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[第3回]

アスペルガーの僕が、親子のコミュニケーションで大事にしてほしいと感じること

防衛医科大学校卒業後、自衛隊医官として勤務され、自衛隊退職後、整形外科を開業。『ぼくはアスペルガーなお医者さん 「発達障害」を改善した3つの方法』を執筆された畠山さんに、そのライフストーリーをお伺いします。

自分の信念のためには、開業医のままではダメだと感じたとき…

編集部:前回、ルールを知っておくと理不尽かどうか、なぜそのことが起きているのか理解できる、と教えていただきました。

畠山:はい。

編集部:その理不尽を理解した後、「やっぱり理不尽だな」という場面では…

畠山:理解した上で、そもそもの目的とブレている、間違っていると思ったら言いますね。

勤務していた病院でも「それは病院のためであって患者のためではないですよね」という事も言ってしまう。
自衛官として、人のために働くものだと思っていましたから、病院の利益のために働く、というのはおかしいと感じたら会議でも上申していました。

編集部:そうなんですね。

畠山:人のために働く、という点では、震災の後、開業医をやめましたね。

お金を稼ぐことよりも大事なことがある、と。世のため人のためになることをするために自分は残りの人生を生きるんだという強い信念を持っています。

東日本大震災がキッカケで、そう強く感じたんです。

それまでは、地元で開業医。それも、「地域のためになるクリニックをやる」と決めていて、待ち時間30分以内の整形外科クリニックとして当時毎日200名くらい患者さんが来院していました。
地域に貢献し、クリニックも儲けがでる、WIN−WINだと思っていたんですね。

ですが震災のあと、スタッフは原発の影響を心配して出身地に帰ろうとする人もいましたし、患者さんが誰も来ない・来られない日もありました。
でも、お年寄りは骨が弱くて避難所では怪我をしている。

その時、自分が手の届く範囲の人だけを助けているだけじゃダメだと気づいたんです。僕の信念を達成するには、開業医ではダメだと思った。開業医は僕じゃない先生でも出来るから。

「より多くの人の役に立ちたい」それが今の活動の中心。とくに親子のコミュニケーションは…

編集部:それで現在発達障害等の分野で書籍や講演活動をされているんですね。

畠山:そうですね、子育てに悩む方は僕の開業した病院が手の届く範囲以上にいらっしゃいますから。僕の経験や知恵を伝えることは病院にいるよりも「より多くの人のためになる」と考えたのです。

編集部:なるほど。

畠山:それでいうと、親子のコミュニケーションの何が難しさになるのかといえば、「子どもは今何を思って、何に興味があって…」ということを親は意外と知らないことが多いことかなと感じます。

子どもって3ヶ月ごとくらいにマイブームがあるでしょ?
もっと早いスパンかもしれないですね。

編集部:ありますあります!2週間くらいで興味が変わっているお子さんもいて。

畠山:そうですよね。

興味があること、というのは今脳が発達しようとしている分野なんです。

その興味のあることに対して、理解が深まったり脳の回路が出来上がったり、十分に経験したら、次の興味に移ります。そのことを、ちゃんと理解してあげることが大事ですよね。

ただ止める、ただ発達を促そうとアレコレやらせてみる、のではなくて、「今はコレに興味があるんだな」と理解してあげて、興味があることへのアクションをちゃんと認めて次にいく、というサイクルを覚えておけば、親子のコミュニケーションはスムーズになるのではないでしょうか。
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編集部:「興味や発達に段階がある」ということでしょうか。

畠山:そうですね。

なのに、「まだコレが下手だからやらせない」「コレが伸びないから、次に行く前にまずはコレをもっとやろう」など、せき止めてしまう事もありますよね。

例えば、3,4歳の男の子で、消防車は覚えていても、まだ救急車をしらない子がいたとしましょう。

救急車を街中で見かけて「あれ、消防車でしょ!」といったときに「違うよ、あれは救急車でしょ。なんで知らないの?図鑑で見たじゃん」と、言ったらどうでしょう。

自己否定をされると、次からその子は「あれ、救急車でしょ!」と親に言いにくくなり、繰り返すとやがて言わなくなりますよね。

その分野を学ぶこと、興味をもって親や大人に聞くことをやめてしまったり、シャットダウンしてしまうのではないでしょうか。

だから、正誤ではなくて「興味を持っている」というそのものを認めてあげながら、次のことを教えてあげる。

すると、知識は増えるし、学ぶことは楽しくなる。もっと興味をもって観察するようになる。

先ほどの例なら、
「消防車?どれどれ?すごいねえ。どうして消防車と思ったの?」
「サイレン鳴ってて、赤く光っているよ!」
「そうだね。あれは、緊急車両だね。でもあれは、人を助けに行く車だから、消防車じゃなくて、救急車っていうんだよ。おうちに帰ったら、絵本で見てみようね!」
と説明すると、子供は自己否定されることなく、知識を増やすことができるんです。

そして、「あれ、ママ、あの車は、青いけど救急車みたいに光ってるね、なんで?」「あれはガス会社なんだよ」ということになる(笑)

編集部:詳細な違いまで興味を持てる(笑)

畠山:そうそう。
親御さんに「勉強が出来ないんです」、と言われよくよく聞くと、出来ないというよりは「取り組む意欲が削がれてしまっている」お子さんのほうが多いと感じます。

例えば、「なんで出来ないの?!」と言われても、否定されたのではなくて問題の正誤を問われているだけ、解釈できているか聞かれているだけ、その発言の理由を解釈できる子もいるでしょう。

でも、発達障害のある子の場合、言葉どおりに受け取ってしまう場合が多いのではないでしょうか。自己否定されたと感じるという意味です。

先ほどの車の話と同じく、まずは認める、そして次、とコミュニケーションの特性を理解して声をかけていきたいですね。

次回は

畠山さんがお仕事の中で考えた「コミュニケーション」について、詳しく伺っていきます。

畠山昌樹(はたけやま まさき) プロフィール

医師(整形外科医)。1974年、大阪府生まれ。1998年、防衛医科大学校卒業後、自衛隊医官として仙台市で勤務。自衛隊退職後、大泉記念病院整形外科、石巻ロイヤル病院整外科部長を経て2010年、八木山整形外科クリニックを開業。

2011年、東日本大震災で被災。2012年維新政治塾に参加、衆院選(宮城4区)に立候補するも落選。現在は複数の病院の外来や在宅診療を掛け持ちで担当している。

著書に、『ぼくはアスペルガーなお医者さん 「発達障害」を改善した3つの方法』(KADOKAWA)、『「糖質制限+中鎖脂肪酸」で確実にやせる! 驚異のMCTオイルダイエット』(幻冬舎)。
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