特別支援学校とは?教育環境から入学への流れまで【専門家監修】
ライター:発達障害のキホン
障害のある子どもが就学する選択肢のひとつとして、特別支援学校があります。
ただ、なんとなく知っていても特別支援学校ではどんな教育を受けられるの? 通級や特別支援学級との違いやそれぞれのメリット・デメリットは? 入り方は? など疑問がある方も多いかもしれません。
今回は特別支援学校の対象や具体的な教育内容、通級などとの違い、就学相談から入学までの流れをまとめました。実際に就学先を決めるまでの体験談もありますので、参考にしてみてください。
監修: 國本真吾
鳥取短期大学幼児教育保育学科教授
障害のある青年が、希望すれば18歳以降も学び続けることができる機会をどのように保障するかをめざして活動。学校教育の外側にある社会教育、福祉、労働、地域生活などから、障害のある子ども・青年の教育のあり方を深めている。また、鳥取県内で活動する沖縄音楽グループ・ゆいま~るのキーボーディストとして、障害のある若者と一緒に演奏の舞台に立つこともある。
特別支援学校とは
特別支援学校とは、心身に障害のある児童・生徒が通う学校で、幼稚部・小学部・中学部・高等部があります。
基本的には幼稚園、小学校、中学校又は高等学校と同等の教育を行っていますが、それに加えて障害のある児童・生徒の自立を促すために必要な教育を受けることができるのが大きな特徴です。
学校教育法第72条では、特別支援学校の目的は以下のように定められています。
基本的には幼稚園、小学校、中学校又は高等学校と同等の教育を行っていますが、それに加えて障害のある児童・生徒の自立を促すために必要な教育を受けることができるのが大きな特徴です。
学校教育法第72条では、特別支援学校の目的は以下のように定められています。
視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。)に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けること
「養護学校」「ろう学校」「盲学校」と特別支援学校の違いは?
特別支援学校は、2007年までは「養護学校」「ろう学校」「盲学校」と区分されていました。ですが、2007年の法改正により、これらすべてが制度上「特別支援学校」へと一本化されました。
こうした経緯もあり、学校名に「養護学校」「ろう学校」「盲学校」という名称が含まれている学校もまだ多くありますが、これらは現在すべて特別支援学校に含まれます。
この法改正は、特別支援学校が複数の障害がある子どもの教育ニーズに応えること、近隣の小・中学校に在籍する子どもの指導・支援にも積極的に関わるセンター的機能を担うことを目的としてなされました。
また、2021年の文部科学省の調査によると、特別支援学校の数は全国で1,160校、在籍している幼児・児童・生徒の数は146,285人で、その数は増加傾向にあります。
こうした経緯もあり、学校名に「養護学校」「ろう学校」「盲学校」という名称が含まれている学校もまだ多くありますが、これらは現在すべて特別支援学校に含まれます。
この法改正は、特別支援学校が複数の障害がある子どもの教育ニーズに応えること、近隣の小・中学校に在籍する子どもの指導・支援にも積極的に関わるセンター的機能を担うことを目的としてなされました。
また、2021年の文部科学省の調査によると、特別支援学校の数は全国で1,160校、在籍している幼児・児童・生徒の数は146,285人で、その数は増加傾向にあります。
特別支援学校の対象は? 発達障害のある子どもは特別支援学校に入学できるの?
特別支援学校の対象
特別支援学校は誰でも入学できるわけではなく、対象となる障害や程度が定められています。
まず、特別支援学校の対象となる障害は次の通りです。
・視覚障害
・聴覚障害
・知的障害
・肢体不自由
・病弱
さらに、これらの障害の程度もそれぞれ基準が定められています。
ただ、この基準だけで決まるのではなく、就学相談を通して最終的に就学先を決めていきます。そのため、対象の障害に記載がない発達障害のある子どもが特別支援学校に入学できる場合もありますので、合わせて紹介します(平成25年9月から「認定特別支援学校就学者」として就学手続きがそれ以前と異なっています)。
まず、特別支援学校の対象となる障害は次の通りです。
・視覚障害
・聴覚障害
・知的障害
・肢体不自由
・病弱
さらに、これらの障害の程度もそれぞれ基準が定められています。
ただ、この基準だけで決まるのではなく、就学相談を通して最終的に就学先を決めていきます。そのため、対象の障害に記載がない発達障害のある子どもが特別支援学校に入学できる場合もありますので、合わせて紹介します(平成25年9月から「認定特別支援学校就学者」として就学手続きがそれ以前と異なっています)。
◆視覚障害
両眼の視力がおおむね0.3未満の人、または視力以外の視機能障害が高度の人のうち、拡大鏡などの使用によっても通常の文字、図形などの視覚による認識が不可能または著しく困難な程度の人
◆聴覚障害
両耳の聴力レベルがおおむね60デシベル以上の人のうち、補聴器などの使用によっても通常の話声を解することが不可能、または著しく困難な程度の人
◆知的障害
①知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度の人
②知的発達の遅滞の程度が、①に掲げる程度に達しない人のうち、社会生活への適応が著しく困難な人
◆肢体不自由
①肢体不自由の状態が、補装具の使用によっても歩行、筆記などの日常生活における基本的な動作が不可能または困難な程度の人
②肢体不自由の状態が、①に掲げる程度に達しない人のうち、常時の医的観察指導を必要とする程度の人
◆病弱
①慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物そのほかの疾患の状態が、継続して医療または生活規制を必要とする程度の人
②身体虚弱の状態が、継続して生活規制を必要とする程度の人
両眼の視力がおおむね0.3未満の人、または視力以外の視機能障害が高度の人のうち、拡大鏡などの使用によっても通常の文字、図形などの視覚による認識が不可能または著しく困難な程度の人
◆聴覚障害
両耳の聴力レベルがおおむね60デシベル以上の人のうち、補聴器などの使用によっても通常の話声を解することが不可能、または著しく困難な程度の人
◆知的障害
①知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度の人
②知的発達の遅滞の程度が、①に掲げる程度に達しない人のうち、社会生活への適応が著しく困難な人
◆肢体不自由
①肢体不自由の状態が、補装具の使用によっても歩行、筆記などの日常生活における基本的な動作が不可能または困難な程度の人
②肢体不自由の状態が、①に掲げる程度に達しない人のうち、常時の医的観察指導を必要とする程度の人
◆病弱
①慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物そのほかの疾患の状態が、継続して医療または生活規制を必要とする程度の人
②身体虚弱の状態が、継続して生活規制を必要とする程度の人
学校教育法施行令|e-GOV法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=328CO0000000340_20230401_504CO0000000403
発達障害のある子どもは特別支援学校に入学できるの?
発達障害のある子どもが特別支援学校に入学できるか、気になっている方もいると思います。まず、知的障害を伴っている場合は、知的障害の程度が先程の基準を満たしていれば対象となります。さらに、知的障害の診断がなくても、就学相談の結果によっては特別支援学校への入学は可能です。
就学相談とは、自治体の教育委員会が中心となって、障害の程度や保護者や本人の希望、専門家の意見などをもとに就学先を決めるプロセスのことです。発達障害のある子どもも、この就学相談において適当と認められた場合に特別支援学校に入学することができます。実際に、特別支援学校の半数近くに発達障害のある子どもが通っているというデータもあります。
秋田大学によるアンケート調査によると、回答のあった313校の特別支援学校のうち45.0%である141校に発達障害のある子どもが在籍していました。同研究によると、特別支援学校における発達障害のある子どもへの支援として、個別の対応による丁寧な対応や、ソーシャル・スキル・トレーニングを活用した支援などが行われています。
一方で、特別支援学校での発達障害のある子どもに対する教育については、子どもの障害の特性に合わせた教育内容の編成の必要性や、教員の人員不足などが課題となっています。
鳥取県などの一部地域では、特別支援学校(知的障害)で発達障害のある子どもを対象とした通級による指導を行っています。
就学相談とは、自治体の教育委員会が中心となって、障害の程度や保護者や本人の希望、専門家の意見などをもとに就学先を決めるプロセスのことです。発達障害のある子どもも、この就学相談において適当と認められた場合に特別支援学校に入学することができます。実際に、特別支援学校の半数近くに発達障害のある子どもが通っているというデータもあります。
秋田大学によるアンケート調査によると、回答のあった313校の特別支援学校のうち45.0%である141校に発達障害のある子どもが在籍していました。同研究によると、特別支援学校における発達障害のある子どもへの支援として、個別の対応による丁寧な対応や、ソーシャル・スキル・トレーニングを活用した支援などが行われています。
一方で、特別支援学校での発達障害のある子どもに対する教育については、子どもの障害の特性に合わせた教育内容の編成の必要性や、教員の人員不足などが課題となっています。
鳥取県などの一部地域では、特別支援学校(知的障害)で発達障害のある子どもを対象とした通級による指導を行っています。
特別支援学校に入るには・相談方法
小学校に入学するまで
小学校へ入学するまでの流れは以下のようになっています(あくまで一例ですので、詳しくはお住まいの自治体にお問い合わせください)。
■年中期~4月ごろ:情報収集
お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせたり、ホームページを参照したりして、地域にある特別支援学校や、小学校の特別支援学級の有無などについて情報を集めましょう。
また、教育委員会では説明会を開催しており、特別支援学校ではどのような支援が行われているのかや、就学相談の流れ、入学手続きの方法などがアナウンスされます。
■4~9月ごろ:就学相談
就学相談を受けるには、お住まいの教育委員会へ申し込みを行います。そして、就学相談では、専門の就学相談員と保護者との面談(複数回のこともあります)を通して子どもにとって最適な就学先を決めます。
子どもの状態を把握するための検査が行われたり、相談員が在籍園・在籍校に赴いたりしてその子の普段の様子を確認することがあります。
障害の状態、障害に基づく教育的ニーズ、保護者・専門家の意見、学校や地域の状況などを考慮して、就学指導委員会が子どもにとって良いと思われる就学先の提案を行います。
この決定に保護者の方が同意をすれば就学先が決定します。もし同意できない場合はその旨を教育委員会に申し立て、再度就学相談を受けることもできます。最終的には保護者の方の意向が尊重されます。
就学相談では、子どもの状態を正確にしっかりと伝えることが大切です。医療機関で受けた診断書や療育手帳などがあれば持参することをおすすめします。
また地域によっては5~6月頃に学校公開や説明会を実施していることもあります。学校公開に実際に足を運んで、それぞれの学校の様子を見ておくことも、就学先を考えるうえでは重要です。
■年中期~4月ごろ:情報収集
お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせたり、ホームページを参照したりして、地域にある特別支援学校や、小学校の特別支援学級の有無などについて情報を集めましょう。
また、教育委員会では説明会を開催しており、特別支援学校ではどのような支援が行われているのかや、就学相談の流れ、入学手続きの方法などがアナウンスされます。
■4~9月ごろ:就学相談
就学相談を受けるには、お住まいの教育委員会へ申し込みを行います。そして、就学相談では、専門の就学相談員と保護者との面談(複数回のこともあります)を通して子どもにとって最適な就学先を決めます。
子どもの状態を把握するための検査が行われたり、相談員が在籍園・在籍校に赴いたりしてその子の普段の様子を確認することがあります。
障害の状態、障害に基づく教育的ニーズ、保護者・専門家の意見、学校や地域の状況などを考慮して、就学指導委員会が子どもにとって良いと思われる就学先の提案を行います。
この決定に保護者の方が同意をすれば就学先が決定します。もし同意できない場合はその旨を教育委員会に申し立て、再度就学相談を受けることもできます。最終的には保護者の方の意向が尊重されます。
就学相談では、子どもの状態を正確にしっかりと伝えることが大切です。医療機関で受けた診断書や療育手帳などがあれば持参することをおすすめします。
また地域によっては5~6月頃に学校公開や説明会を実施していることもあります。学校公開に実際に足を運んで、それぞれの学校の様子を見ておくことも、就学先を考えるうえでは重要です。
■10~11月:就学時健康診断と小学校の選択
就学時健康診断とは、小学校に入学する前に行われる健康診断のことであり、身体検査に加えて知的発達の検査などがあります(ここで行われる知的発達の検査は、数分で行われる簡便なもののため知能指数などは算定されません)。
就学時健康診断とは、小学校に入学する前に行われる健康診断のことであり、身体検査に加えて知的発達の検査などがあります(ここで行われる知的発達の検査は、数分で行われる簡便なもののため知能指数などは算定されません)。
中学校・高校等への進学
小学校は通常の学校に通っていた子どものなかには、実際にはもっと専門性の高い支援が必要であった場合などもあり、中学校や高校からは特別支援学校に通うということもあります。
小学校から特別支援学校や特別支援学級で教育を受けていた子どもが、特別支援学校の中学部に進学する場合、同じ学区域内であれば、小学校と中学校の先生、特別支援教育コーディネーターを通して教育内容が引き継がれます(特別支援教育コーディネーターとは、保護者からの相談の対応や福祉機関などの関係機関との連携・調査を行う教職員のことです)。
子ども自身が不安なく充実した学校生活を送れるように、本人の意思も尊重しながらよく話し合うことが大切です。進路に迷ったときは、スクールカウンセラーや学校の先生、特別支援教育コーディネーターやかかりつけの医師に相談してみましょう。
小学校から特別支援学校や特別支援学級で教育を受けていた子どもが、特別支援学校の中学部に進学する場合、同じ学区域内であれば、小学校と中学校の先生、特別支援教育コーディネーターを通して教育内容が引き継がれます(特別支援教育コーディネーターとは、保護者からの相談の対応や福祉機関などの関係機関との連携・調査を行う教職員のことです)。
子ども自身が不安なく充実した学校生活を送れるように、本人の意思も尊重しながらよく話し合うことが大切です。進路に迷ったときは、スクールカウンセラーや学校の先生、特別支援教育コーディネーターやかかりつけの医師に相談してみましょう。
就学時健康診断とは?検査内容・就学準備・就学先まとめ【専門家監修】