特別支援学級とは?通級との違い、対象の障害や基準、授業内容を紹介
ライター:発達障害のキホン
特別支援学級は障害のある子どもへの特別支援教育の一つで、その子どもの特性に合った教育を受けることができる学級です。ただ、特別支援教育には通級(通級指導教室)や特別支援学校など種類があり、どの環境が子どもに合っているか分からないという方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、特別支援学級の教育環境や教育内容、障害ごとの支援や入学の方法、進路まで詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
特別支援学級ってどんなところ?
特別支援学級とは、障害のある子どもを対象に、学習や生活における困難を克服するための教育を行う学級です。特別支援学級は学校の中の学級(クラス)の一つで、主に小学校と中学校の中に設置されていて、子ども一人ひとりの特性に合わせた授業が実施されています。
令和4年度の文部科学省のデータによると、全国の小学校では約86%、中学校では約79%の割合と高い割合で設置されています。
令和4年度の文部科学省のデータによると、全国の小学校では約86%、中学校では約79%の割合と高い割合で設置されています。
特別支援教育資料(令和4年度) 第一部データ編|文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20240117-mxt_tokubetu01-000033566_2.pdf
特別支援学級と通級指導教室、特別支援学校との違いは?
障害のある子どもへの教育制度は「特別支援教育」と呼ばれており、
・通常学級で配慮を受け教育を受ける
・通級(通級指導教室)
・特別支援学級
・特別支援学校
という種類があります。
通級(通級指導教室)は授業単位、特別支援学級はクラス単位、特別支援学校は学校全体で障害のある子どもへの支援や授業を行っているという点が違っています。この3つに通常学級を加えた4つが、障害のある子どもの教育環境の選択肢としてあります。
・通常学級で配慮を受け教育を受ける
・通級(通級指導教室)
・特別支援学級
・特別支援学校
という種類があります。
通級(通級指導教室)は授業単位、特別支援学級はクラス単位、特別支援学校は学校全体で障害のある子どもへの支援や授業を行っているという点が違っています。この3つに通常学級を加えた4つが、障害のある子どもの教育環境の選択肢としてあります。
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特別支援学級の対象となる障害と基準は?
特別支援学級の対象は以下の障害がある子どもです。
・知的障害(知的発達症)
・肢体不自由
・病弱・身体虚弱
・視覚障害(弱視)
・聴覚障害(難聴)
・言語障害
・自閉症・情緒障害
・知的障害(知的発達症)
・肢体不自由
・病弱・身体虚弱
・視覚障害(弱視)
・聴覚障害(難聴)
・言語障害
・自閉症・情緒障害
それぞれの障害について特別支援学級の対象となる基準が定められているので、障害ごとに紹介します。
知的障害(知的発達症)の基準
ここでは、文部科学省が定める定義や基準について紹介していきます。
知的障害(知的発達症)とは同年代の子どもに比べて認知や言語に遅れがあり、日常生活や社会生活で支援が必要となる状態のことです。特別支援学級への入級の基準については、以下のように定められています。
知的障害(知的発達症)とは同年代の子どもに比べて認知や言語に遅れがあり、日常生活や社会生活で支援が必要となる状態のことです。特別支援学級への入級の基準については、以下のように定められています。
知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通に軽度の困難があり日常生活を営むのに一部援助が必要で、社会生活への適応が困難である程度のもの
引用:文部科学省|(3)知的障害 特別支援学級
肢体不自由の基準
肢体不自由とは、病気やけがなどにより身体の機能が損なわれていて、生活に影響が出ている状態のことです。特別支援学級への入級の基準については、以下のように定められています。
肢体不自由の程度が、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの
引用:文部科学省|(4)肢体不自由 特別支援学級
病弱・身体虚弱の基準
病弱とは病気により心身が弱っている状態、身体虚弱とは病気ではないが身体の不調が続く状態のことです。特別支援学級への入級の基準については、以下のように定められています。
引用
一 慢性の呼吸器疾患その他疾患の状態が持続的又は間欠的に医療又は生活の管理を必要とする程度のもの
二 身体虚弱の状態が持続的に生活の管理を必要とする程度のもの
引用:文部科学省|(5)病弱・身体虚弱 特別支援学級
視覚障害の基準
視覚障害の一種である弱視などの、視機能の低下で生活に影響が出ている状態のことです。
特別支援学級への入級の基準については、以下のように定められています。
特別支援学級への入級の基準については、以下のように定められています。
拡大鏡等の使用によっても通常の文字,図形等の視覚による認識が困難な程度の者で,通常の学級での学習におおむね参加でき,一部特別な指導を必要とするもの
引用:文部科学省|(1)視覚障害 特別支援学級
聴覚障害
聴覚障害の一種である難聴など、周りの音や声が聞こえづらい状態のことです。特別支援学級への入級の基準については、以下のように定められています。
補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが困難な程度のもの
引用:文部科学省|(2)聴覚障害 特別支援学級
言語障害の基準
言語障害は、話し言葉によるコミュニケーションが困難で、生活に影響が出ている状態のことです。特別支援学級への入級の基準については、以下のように定められています。
口蓋裂、構音器官のまひ等器質的又は機能的な構音障害のある者、吃音等話し言葉におけるリズムの障害のある者、話す、聞く等言語機能の基礎的事項に発達の遅れがある者、その他これに準じる者(これらの障害が主として他の障害に起因するものではない者に限る。)で、その程度が著しいもの
引用:文部科学省|(6)言語障害 特別支援学級
自閉症・情緒障害の基準
自閉症とは対人関係の困難、言葉の発達の遅れ、こだわりの強さがあり、生活に影響が出ている状態のことで、情緒障害とはストレスにより心身に影響が出て学校生活などに困難が生じている状態のことです。
※以前は「自閉症」という診断名が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。この記事では以下、自閉症と記載しています。
特別支援学級への入級の基準については、以下のように定められています。
※以前は「自閉症」という診断名が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。この記事では以下、自閉症と記載しています。
特別支援学級への入級の基準については、以下のように定められています。
一 自閉症又はそれに類するもので、他人との意思疎通及び対人関係の形成が困難である程度のもの
二 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、社会生活への適応が困難である程度のもの
引用:文部科学省|(7)自閉症・情緒障害 特別支援学級
※引用部分に「選択性かん黙」とありますが、2018年日本場面緘黙関連団体連合は、DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)とICD(国際疾病分類)の和訳を『場面緘黙』に改定することを求め、『DSM-5-TR』では「場面緘黙」が正式な診断名になっています。
発達障害の子どもが入級する事が多い知的障害特別支援学級、自閉症・情緒障害特別支援学級。その違いは?
特別支援学級は、発達障害のある子どもも対象となります。多くの場合、知的障害の併存の有無にあわせて、知的障害特別支援学級か自閉症・情緒障害特別支援学級への入級になります。これらの学級の違いは以下です。
知的障害特別支援学級と自閉症・情緒障害特別支援学級では、入級基準、教育課程が異なります。
まず、どちらの学級へ入級するかは、子どもに知的障害(知的発達症)があるかどうかによって異なります。そして、教育課程については、自閉症・情緒障害特別支援学級では基本当該学年と同様の教育が行われますが、知的障害特別支援学級ではその子どもにあった学年の教育内容であったり特別支援学校の知的障害(知的発達症)の教科の目標に変えることが可能です。
ただし、入級基準、教育課程については自治体によって差がある場合があるので、あらかじめ就学相談などで確認をしておくことが大切です。就学相談については、7章「特別支援学級に入級する方法」でご紹介します。
まず、どちらの学級へ入級するかは、子どもに知的障害(知的発達症)があるかどうかによって異なります。そして、教育課程については、自閉症・情緒障害特別支援学級では基本当該学年と同様の教育が行われますが、知的障害特別支援学級ではその子どもにあった学年の教育内容であったり特別支援学校の知的障害(知的発達症)の教科の目標に変えることが可能です。
ただし、入級基準、教育課程については自治体によって差がある場合があるので、あらかじめ就学相談などで確認をしておくことが大切です。就学相談については、7章「特別支援学級に入級する方法」でご紹介します。