うつ病の診断・治療の流れ

うつ病の診断

診断の際には、まず軽い問診を行います。うつ病を発症している可能性があると判断されると、身体検査から心理検査の流れで症状の程度などを検査し、うつ病かどうかを特定し定期ます。

1.問診:
うつ病の診断基準と照らし合わせ、どのような症状があるのか、どのような人なのかを聞いていきます。必要に応じて家族や周りの人にも質問し、さまざまな角度から本人と向き合っていきます。

2.身体検査:
その後身体の状態と他の合併症の有無を確認するために、必要に応じて身体検査を行います。代表的なものとして、尿検査、血液検査、画像検査(頭部CT・MRI)、心電図検査、脳波検査などが挙げられます。

3.心理検査:
心理検査は、うつ病の重症度を数値化するときに用います。ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)という質問表に従って質問が行われます。質問にはそれぞれ3~5個の答えが用意されいて、その中で一番当てはまるものを選択します。検査には15~20分ほどの時間を要し、重症度を5段階に分類します。

うつ病の治療

うつ病は一人ひとりの症状に合わせて薬物治療、精神療法や電気けいれん療法などを行っていきます。

薬物療法
薬物療法の場合、うつ病に対してはうつ症状を改善する「抗うつ薬」が用いられたり、不安を抑える「抗不安薬」が処方されたりすることがあります。

代表的な抗うつ薬として三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが挙げられ、十分な量を十分な期間服用することが重要であるとされています。

うつ病は再び症状が出現することの多い病気です。回復後1年の間に約20パーセントの患者さんに再び症状が出現する上に、その後の再発も含めると、その割合は約40~50パーセントに上がります。

薬物療法は継続することが大切であり、途中で治ったと感じて治療することをやめてしまうと半年後に再び症状が出現する危険性は2倍になるという研究結果がでています。しかし、治療法には個人差があり薬物療法に関してはことさら注意が必要です。

精神療法:
現在様々な精神療法が開発されていますが、うつ病に有効であると考えられているのは認知行動療法と対人関係療法です。

精神療法では、医師やカウンセラーとの対話を通して、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのか、物事をどのように捉えているのか自身の思考のクセを把握していきます。そして、不安を感じる状況をどのように捉え、対処していけばいいかを考え、自身の感情をコントロールできるようにしていくことで治療を進めます。

また対人関係療法は、うつ病を抱えている人だけではなく、その人の家族や恋人などの重要な他者との関係に焦点を当てて、他者との関わり方を考えていく精神療法です。最終的には身近な他者との関係だけではなく、より広い範囲の人々に対してもよりよい関係を築けるようになることを目的とします。

修正型電気けいれん療法(m-ECT):
頭皮から電流を流すことで意図的にてんかん発作を発生させ、抑うつ症状を改善します。

この治療法が用いられるのは薬物療法をはじめ、認知行動療法、その他の治療では効果が認められない場合、あるいは妄想をしてしまうなど症状が非常に重く治療の緊急性が高い場合です。軽、中度のうつ病の場合、あるいは他の治療法によって効果が認められている場合には原則使用されません。

電気けいれん療法がなぜうつ病や、双極性障害の症状に効果があるのかについては未だ解明されていません。しかし、多くの医療機関においてその有効性が確認されており、日本においても保険の適応となっています。

以前は治療の過程で生じる全身のけいれんが骨折などの怪我につながるリスクがありました。しかし、1980年代頃から施行されるようになった「修正型電気けいれん療法(m-ECT)」では麻酔科医の同伴のもと麻酔薬及び筋弛緩剤を投与し、けいれんを防ぐことができます。

治療を受けることができる医療機関は必要な薬剤や人員の確保ができる病院に限られるようです。
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うつ病の治療にはいくらくらいかかるの?

うつ病の治療には時間がかかることも多く、場合によってはそれなりのお金もかかってしまいます。
医療費については、個人の症状に合わせて治療が行われるため、一概には言えませんが、うつ病で初診の際にかかる費用は、診療費と薬代を合わせ、大体1万円前後というのが平均的です。ということは、保険を使わず自費負担の場合は、その全額を支払うことになります。保険を使った場合には、健康保険(健保)では本人は2割負担(2003年4月より3割負担(3~69歳))なので2000円前後、健保家族と国民健康保険(国保)では3割負担なので3000円前後を支払うことになります。平均的な通院ペースは2週間おきで、薬も2週間分処方されることが多いようです。

2回目以降(再診)は、初診の頃より、薬の処方量が増えることも多く、その分薬代はかかりますが、初診料はかかりませんので、合計の支払金額は若干安くなるようです。
出典:http://www.utu-net.com/utuinfo/01/01.html
このような治療費の負担を抑えるために、経済的な支援をおこなう制度があります。

自立支援医療制度:
障害のある患者さんに必要な医療を確保し、継続して治療を受けられるように支援することを目的として定められたものです。医療費の自己負担額が原則として1割に減額されると同時に、所得に応じて1ヵ月あたりに支払う金額に上限が設けられます。

健康保険の傷病手当金(健康保険加入者向け):
病気・ケガのために勤務先を連続して3日間休んだ場合、4日目以降から支給されます。支給金額は日割給与(標準の報酬日額)の100分の60であり、最長1年半間受け取ることができます。受給条件や受け取れる金額は場合により異なる場合があるので加入している保険組合に確認しましょう。また、国民健康保険の場合は任意支給となり、傷病手当金制度がない場合がほとんどです。

精神障害者保健福祉手帳:
税制上の優遇措置をはじめ、さまざまな支援サービスを受けることができます。交通機関の運賃や公共施設の料金が割引となるサービスもあります。

精神障害労災:
これは労働者災害補償保険法に基づく制度で、仕事中にケガや病気、後遺症もしくは死亡した等の場合、本人や遺族に対して一定の保険給付を行う制度です。

うつ病になった時の、本人・周囲の人々の対応法

うつ病の治療には十分な休養と休息を取ることが、最も重要となります。早く治そうと焦らず、規則正しい生活を送りましょう。栄養バランスのとれた食事、適度な運動・睡眠時間を取ることが望ましいです。

また、うつ病を抱えている人は自分自身では気持ちをコントロールすることをすることを難しいと感じ、自身が思うように行動することができていない場合が多いです。

そんな中、周囲の人がうつ病を抱えている人に”頑張れ”などの声をかけたとき、更にその人を追いつめてしまう恐れがあります。そのため、うつ病を抱えている人に対しては励ますより、少し休んでみるなどの提案を行い、その人がリラックスできる環境づくりをすることをおすすめします。

まとめ

うつ病は日本において、15人に1人が発症したことがあるといわれている、決して珍しくはない疾患です。一度うつ病を経験すると、ストレスのもととなる要因が多い現代社会において、他のストレス要因も敏感に感じ取るようになり悪循環に陥ってしまう場合も少なくはありません。

そのため、悪循環に陥る前の初期治療、そして症状が治まった後の再発予防がとても大切になっています。

近年研究が進んでいることにより治療法の種類も増えてきています。そのため疾患や症状の程度を考慮した上での一人ひとりに合わせた治療法が選択できるようになっています。

最近気分が晴れず、ずっと暗いまま自分をコントロールできないなど、不安を抱えている場合はうつ病を抱えている可能性があります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。
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