通級(通級指導教室)とは?対象や指導内容、通い方、ほかの特別支援教育との違いを紹介
通級(通級指導教室)とは障害のある子どもの特性に合わせて、個別の指導を行う学級のことです。通常学級に在籍している子どもで、特性や障害などによって授業に困難がある場合、困りごとに合わせて特定の時間だけ通級に通います。
障害のある子どもの学習の場としては、通級のほかに特別支援学校や特別支援学級などもあり、どの形が自分の子どもに合っているか悩んでいる保護者の方も多いと思います。
この記事では、通級(通級指導教室)の対象者や授業内容、特別支援学級・特別支援学校との違いなどについて解説します。
通級(通級指導教室)とは?特別支援学級や特別支援学校との違い
通級(通級指導教室)へ通う方法は大きく分けて3種類あります。
1、自校通級:通学している学校に設置されている通級(通級指導教室)に通う
2、他校通級:ほかの学校の通級(通級指導教室)に通う(*)
3、巡回通級:教師がそれぞれの学校に訪問して通級(通級指導教室)を行う
東京都では「巡回通級」方式をとっており、通級(通級指導教室)ではなく「特別支援教室」と呼ばれています。
通級(通級指導教室)による指導は平成5年より全国で制度化されました。平成18年の改正により、情緒障害から「自閉症(自閉スペクトラム症)※1」が独立して規定され、さらに「学習障害(LD/SLD)※2」、「ADHD(注意欠如・多動症)※3」が新たに対象に含まれるようになりました。
*自治体によっては、視覚障害・聴覚障害を対象とする特別支援学校(盲学校・聾学校)や知的障害(知的発達症)対象の特別支援学校で、発達障害対象の通級(通級指導教室)による指導を行っているところもあります。詳しくはお住まいの自治体に問い合わせてください。
※1以前は「自閉症」という診断名が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。この記事では以下、ASD(自閉スペクトラム症)と記載しています。
※2学習障害は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。
※3以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2022年発刊の『DSM-5-TR』では「注意欠如多動症」という診断名になりました。この記事では以下、ADHD(注意欠如多動症)と記載しています。
ここ20年間、通級(通級指導教室)による指導を受けている子どもの数は増加傾向にあります。令和3年度の文部科学省の調査によると、全国で16万4,697人が通っているとされています。これは平成27年度の8万3750人と比べると約2倍に増加しています。
通級(通級指導教室)の対象となる子ども
通級(通級指導教室)の対象者
・視覚障害(弱視)
・聴覚障害(難聴)
・肢体不自由
・言語障害
・ASD(自閉スペクトラム症)
・情緒障害
・LD・SLD(限局性学習症)
・ADHD(注意欠如多動症)
・病弱および身体虚弱
この中で、実際に通級(通級指導教室)に通っている割合は、言語障害が26.5%で一番多く、その後にADHD(注意欠如多動症)の20.5%、ASD(自閉スペクトラム症)の19.6%、LD・SLD(限局性学習症)の18.6%と続いていきます。
知的障害(知的発達症)のある子どもは対象外ですが、文部科学省によると知的障害(知的発達症)のある方には継続して指導することが望ましいとされていて、通級(通級指導教室)のように一部を切り取った指導は向いていないためと説明されています。
なお、「情緒障害」とは医学的な診断名ではありませんが、情緒の現れ方が偏っていたり、その現れ方が激しかったりする状態を自分の意志ではコントロールできないことが継続し、学校生活や社会生活に支障となる状態を指します。文部科学省の『教育支援資料』では教育の場では具体例として、場面緘黙、集団行動・社会的行動をしない、ひきこもり、不登校、指しゃぶりや爪かみなどの癖、常同行動、離席、反社会的行動、性的逸脱行動、自傷行為をあげています。
通級(通級指導教室)の支援対象となる障害の基準は明確にはありませんが、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度とされています。学習面や生活面など、学校生活で子どもが困難を抱えていないか、さまざまな面から判断されます。後述する通り、就学相談などで親の希望や本人の障害の状況や困りごとなどを合わせて検討されます。
明確な基準がないために「特別な指導を必要とする程度」の判断は、地域や学校によって異なる場合があります。
通級(通級指導教室)の通い方
通級(通級指導教室)は障害別に分かれているため、必ずしも在籍校に該当する通級(通級指導教室)があるとは限りません。他校の通級(通級指導教室)に通う場合、保護者による送迎が必要なこともあります。
これらの形態は地域や学区によって違いがあります。例えば京都市や千葉市では言語障害や聴覚障害の子ども向けの「ことばときこえの教室」やLD・SLD(限局性学習症)の子ども向けの「LD等通級指導教室」といった種類の通級(通級指導教室)が設置されています。
お住まいの地域の制度や通級(通級指導教室)の設置校がどこにあるか、問い合わせてみましょう。
通級(通級指導教室)と特別支援学級や特別支援学校との違い
障害のある子どもの教育環境として、
・通常学級
・通級(通級指導教室)
・特別支援学級
・特別支援学校
の4つの選択肢があります。
それぞれの対象となる障害の程度に明確な基準はありませんが、一般的に通級(通級指導教室)は一部だけ支援が必要な場合に選ぶ保護者が多いようです。
特別支援学校とは?教育環境から入学への流れまで【専門家監修】
通級(通級指導教室)の指導内容や通う時間
障害に合わせた個別の指導
・個別の教育支援計画…保護者や関係機関と連携を図って個別の教育支援計画が立てられます。それに基づいて通級(通級指導教室)による指導の教育課程が在籍校の校内委員会で編成されます。
・個別指導計画…小・中学校では障害のある子どもの個別指導計画を作成することが学習指導要領で定められています。
特に通級(通級指導教室)による指導を受ける子どもの場合、通常学級と通級(通級指導教室)指導学級のそれぞれで支援計画が作成され、お互いの教員が連携し十分な協議を行って支援を進める必要があります。
障害ごとの指導内容例
LD・SLD(限局性学習症)は読み書き計算など特定の領域の学習に対して困難が生じます。例えば文章理解が苦手な子どもには、まずは指示語の理解ができているか、説明文と問題文のどちらが苦手かといった傾向を把握します。そのうえで、重要な個所に印をつける、内容を図解するなど本人に合った方法で分かりやすくする指導を行います。
ADHD(注意欠如多動症)のある子どもへの指導内容例
ADHD(注意欠如多動症)のある子どもには注意力の維持の困難や、衝動性や多動性が見られます。そのため集中が維持しやすいように視覚的刺激の少ない一番前の席にすることや、子どもに合ったメモの取り方を教えるといった指導を行うことがあります。
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもへの指導内容例
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは、言葉の遅れや強いこだわり、他者への共感が難しいといった特性があります。視覚的な情報の方が分かりやすい傾向があるため、模型を使ったり絵カード、文字カードなどを用いて本人にとって分かりやすいような指導を行っていくことがあります。
同じ障害であっても得意不得意は人それぞれ異なるため、ここで挙げた指導内容はあくまで一例です。実際の通級(通級指導教室)では生活や学習で困難を感じる要因を把握して、それに合わせた指導を行っていきます。
年間の指導時間
小学校、中学校、高等学校では定められた授業内容や授業時間数を学習指導要領に基づき行うことが義務付けられています。ですが特例として、児童・生徒本人の障害に応じた特別の指導を通級(通級指導教室)により受けた場合、受けた指導は教育課程に加えることができると文部科学省により定められています。
つまり他校に設置された通級(通級指導教室)で受けた授業でも、自校で行った授業と見なすことができます。
通級(通級指導教室)のメリット・デメリットは?
メリット
・一人ひとりに合わせた指導を受けられる
・通常学級に在籍し、いろいろな子ども達と交流がある
という点が挙げられます。
指導内容で紹介したように、通級(通級指導教室)では障害名だけで判断するのではなく、子ども一人ひとりの苦手なこと、その理由などをしっかりと踏まえたうえで計画を作成して指導を行います。また、生徒13人に担当の教員が1人つくため、通常学級よりも柔軟な対応がしやすいという面もあります。
また、通級(通級指導教室)に通う子どもは同時に通常の学級にも在籍することになるため、通常学級と通級(通級指導教室)のクラスメイトと交流することができます。他校の通級(通級指導教室)に通っている場合は、在籍校以外の生徒とも交流でき、多くの経験を積めることもメリットと言えるでしょう。
デメリット
また、在籍校に通級(通級指導教室)がないとほかの学校の通級(通級指導教室)に通うことになり、場合によっては遠くの学校まで往復することになります。このことは、子どもや送迎する保護者にとってもデメリットと言えるでしょう。
そのほかにも、通級(通級指導教室)の数や種類や通うための基準は自治体によって異なるため、お住いに地域によっては希望する通級(通級指導教室)がなかなか見つからないということもありえます。
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通級(通級指導教室)に入るには?
小学校入学前は「就学相談」へ
通級(通級指導教室)による指導を希望する場合、一般的には以下のような就学相談のプロセスを経ることになります。
■情報収集
お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせたり、Webサイトを参照して、地域にある特別支援学校や、小学校の特別支援学級の有無などについて情報を集めましょう。
また、5月に自治体の教育委員会が特別支援教育に関する就学説明会を開くことが多いので、通級(通級指導教室)を検討している保護者は参加してみるとよいでしょう。
説明会では小学校全体および通常学級、通級(通級指導教室)、特別支援学級、特別支援学校ではどのような支援が行われているのか、就学指導・就学相談の流れ、手続きの方法などの説明があります。
■就学相談
就学相談では、専門の就学相談員と保護者との面談を通して子どもにとって最適な就学先を決めます。子どもの状態を把握するための検査が行われたり、相談員が子どもの在籍園・在籍校に赴いて様子を確認することがあります。
障害の状態、障害に基づく教育的ニーズ、保護者・専門家の意見、学校や地域の状況などを考慮して、一緒に子どもにとって良い就学先を決めていきます。また、決定には子ども本人の意思も大切です。一緒に就学相談に行くなど、子どもにもしっかりと説明したうえで決定するようにしましょう。
入学後に通級(通級指導教室)に通いたい場合は?
大まかな流れとしては以下のようになっています。
・特別支援教育コーディネーターに相談
・担任の先生も交えて教育相談
・希望する通級(通級指導教室)で面談
・自治体による審査を経て決定
ここで紹介した就学相談や入学後の通級(通級指導教室)への通い方は、自治体によって機関の名称や流れが異なることがあります。詳しくはお住いの自治体の教育委員会などでご確認ください。
子どもの教育で悩んだ時の相談先
それぞれの機関には教育や障害の専門家がいて、就学先などの相談にのってもらえるほか、支援機関の紹介をしてもらえる場合もあります。
子どもの教育の相談先
・特別支援教育コーディネーター
・教育委員会
・教育センター
・児童相談所
・発達障害者支援センター
・児童発達支援センター
相談には予約が必要な場合もありますので、あらかじめ相談先のサイトを確認するか問い合わせをしてみるといいでしょう。
まとめ
障害の特性に合わせた指導が受けられるというメリットがある一方で、在籍校に通級(通級指導教室)がないと別の学校に通う必要があるなどデメリットと言えるものもあります。
通級(通級指導教室)のメリット・デメリットを含め内容をよく知り、特別支援学級などほかの学びの場とも比較した上で、子どもに合うのはどのような環境か考えていくといいでしょう。また、家庭だけで抱え込まずに、専門家や相談窓口などと連携して考えていくことも大事です。
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