[第4回]  アスペルガー症候群でも、自分をきちんと理解すれば「会話のつまづき」は解消できるのタイトル画像

[第4回]

アスペルガー症候群でも、自分をきちんと理解すれば「会話のつまづき」は解消できる

防衛医科大学校卒業後、自衛隊医官として勤務され、自衛隊退職後、整形外科を開業。
『ぼくはアスペルガーなお医者さん 「発達障害」を改善した3つの方法』を執筆された畠山さんに、そのライフストーリーをお伺いします。

「言葉をそのまま受け止めてしまう」発達障害のコミュニケーション特性

畠山:僕の場合、例えば、中学受験の後の出来事が象徴的かもしれませんね。

努力して努力して、試験当日までは応援されとやかく言われなかったのですが、

試験が終わって合格発表までの間、親に「落ちたらどうなると思っているの?」「絶対合格しなさいよ!」など言われたんです。

親も焦っていたのだろうとは思います。そこで「焦ってるんだな、まあしょうがないよな」と思えず、言葉のまま受け取り、「落ちたら一体どうなるのだろう!?」と不安が募るばかりでした。

しかも、試験は終わってしまい合格発表までの数日間です。その間は、僕にはもう努力の仕様がない。

でも「絶対合格しなさい」ということは、今から試験問題を管理しているところに忍び込んで、解答用紙を書きなおせば、いいのかな?とモヤモヤしました。

編集部:そのときは、どうされたんですか?

畠山:仕方ないから辛い思いしながら待っていました。(笑)

辛かったですね。なぜ、「今終わってどうしようもないときに言うのか」と思いますよね。

例えば、会社で「何でこんなに売上が少ないんだ!」と言われたらそのまま受け取るので「じゃあお年寄りを騙してでも営業してこなくてはいけない・・・」と考えてしまうのと同じでしょう。

患者さんに納得してもらうため、コミュニケ―ションを変えようと思った

[第4回]  アスペルガー症候群でも、自分をきちんと理解すれば「会話のつまづき」は解消できるの画像
編集部:ちなみに、医師として地域の患者さんとコミュニケーションの中で難しいなという場面はなかったのでしょうか?

畠山:最初の1年くらいは、コミュニケーションが上手くいかないな、というのは多々有りました。

何を言ったか、ではなくてどう伝えたか、相手はどう受け取ったか、を意識する必要があると。

極端な話、ちゃんと診察して医学的に考えて正しいお薬を出しても「ちゃんと診てくれなかった」と感じる患者さんはいますよね。

どんなコミュニケーションを取ろうが、出す薬も診断内容も診断できるまでの時間も同じなんです。むしろ客観的な事実で、感情に流されず、しっかり診断することが医学では大切だったりします。
だとしても、どんなコミュニケーションをとったかで、その患者さんの納得が違う。伝わり方が違う。

編集部:と、いいますと…

畠山:例えば、診察を始めてすぐに「はい、◯◯ですね。じゃこのお薬で。」というよりも、「痛かったでしょう、いつから?あ、そうですか、なるほど。それは痛かったですね…」というやりとりがあった方が、患者さんの立場だったらどうです?

編集部:うーん、安心感、がある。「わかってもらえた」という気持ちになるかもしれないですね。

畠山:そう。
伝わり方一つで「診てもらえていない」と感じ、不安や納得できないなと思ったら、薬を飲んでいただけない場合もあったんですね。

そこで、少しコミュニケーションを変えれば、医師としてもしっかりと治療ができるし患者さんも治る。であれば、僕はコミュニケーションの引き出しを増やしたほうがお互いに良いと気づいたんです。

そう思って引き出しを増やしました。

編集部:なるほど。

僕にとって、コミュニケーションは論理的につくるもの

[第4回]  アスペルガー症候群でも、自分をきちんと理解すれば「会話のつまづき」は解消できるの画像
畠山:それでいうと、自分の雰囲気をつくる、というのは大事だなと考えています。

堅苦しく始めるよりも、自分からよく話して笑うほうが、良いコミュニケーションが取れると思いませんか?

なので今日は最初から明るく喋っているんです。(笑)

編集部:あっ(笑)

畠山:僕は、人の気持ちはわからないんです。

でも、「コミュニケーションというものがある」のであれば、それを意識して動こうと思っています。

相手の感情が伝わってくるから楽しく喋っているわけではないんです。
でも、楽しい雰囲気というのは、コミュニケーションを円滑にする。
だからこうする、というように僕にとってコミュニケーションは論理的につくるものなんです。

編集部:たとえ頭ではわかっていても、意識し続けるのはしんどい、という方もいるのではないでしょうか。

畠山:そうですよね。それは、「見えていない」んだと思います。

「コミュニケーションが(自分はあまり)見えていない」ということを自覚しているかどうか。
見えていない事を理解していないと、努力しているのになぜ?としんどくなってしまう。

自分はコミュニケーションがわからない、というのを前提に努力すれば、「なんで人とぶつかってしまうんだろう」と悩むことはないんです。

自己認識する、というのは言葉でいうは簡単ですけど、それを日常で実践するのは難しいんですよ。

編集部:難しい、ですね。

畠山:ええ。

「コミュニケーションを理解するのが難しい」と発達障害のある方にたまに相談されるときに、わかりやすい初歩として、カラー診断をおすすめする事もありますよ。

編集部:カラー診断?

畠山コミュニケーションは、受け手の印象が大事だという事がありますよね?

僕自身、黒い服をきるとすごく怖くなってしまうんですよ。だから柔らかく見える水色を選ぶようにしているんです。
服や色でコミュニケーションを操る、などではなくて「そもそもの雰囲気作り」はロジカルに意識できることなんだよ、と。

編集部:確かに。

畠山:ええ。

相手に失礼のないように、ちゃんとした服着ようと考えて2万円の服を買っても、その色との相性で、大したことを喋ってもいないのに印象悪くしてしまったらもったいないですよね。(笑)

性格や話し方云々はもちろん大事。

でも、まずは、柔らかくて好感よく見えるような色を選ぶ、から始めてもといいのでは、と思っています。見えないものを理解するよりも、わかりやすくて簡単な方法ですからね。(笑)

畠山昌樹(はたけやま まさき) プロフィール

医師(整形外科医)。1974年、大阪府生まれ。1998年、防衛医科大学校卒業後、自衛隊医官として仙台市で勤務。自衛隊退職後、大泉記念病院整形外科、石巻ロイヤル病院整形外科部長を経て2010年、八木山整形外科クリニックを開業。

2011年、東日本大震災で被災。2012年維新政治塾に参加、衆院選(宮城4区)に立候補するも落選。現在は複数の病院の外来や在宅診療を掛け持ちで担当している。

著書に、『ぼくはアスペルガーなお医者さん 「発達障害」を改善した3つの方法』(KADOKAWA)、『「糖質制限+中鎖脂肪酸」で確実にやせる! 驚異のMCTオイルダイエット』(幻冬舎)。
当サイトに掲載されている情報、及びこの情報を用いて行う利用者の行動や判断につきまして、正確性、完全性、有益性、適合性、その他一切について責任を負うものではありません。また、掲載されている感想やご意見等に関しましても個々人のものとなり、全ての方にあてはまるものではありません。