不登校の原因は?子どもとの向き合い方、進級・進学や支援について【精神科医監修】
ライター:発達障害のキホン
一般的に不登校とは、病気や経済的な理由ではなく長期間(年間30日以上)学校を休み続ける状態をいいます。不登校になる原因やきっかけは子どもによってさまざまです。子どもが不登校になると将来を心配する保護者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、子どもと向き合い、学校以外の選択肢も含めて一緒に考えていくことが大切です。本記事では、不登校の原因や相談先、学校以外の学びの機会、保護者の子どもとの接し方のポイントを解説します。
監修: 松本俊彦
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 部長
精神科医として、自分を傷つけずにはいられない若者たちの治療・支援を行っている。特に薬物依存症に関する啓発や治療法の開発・普及、ならびに、自傷や自殺予防に関する支援のあり方に関する研究をしている。
不登校とは
文部科学省による定義は?
一般的に不登校とは、病気やケガ、経済的事情ではない理由で、長期間(年間30日以上)学校を休み続ける状態のことをいいます。
不登校の子どもについて、文部科学省は以下のように定義しています。
「不登校児童生徒」とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」
引用:不登校の現状に関する認識|文部科学省
子どもが不登校になる原因は、社会環境や学校環境、家庭環境など1人ひとりさまざまであり、無理やりに子どもを再登校させようとするとかえって問題が悪化するおそれもあります。
また、不登校問題の「解決」は個人によって違います。元々通っていた学校に再登校すること、別の学校に転校をし新たな居場所を見つけること、フリースクールや通信制高校といったその子に合った学びの場を見つけることなど、決まった答えはなくさまざまな選択肢が考えられます。
また、不登校問題の「解決」は個人によって違います。元々通っていた学校に再登校すること、別の学校に転校をし新たな居場所を見つけること、フリースクールや通信制高校といったその子に合った学びの場を見つけることなど、決まった答えはなくさまざまな選択肢が考えられます。
不登校の児童・生徒数の推移
このグラフは、平成5(1993)年以降の不登校生徒数の推移を表したものです。不登校の子どもの数は平成12(2000)年ごろまで上昇を続け、そのあとは横ばいでしたが、平成27(2015)年あたりから現在まで増え続けています。
令和4(2022)年度現在、不登校の子どもの数とその割合は、
小学生:10万5,112 人(1.7%、59人に1人)
中学校:19万3,936 人(6.0%、16人に1人)
高校生:6万575人(2.0%、50人に1人)
となっています。
中でも割合の高い中学生に関しては、16人に1人の割合となっており、これは40人のクラスであれば2人は不登校児がいる計算になります。
令和4(2022)年度現在、不登校の子どもの数とその割合は、
小学生:10万5,112 人(1.7%、59人に1人)
中学校:19万3,936 人(6.0%、16人に1人)
高校生:6万575人(2.0%、50人に1人)
となっています。
中でも割合の高い中学生に関しては、16人に1人の割合となっており、これは40人のクラスであれば2人は不登校児がいる計算になります。
不登校は小学生と中学生に多く見られ、原因としてはどちらも「無気力・不安」が1位となっています。詳しい原因については後ほど紹介します。
学校は休んでいいの?教育機会確保法と不登校
学校は休んでいいの?教育機会確保法と不登校
教育機会確保法は、不登校の子どもたちの教育支援を目的として平成29(2017)年に施行された法律です。
この法律では、国や地方自治体に対して、不登校の子どもが教育を受ける機会を失わないよう必要な支援をすることを求めています。
さまざまな議論の対象となっている教育機会確保法ですが、本章では中でも第十三条に注目して、この法律における2つの重要ポイントについて解説します。
教育機会確保法は、不登校の子どもたちの教育支援を目的として平成29(2017)年に施行された法律です。
この法律では、国や地方自治体に対して、不登校の子どもが教育を受ける機会を失わないよう必要な支援をすることを求めています。
さまざまな議論の対象となっている教育機会確保法ですが、本章では中でも第十三条に注目して、この法律における2つの重要ポイントについて解説します。
第十三条
国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ、当該不登校児童生徒の状況に応じた学習活動が行われることとなるよう、当該不登校児童生徒及びその保護者(学校教育法第十六条に規定する保護者をいう。)に対する必要な情報の提供、助言その他の支援を行うために必要な措置を講ずるものとする。
(太字筆者)
出典:義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律|文部科学省
まず、1つ目のポイントは「休んでもよい」ということです。無理な通学はかえって状況を悪化させる懸念があるという事実を踏まえ、「休養の必要性」が正式に認められました。
2つ目のポイントは「学校以外の場における学習活動の重要性」を認めたことです。学校以外の学習の居場所となっているフリースクールなどの役割がこれまで以上に重要視されるようになりました。
そして、教育機会確保法の成立の後もさまざまな議論が行われ、令和5(2023)年には社会全体で誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策として「COCOLOプラン」がまとめられるなど、国も不登校に対して本格的な対応を進めています。
2つ目のポイントは「学校以外の場における学習活動の重要性」を認めたことです。学校以外の学習の居場所となっているフリースクールなどの役割がこれまで以上に重要視されるようになりました。
そして、教育機会確保法の成立の後もさまざまな議論が行われ、令和5(2023)年には社会全体で誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策として「COCOLOプラン」がまとめられるなど、国も不登校に対して本格的な対応を進めています。
不登校の原因
ここでは、不登校の原因を小学生と中学生を中心に紹介します。
不登校の原因として、「親との仲が悪い」など親子の問題が大きいのではと考える方もいるかもしれませんが、文部科学省の調査によると親子の関わり方は小学生では約12%、中学生では約5%とそれほど高くはありません。
同調査によると不登校の主な原因として一番多いのは小学生と中学生共に「無気力・不安」となっていて、割合は50%を超えるほどで、他の原因と比べても圧倒的に高くなっています。
2位以下についても見てみると、小学生は2位が「生活リズムの乱れ・あそび・非行」、3位が「親子の関わり方」と続いていきます。
中学生の2位は「生活リズムの乱れ・あそび・非行」、ほぼ同じ割合で3位が「いじめを除く友人関係をめぐる問題」となっています。
不登校の原因として主なものを小学生・中学生に分けて紹介します。
小学生における不登校の主な原因(10万5,112人における)
・無気力・不安:53,472人(50.9%)
・生活リズムの乱れ・あそび・非行:13,209人(12.6%)
・親子の関わり方:12,746人(12.1%)
・いじめを除く友人関係をめぐる問題:6,912人(6.6%)
・家庭の生活環境の急激な変化:3,379人(3.2%)
中学生における不登校の主な原因(19万3,936人における)
・無気力・不安:101,300人(52.2%)
・生活リズムの乱れ・あそび・非行:20,790人(10.7%)
・いじめを除く友人関係をめぐる問題:20,598人(10.6%)
・学業の不振:11,169人(5.8%)
・親子の関わり方:9,441 人(4.9%)
不登校の原因として、「親との仲が悪い」など親子の問題が大きいのではと考える方もいるかもしれませんが、文部科学省の調査によると親子の関わり方は小学生では約12%、中学生では約5%とそれほど高くはありません。
同調査によると不登校の主な原因として一番多いのは小学生と中学生共に「無気力・不安」となっていて、割合は50%を超えるほどで、他の原因と比べても圧倒的に高くなっています。
2位以下についても見てみると、小学生は2位が「生活リズムの乱れ・あそび・非行」、3位が「親子の関わり方」と続いていきます。
中学生の2位は「生活リズムの乱れ・あそび・非行」、ほぼ同じ割合で3位が「いじめを除く友人関係をめぐる問題」となっています。
不登校の原因として主なものを小学生・中学生に分けて紹介します。
小学生における不登校の主な原因(10万5,112人における)
・無気力・不安:53,472人(50.9%)
・生活リズムの乱れ・あそび・非行:13,209人(12.6%)
・親子の関わり方:12,746人(12.1%)
・いじめを除く友人関係をめぐる問題:6,912人(6.6%)
・家庭の生活環境の急激な変化:3,379人(3.2%)
中学生における不登校の主な原因(19万3,936人における)
・無気力・不安:101,300人(52.2%)
・生活リズムの乱れ・あそび・非行:20,790人(10.7%)
・いじめを除く友人関係をめぐる問題:20,598人(10.6%)
・学業の不振:11,169人(5.8%)
・親子の関わり方:9,441 人(4.9%)
不登校の原因として主なものを紹介しましたが、原因は一つだけでなくさまざまなことが絡み合っていたり、本人にも分からない、はっきりしないという場合もあります。また、原因を取り除いたとしても問題が解決するとは限りません。原因を突き止めることよりも、子どもの心身の休息が大切です。
不登校になりやすい子どもの特徴・傾向はあるの?
どういった性格や特徴のある子どもが不登校になりやすい傾向があるか、気になる方もいると思います。
それに対して文部科学省は不登校は「誰にでもおこりうる」状態だとしています。実際に不登校はさまざまな要因が関係しているため、子どもの性格や特徴だけで決まるわけではありません。
もし子どもが不登校になったときに「不登校になったのはこういった性格や特徴があるからなのでは」と悩むのではなく、どの子どもにも起こり得ることだと認識し、向きに今後の対応について検討していくようにするとよいでしょう。
それに対して文部科学省は不登校は「誰にでもおこりうる」状態だとしています。実際に不登校はさまざまな要因が関係しているため、子どもの性格や特徴だけで決まるわけではありません。
もし子どもが不登校になったときに「不登校になったのはこういった性格や特徴があるからなのでは」と悩むのではなく、どの子どもにも起こり得ることだと認識し、向きに今後の対応について検討していくようにするとよいでしょう。
不登校と発達障害の関連は?
発達障害があるからといって必ずしも不登校やひきこもりになるわけではありません。しかし、発達障害の特性と環境がかみ合わずに人間関係がうまく構築できない、学習についていけないといった状況が進み、二次障害として不登校にいたる可能性が指摘されています。
そして、不登校の背景に発達障害の特性が関係している場合は、教育的な支援が必要とも言われています。
例えば、発達障害のひとつであるLD・SLD(限局性学習症)の影響によって文字をうまく読むことができないため授業についていけず、試験で悪い点を取ったことが原因で不登校になった生徒を例に考えてみましょう。
この場合、本人や周囲の努力により再登校まで漕ぎつけたとしても、根本となっているLD・SLD(限局性学習症)への対処がないまま授業を受けるとしたら、また同じ困難が生じることになります。
そのため、学校と合理的配慮の相談をし、文字を読みやすいよう拡大コピーしたり、文字以外の方法(レコーダーなど)で学びを支援したりといった手段を取るなど根本的な原因にアプローチしていく必要があります。
こういった合理的配慮は学校の担任や学年主任、スクールカウンセラーなどに相談してみるとよいでしょう。
そして、不登校の背景に発達障害の特性が関係している場合は、教育的な支援が必要とも言われています。
例えば、発達障害のひとつであるLD・SLD(限局性学習症)の影響によって文字をうまく読むことができないため授業についていけず、試験で悪い点を取ったことが原因で不登校になった生徒を例に考えてみましょう。
この場合、本人や周囲の努力により再登校まで漕ぎつけたとしても、根本となっているLD・SLD(限局性学習症)への対処がないまま授業を受けるとしたら、また同じ困難が生じることになります。
そのため、学校と合理的配慮の相談をし、文字を読みやすいよう拡大コピーしたり、文字以外の方法(レコーダーなど)で学びを支援したりといった手段を取るなど根本的な原因にアプローチしていく必要があります。
こういった合理的配慮は学校の担任や学年主任、スクールカウンセラーなどに相談してみるとよいでしょう。
LD・SLD(限局性学習症)とは?症状や特徴、診断方法について【専門家監修】
合理的配慮とは?考え方と具体例、合意形成プロセスについて【専門家監修】
また、学校外にも発達が気になる場合の相談ができる窓口が数多くあります。以下のような場所に相談してみるといいでしょう。
・発達障害者支援センター
・教育センター/教育相談所
・児童相談所
・市町村保健センター
・放課後等デイサービス
・発達障害者支援センター
・教育センター/教育相談所
・児童相談所
・市町村保健センター
・放課後等デイサービス
不登校のエピソード
ここでは、発達障害があり不登校を経験した家庭の体験談を3つ紹介します。
■小4で不登校に。長男の絶望した表情で決意した移籍【読者体験談】
ADHD(注意欠如多動症)、LD・SLD(限局性学習症)の診断がある長男はひらがなの読み書きでつまづき、入学1ヶ月で通常学級に行き渋りをし、通級指導教室へ通うも小学4年生のときに友達とのトラブルがきっかけとなり不登校になりました。そこで母親は特別支援学級をすすめましたが、本人が「通常学級がいい」と言って拒んでいました。
一方でASD(自閉スペクトラム症)のある次男は、特別支援学級に通い本人のペースで学び、大きなトラブルもなく過ごしていました。
長男は、その特別支援学級に通う次男の話を聞いたり、試しに行ってみたりして、自らの意思で特別支援学級に転籍することを決めました。最初は通常学級との違いに戸惑うこともあった長男でしたが、周りから「受け入れられている」と感じたこともあり、少しずつ前向きになってきたと言います。
■小4で不登校に。長男の絶望した表情で決意した移籍【読者体験談】
ADHD(注意欠如多動症)、LD・SLD(限局性学習症)の診断がある長男はひらがなの読み書きでつまづき、入学1ヶ月で通常学級に行き渋りをし、通級指導教室へ通うも小学4年生のときに友達とのトラブルがきっかけとなり不登校になりました。そこで母親は特別支援学級をすすめましたが、本人が「通常学級がいい」と言って拒んでいました。
一方でASD(自閉スペクトラム症)のある次男は、特別支援学級に通い本人のペースで学び、大きなトラブルもなく過ごしていました。
長男は、その特別支援学級に通う次男の話を聞いたり、試しに行ってみたりして、自らの意思で特別支援学級に転籍することを決めました。最初は通常学級との違いに戸惑うこともあった長男でしたが、周りから「受け入れられている」と感じたこともあり、少しずつ前向きになってきたと言います。
発達障害長男、通常学級入学1ヶ月で行き渋り、小4で不登校に。自閉症次男は特別支援学級で楽しそう…長男の絶望した表情で決意した移籍【読者体験談】
■「学校は怖い」不登校歴2年の小3発達障害息子。当初は精神的に不安定だったけれど……
ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)の診断のあるむっくんは、「学校は怖い」と小学1年生の秋から不登校になりました。むっくんにとっては、学校は「うるさくて疲れる」「突然の変更がある」「なぜやるのか教えてくれない」場所という認識でした。
不登校になった当初はお母さんから離れられず、外出もできず、睡眠にも影響が出るなど精神的に不安定な状態でした。半年ほどして元気を取り戻しましたが、お母さんは学校へ戻るのではなく「ホームエデュケーション」を選択することに。家庭を中心に、公的施設の体験授業やオンライン講座、子ども向けイベントなどで学習を進めています。
お母さんは「子ども向けの講座は探せばたくさんあるので、本人の「好き」を大切にいろんな体験を積むことはそう難しくないのだと感じています。」と話しています。
ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)の診断のあるむっくんは、「学校は怖い」と小学1年生の秋から不登校になりました。むっくんにとっては、学校は「うるさくて疲れる」「突然の変更がある」「なぜやるのか教えてくれない」場所という認識でした。
不登校になった当初はお母さんから離れられず、外出もできず、睡眠にも影響が出るなど精神的に不安定な状態でした。半年ほどして元気を取り戻しましたが、お母さんは学校へ戻るのではなく「ホームエデュケーション」を選択することに。家庭を中心に、公的施設の体験授業やオンライン講座、子ども向けイベントなどで学習を進めています。
お母さんは「子ども向けの講座は探せばたくさんあるので、本人の「好き」を大切にいろんな体験を積むことはそう難しくないのだと感じています。」と話しています。
「学校は怖い」不登校歴2年の小3発達障害息子。当初は精神的に不安定だったけれど…今は目指せ「ホームエデュケーション」!
■高学年で不登校になった娘、進路選択はこれでよかった?
睡眠障害があり、もともと決まった時間に起きることが苦手ないっちゃんは、小学校に入学してからも月の半分は遅刻をするなどうまく学校に通えませんでした。さらに「どうして私は夜眠れないの?」「どうして昼間起きていられないの?」と悩み、そのことでますます眠れなくなり遅刻が増えるという悪循環になってしまい、高学年になるころには不登校になってしまいました。
中学校もほとんど不登校で過ごしたいっちゃんでしたが、登校する必要がない通信制高校に進学してからは、自分のペースで起きることができ通うことができています。
睡眠障害があり、もともと決まった時間に起きることが苦手ないっちゃんは、小学校に入学してからも月の半分は遅刻をするなどうまく学校に通えませんでした。さらに「どうして私は夜眠れないの?」「どうして昼間起きていられないの?」と悩み、そのことでますます眠れなくなり遅刻が増えるという悪循環になってしまい、高学年になるころには不登校になってしまいました。
中学校もほとんど不登校で過ごしたいっちゃんでしたが、登校する必要がない通信制高校に進学してからは、自分のペースで起きることができ通うことができています。
二人目も発達障害?療育に通って2年半。就学先判定はまさかの「通常学級」で…⁉高学年で不登校になった娘、進路選択はこれでよかった?