就学猶予・就学免除とは?早生まれや障害があるとき、入学を遅らせられるの?【専門家監修】
ライター:発達障害のキホン
就学猶予・免除とは、発育不完全や病弱、その他やむを得ない理由により就学困難と認められる場合に、保護者が負っている子どもに教育を受けさせる義務が猶予・免除される制度です。「入学までにせめてあともう1年あったら、体力もついてきて学校で過ごしやすくなるのでは……」など、お子さんの発育・発達と、小学校入学のタイミングについて悩まれているご家庭もあるかもしれません。今回は、就学猶予について、制度の内容や利用の実態をご紹介します。
監修: 國本真吾
鳥取短期大学幼児教育保育学科教授
障害のある青年が、希望すれば18歳以降も学び続けることができる機会をどのように保障するかをめざして活動。学校教育の外側にある社会教育、福祉、労働、地域生活などから、障害のある子ども・青年の教育のあり方を深めている。また、鳥取県内で活動する沖縄音楽グループ・ゆいま~るのキーボーディストとして、障害のある若者と一緒に演奏の舞台に立つこともある。
就学猶予・就学免除とは?
就学猶予・免除ってどんな制度?
就学猶予・免除とは、発育不完全や病弱、その他やむを得ない理由により就学困難と認められる場合に、保護者が負っている子どもに教育を受けさせる義務が猶予・免除される制度です。
第十八条 前条第一項又は第二項の規定によつて、保護者が就学させなければならない子(以下それぞれ「学齢児童」又は「学齢生徒」という。)で、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者の保護者に対しては、市町村の教育委員会は、文部科学大臣の定めるところにより、同条第一項又は第二項の義務を猶予又は免除することができる。
出典:e-Govポータル「学校教育法」
通常、保護者は子どもが満6歳を迎えたあと最初の4月1日から、満15歳に迎えたあと最初の3月31日まで、子どもに教育を受けさせる義務(就学義務)があります。これは、日本国憲法にも記載される国民の義務の1つです。重国籍者であっても、日本国籍がある学齢期の子どもの保護者は、義務教育を受けさせる義務があります。
また子どもには、基本的人権の一つである教育を受ける権利があります。
また子どもには、基本的人権の一つである教育を受ける権利があります。
第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
② すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
出典:e-Govポータル「日本国憲法」
就学猶予・免除は、子どもが就学困難と認められる場合に、市町村の教育委員会が、保護者の就学義務を猶予または免除することができるという制度です。
なお、就学義務や就学猶予・免除が規定されている学校教育法は、日本国内において効力があるものとされています。そのため、就学義務についても、子どもが日本国内に住んでおり、同じく日本国内に住んでいる日本国籍の保護者に対して課されるものとなります。
子どもや保護者が海外に転出している場合などは、保護者は就学義務を負わないため、就学猶予・免除についても対象とはなりません。
なお、就学義務や就学猶予・免除が規定されている学校教育法は、日本国内において効力があるものとされています。そのため、就学義務についても、子どもが日本国内に住んでおり、同じく日本国内に住んでいる日本国籍の保護者に対して課されるものとなります。
子どもや保護者が海外に転出している場合などは、保護者は就学義務を負わないため、就学猶予・免除についても対象とはなりません。
就学猶予・免除制度は過去どのように利用されてきたか
日本では明治時代の中期ごろから義務教育の基盤ができ始めました。しかし、当時は障害のある児童が学校で義務教育を受けるための環境はほとんど整備されていませんでした。そのため、障害のある児童の保護者は、就学義務の猶予・免除を受けることが多くなり、結果として教育をほとんど受けない児童もいました。
上のグラフが示すように、第二次世界大戦の直後1945年頃は、就学猶予者・免除者の人数はとても多くなっています。これは、障害のある児童のための学校、例えば盲、聾、知的、肢体不自由児向けの養護学校は、国が定める義務教育として扱われていなかったという背景があります。しかし、1979年からは、養護学校が義務教育となり、就学猶予や免除制度を利用する必要のある家庭は急激に減っていきました。
今日では、特別支援学校、支援学級の整備により、障害を理由に就学義務を果たせず、就学猶予・免除を受けるということは非常に少なくなっています。2023年の調査によると、就学猶予・免除者の合計は3,990名で、そのうち「病弱・発育不完全」を理由とするケースは0.7%(29名)となっています。就学猶予・免除の最も多い理由は「重国籍のため」であり、全体の88%(3,528名)を占めます。
上のグラフが示すように、第二次世界大戦の直後1945年頃は、就学猶予者・免除者の人数はとても多くなっています。これは、障害のある児童のための学校、例えば盲、聾、知的、肢体不自由児向けの養護学校は、国が定める義務教育として扱われていなかったという背景があります。しかし、1979年からは、養護学校が義務教育となり、就学猶予や免除制度を利用する必要のある家庭は急激に減っていきました。
今日では、特別支援学校、支援学級の整備により、障害を理由に就学義務を果たせず、就学猶予・免除を受けるということは非常に少なくなっています。2023年の調査によると、就学猶予・免除者の合計は3,990名で、そのうち「病弱・発育不完全」を理由とするケースは0.7%(29名)となっています。就学猶予・免除の最も多い理由は「重国籍のため」であり、全体の88%(3,528名)を占めます。
では、現在では、どのような場合にこの制度が利用されているのでしょうか。
就学猶予・就学免除の利用条件【事例紹介も】
就学猶予・就学免除が認められる理由って?
保護者は、子どもを就学させる義務を負っていますが、以下のような理由が認められた場合は、一定の手続きを経て市町村の教育委員会により、就学義務が猶予・免除されることがあります。学校教育法では、就学猶予・免除が認められる理由を、「病弱、発育不完全、その他やむを得ない事由」としています。
病弱、発育不完全とは、特別支援学校の教育に耐えることができない程度で、治療や生命・健康の維持のために療養に専念しなければならず、教育を受けることが困難または不可能である場合とされています。
その他のやむを得ない理由としては、主に以下のような場合が挙げられます。
病弱、発育不完全とは、特別支援学校の教育に耐えることができない程度で、治療や生命・健康の維持のために療養に専念しなければならず、教育を受けることが困難または不可能である場合とされています。
その他のやむを得ない理由としては、主に以下のような場合が挙げられます。
1.児童生徒の失踪、
2.帰国児童生徒の日本語の能力が養われるまでの一定期間、適当な機関で日本語の教育を受ける等日本語の能力を養うのに適当と認められる措置が講ぜられている場合、
3.重国籍者が家庭事情等から客観的に将来外国の国籍を選択する可能性が強いと認められ、かつ、他に教育を受ける機会が確保されていると認められる事由があるとき、
4.低出生体重児等であって、市町村の教育委員会が、当該児童生徒の教育上及び医学上の見地等の総合的な観点から、小学校及び特別支援学校への就学を猶予又は免除することが適当と判断する場合、
出典:「1. 就学義務の猶予又は免除について」文部科学省ホームページ
就学猶予の申し出があった具体的な事例として、低出生体重児で発育の遅れがあり保育園も1年遅らせていたケース、学齢に達したときに発育発達の遅れがあったケースなどの調査報告もあります。
一方、経済的な理由では就学猶予・免除は認められません。学校教育法では、経済的理由によって就学困難と認められる学齢児童の保護者に対しては、必要な援助を市町村が与えなければならないとされているからです。そのような場合は、就学援助制度を利用できます。
一方、経済的な理由では就学猶予・免除は認められません。学校教育法では、経済的理由によって就学困難と認められる学齢児童の保護者に対しては、必要な援助を市町村が与えなければならないとされているからです。そのような場合は、就学援助制度を利用できます。
第十九条 経済的理由によつて、就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない。
出典:e-Govポータル「学校教育法」
就学猶予のデメリットはある?保育園・幼稚園には通い続けられる?
就学猶予により、小学校への入学を遅らせた場合、年齢の規定から保育園や幼稚園へ通い続けることが難しい可能性があります。それぞれの保育園・幼稚園では、受け入れ年齢の規定を設けている場合があるためです。
ただし、就学猶予または免除を受けた子どもが私立幼稚園などに通えることもあります。お住まいの地域の保育園・幼稚園では、就学猶予を受けた場合に通い続けることが可能か、事前に確認しておくことが必要です。
また、小学校への入学を1年遅らせるなどした場合、子ども本人にとっては、クラスメイトが全員自分よりも年下という状況になります。なぜ自分だけ年齢が上であるかについて疑問に思うこともあるかもしれません。子ども本人の気持ちに最大限配慮することも大切でしょう。
ただし、就学猶予または免除を受けた子どもが私立幼稚園などに通えることもあります。お住まいの地域の保育園・幼稚園では、就学猶予を受けた場合に通い続けることが可能か、事前に確認しておくことが必要です。
また、小学校への入学を1年遅らせるなどした場合、子ども本人にとっては、クラスメイトが全員自分よりも年下という状況になります。なぜ自分だけ年齢が上であるかについて疑問に思うこともあるかもしれません。子ども本人の気持ちに最大限配慮することも大切でしょう。
就学免除・猶予を利用しても、中学校を卒業できる?
就学免除・猶予を利用した場合でも、子どもは、1年または数年遅れて中学校を卒業することができます。
就学猶予が認められた場合でも、就学義務期間は延長されず、満15歳を迎えた時に子どもが所属していた学年の終わりで、保護者の就学義務は消失します。そのため、保護者が児童に教育を受けさせる義務は、就学猶予を1年受けた場合、子どもが中学校2年生の時になくなります。
ただし、これは保護者の就学義務がなくなるだけであり、保護者が教育委員会に申し出て、教育委員会から認められれば、子どもは引き続き中学校に在籍することが可能です。
また、高校への入学資格として主に、中学校、特別支援学校の中学部等の卒業や中等教育学校の前期課程を修了することが必要です。就学猶予・免除により、それらが叶わなかった場合、「中学校卒業程度認定試験」を受け、中学校を卒業した者と同等以上の学力があると認定されると、高校の入学資格を得ることができます。
就学猶予が認められた場合でも、就学義務期間は延長されず、満15歳を迎えた時に子どもが所属していた学年の終わりで、保護者の就学義務は消失します。そのため、保護者が児童に教育を受けさせる義務は、就学猶予を1年受けた場合、子どもが中学校2年生の時になくなります。
ただし、これは保護者の就学義務がなくなるだけであり、保護者が教育委員会に申し出て、教育委員会から認められれば、子どもは引き続き中学校に在籍することが可能です。
また、高校への入学資格として主に、中学校、特別支援学校の中学部等の卒業や中等教育学校の前期課程を修了することが必要です。就学猶予・免除により、それらが叶わなかった場合、「中学校卒業程度認定試験」を受け、中学校を卒業した者と同等以上の学力があると認定されると、高校の入学資格を得ることができます。
就学猶予・免除を受けたい場合の手続き方法
就学猶予・免除を受けたい場合は、在住する市区町村の教育委員会へ願い出ることが必要です。この際、就学猶予・免除を受ける理由を証明する書類が必要となります。市区町村によっては指定の医師の診断書が必要なこともあります。
理由を証明する書類を参考に、保護者の申し出を教育委員会が審議し、就学猶予・免除が認められた場合は許可通知が出されます。
理由を証明する書類を参考に、保護者の申し出を教育委員会が審議し、就学猶予・免除が認められた場合は許可通知が出されます。