場面緘黙とそのほかの疾患との関係

場面緘黙は不安症の一種と考えられていますが、その他の疾患・障害と併存することもあります。以下では、場面緘黙との併存が多い疾患・障害について説明していきます。

ほかの不安症との関係

場面緘黙の併存症で最も多いものは、ほかの不安症です。社交不安症や分離不安症などとの併存が多いといわれています。

発達障害との関係

2000年にアメリカの学会でクリステンセンが発表した説によると、発達障害は、不安症と同じくらい場面緘黙と併存しやすいと言われています。コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)※1、DCD(発達性協調運動症)※2、軽度知的障害(軽度知的発達症)※3、ASD(自閉スペクトラム症)などとの併存が多いようです。

※1 コミュニケーション障害は現在、「社会的コミュニケーション症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「コミュニケーション障害」といわれることが多くあるため、ここでは「コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)」と表記します。

※2 発達性協調運動障害は現在、「発達性協調運動症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「発達性協調運動障害」といわれることも多くあります。ここでは「DCD(発達性協調運動症)」と表記します。

※3 現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と表記されていますが、知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害(知的発達症)」という表記を用います。

そのほか

夜尿症(Kristensen, 2000)、聴覚に関する疾患(Bar-Haim, et al., 2004)などを合併している場合が、場面緘黙がない子どもに比べて多いという報告もあります。
参考: Kristensen, 2000, Selective mutism and comorbidity with developmental disorder/delay, anxiety disorder, and elimination disorder.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10673837

場面緘黙の相談先

場面緘黙は、発症時期である4歳前後だと、まだ学校に通っておらず、他人と話す機会がそもそも少ないため、症状が見落とされがちです。また学校に通い始めてからも性格の問題だと片づけられてしまうこともあります。

場面緘黙は、本人が好きで黙っているわけではなく、本人が話したくても話せない状態であることに注意が必要です。子どもに場面緘黙があるかもしれないと思ったら、以下の機関に相談してみましょう。

保護者など周りの人が少しでも早く症状に気づくことができれば、適切なサポートも可能になりますし、生活しやすい環境を整えることができるでしょう。一方、支援や治療を受けずにいると、症状改善が遅れたり、二次障害が発現するリスクが高くなります。

家族だけで抱え込まず、専門家や周りの人たちの協力を得ながら、本人にあった接し方でサポートすることが大切です。

子どもの場合の相談先

1. 保健センター
市区町村ごとに設置された、地域の健康づくりの場です。保健師が常駐しており、子どもの発達に関する相談に乗ってもらえます。医療機関や療育施設の紹介をしてくれる場合もあります。

2. 子育て支援センター
子育て家庭の支援に特化している機関です。自治体運営や医療機関に委託運営されており、保健師または看護師が相談に乗ってくれます。中には、療育指導を実施している子育て支援センターもあるので、お近くのセンターに問い合わせてみましょう。

3. 児童相談所
都道府県ごとに設置されている、児童福祉を専門とした機関です。医師、児童心理士、児童福祉士がおり、相談に乗ってもらえます。必要に応じて発達検査を行ってくれる場合もあります。また、全国共通児童相談所ダイアルがあり、189番にかけると24時間365日、児童福祉に関する相談を受けてくれます。

大人の場合の相談先

場面緘黙のある青年・成人の方にとっては、電話や対面での相談はハードルが高いかもしれません。webで予約できる相談機関や病院、メールなどで相談に乗ってくれる機関を探してみるのもおすすめです。

1. 精神保健福祉センター
都道府県ごとに設置されており、精神保健の向上を専門とした機関です。ここでは電話相談、施設によってはメール相談を受け付けているところもあります。また、精神障害者向けのデイケアを行っているところもあります。

以下は全国の精神保健福祉センターの一覧です。
参考:全国の精神保健福祉センター一覧|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubutsuranyou_taisaku/hoken_fukushi/index.html
2. こころの耳
厚生労働省が行っている、働く人向けの心のポータルサイトです。ここでは、メール相談を受け付けており、場面緘黙の症状でうまく話せない方や、電話や面接にハードルを感じる方におすすめです。
参考:働く人の「こころの耳メール相談」|一般社団法人日本産業カウンセラー協会
https://kokoro.mhlw.go.jp/mail-soudan/
3. 相談事業所など
上記の他にもお住まいの地域の自治体に相談窓口が設置されている場合がほとんどです。電話や対面での相談が多いのですが、お住まいの地域の自治体に確認してみましょう。

場面緘黙の治療・支援機関

病院

上記の相談機関では、病院を紹介してもらえることもあります。その場合は、紹介された病院へ行くことをおすすめします。
相談機関を介さずに病院へ行く場合は、心療内科や精神科を受診してみましょう。その上で、必要があればカウンセリングを受けていきましょう。

療育施設、発達支援センター

子どもに対しては療育施設や発達支援センターで療育を行うことで、場面緘黙の症状が緩和されるケースもあります。

学校

お子さんが小学生の場合は、学校のスクールカウンセラーに相談するのも良いでしょう。
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