子どもの指差し、1歳半健診で確認するのはなぜ?指差しの種類、指差しが出ないときの原因や促す工夫、相談先まとめ【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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1歳半健診では子どもの心と身体の発達を診ますが、その中に「指差し」が出ているか、という項目があります。指差しは、コミュニケーション手段の一つであり、発達段階で変化していきます。ここでは、指差しの種類、指差しが出ないときの原因、生活の中でできる工夫についてお伝えします。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
目次

子どもの「指差し」は伝えたいという思いから始まる

個人差はありますが生後9ヶ月ごろから子どもは、指差しという行動をするようになります。自分が見ているものを「とって欲しい」「見て欲しい」といった思いを伝えたいという気持ちからとる行動です。指差しの仕方は、子どもによりさまざまで手全体を使って示す場合もあります。

十分に言葉を話すことのできない子どもにとって、指差しは大切なコミュニケーションの手段です。指差しは子どもの成長と共に変化していき、さまざまな意味を持っていきます。
指差しは言葉の育ちの中のひとつのステップです。
指差しは言葉の育ちの中のひとつのステップです。
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身につける力と共に変わる指差しの意味

子どもの成長と共に、指差しの種類も増えていきます。

時期についてはおおよその目安であり、あまり細かい分類にこだわる必要はありませんが、指差しのステップについて知っておくことで、子どもが指差しをしたときに、どのような力を身につけているのかを知る手がかりになります。

指向の指差し(指差しの前のサイン)(9ヶ月~10ヶ月ごろ)

例えば「ほら、お花だよ」などと声をかけると、相手が視線を向ける物に子ども自身が目を向け、一緒に見ることがあります。これは、相手が興味を持っている方向を察して、その方向には何かがあると推測する力が身についたと考えられます。これができるようになると、もう少しで指差しが出るようになります。

自発の指差し(11ヶ月ごろ~)

自分の興味関心のあるものを見つけたときに指を差すことを、「自発の指差し」といいます。それまでは「相手と自分」という二者の関係の中にいた子どもが、周囲の環境や物に対して関心が出てくると、この指差しをするようになり、「自分と相手ともう一つ」という三者の関係を持てるようになります

要求の指差し(1歳ごろ~)

自分が興味をもったというだけでなく、「ほしい」という意思を込めて、指を差すことを、「要求の指差し」といいます。

共感の指差し(1歳ごろ~1歳6ヶ月ごろ)

何かを見つけたときに、「あっ!」と言ったりしながら指さして、一緒にいる人に伝えようとすることを「共感の指差し」といいます。「叙述の指差し」や「定位の指差し」とも呼ばれます。指を差しながら相手の表情を見て、興味や感情を分かち合おうとします。これは、「対象」を相手と「共有する」力を身につけている状態であり、社会性の発達が成長していることも意味します。

応答の指差し(1歳6ヶ月ごろ~)

「○○はどれ?」と聞かれたときに、その答えを指すことを、「応答の指差し」といいます。対象物が目の前にないときにも、そちらの方向を指差すことができるようになります。例えば、「お母さんはどこ?」と聞かれると、目の前にいない母親の方向を指差すなどです。

乳児期のはじめの段階では、「物と自分」、「他者と自分」という2つの関係でしかやりとりをすることができなかった子どもは、やがて「自分と他者ともう一つ」というように3つの関係を築くができるようになります
例えば、大人と子どもの前にバナナがある光景を考えてみましょう。大人がバナナだね、と言いながらその方向を見ます。すると、子どもは大人が見たのと同じようにバナナを見ます。

ここで、バナナを中心として、「大人」「子ども」「バナナ」という三角形ができます。大人の目と子どもの目が、同じバナナに注目している状態です。これを「三項関係」といい、子どもが発達しているかどうかを見るときの大切なパラメーターとされています。

共感の指差しをするころには、この三項関係が成立している状態です。「あっ、ちょうちょがいるよ」と言うかのように指差しを使い、興味や感情を他者と共有しようとします。ほかの人と何かを共有することで、その子どもの世界はより広がりを持つようになります。
三項関係の図
三項関係の図
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指差しが出ない原因は?耳の聞こえ、ASD(自閉スペクトラム症)や知的障害(知的発達症)との関連はあるの?

耳の聞こえ、聴覚機能との関連は?

音がよく聞こえていないために、相手からの呼びかけに応じる指差しが出ないということが考えられます。

聴覚機能に困難がある場合には、聞こえを改善する治療のほかに、視覚的な手段を使ったコミュニケーションをとる方法についてサポートを受けるといった対応が望まれます。

1歳半、3歳の乳幼児健診のときにも、耳の聞こえのチェックが行われますが、耳の聞こえは家庭生活の中で見つかることも多いです。心配なときには、以下のチェックリストを参照して、聴覚に問題がないか確認してみるとよいでしょう。
赤ちゃんの耳のきこえ チェックリスト|厚生労働省『きこえにくいお子さんを取り巻く状況』14ページ参照
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000845326.pdf

ASD(自閉スペクトラム症)や知的障害(知的発達症)との関連は?

子どもの指差しが出ないことで、ASD(自閉スペクトラム症)や知的障害(知的発達症)があるのではないかと思われることもあるかもしれませんが、指差しをしないからといって必ずしもASD(自閉スペクトラム症)や知的障害(知的発達症)があるわけではありません。

発達障害の一つであるASD(自閉スペクトラム症)のある子どもの中には、周囲にあまり興味を持たない傾向があり、指差しがなかなか出ないという子どももいます。

しかし、実際にASD(自閉スペクトラム症)があると診断されるかどうかは、他者とのコミュニケーションがとりにくい、人と気持ちを交わすことが難しい、活動の対象や興味の幅が限られるなどといった、複数の診断項目にどの程度該当するかによって決まるため、指差しの有無だけで直ちにASD(自閉スペクトラム症)と診断されるわけではありません。

子どもの発達には個人差があるため、指差しがなかなか出ない場合でも、すぐに自己判断するのではなく、子どもの発達状態を探り、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら子どもとの関わり方を工夫してみましょう。
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