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[第3回]

「もう生きてたらアカン」そんな僕を変えてくれた2つの出来事

学校を休み始めたとき12歳の彼には「しんどい出来事」が重なりすぎていた。小学生の時に自律神経失調症と診断された彼が、今、こんなにも爽やかで明るい笑顔を見せてくれるのは、なぜだろう。学校に行けなかった小学校6年生から中学3年生まで、一体どんな環境で過ごしていたのだろう。

「僕が不安にさせてるんだ」自分を責めていた

頼れるのは親だけ。
当時は小学校6年生。まだ子どもだった僕にとって、親の存在はとてつもなく大きい。

そんな親が、僕の将来に不安を抱いている。
僕の人生はどうなるのだろう。未来は真っ暗だった。
親が不安になることで、同じように僕も不安になった。

「もう生きてたらあかん」
自分自身を責めた。

親の不安な気持ちは痛いほどわかる。ただ、親の不安そうな顔を見てるのは本当に辛かった。

そんなある時、母親が「学校だけがすべてじゃない」と言ってくれた。

ホッとした。
もう無理に行かなくてもいいんだ。—
それ以上に、大きい存在のはずの親が、またどっしり構えてくれたことに、心から安心したのを覚えている。

僕を変えようと動くのではなく、親が僕に合わせてくれた。
きっと僕の知らないところで、たくさん勉強してくれていたのだろう。

ゆっくりと、自分のペースで進めばいい。そう思えるようになった。

仲間と出会い、「水を得た魚」のように

「外に出た時、学校の誰かにみつかったらどうしよう」
そんな怖さが常にあった。
夕方や昼休みの時間は、外に出られない。

そんな状態だった僕を、親がとある場所に連れ出してくれた。
それは「不登校の親の会」の集まり。

親の会には、学区を超えて色んな家族がいた。
その会で、今の仲間と出会ったのだ。

山崎史朗と山崎雄介。この双子の兄弟に出逢った次の日から、僕の生活は激変。

外にほとんど出られなかった僕が、毎日外出するようになったのだ。
毎日一緒に遊んでいた。この2人と遊ぶためなら、不思議と外出は怖くなかった。
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仲間からは「ノリくん」と呼ばれている
仲良くなれたのは、不登校経験があるからではない。
ただ、お互いに触れてほしくない話をあえてする必要がなくて、気楽だったのだと思う。

今、仲間とぶつかることもある。
でも、お互いに尊敬しあっているから、思う存分ぶつかっていける。

この仲間になら、絶対大丈夫。信頼している。

親を支えてくれた「親の居場所」

親はいつから「不登校親の会」に行っていたのだろう。
僕の知らないところで、色々な場所に出向いていたのかもしれない。

不登校になって、最初はひどく動揺していた母。
そこから時間をかけて、「学校だけが全てじゃない」と僕の状況を受け入れてくれるようになった。

その変化を考えると、「親自身のサポーターの存在」は大きいと思う。
子どもを支える親を、支えてくれる場所。親だって一人の人間だから、子どもの変化やつまづきを目の前に、動揺せずにスパッと動くなんて、難しいと思う。親も誰かに頼っていいのだ。
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講演ライブへの移動中

学校に行かなくても、人生は大丈夫だから

いま僕が不登校だったことを思い返して悩むことはない。

でも、あの時の僕と家族は、全員しんどかった。義務教育が終わってホっとしたのも覚えている。
ただ、あの時間は、僕にとって、「自分や家族と向き合えた時期」。
あの数年間で、自分のことを良く知ることができた。

就職しないとあかん、学歴がないとあかん、外にでないとあかん・・・
そう思うから、しんどい。

僕らもそうだけど、自分たちの好きなことや得意なことで、少ないながらお金をもらって生きていく事はできる。
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ライブハウスでの活動も
だから、無理をして生きづらくなるなら、好きな事をのびのびとやっていけたらいいと思う。今の時代、そういう選択肢もあるのだから。

全国のお母さん、お父さんへ

お子さんのこと、ものすごく心配だと思います。

でも、心配な気持ちが「学校へ行ってほしい」「前みたいに友達と遊んでほしい」と、お子さんへの具体的な願いになればなるほど、お子さんはしんどくなってしまう。

「幸せになってほしい」という、根本の気持ちだけを伝えてあげてほしい。

講演ライブでの出会いを通して、子育ての根底にある想いは、「健康であってほしい」「幸せであってほしい」という事なんだと痛感しています。その部分を、勇気をもって伝えてあげてほしい。それだけで、ものすごく安心できるんです。

もう一つ。
親御さんも、自分自身の時間を大事にしてほしい。

心配で眠れないくらい不安な時もあるでしょう。
でも、お子さんのためにだけではなく、どうか自分自身を大切にしてください。
親御さんの活き活きしている姿や、余裕のある豊かな心に、子どもはホッとできるんです。
そんな親御さんと一緒なら、ゆっくりでも、きっとその子らしく進んでいきますから。僕がそうだったように。
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講演ライブの合間に撮影
年間130本も講演ライブを行う八田さん。それでも、話す事やお客さんの表情がみるみる変わっていく姿に、慣れることはないという。

彼の言葉が「ギリギリの子」の心に響くのはなぜだろう。
それは「今、目の前にいる一人と真摯に向き合う」という彼の想いが声や姿、奏でる音を通して伝わっていくからなのかもしれない。
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