学習障害(LD)とは?学習障害の症状3種類、年齢別の特徴、診断方法について詳しく説明します

学習障害(LD)は、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力に困難が生じる発達障害のことです。LDにはディスレクシア、ディスグラフィア、算数障害などさまざまなタイプがあり、また人によって症状の現れ方も違うので、診断が難しい障害でもあります。学習障害のある人の中でも文章を構成するのが得意な人もいれば、算数が得意な人もいます。このコラムでは、学習障害の3つの種類とそれぞれの症状、そして、具体的な特徴や受けられる支援について詳しく解説します。


- 学習障害(LD)とは?主な症状と3つの種類
- 種類別の学習障害の特徴
- 年齢別に見た学習障害の症状の現れ方
- 学習障害の特徴チェック
- 学習障害の診断方法・基準
- 学習障害の疑いを感じたらどうすればいい?
- 診断を受ける前に、まずは専門機関で相談を
- 発達障害の人はどんな支援を受けられるの?
- まとめ
学習障害(LD)とは?主な症状と3つの種類
文部科学省は、学習障害を以下のように定義しています。
出典:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。
学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。
また、医学的な学習障害の診断基準と、文部科学省が定める学習障害の定義の間には、若干の違いがあります。ここでは、文部科学省の定義に近い、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)とアメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版 テキスト改訂版)での3つの分類に従って、学習障害の特徴を解説します。
なお、アメリカ精神医学会の新しい診断基準である『DSM-5』では、これら3つの分類はすべて限局性学習症/限局性学習障害という診断名に統合されています。こちらは後ほど詳しく説明します。
学習障害の種類は主に
■読字障害(ディスレクシア)・・・読みの困難
■書字表出障害(ディスグラフィア)・・・書きの困難
■算数障害(ディスカリキュリア)・・・算数、推論の困難
の3つに分類されます。
苦手分野以外の知的能力に問題が見られないことが多いため、学習障害は発達障害の中でも判断が難しい種類の障害でもあります。読み書きや計算能力は、ほとんどの子どもが就学前には学んでいません。そのため、本格的な学習に入るまで判断が難しく、障害に気づかないことも少なくありません。中にはその人の学習困難が発達障害によるものではなく単なる苦手分野だと判断され、大人になるまで気づかれないことも多くあります。
学習障害の人は「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」という5つの能力の全てに必ず困難があるというわけではなく、一部の能力だけに困難がある場合が多いです。読む能力はあっても書くのが苦手、他の教科は問題ないのに数学だけは理解ができないなど、ある特定分野に偏りが見られます。また、同じ「読む」ことの障害でも、ひらがなは問題なくても漢字が苦手など、その状態はさまざまです。一方、読字と書字の障害など、複数が併せて現れる場合も多く見られます。
※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。

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種類別の学習障害の特徴
読字障害・読みの困難(ディスレクシア)
読字障害があると、結果として文字を書くことにも困難を感じる場合が多いため、読み書き障害と呼ばれることもあります。
読字障害の人の中には「見た文字を音にするのが苦手」という症状があります。その原因は、情報を伝達し処理する脳の機能がスムーズに働いていないことだと考えられています。文字の見え方にも特徴があり、文字がぼやける、黒いかたまりになっている、逆さまに見える、図形に見えるなど違った見え方になってしまい、認知の仕方が異なります。
また音韻認識が弱く、ひらがなやカタカナのひとつずつは理解していても、漢字(単語)になると理解できなくなってしまうこともあります。漢字の音読みと訓読みの使い分けができなかったり、単語や文節の途中で区切った読み方をするなど、変わった読み方をしてしまいます。
【読字障害の特徴】
・形態の似た字である「わ」と「ね」、「シ」と「ツ」などを理解できない
・小さい文字「っ」「ゃ」「ょ」を認識できない
・文章を読んでいると、どこを読んでいるのかわからなくなる
・飛ばし読み、適当読みをするなど文章をスムーズに読めず、読み方に特徴がある
・音声にするなど耳から情報は理解しやすい場合が多い など
出典:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/glossary/Dyslexia.html英語圏ではディスレクシアの発現率は10%から20%といわれているが、日本ではディスレクシア単独の調査がない。
(障害保健福祉研究情報システム)

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書字表出障害・書きの困難(ディスグラフィア)
書字障害の人は、自分では文字を正確に書いているつもりなのに鏡文字になってしまうなど、文字を書くという動作が苦手です。原因としては、脳内で身体に指示を出し手を動かすという伝達機能がうまくいっていないからだという説が有力です。そのため、文字が書けなかったり、文字を書く速度が遅くなってしまうのです。
【書字障害の特徴】
・鏡文字や雰囲気で「勝手文字」を書く
・誤字脱字や書き順の間違いが多い
・黒板やプリントの字が書き写せない、時間がかかる
・漢字が苦手で、覚えられない
・文字の形や大きさがバラバラになったり、マス目からはみ出したりする など

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算数障害・算数、推論の困難(ディスカリキュリア)
「1」「2」「3」などの基本的な数字や、「x」「+」などの計算式で使う記号を認識することに困難をもっています。算数障害の人は数字そのものの概念、規則性、推論が必要な図形の領域を認識するのが難しいです。また、視覚認知の機能が弱く、数字を揃えて書く、バランスを考える、文字間の距離感を取るなどが苦手です。そのため、筆算を書く際に桁がずれることも多くなります。
【算数障害の特徴】
・簡単な数字、記号を理解しにくい
・繰り上げ、繰り下げができない
・数の大きい、小さいがよく分からない
・文章問題が苦手、理解できない
・図形やグラフが苦手、理解できない など

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年齢別に見た学習障害の症状の現れ方
学習障害の人の中にはADHDや自閉症などの他の発達障害の合併症状を持っている人も多く、その場合は、乳幼児期に特徴があらわれる場合もありますが、合併が無い場合は、この時期にはっきりと判断をするのは難しいと言えます。ある程度知能が育ち、行動に特徴が現れやすい学習を始める小学生頃にならないと、学習障害とは判断しにくいのです。
特に乳児期は学習障害の特徴は見分けにくいといえます。他の発達障害の特徴として、抱っこされるのを嫌がる、視線を合わせない、言葉を真似する行為が見られないなどの症状がみられるなど、他の発達障害の症状を目安にし、学習障害の確実な診断は学習を始める年齢以降にするしかありません。
以下では年齢別に見られる学習障害の特徴を紹介します。幼児期の目安もあくまで他の発達障害を合併している場合です。
幼児(1歳〜小学校就学)
【幼児の学習障害の特徴】
・言葉、文字を覚えるのが遅い
・折り紙が折れない、ボタンがとめられないなど手先が不器用
・身体の使い方がぎこちない など
小学生(6歳〜12歳)
【小学生の学習障害の特徴】
・授業を真面目に聞いていても勉強が苦手、ついていけない など
■読字障害
・ひらがな・漢字が読めない
・たどり読み・推測読みになってしまう
・行を飛ばして読んでしまう
・文章を読むのを嫌がる など
■書字障害
・うまく文字を書くことができない(線を抜かしたり、鏡文字を書いてしまう)
・板書ができない、時間がかかる
・行やマス目からのはみ出しが大きい
・文字を書くのを嫌がる など
■算数障害
・数が数えられない、とばして数えてしまう
・時計が読めない、時間が分からない
・計算ができない
・筆算をするときに数字がずれて間違えてしまう
・計算を嫌がる など
中高生(12歳〜18歳)
【中高生の学習障害の特徴】
■読字障害
・小学生で習うような漢字であっても読めない場合がある
・英語の単語が読めない など
■書字障害
・卒業作文などの長い文章がかけない
・英単語が書けない など
■算数障害
・計算はできるが、文章題が解けない
・図形関連の問題が解けない など
これらの特徴も、発達障害の合併症として現れることもあります。
成人期(18歳〜)
【成人の学習障害の特徴】
・上司の注意を聞いてもうまく理解できず同じ失敗をする
・電話で聞きながらメモを取れない
・話がうまくまとめられず企画案を作成できない
・集団で指示されるのが苦手で会議で辛い思いをする
・レポートが書けない
・お釣りの計算や金銭管理ができない など
学習障害の特徴チェック
チェックする大切なポイントは「年齢に見合った動きができているか」です。年齢相応の習得の度合いと比較してチェックしましょう。また、これはあくまで学習障害の可能性があるかどうかという参考程度のチェックリストであることに注意してください。多く当てはまる場合は、診断を受けてみることをおすすめします。診断は子育て支援センターなどの専門機関の窓口に相談した上、専門医師によるものを受けてください。
□漢字の訓読みと音読みを使い分けるのを苦手とするように見受けられる。
□単語の単位をつかむのを苦手とする。一文字ずつ読んでしまい、まとまりのない読み方をすることが多い。
□文字や行を飛ばして読むことが多い。
□特殊音節(拗音・長音・促音)であらわされる文字を発音できない。
■書字障害
□漢字を書く際に、鏡文字を書くことが多い。
□文字を書く際に、余分に線や点を書いてしまうことが多い。
□年相応の漢字を書くことができないことが多い。
□間違った助詞を使ってしまうことが多い。
□文字の大きさや形がバラバラ・マス目からはみ出る。
■読字・書字障害の合併(読み書き障害)
□上記の読字・書字障害のチェック項目に当てはまるものが多い
□ひらがなの読み書きを苦手とする。例えば「ね」「れ」「わ」が一緒に見えてしまうように見受けられる。
□カタカナの読み書きを苦手とする。例えば「ソ」「ン」、「シ」「ツ」が一緒に見えてしまうように見受けられる。
□特殊音節(拗音・長音・促音)の読み書きを苦手とすることが多い。
■算数障害
□数を覚えるのに時間がかかることが多い。
□数の大小の概念を理解できていないように見受けられる。
□九九を習得している年齢なのにも関わらず、九九を覚えられていない。九九を暗記しても計算に応用できない。
□繰り上がり繰り下がりの筆算ができないことが多い。
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