算数障害とは?チェックリストや症状、診断、対処法まとめ【専門家監修】
ライター:発達障害のキホン
算数障害は、学習の習得に著しい困難を示すLD・SLD(限局性学習症)のひとつで、算数、計算、推論などの理解が難しい状態を指します。学校生活においては、学年が上がるにつれ支障を来すようになります。算数障害の子どもに対して大人はどのように向き合い、算数や計算を教えていけばよいのでしょうか。
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
算数障害とは?出現率は?
算数障害はLD・SLD(限局性学習症)のひとつにあたります。算数障害についてはまだ研究段階のことが多く、研究者によってさまざまな定義があるとともに、アメリカ精神医学会の『DSM-5-TR』、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)、文部科学省での定義も完全には一致していません。
大まかな定義としては、算数障害は計算や、数学的推論、図形に関する情報処理など算数に関連する能力がその年齢で期待されるものよりも著しく低い状態を指していると言えます。算数障害のある子どもの出現率は、およそ5~7%(Shalev, 2007)と言われています。
大まかな定義としては、算数障害は計算や、数学的推論、図形に関する情報処理など算数に関連する能力がその年齢で期待されるものよりも著しく低い状態を指していると言えます。算数障害のある子どもの出現率は、およそ5~7%(Shalev, 2007)と言われています。
算数障害を含むLD・SLD(限局性学習症)は、知的障害(知的発達症)を伴いません。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)を併存することがありますが、これらの併存がなければ、学校生活の中で一見問題はないように見える場合が少なくありません。しかし、計算の場面になるとたちまちほかの同年代の子どもと比べて苦戦する傾向が見られます。
周りは「努力不足では?」「ただ数字や記号を覚えるのが苦手なのかな?」と思われがちですが、本人は、「数字や記号を認識することが著しく困難で、そのため書かれている数字や数式を理解できていない」という状態です。
つまり、簡単な計算でも難しく感じ、数の大小の理解が困難な場合もあります。また学年が上がるにつれて繰り上がりや繰り下がり計算など算数の内容も難しくなるので、理解度がさらに低くなっていく傾向にあります。
※学習障害は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。
周りは「努力不足では?」「ただ数字や記号を覚えるのが苦手なのかな?」と思われがちですが、本人は、「数字や記号を認識することが著しく困難で、そのため書かれている数字や数式を理解できていない」という状態です。
つまり、簡単な計算でも難しく感じ、数の大小の理解が困難な場合もあります。また学年が上がるにつれて繰り上がりや繰り下がり計算など算数の内容も難しくなるので、理解度がさらに低くなっていく傾向にあります。
※学習障害は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。
LD・SLD(限局性学習症)とは
LD・SLD(限局性学習症)は、学習における技能に困難さがみられる発達障害の一つです。名称や分類はさまざまですが、医学的診断基準である『DSM-5-TR(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版改訂版)』では、以下のように大きく3つの分類があります。困難さの程度はさまざまで、3つの分類がいくつか重なってあらわれる場合もあります。
1、読字不全(「DSM-5」以前では「読字障害」という名称)
読むことやその内容を理解することに困難さがある
2、書字表出不全(「DSM-5」以前では「書字表出障害」という名称)
書くことに困難さがある
3、算数不全(「DSM-5」以前では「算数障害」という名称)
数の理解や計算をすることの困難さがある
これらの困難さが、知的障害(知的発達症)によるものでないこと、経済的・環境的な要因によるものでないこと、神経疾患や視覚・聴覚の障害によるものではないこと、学習面のみでの困難であることという場合に限り、診断されます。
ほとんどが就学期になって診断されますが、就学前でも言語の遅れや数えることの困難さ、書く動きに必要な微細運動の困難さなどがあることで、その兆候に気づくこともあります。
LD・SLD(限局性学習症)の原因は先天的な脳機能障害によるものと言われていますが、なぜ脳機能障害が起こるかはまだ未解明です。保護者の育て方が悪いといった心因論は、医学的に否定されています。
1、読字不全(「DSM-5」以前では「読字障害」という名称)
読むことやその内容を理解することに困難さがある
2、書字表出不全(「DSM-5」以前では「書字表出障害」という名称)
書くことに困難さがある
3、算数不全(「DSM-5」以前では「算数障害」という名称)
数の理解や計算をすることの困難さがある
これらの困難さが、知的障害(知的発達症)によるものでないこと、経済的・環境的な要因によるものでないこと、神経疾患や視覚・聴覚の障害によるものではないこと、学習面のみでの困難であることという場合に限り、診断されます。
ほとんどが就学期になって診断されますが、就学前でも言語の遅れや数えることの困難さ、書く動きに必要な微細運動の困難さなどがあることで、その兆候に気づくこともあります。
LD・SLD(限局性学習症)の原因は先天的な脳機能障害によるものと言われていますが、なぜ脳機能障害が起こるかはまだ未解明です。保護者の育て方が悪いといった心因論は、医学的に否定されています。
学習障害(限局性学習症)の特徴や関わり方のポイントを解説/専門家監修
算数障害の症状とはどんなもの?困り事、二次障害について
算数障害の症状について
算数障害の具体的な症状は、
例えば、
・簡単な数字や記号を理解しにくい
・繰り上がり、繰り下がりが理解できない
・数の大きい、小さいがよくわからない
・文章問題が苦手、理解できない
・図形やグラフが苦手、理解できない
などが挙げられます。
例えば、
・簡単な数字や記号を理解しにくい
・繰り上がり、繰り下がりが理解できない
・数の大きい、小さいがよくわからない
・文章問題が苦手、理解できない
・図形やグラフが苦手、理解できない
などが挙げられます。
いつから困難さが生まれるのか
学校生活においては、最初に足し算の繰り上がりや繰り下がりを覚えて計算することに困難が生じます。ここでつまづくと、九九表を覚える際にも同年齢の児童の水準を下回ります。この段階で教師や保護者が「もしかして算数障害なのかな」と気が付くパターンも多いです。
また、昔は算数障害の認知度が低かったこともあり、大人になって仕事をはじめてから算数障害が分かる人もいます。
算数障害の困難が特に大きくなるのは、子どもが9歳を迎える時期です。この年齢は、学校生活において、高度な算数の勉強が始まる時期にあたります。抽象的な問題や手続きの多い問題が増えるため、低学年の時はついていけていても、この時期に顕著な困難さがうまれる場合があります。
このような困難さを「頑張ればできるもの」「努力が足りない」「勉強不足」ととらえてしまうと、子どもの自信が低下し、抑うつなどの二次障害につながることもあります。本人がどのようなことに困っているのか早期に理解し、工夫して対処することが算数障害のある子どもをサポートするためにとても重要です。
また、昔は算数障害の認知度が低かったこともあり、大人になって仕事をはじめてから算数障害が分かる人もいます。
算数障害の困難が特に大きくなるのは、子どもが9歳を迎える時期です。この年齢は、学校生活において、高度な算数の勉強が始まる時期にあたります。抽象的な問題や手続きの多い問題が増えるため、低学年の時はついていけていても、この時期に顕著な困難さがうまれる場合があります。
このような困難さを「頑張ればできるもの」「努力が足りない」「勉強不足」ととらえてしまうと、子どもの自信が低下し、抑うつなどの二次障害につながることもあります。本人がどのようなことに困っているのか早期に理解し、工夫して対処することが算数障害のある子どもをサポートするためにとても重要です。
算数障害の診断、困り事のチェックリスト
診断、困り事のチェックリスト
算数障害含むLD・SLD(限局性学習症)の診断は、アメリカ精神医学会の『DSM-5-TR』による診断基準に基づいて行われます。医療機関では脳の異常はないか、知的な部分に障害がないか、困難な能力に偏りがないかを調べます。
注:文部科学省の定義による学習障害と医学的診断基準は異なります。
『DSM-5-TR』の2つ古いバージョンである『DSM-IV-TR』ではLD・SLD(限局性学習症)は「読字障害」「書字表出障害」「算数障害」の3つに分類され診断されていましたが『DSM-IV-TR』の次の『DSM-5』では、すべて「限局性学習症・限局性学習障害」とひとくくりにされ診断されます。
基準に照らし、LD・SLD(限局性学習症)の診断が出た上で、以下の基準から「読字障害」「書字障害」「算数障害」のうち、どれが強いかが特定されます。以下の傾向が強い場合、算数障害であると言えます。
数字、算数、数学だけできないといった症状がある場合、以下のような困り事のチェックリストを使ってセルフチェックしてみましょう。当てはまるものがあった場合は、4章「算数障害の疑いを感じたら。相談先や診断を受ける場所は?」を参考にしてください。
◆困りごとチェックリスト
□簡単な数字、記号を理解しにくい
□繰り上げ、繰り下げの筆算ができないことが多い
□数の大きい、小さいがよく分からない
□文章問題が苦手、理解できないことが多い
□数を覚えるのに時間がかかることが多い
□九九を習得している年齢なのにも関わらず、九九を覚えられていない。九九を暗記しても計算にようようできない など
注:文部科学省の定義による学習障害と医学的診断基準は異なります。
『DSM-5-TR』の2つ古いバージョンである『DSM-IV-TR』ではLD・SLD(限局性学習症)は「読字障害」「書字表出障害」「算数障害」の3つに分類され診断されていましたが『DSM-IV-TR』の次の『DSM-5』では、すべて「限局性学習症・限局性学習障害」とひとくくりにされ診断されます。
基準に照らし、LD・SLD(限局性学習症)の診断が出た上で、以下の基準から「読字障害」「書字障害」「算数障害」のうち、どれが強いかが特定されます。以下の傾向が強い場合、算数障害であると言えます。
数字、算数、数学だけできないといった症状がある場合、以下のような困り事のチェックリストを使ってセルフチェックしてみましょう。当てはまるものがあった場合は、4章「算数障害の疑いを感じたら。相談先や診断を受ける場所は?」を参考にしてください。
◆困りごとチェックリスト
□簡単な数字、記号を理解しにくい
□繰り上げ、繰り下げの筆算ができないことが多い
□数の大きい、小さいがよく分からない
□文章問題が苦手、理解できないことが多い
□数を覚えるのに時間がかかることが多い
□九九を習得している年齢なのにも関わらず、九九を覚えられていない。九九を暗記しても計算にようようできない など
算数障害などLD・SLD(限局性学習症)の体験談
LD・SLD(限局性学習症)でどのような困り事があったのか、どのような対策をしたのか等、みなさんの体験談をまとめました。個人によってさまざまなケースがあります。
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