異食症とは?症状や原因、治療方法、発達障害との関連も【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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紙や石鹸、毛髪、氷など食事として通常食べないものを継続して摂取する異食症。口にするものや症状は人それぞれです。短期間で症状が治まる場合もありますが、口にするものによっては腸閉塞、感染症や鉛中毒など重大な危険をもたらすこともあります。症状が気になるときは専門機関に相談することが重要です。

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監修: 染村宏法
精神科医
産業医
大手企業の専属産業医として勤務後、昭和大学精神医学講座へ入局、昭和大学附属烏山病院での勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動に従事。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、簡易型認知行動療法、睡眠衛生等に関する介入研究や教育に携わった。
目次

異食症とは?

異食症とは通常食べることのないものを日常的に食べる摂食障害(摂食症)の一つです。
食べるものには紙や石鹸や、毛髪、氷などさまざまなものあり、1ヶ月位以上継続して摂取し続けた場合などが診断の基準となっています。

ただ、乳幼児のように、まだ十分に認知機能が発達していないことから生じる突発的な異食行動や、ある特定のものを口にする異食行動がその地域では一般的な行為である場合は異食症とはみなされません(例:土などを口にする)。
文化的にも社会的にも通常食べられないものを摂取することが、異食症と診断される条件です。

氷や土、髪など異食症で食べるもの

異食症で食べるものの例として、毛髪、紙、氷、土、ねんど、泥などが挙げられます。特に氷、土、毛髪を食べることは多く知られており、氷食症、土食症、食毛症という個別の症状名が使われることがあります。
参考:異食症|MSDマニュアルプロフェッショナル版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/08-%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E6%91%82%E9%A3%9F%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E7%BE%A4/%E7%95%B0%E9%A3%9F%E7%97%87?ruleredirectid=465

異食症の症状・原因

異食症は、2歳以上の人が通常食べないものを継続して摂取する疾患ですが、その中でも
・子ども
・妊婦
・発達障害や統合失調症などほかの精神疾患を発症している人
である場合、それぞれ診断時に注視する点や特徴が違います。

子どもの異食症の症状・原因

乳幼児期は物の区別を苦手とする上に好奇心が旺盛で、食べるもの以外でも口に入れてしまう傾向があります。幼児期の異食行動は自然に起こるものなので、2歳未満で食べ物以外を口にしていても異食症とみなされません。

2歳以上で通常食べることのないものを継続して摂取してしまうという症状があった時に初めて異食症とみなされます。

子どもが食べる異物は、子どもの身近にあり手に入りやすいものと考えられます。例えば氷、毛髪、土、絵具、ひも、鉛筆の芯、布、ほこり、糞便、紙片が挙げられます。

子どもの異食行動の原因は、2歳までは知的好奇心による正常な行動の場合が多いです。それ以降も異食行動を続ける原因として、子どもがストレスをため込みやすい性格をもっておりその発散方法として異食行動を行う、周囲の人が知らない間に異食行動を見逃しそれが常態化している、ネグレクトなどにより空腹感から異食するなども考えられます。そのほかにもなど、さまざまなケースがあります。

妊娠中の女性の異食症の症状・原因

大人の異食症として、妊娠中の女性が衝動的に異食行動を行うことがあります。この場合は妊娠中のみみられ、自然に治ることが多いと言われています。食べるものとして、土、石、氷などが挙げられます。

妊娠中の女性による異食症は、鉄や亜鉛などの栄養不足が大きな原因ではないかと指摘されています。
妊娠することによって女性のからだは、自分自身ではなく赤ちゃんに優先して栄養や酸素を供給するように自然とはたらき始めます。そのため妊娠中は鉄分が不足しがちになり、鉄欠乏性貧血が起こりやすくなります。この鉄分不足を補おうとして土などの異食行動が引き起こされることが多いと言われています。

発達障害や統合失調症などその他の精神疾患と異食症を併存している人の症状・原因

発達障害や統合失調症などの精神疾患が異食症を引き起こしている場合もあります。その代表的な例として、ASD(自閉スペクトラム症)などの発達障害、統合失調症、知的障害(知的発達症)、そして認知症があげられます。

こういった疾患が進行していく途中に異食行動を起こすようになり、エスカレートしていくと異食症と診断される傾向があります。

・ASD(自閉スペクトラム症):
ASD(自閉スペクトラム症)とは、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」を特徴とする発達障害の1つです。この場合の異食行動は、舌触りや歯ごたえなどの口腔内の触覚刺激を求めてることや、口に物をいれることで気持ちを落ち着かせようとしていると考えられています。

・統合失調症:
統合失調症は、感情や考えがまとまりづらく、幻覚や妄想などの症状が現れる精神疾患です。この場合の異食行動は、妄想の結果などで引き起こされやすいと言えます。

・認知症:
中度~重度へと進行した際に引き起こされる、認知機能障害が主な異食行動の原因となります。

・知的障害(知的発達症):
18歳までの発達期に生じた知的機能の障害により、理解、判断、思考、記憶、知覚などの知覚機能の発達が、周囲と比べて遅れている状態のことです。発達の遅れによる認知の障害が異食症の要因と言われています。

異食症による健康への影響

異食症では普段口にすることがない物質を体内に入れるため、身体的にさまざまな影響を及ぼすことがあります。

合併症の症状は食べたものによりますが、主に
・便秘、腸閉塞
・鉛中毒
・寄生虫感染症
などがあります。

その他にも普段の食事の栄養バランスに偏りがおこり、体重減少や栄養欠乏となる可能性もあります。
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