5000人を超える子ども達への出張授業、必ず聞く2つの質問

今年も、児童館・学校でのいじめ防止授業を行いました。これまで、約5000人を超える子ども達といじめ防止授業を行ってきました。

その授業で、私は必ず次の2つの質問をしています。

「いじめって何?」
「将来の夢は何?」


東京のある学校の小学1年生の女の子が、手を挙げてこう答えてくれました。
「はーい。いじめって、汚いゴミ箱に入れること」

別の学校の小学5年生の男の子はこう話してくれました。
「はい。今僕はいじめられています。死ね。うざい、と毎日言われています。このクラスの皆からです」

この発言に生徒たちはシーンと静まり返りました。その様子を担任の先生は驚いて見ているだけでした。

ある東京の中学で、1年から3年まで500人に、学校のご協力のもと、事前アンケートを取っていただきました。子ども達の答えをここでご紹介しましょう。

「いじめって何?」

・命に関わること
・心も体もダメージをもたらすもの
・学校に一番あってはならないもの
・一対多での暴力・暴言・無視
・いじめている本人には楽しいゲーム
・いじめられている本人には最悪のゲーム
・何の価値もない、何も生み出さない、ちっぽけなもの
・人の無関心な心が生み出す残酷なもの
・人から幸せを奪うもの
・嫌がらせ
・孤立させる
・一人ぼっちでまわりが信じられない
・自殺につながる
・見ていても何も言わない人も、いじめている人と同じ
・弱い人間がする事。最低な行い。人権を侵害する事
・集団VS 圧倒的少数

このリアルな答えに、私は驚きました。
これは中学生だからでしょうか?いいえ、そんなことはありません。小学生に聞いても同じような答えが返ってきます。

毎年8月に都内の児童館で小学1年~6年まで、いじめ防止学習会を開催していますが、この時も無邪気な表情で話すシビアな現実に驚かされました。

「はーい。人の心を傷つけることです」
「うざい。キモい。死ね、とか言います」
「仲間に入れない事です」

文部科学省の調査では、教育委員会から文部科学省に報告があがる、いじめ認知件数は、18万件を超えています。

ですが、その水面下で起きている報告にあがらないいじめは、それ以上存在すると言われております。

夢を描く力は人間が持つ才能。心を傷つけたら夢は描けなくなる

子ども達に、「いじめって何?」と聞いた次は「将来の夢は?」と問いかけます。

そして十人十色の様々な夢を教えてもらった後に、『13歳からの道徳教科書』(育鵬社)と言う本にある大リーガーのイチロー選手の“子供の頃の夢”の部分を朗読しています。

最初はイチローという名前は出さずに「ここで、皆と同じ小学生の時に、ある生徒が描いた作文を読みますね。…さて、誰だかわかるかな?」と問いかけます。

「はーい!イチロー!」とすぐに答えが。
「えー!イチロー!?」と他のみんなからはどよめきが起こります。

そして、私は続けます。

「あのね、“夢”を描けるというのは、人間だけが持っている才能なんだよ。
夢を描いて、その夢に向かって一生懸命勉強する、努力をする。それは人として一番尊敬される行為なんだよ。
夢を諦めないで努力すれば、必ずいつか実現する。今、語った夢を諦めないで。自分の夢だけでなく、お友達の夢も忘れないでね。」

「なぜ、夢が描けるかわかるかな?それは、人間に一番大切な“心”があるから。
心があるから、夢を描く力や夢に向かう力が生まれるんだよ。」

そして、最後にこう伝えるのです。

「なぜ、いじめがよくないか、わかるかな?
いじめられて心が傷ついたら、夢を描く力がなくなるんだよ。自分の夢が大切なように、お友達の夢も大切。
だから、夢を壊すいじめは、絶対にいけないんだよ。わかった?」


私は、「教育が人間を創る」という言葉を心から信じています。

そして子ども達は本当に、目をこちらに向けて一直線に聞いています。真剣に聞いてくれます。

子ども達の夢の向こうには、一人一人の無限の可能性が広がっています。それは一人の夢ではなく、国家の夢であり、世界の夢でもあります。

夢に向き合う時は、未来は明るいと確信できる時でもあると考えています。

夢を見る力を無限に伸ばすものが教育の力であり、それを阻むものが、いじめ問題であると思います。

小学校に入り半年で子ども達はいじめを実感する。大人は何ができるのか

【専門家が解説】学校現場の「いじめ」今、子ども達はその事実をどう捉えているのだろうの画像
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10567001277
桜が咲く4月に、幼稚園を卒業したばかりの子ども達が、夢と希望を持って、自分の体より大きなランドセルを背負い、真新しい教科書や文房具を入れて、小学校へ入学します。

それからたった半年しか経っていなくても、何かを訴えるような凛とした目で、いじめとは「汚いゴミ箱に入れられること」と答える子どもがいる、それが現在の教育現場の実態です。

そんな場面に出会うと、この人生すべてをかけて教育をつくり変えたい!いじめから子どもの心と未来を守りたい!という魂からの疼きがおきるのは、きっと私だけではないはずです。

もちろん、その子の保護者も、担任の先生方も、そして、これを今お読みになっている大人の皆さんも同じだと思います。

いじめに向き合うことは、“今”という時を生きる大人の“未来”への責任の表れではないでしょうか。

この記事を書いた人の著書

栗岡まゆみ著『いじめゼロを目指して』2015年、文芸社
https://www.amazon.co.jp/dp/4286164527
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