いを教え、心の声は心の中だけでおしゃべりをして声に出さないことを教えます。「しずかにお話を聞けて、えらかったね」などと、できたらほめることも忘れずに。
ADHD(注意欠如多動症)のある子どもへの接し方は?
指示は具体的に一つずつ
ついあれこれと一度にやってほしいことを言いたくなりますが、どうしていいか混乱したり、ハードルが高いと失敗や自信を失う原因になります。できそうなことに一つずつ取り組む「スモールステップ」で進めましょう。
高いところに登ったり、やって欲しくないことをした場合も、「ダメ」「やめて」「この前も言ったでしょ!何度も言わせないで」などと感情的に怒るのではなく、「落ちたら危ないから降りて」「○○を下に置いて」など分かりやすく具体的に注意するようにします。
視覚的な工夫をする
守りやすいルール&ごほうびでやる気を引き出す
約束が実行できたら、ごほうび制にするのもおすすめです。ADHD(注意欠如多動症)のある子どもはごほうびがあると頑張れます。シールなどの目に見えるごほうびや、ごほうびリストをつくっておいて、できたらもらえるシステムもやる気と達成感につながるのでおすすめです。これを繰り返すことで、「目標を立てて実践する」というよい練習になります。
我慢できる時間や頑張れることは、少しずつ増やしていくようにしましょう。
良いことやできたことに気がついたらすぐに褒める
ほめる時には目を合わせて、ちょっとオーバーかな?と思う程度でもいいので大げさに褒めてあげましょう。ふだん注意されたり怒られたりという機会が多いADHD(注意欠如多動症)のある子どもにとって、成長のために褒めるのは大変重要となってきます。できて当たり前のことでもよいのです。良いことやできたことがあったとき、積極的にコメントをしてあげましょう。
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ADHD(注意欠如多動症)のある子どもに接する際に注意するべきこと
1. 子どもを傷つけない効果的な叱り方を
・きつい口調で感情的に叱らない
・人格を否定するような叱り方をしない
・他の子と比べない
・ミスが多くてもあれこれ細かいことを一度に注意しない
上記のような叱り方だとかえって怒られているということだけしか頭に入ってこない場合があったり、反抗心を刺激するだけになることがあります。子どもの近くに行って、静かに穏やかな声で指摘をしましょう。
障害がある無いに関わらず体罰は絶対してはいけません。お子さんの心が傷つくだけでなく、自らも暴力をふるうようになってしまいます。何度言ってもなかなかできないときなど、親としてはつらく大変ですが、それはADHD(注意欠如多動症)の特性によるもので、一番つらいのは本人のはずです。根気よく向き合ってあげましょう。
2. うまくいかないときは理由を考えて環境を変える
・ハードルが高すぎた
・その子に環境ややり方が合っていない
・指示の出し方が分かりにくかった
など、うまくいかない原因が見つかったら、解決法をさがし、子どもがやりやすいように環境を変えていきます。
3. 障害を正しく理解する
・親の育て方やしつけのせいではない
・なまけたり、相手を困らせようとしているのではない
・本人自身ではコントロールできず、悩んでいる
上記を伝え誤解を解くとともに、具体的な対処法を一緒に考え、周囲と協力体制をつくっていけるとよいですね。
4. ストレスに気をつける
ADHD(注意欠如多動症)のある子どもの場合、不安や緊張、疎外感が強まると症状が激しくなってしまいます。トラブルが続くことで劣等感を抱いたり自己評価が低くなりやすく、ストレスがたまるとうつなどの二次障害にもつながります。反抗的な行動をとってしまう「反抗挑戦性障害」を引き起こすことも少なくありません。
また、子どもに向き合う大人も、何度も注意してイライラしたり、周囲の無理解に接したり、苦しいことも多いでしょう。親が心身の健康を崩してしまう場合も多いと言われています。
深刻に考え、思いつめるとかえって事態は悪化することもあります。注意をしたから、工夫をしたからといってすぐにできるものではないと割り切ることも時には必要です。ゆっくりと少ずつできるようになるのを待ちましょう。そして悩みは一人で抱え込まず、児童相談所や療育センターなどの身近な専門機関で相談したり、周囲に協力を求め、ストレスをためこまないことが大切です。
ADHD(注意欠如多動症)とうまく向き合う方法を見つけましょう
ADHD(注意欠如多動症)の症状は子どもによってさまざまです。そのため1人1人にすべき対処法も同じではありません。その子にあわせた対処が必要になってきます。その子が苦手なものを分析し、困難なことを取り除き、やりやすくなる方法を考えましょう。
また、「できない」が目立ちがちですが、ADHD(注意欠如多動症)のある子どもは好きなことや興味のあることにはびっくりするぐらい集中力を発揮します。できないことだけに固執せず、得意なことや好きなことに目を向け、伸ばしていきましょう。成功体験が自信につながり、少しずつ「できた」が増えていくはずです。
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