うつ病の症状や診断|中学生など子どものうつ病や発達障害との関わりについて解説

ライター:発達障害のキホン
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うつ病とは気分の落ち込みなどの精神症状や食欲や睡眠の乱れなどの身体症状が表れ、いつも通りの生活を送ることができなくなる精神疾患です。日本では約15人に1人がうつ病を経験したことがあるとも言われています。うつ病は大人が発症すると思われがちですが、中学生や小学生などの子どもが発症することもあります。今回はうつ病について、症状や診断・治療の流れ、子どもが発症する場合や発達障害との関係などを解説します。

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監修: 染村宏法
精神科医
産業医
大手企業の専属産業医として勤務後、昭和大学精神医学講座へ入局、昭和大学附属烏山病院での勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動に従事。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、簡易型認知行動療法、睡眠衛生等に関する介入研究や教育に携わった。
目次

うつ病とは?

うつ病とは、気分の落ち込みや意欲の低下などの症状が特徴の精神疾患です。これらの症状がただの気分の落ち込みではなく病的なうつ状態であることを意味しています。

また、うつ病は精神症状だけでなく、食欲や睡眠の乱れ、疲労感などの身体症状もあります。特に、初期症状としてまずは身体症状が表れることが多いと言われています。

軽症を含めると日本の人口のうちの15人に1人がうつ病を発症したことがあると考えられており、現代社会では珍しい疾患ではありません。しかしながら、うつ病は自然治癒が難しく、治療が必要な障害という認識が重要となります。

子どももうつ病になる?

うつ病というと、大人がかかる疾患だというイメージがある方も多いと思いますが、中学生や小学生などの子どもがかかることもあります。実際に子どものうつ病罹患率として、学齢期では1~2%、思春期では2~5%という調査もあります。

また、小学6年生の有病率が1.4%なのに対して、中学1年生では4.1%と約3倍になるという報告もあります。このように、小学校から中学校の移行期にかけて深刻化する傾向があります。
参考:松原 耕平, 佐藤 寛, 髙橋 高人, 石川 信一, 佐藤 正二著「小学校から中学校への移行期における子どもの抑うつ症状の発達的変化」行動医学研究 22 巻 (2016)1号 p. 3-8
https://doi.org/10.11331/jjbm.22.3

うつ病の症状

うつ病の症状には精神症状と身体症状に大きく分けられます。

精神症状

うつ病の精神症状としては以下のようなものがあります。

・悲観的になり一日中憂うつな気分が続く
・それまで好きだったことにも楽しめない、興味がわかなくなる
・イライラして怒りっぽくなる
・自分に価値がないと感じるようになる
・集中力や判断力が低下する
・消えたい、死にたい、いなければよかったと感じるようになる など

気分の落ち込みなどは誰しも感じたことがあると思います。しかし、うつ病の場合には何かきっかけがなくても激しく落ち込み、その期間も長いという特徴があります。また、落ち込みだけではなく、イライラすることや集中力の低下などもうつ病の症状として表れてくることがあります。

身体症状

うつ病の身体症状としては以下のようなものがあります。

・食欲が低下、または増加する
・睡眠が短く、または長くなる
・何もしていないのに疲れる など

うつ病の身体症状としては食欲や睡眠の乱れが見られます。特に運動などをしなくてもひどく疲れやすく、常に体がだるい状態が続き、休んでも回復しないといった症状が表れることがあります。
ほかにも頭痛、腹痛、めまい、吐き気などさまざまなものがあり、うつ病では初期症状として身体症状が表れることが多いと言われています。

厚生労働省では目安として、以下に紹介する症状のチェックリストに5つ以上当てはまり、それらが2週間続いている場合は専門機関に相談することを推奨しています。

1.悲しく憂うつな気分が一日中続く
2.これまで好きだったことに興味がわかない、何をしても楽しくない
3.食欲が減る、あるいは増す
4.眠れない、あるいは寝すぎる
5.イライラする、怒りっぽくなる
6.疲れやすく、何もやる気になれない
7.自分に価値がないように思える
8.集中力がなくなる、物事が決断できない
9.死にたい、消えてしまいたい、いなければよかったと思う
出典:うつ病の特徴|厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_01.html

子どものうつ病の場合

子どものうつ病の場合は、落ち込みよりもイライラや焦燥感のほうが強い傾向があります。攻撃的になって物にあたるなどの行動もあるため、うつ病と気づかれにくい要因ともなっています。また、うつ病が不登校のきっかけとなる場合もあると言われています。

子どもの場合は、まず頭痛やめまいなどの身体症状が出て学校に行きづらくなり、「登校しなくては」というストレスからイライラしたり、気分が落ち込んだりしていきます。その後症状は落ち着いてきても、無気力になり不登校につながる可能性があります。

子どもにこれまで紹介した症状などのサインを感じたら、かかりつけの医者や専門機関に相談するようにしましょう。対面だけでなく、電話で相談できる窓口もありますので、後ほど紹介します。

うつ病の診断と治療の流れ

ここではうつ病の診断と治療について紹介します。インターネット上にはうつ病の無料チェックや診断テストなどがありますが、正式な診断は医師のみが行えます。正しい治療を受けるためにも、気になる症状があるときは一度窓口への相談や医療機関の受診を行うようにしましょう。

うつ病は精神科、心療内科、メンタルクリニックなどで診てもらうことができます。子どもの場合は、児童精神科という科もあります。受診前に病院のサイトなどで対象年齢も確認しておくとよいでしょう。

うつ病の診断

診断の際には、まず問診を行います。うつ病を発症している可能性があると判断されると、身体検査から心理検査の流れで症状の程度などを検査し、うつ病かどうかを特定します。

1.問診:
いつから、どのような症状があるのかを聞いていき、うつ病の診断基準と照らし合わせていきます。必要に応じて保護者などにも質問し、さまざまな角度から情報を集めます。

2.身体検査:
その後身体の状態とほかの合併症の有無を確認するために、必要に応じて身体検査を行います。代表的なものとして、血液検査、画像検査(頭部CTなど)、心電図検査、脳波検査などが挙げられます。

3.心理検査:
心理検査は、うつ病の重症度を数値化するときに用います。心理検査には、CES-D、HAM-D(ハミルトンうつ病評価尺度)といったものがあり、質問表に従って質問が行われ、検査結果をもとにうつ病の程度などを測っていきます。

うつ病の治療

うつ病は一人ひとりの症状に合わせて精神療法、薬物治療などの治療を行っていきます。ただ、小・中学生など子どもの治療には薬物療法は行わず、精神療法のみ行われる場合もあります。

■精神療法:
精神療法では、医師やカウンセラーとの対話を通して、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのか、物事をどのように捉えているのか自身の思考のクセを把握していきます。そして、不安を感じる状況をどのように捉え、対処していけばいいかを考え、自身の感情をコントロールする方法を学んでいきます。

また対人関係療法は、家族や恋人などの重要な他者との関係に焦点を当てて、他者との関わり方を考えていく精神療法です。対人関係とうつ病など精神疾患の症状が相互に影響を与えているという考えのもと、対人関係の改善により症状の緩和を目指していきます。

■薬物療法:
薬物療法の場合、うつ病に対してはうつ症状を改善する「抗うつ薬」が用いられたり、不安を抑える「抗不安薬」が処方されたりすることがあります。
代表的な抗うつ薬としてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬などがあげられます。うつ病の薬は即効性はなく、効果が表れるまで2週間程度かかります。

うつ病は再び症状が出現することの多い病気で、再発率は60%とも言われています。薬物療法は継続することが大切であり、途中で治ったと感じて治療することをやめてしまわないように、気になることがあれば医師と相談しながら治療を進めていきましょう。
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