算数障害(ディスカリキュリア)とは?症状、診断、対処法まとめ

2016/06/05 更新
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算数障害の子どもは、計算をするとき短い記憶が曖昧なために足し算などの単純な計算も困難に感じます。算数障害は学習障害の分類の一つにあたります。学校生活においても学年が上がるにつれ支障を来すようになります。算数障害の子どもに対して大人はどのように向き合い、算数や計算を教えていけばよいのでしょうか。

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発達障害のキホン
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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員

算数障害とは?

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学習の習得に著しい困難を示す学習障害(LD)の一つに算数障害があります。これは、算数・計算や、考えて答えにたどり着く推論が著しく苦手な状況を示す状態を指します。

算数障害を含む学習障害の子どもは、知的能力に問題が無いことが多いので、円滑な対人関係を築き、学校生活の中で一見問題もないように見える場合が少なくありません。しかし、計算の場面になるとたちまち他の同年代の子どもと比べて苦戦する傾向が見られます。
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算数障害の別名は「ディスカリキュリア」

最初は、「単に数字や記号を覚えるのが苦手なのか?」という程度に周りは理解をします。しかしながら、本人にとっては、数字や記号を認識することが著しく困難で、そのため書かれている数字や数式を理解できていない、という状態に陥っているのです。

つまり、簡単な計算でも難しく感じてしまいますし、数の大小の理解すら困難な場合もあります。また学年が上がるにつれて繰り上がり計算や繰り下がり計算など算数の内容も難しくなるので、学年が上がるにつれて理解度がさらに低くなってしまいます。

算数障害の症状とはどんなもの?

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算数障害の症状について

算数障害の具体的な症状は、
例えば、

・簡単な数字や記号を理解しにくい
・繰り上がり、繰り下がりが理解できない
・数の大きい、小さいがよくわからない
・文章問題が苦手、理解できない
・図形やグラフが苦手、理解できない


等々が挙げられます。

いつから困難さが生まれるのか

学校生活においては、最初に足し算の繰り上がりや繰り下がりを覚えて計算することに困難が生じます。ここでつまづくと、九九表を覚える際にも同年齢の児童の水準を下回ります。この段階で教師や保護者は「もしかして算数障害なのかな」と気が付くパターンも多いです。

算数障害の困難が特に大きくなるのは、子どもが9歳を迎える時期です。この年齢は、学校生活において、高度な算数の勉強が始まる時期にあたります。抽象的な問題や手続きの多い問題が増えるため、低学年の時はなんとかついていけていても、この時期に顕著な困難さがうまれる場合があります。

算数障害の診断基準

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算数障害を含む学習障害の医療機関での診断は、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)や、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)による診断基準に基づいて行われます。医療機関では脳の異常はないか、知的な部分に障害がないか、困難な能力に偏りがないかを調べます。

『DSM-5』の1つ古いバージョンである『DSM-IV-TR』では学習障害は「読字障害」「書字表出障害」「算数障害」の3つに分類され診断されていました。最新版である『DSM-5』では、すべて「限局性学習症・限局性学習障害」とひとくくりにされ診断されます。以下がDSM-5における診断基準です。


A.学習や学業的技能の使用に困難があり、その困難を対象とした介入が提供されているにもかかわらず、以下の症状の少なくとも1つが存在し、少なくとも6ヶ月間持続していることで明らかになる:

(1)不的確または速度が遅く、努力を要する読字(例:単語を間違ってまたゆっくりとためらいがちに音読する、しばしば言葉を当てずっぽうに言う、言葉を発音することの困難さをもつ)
(2)読んでいるものの意味を理解することの困難さ(例:文章を正確に読む場合があるが、読んでいるもののつながり、関係、意味するもの、またはより深い意味を理解していないかもしれない)
(3)綴字の困難さ(例:母音や子因を付け加えたり、入れ忘れたり、置き換えたりするかもしれない)
(4)書字表出の困難さ(例:文章の中で複数の文法または句読点の間違いをする、段落のまとめ方が下手、思考の書字表出に明確さがない)
(5)数字の概念、数値、または計算を習得することの困難さ(例:数字、その大小、および関係の理解に乏しい、1桁の足し算を行うのに同級生がやるように数字的事実を思い浮かべるのではなく指を折って数える、算術計算の途中で迷ってしまい方法を変更するかもしれない)
(6) 数学的推論の困難さ(例:定量的問題を解くために、数学的概念、数学的事実、または数学的方法を適用することが非常に困難である)

B.欠陥のある学業的技能は、その人の暦年齢に期待されるよりも、著明にかつ定量的に低く、学業または職業遂行能力、または日常生活活動に意味のある障害を引き起こしており、個別施行の標準化された到達尺度および総合的な臨床消化で確認されている。17歳以上の人においては、確認された学習困難の経歴は標準化された評価の代わりにしてよいかもしれない。

C.学習困難は学齢期に始まるが、欠陥のある学業的技能に対する要求が、その人の限られた能力を超えるまでは完全には明らかにはならないかもしれない(例:時間制限のある試験、厳しい締め切り期間内に長く複雑な報告書を読んだり書いたりすること、過度に思い学業的負荷)。

D.学習困難は知的能力障害群、非矯正視力または聴力、他の精神または精神疾患、心理社会的逆境、学業的指導に用いる言語の習熟度不足、または不適切な教育的指導によってはうまく説明されない。

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この基準に照らし、学習障害の診断が出た上で、以下の基準から「読字障害」「書字障害」「算数障害」のうち、どれが強いかが特定されます。以下の傾向が強い場合、算数障害であると言えます。

315.1(F81.2) 算数の障害を伴う:
  数の感覚
  数学的事実の記憶
  計算の正確さまたは流暢性
  数学的数理の正確さ

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算数障害の疑いを感じたら

まずは専門機関で相談を

上記の診断項目に心当たりがあったり、何か気がかりなことがあったりなど、算数障害が疑われる場合には「発達障害」を専門に扱っている専門医を受診することをおすすめします。ですが、いきなり専門医の外来に行くことは難しいので、まずは無料で相談できる自治体の身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。子どもか大人かによって、行くべき機関が違うので、以下を参考にしてみてください。

【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童発達支援事業所

【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所

知能検査や発達検査は児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、障害について相談することも可能です。その他、発達障害者支援センターで障害についての相談ができます。その後、すすめられた場合は、医療機関に行き医師からの診断を受けましょう。専門機関で専門医を紹介してくれます。

算数障害の診断の流れ

診断は、医療機関などによっても異なりますが、まずは問診で現在の症状や困りごと、赤ちゃんの時から今までの生育・養育歴、既往症や家族歴などを調べていきます。脳波検査、頭部のCT、MRIなどでてんかんや脳の器質的な病気といった異常がないかを検査します。そして「WISC-Ⅳ」といった知能検査や「KABC-Ⅱ」といった認知能力検査などの心理検査を行います。

これら様々な情報を元に、総合的に学習障害であるか、さらにその中でも算数障害の傾向があるかどうかを判断するのです。また、こうした過程でADHDや高機能広汎性発達障害などが合併していないかも確認します。

今現在、日本では標準化された診断基準が存在せず、医学の診断基準では算数障害という診断名は使われません。診断名としては前述のアメリカ精神医学会のDSM-5における限局性学習症/限局性学習障害(Specific Learning Disorder)などが用いられます。

算数障害の対応法

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できていることを褒める

単純な計算ができないことや問題が解けないことを頭ごなしに叱ってしまうと、本人の自信がなくなってしまいます。できないことに着目するのではなく、できていることに目をむけ褒めましょう。

子どもと真摯に向き合う

できないことを何度も教え込むのではなく、ほかの子どもが理解できることが理解できないということを大前提に考えてあげましょう。教え方も学び方もその子の個性に合わせる必要があるわけです。算数などの一定のルールの理解が苦手であることを理解して根気よく向き合う必要があるのです。道具(電卓やICT機器)を使うことも一つの方法です。

計算障害(学習障害)の正しい知識を持つ

計算障害とは?学習障害とは?という視点に立ってわが子のことを考えてみてください。その時に一人で悩まずに専門の機関や支援してくれる場所に相談を通じて助言を求めることは親として何ら恥ずかしいことではありません。まずは正しい知識を持つことから始めるべきです。その上でその子がつまづいている要因を把握しましょう。

同じ障害を持つ人との情報交換をする

算数障害の子供を持つ親として、家庭の中でどのように接していけばよいのか?と時折悩んでしまう場合があると思います。そんな時には同じ病気を抱える親御さん同士の交流が心の負担を軽減してくれる場合があります。よき理解者や助言者になってくれる人と出会えるコミュニティを親が持つことで、お子さんへの接し方や理解の仕方も随分と変わっていくでしょう。

理解度をあげる工夫をしましょう

算数障害を早期に発見することは何よりも大事なことです。その場合には学校の教師と親との連携を密に取り、少しでも早く対策を考えてあげることが大事です。例えば、具体物を使ったり、文章問題を絵や図に変えて視覚的に問題を理解させたり、パソコンの学習ソフトを利用したり、工夫できることはたくさんあります。

なにより避けたいのは、無理やり問題を解かせてお子さんが算数を嫌いになってしまうことです。お子さんが解きやすい問題の解き方を一緒に探してゆきましょう。

完璧に同年代のお子さんと同等にならなくても、時間をかけて計算が理解できるようになれば、お子さんの自信につながります。そのためには、適切な学習環境を整えてあげることが大切です。
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