発達性協調運動障害とは?ただ不器用なだけではない?症状、困りごと、相談先、家庭での対応まとめ

2016/07/27 更新
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発達性協調運動障害とは、手と手、目と手、足と手などの個別の動きを一緒に行う運動が著しく困難な障害です。キャッチボールが苦手であったり、消しゴムを使うと紙が破れてしまったりと、日常生活での運動に困難が現れます。この記事では、発達性協調運動障害について、その定義、症状、原因、年齢別の困りごとの例、相談先、家庭でできることをご紹介します。

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監修: 高畑 脩平
白鳳短期大学 リハビリテーション学専攻 作業療法学課程 講師
奈良教育大学特別支援教育研究センター 研究員
奈良県障害者総合支援センター
作業療法士
目次
  • 発達性協調運動障害とは?
  • 発達性協調運動障害と運動能力
  • 発達性協調運動障害のある子どもの年齢別の困りごと
  • 発達性協調運動障害の原因
  • 発達性協調運動障害の診断と発達障害の関係は?
  • 発達性協調運動障害について相談できる機関
  • 発達性協調運動障害への支援を受けられる機関
  • 発達性協調運動障害の支援・治療方法
  • 家庭でもできること
  • まとめ

発達性協調運動障害とは?

そもそも協調運動とは?

協調運動とは、手と手、手と目、足と手などの個別の動きを一緒に行う運動です。例えば、私たちがキャッチボールをする時、ボールを目で追いながら、ボールをキャッチするという動作を同時にしていますよね。他にも、縄跳びをする時、ジャンプする動作と、縄を回す動作を同時にしなくてはなりません。このような運動を協調運動と言います。

発達性協調運動障害とは?

発達性協調運動障害とは、日常生活における協調運動が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確であったり、困難であるという障害です。別名、不器用症候群とも呼ばれていました。

本人の運動能力が期待されるよりどのくらい離れているかは、通常「MABC-2」(Movement Assessment Battery for Children,2nd version)や、「JPAN」(日本版感覚統合検査)と呼ばれる感覚処理行為機能テストなどのアセスメントテストによって評価されます。これらのテスト結果を参考に、医師が発達性協調運動障害かどうかを判断します。

アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版 テキスト改訂版)では以下のような診断基準になっています。

A.協調運動技能の獲得や遂行が、その人の生活年齢や技能の学習及び使用の機会に応じて期待されるよりも明らかに劣っている、その困難さは、不器用(例、物を落とす、またはぶつかる)、運動技能(例、物を掴む、はさみや刃物をつかう、書字、自転車に乗る、スポーツに参加する)の遂行における遅さと不正確さによって明らかになる。

B.診断基準Aにおける運動技能の欠如は、生活年齢にふさわしい日常生活活動(例、自己管理、自己保全)を著明及び持続的に妨げており、学業または学校での生産性、就労前及び就労後の活動、余暇、および遊びに影響を与えている。

C.この症状の始まりは発達障害早期である。

D.この運動技能の欠如は、知的能力障害(知的発達症)や視力障害によってうまく説明されず、運動に影響を与える神経疾患(例、脳性麻痺、筋ジストロフィー、変性疾患)によるものではない。

出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4260019074

発達性協調運動障害と運動能力

人間の運動には大きく分けて、粗大運動と微細運動があります。人間は、さまざまな感覚器官から得られた情報をもとに、初めは姿勢を保つことや寝返りといった粗大運動を習得し、次第に段階を踏みながらより細かい微細運動ができるようになります。

粗大運動

粗大運動とは、感覚器官からの情報をもとに行う、姿勢と移動に関する運動です。

粗大運動には、先天的に人間に備わっている運動と、後天的に学ぶ運動があります。寝返り、這う、歩く、走るといった基本的な運動は人間が先天的に持っている粗大運動能力です。一方、泳ぐ、自転車に乗るなどの運動は、環境的な影響や学習によって身につけると言われています。

微細運動(巧緻運動)

微細運動とは、感覚器官や粗大運動で得られた情報をもとに、小さい筋肉(特に指先など)の調整が必要な運動です。

モノをつまんだり、ひっぱったり、指先を使って細かな作業、例えば、絵を書く、ボタンをかける。字を書くなどの運動があります。成長とともに、粗大運動から、より細かい微細運動ができるようになります。
 
 
発達性協調運動障害のある人は、粗大運動や微細運動、またはその両方における協調運動が同年代に比べぎこちなく、遅かったり、不正確になります。

子どもによって、乳幼児期の粗大運動には全く遅れや苦手はなかったが、幼稚園や、小学校に行くようになり微細運動を必要とする場面が増え、微細運動が顕著に困難である場合もあります。

発達性協調運動障害のある子どもの年齢別の困りごと

発達性協調運動障害かどうかの判断は、協調運動が本人の年齢や知能に応じて期待されるよりも著しく不正確であったり、困難であるかどうかが重要なポイントとなります。以下で年齢別によく見られる傾向を紹介します。

とはいえ、年齢が低ければ低いほど、得意な運動と困難な運動は子どもによって大きく差があり、人それぞれです。ですので、以下の例に当てはまるからといって、必ずしも発達性協調運動障害であるということではありません。

子どもの様子を見つつ、気になるときは専門家に相談してみましょう。

乳児期(1歳未満)

乳児期は、そもそも基本的な粗大運動を学び、獲得していく段階です。また子ども一人ひとりの運動機能獲得のスピードは違いますし、できること、できないことも個人差が大きい時期です。ですので、苦手なことがあっても心配する必要がない場合も多いと言えます。

ですが、発達性協調運動障害と診断される子どもは、乳児期に以下の様な特徴が共通して見られる傾向があります。

例:母乳やミルクの飲みが悪い、離乳食を食べるとむせる、寝返りがうまくできない、はいはいがうまくできない

幼児期(1歳以上6歳未満)

幼児期は、特に5歳を過ぎると、運動能力の個人差が縮まってきます。そのためこの時期に発達性協調運動障害と診断される場合が比較的多いと言えます。発達性協調運動障害のある幼児は以下のことが不正確であったり、習得が遅れていたり、困難な場合があります。

例:はいはい、歩行、お座り、靴ひもを結ぶ、ボタンをはめる、ファスナーを上げる、転んだ時に手が出る、平坦な場所で転ばない、トイレで上手にお尻をふく

小学生(6歳以上13歳未満)

小学校に上がると日常生活、学習生活でより複雑で繊細な動作を求められる場面が増えます。そのため微細運動での協調運動障害が顕著に表れます。発達性協調運動障害のある子どもは以下のように不正確であったり、習得が遅れていたり、困難なことが見られる場合があります。

例:パズルを組み合わせたり、模型を組み立てたりするのが苦手、ボール遊びが苦手、文字をますの中に入れて書けない、階段の上り降りがぎこちない、靴ひもを結べない、お箸をうまく使えない、文房具を使った作業が苦手(消しゴムで消すと紙が破れる、定規をおさえられずにずれるなど)

発達性協調運動障害の原因

発達性協調運動障害のはっきりとした原因は、まだわかっていませんが、いくつかの原因が検討されています。

まず妊娠中、母親のアルコールを摂取、またはそれによる早産、低体重で生まれた場合、発達性協調運動障害を発症する確率が高いという研究があります。

次に、ADHD、学習障害、アスペルガー症候群を含む自閉スペクトラム症との併発が非常に多いため、なんらかの共通する遺伝的要因があるのではないかと言われています。また、上記のような障害のある子どもは定型発達の子どもより、発達性協調運動障害を発症する可能性が高いと言われています。

5歳から11歳の子どもでは、5~6%が発症します。また、女児より男児のほうが発症率が高いことが分かっています。

発達性協調運動障害の診断と発達障害の関係は?

診断基準ごとの違い

現在使われている精神疾患の診断基準は、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』5版テキスト改訂版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)による診断基準があります。

現在、最新の診断基準である『DSM-5』が主流になりつつありますが、医師や医療機関によってどちらの診断基準に準拠しているかは異なります。

発達性協調運動障害における診断基準の違いは、『ICD-10』と『DSM-5』で異なる点があります。『ICD-10』では発達性協調運動障害は心理発達の障害に分類されるため、精神遅滞と知能指数が重要になります。

『ICD-10』の診断基準では、明らかな精神遅滞(知能指数70以下)の場合、運動の困難さ、不器用さはその精神遅滞が原因によるものと判断されます。一方で精神遅滞のない広汎性発達障害の場合、発達性協調運動障害と併発し、両方の診断が下りる場合があります。

『DSM-5』の診断基準では、発達性協調運動障害は神経症群に入るため、精神遅滞や知能指数との関係ではなく、純粋に発達性協調運動障害の症状に当てはまるかどうかが重要になります。

※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。WHOでの公表・承認を受けて、各国では翻訳やICD-10/11 変換表の作成、疾病分類表、死因分類表の作成などの作業が進められ、審議、周知などを経て施行されていきます。ICD-11への改訂によって分類コードが変化すると、書類上で要求されるICDコードが変わったり、疾病概念やカテゴリー、名称や診断基準も変更になる可能性もあります。

発達性協調運動障害と広汎性発達障害(アスペルガー症候群)との関係

広汎性発達障害(アスペルガー症候群)と発達性協調運動障害を併発することは少なくありません。『ICD-10』の診断基準では、両方の診断基準を満たしている場合、両方の診断が下ります。

対人関係において、認知されたものを統合する際に混乱が起きコミュニケーションがうまくとれないというアスペルガー症候群の特徴が、運動機能面においても現れているのではないかと検討されています。
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発達性協調運動障害と知的能力障害との関係

『ICD-10』の診断基準では、子どもが知的能力障害を持っている場合、その知的能力障害のため運動能力が損なわれているとの見なされる場合もあります。

しかし、その運動が知的能力障害を考慮してもなお、不器用であったり、不正確である場合は、知的能力障害と発達性協調運動障害の両方の診断が下ります。
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発達性協調運動障害とADHD(注意欠如・多動性障害)との関係

ADHDのある子どもがよくころんだり、物にぶつかったりしてしまうのは、ADHDによる注意散漫や衝動性に原因があるのか、それとも発達性協調運動障害によってなのかを注意深く観察する必要があります。

子どもの運動に対する困難さ、不器用さは必ずしも、ADHDだけが原因、発達性協調運動障害だけが原因というわけではなく、両方が原因となっていることもあります。特にADHDの場合、発達性協調運動障害との併存確率は50%と非常に高いです。

発達性協調運動障害とADHDは併存しやすいため、二つを併発している場合は、DAMP症候群(deficits in attention, motor control and preception/注意・運動制御認知における複合的障害)と呼ばれることもあります。
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発達性協調運動障害について相談できる機関

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