特別支援学級の教育環境

特別支援学級は基本的に小学校、中学校の学習指導要綱に従いながら、特性などを踏まえて一人ひとりに合わせた教育を行っていきます。小学校の特別支援学級では担任の先生が全教科を見ることが多いですが、中学校の特別支援学級では教科担任制で授業ごとに先生が変わるところが多いとされています。

少人数のクラス編成

特別支援学級の特徴として、クラスの人数があります。クラス定員は8名までと定められており、通常の学級と比べて少人数で、子どもたち一人ひとりの状況に合わせた教育が行いやすくなっています。

また、教室内の備品なども子どもの実態に即して安全で過ごしやすい環境になるように工夫がされています。例えば、子どもたちの特性に応じた備品の配置や、視覚的に分かりやすい掲示物の設置などが行われています。

自立活動

自立活動とは、特別支援学校学習指導要領に定められている教育活動の一つです。障害による学習上または生活上の困難を改善・克服するための指導を行う目的で設けられています。

例えば、身体の動きに困難のある子どもに対してはそれを改善するための指導が、コミュニケーションに不安のある子どもに対してはそれを支援するための指導が自立活動の時間に行われます。具体的な内容は子ども一人ひとりに合わせたものになっています。

自立活動には以下の6つの項目があります。
・健康の保持
・心理的な安定
・人間関係の形成
・環境の把握
・身体の動き
・コミュニケーション
参考:文部科学省|特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編 (幼稚部・小学部・中学部・高等部)
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2009/06/18/1278525.pdf

交流及び共同学習

小学校・中学校、および特別支援教育の学習指導要綱には、障害のある子どもと障害のない子どもが活動を共にする、協同や共同学習の機会も設けるよう定められています。

具体的には、
・朝の会や帰りの会を、同じ学年の通常学級である「交流学級」で子どもたちと一緒に過ごす
・給食や体育、音楽の時間は通常学級で活動するなど、通常学級と特別支援学級を行き来する

といった例があります。以下は小学校、中学校それぞれの自閉症・情緒障害特別支援学級の時間割の例です。背景に色がついている教科は、通常学級で学習しています。このように交流・共同学習を行っています。
小学校の自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍する2年生のある日の
時間割
小学校の自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍する2年生のある日の 時間割
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参考:島根県教育委員会 P38 通常の学級と特別支援学級との交流及び共同学習の実際(1)(小学校自閉症・情緒障害特別支援学級の例)
https://www.pref.shimane.lg.jp/education/kyoiku/kikan/hamada_kyoiku/jimusyo/tokulink.data/B-371.pdf.pdf
参考:独立行政法人国立特別支援教育総合研究所|特別支援学級の教育課程編成・実践ガイドブック
https://www.pref.shimane.lg.jp/education/kyoiku/kikan/hamada_kyoiku/jimusyo/tokulink.data/B-371.pdf.pdf

個別の教育支援計画を作成

特別支援学級では、子どもたち一人ひとりに学習計画を作成します。特別支援学級に通う子どもは生活や学習において何らかの困難があるため、特性や性格、興味関心、生活環境などさまざまなことを踏まえたうえで、その子に合った学校生活が送れるように計画を作成していきます。

計画は担任だけで作るわけではなく、本人、保護者、交流学級の先生、特別支援コーディネーターなどさまざまな人の意見を参考にして作っていきます。計画は個々で違っており、対人関係が苦手な子どもにはコミュニケーションの基礎や場面に応じたふるまいを学ぶ授業を取り入れたり、体の動かし方に課題がある子どもにはその子にとって分かりやすい運動の授業を行っていくなどがあります。

特別支援学級の指導内容例

ここでは、特別支援学級で行われている指導の具体例を2つ紹介します。

人との交流が苦手な子どもへの指導例

一つ目は人との交流が苦手な子どもの例です。その子は人前で発言することや人の顔を区別することに困難がありました。そこで、自立活動の一環で顔写真と名前、役割(先生、友だちなど)が描かれたカードを用意し、ゲーム形式で覚えていく指導を行いました。

それとともに、発言内容が描かれたカードも用意し、人前ではカードを見せることで意思表示するようにしました。また、交流学級の先生や生徒にも協力を依頼し、積極的に関わってもらうことに。その結果、ほかの生徒との関係も良好になり、徐々に自分の言葉で発言できるようになっていきました。
参考:独立行政法人国立特別支援教育総合研究所|特別支援学級の教育課程編成・実践ガイドブック
https://www.pref.shimane.lg.jp/education/kyoiku/kikan/hamada_kyoiku/jimusyo/tokulink.data/B-371.pdf.pdf

発言のタイミングが分からない子どもへの指導例

次は、衝動性が高く発言のタイミングが分からない子どもへの指導例です。授業中に先生の言ったことに対して反射的に発言してしまうという課題があったため、自立活動でその子の好きなクイズを使った指導を行いました。
クイズでは「指名された人が先生のもとに行き耳打ちする」というルールを設定しました。繰り返し実践していくうちに、指名されてから回答することや発言のタイミングが身についていきました。

このように、特別支援学級では一人ひとりの課題に対して、特性や性格などを踏まえたうえで工夫しながら指導を行っていきます。
参考:独立行政法人国立特別支援教育総合研究所|特別支援学級の教育課程編成・実践ガイドブック
https://www.pref.shimane.lg.jp/education/kyoiku/kikan/hamada_kyoiku/jimusyo/tokulink.data/B-371.pdf.pdf

特別支援学級のメリット・デメリット

通級(通級指導教室)・特別支援学級・特別支援学校には、それぞれにメリット・デメリットがあります。どの環境がよいかは人によって異なるため、自身の子どもに合った先を選ぶことが大事です。メリットとデメリットも含めて、進学先を選ぶ際の参考にしてみてください。

メリット

■通級(通級指導教室)
・通常学級の子どもとコミュニケーションをとる機会も比較的多い
・特性に応じた指導を受けられる
・通常学級から離れる時間が気分転換になることもある

■特別支援学級
・給食の時間や昼休みなどは通常学級の子どもと関わる機会がある
・特性に準じたカリキュラムで指導を受けられる
・学校と相談しながら通常学級との行き来ができるようにもなる

■特別支援学校
・特性に合わせたカリキュラムで、専門性を持った先生からきめ細かい指導が受けられる
・高等部では職業教育が受けられる

デメリット

■通級(通級指導教室)
・すべての学校に通級(通級指導教室)や特別支援学級があるわけではなく、場合によっては遠くの学区に通学しなければならない
・学級数や受け入れ可能人数などに地域差が大きい
・通常学級との行き来が子どものストレスになることもある
・特別支援学級は小学校では主に同じ先生が教えるが、中学校だと教科ごとに先生が変わる場合がある

■特別支援学級
・知的障害特別支援学級の場合は、基本的に知的障害に合わせた教育課程を組むため、高校受験に必要なあらかじめ定められた科目数を履修できず、通常の高校への受験ができない(ただし、知的障害特別支援学級在籍の場合も、カリキュラムを工夫することにより必要な科目数を履修できていれば、受験が可能になるので、あらかじめ入級時に相談することが必要です)

■特別支援学校
・地元の学校との交流教育はあるが、通常学級の子ども、同世代の子どもと関わる機会が少ない
・障害の程度によっては入学できない可能性がある
・特別支援学校高等部の卒業で制度上は大学受験資格は得られるが、大学側が定めた科目の単位を取得していないと受験自体ができない場合がある(特に知的の特別支援学校については、入学前に大学受験に必要な単位とその単位がとれるか確認が必要)
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