アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)とは?特徴と相談先【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)は発達障害の一つで、コミュニケーション能力や社会性、想像力に障害があり、対人関係がうまくいきづらいという特徴があります。また、限定された物事に異常なほどの興味やこだわりを持ち、それを繰り返すという特徴もあります。言葉の遅れや知的障害(知的発達症)はないので、障害と気づかれにくく、周りからは「変わった人」と思われがちです。アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の詳しい症状や相談先、支援サービスについて解説します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)とは?

アメリカ精神医学会の診断基準「DSM-5」(「精神疾患の診断・統計マニュアル」第5版・2013年発行)において、自閉的特徴を持つ疾患は統合され、2022年発刊の『DSM-5-TR』ではアスペルガー症候群は「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。しかし、この記事では、「アスペルガー症候群」の名称が行政や一部の医療機関で引き続き使用されていることや、既に診断を受けている人も多いことから、「アスペルガー症候群」の名称を併記して説明していきます。
参考:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について | eヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-005.html

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の2つの特徴

アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症/ASD)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られ、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。知的障害(知的発達症)を伴うこともあります。幼少期に気づかれることが多いといわれていますが、症状のあらわれ方には個人差があるため就学期以降や成人期になってから社会生活において困難さを感じ、診断を受ける場合もあります。
1.対人関係や社会的コミュニケーションの困難
会話は表面上問題なくできますが、行間を読むことが苦手で、言葉どおりの意味で鵜呑みにする傾向があります。そのため、人の発言を勘違いしやすく、冗談や皮肉が理解できないという面があります。
場の空気を読むことや、、相手の気持ちを理解したり、共感したりすることも苦手で、その場の雰囲気を無視したような言動になりがちです。こうしたことから、対人関係を上手に築くことに困難を抱えがちです。

2.特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ
いったん興味を持つと過剰といえるほど熱中します。法則性や規則性のあるものを好み、その法則や規則が崩れることを極端に嫌う傾向があります。また、決まったやり方や同じ動作を繰り返すなどのこだわりを見せることがあります。

感覚(聴覚・視覚・触覚など)の過敏さまたは鈍麻さがあります。具体的な状態には個人差がありますが、例えば、特定の物を触ることができない、音が大きいところにいられない、ひどく眩しがるなど過敏な状態であったり、反対にけがや火傷をしても感覚で気づかない、暑い日に厚着をしていても「暑い」ということに気づかないなどの鈍麻な状態があります。

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)かもしれないと思ったら?診断はどこで受けられる?

もし、アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の症状が見られたら、自身や家族だけで悩まずに、まずは専門機関に相談してみましょう。誰かに相談することで気持ちも楽になるでしょう。その後、診断が必要とされれば、専門医を紹介してもらいましょう。

できるだけ早期にアスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)に対する教育方法や療育などの対処法を始めると、その後の発育に大きな違いがみられます。

はじめの一歩を踏み出すのには勇気がいるかと思いますが、踏み出すことによってさまざまな悩みが軽減されます。アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)ではないとされた場合でも、困難を乗り越えるためのさまざまなアドバイスをしてもらえることが多いので、一度相談してみるとよいでしょう。

相談できる専門機関

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)なのかな、と疑問を持った場合、まずは専門機関に相談してみましょう。子どもか大人かによって、行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。

【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童発達支援事業所
・発達障害者支援センター

【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所

知能検査や発達検査は、児童相談所などで無料で受けられる場合もあり、障害についての相談も可能です。発達障害者支援センターでも相談できます。自宅の近くに相談機関がない場合は、電話で相談に乗ってくれることもあります。

診断できる専門機関

以下は小児神経学会が発表している、発達障害診療医師の名簿です。このほかにも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。まず身近な相談機関に行って、障害の疑いがあればそこから専門医を紹介してもらいましょう。
日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」
https://service.kktcs.co.jp/smms2/c/jscn/ws/jscn/List.htm?t=https://www.childneuro.jp/themes/childneuro/relation/licenselist_dd.html
大人の場合も発達障害の専門医に診てもらうのがよいですが、精神科、心療内科などでも診断を受けられます。発達障害者支援センターなどに相談して診断先を紹介してもらうのもよいでしょう。以下のリンク先も参考にしてみてください。
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アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の診断について【専門家監修】

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「無意識に人を傷つけてしまう」?アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の具体的な行動、日常生活で直面しやすい困りごととは?

人とのコミュニケーションや想像することへの苦手さ、アイコンタクトや顔の表情を読み取ることの困難さ、ストレートな物言いや臨機応変に動けない、特定のことへの強いこだわりなどの特性があるアスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)。それゆえに、自己中心的と思われたり、いつの間にか人を傷つけてしまったりすることもあり、悩みやトラブルを抱えてしまうこともあります。

トラブルの原因になりがちな10の特徴

一見しただけではその人がアスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)かどうかは気づきにくく、本人も自覚していない場合もあります。とりわけ周囲とのトラブルの原因になりがちな10の特徴は次のとおりです。

1. 明確な指示がないと動けない
2. 場の空気を読むことができない、空気に沿った対応ができない
3. 冗談が通じず、会話の行間や間を読むことができない
4. 曖昧なことを理解できない
5. 好きなことは延々とやり続けてしまう、話し続けてしまう
6. スケジュール管理ができない
7. 自分が興味のないことは頑なに手を出そうとしない
8. 急な変更にうまく対応できず、だまされやすい
9. 名前を呼ばれないと自分だと気が付かない
10. 相手の気持ちをおもんぱかれない、人を傷つけることを言ってしまう

これらに付随した細かな症状がほかにもありますが、基本的には自分以外の何か(人や物事)にうまく共感できない、言い回しが不適切などのコミュニケーションにおける困難さが主な症状です。さらに、アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)だけではなく、ADHD(注意欠如多動症)など、ほかの障害の症状を持ち合わせている場合もあります。

特徴を活かすことで生活しやすくなり、才能を発揮できることも

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の特徴の中には、見方を変えれば逆に強みとなるものもあります。

例えば、

・明確な指示がないと動けない、曖昧なことを理解できない⇒ルールがあればしっかりと守って行動できる
・空気が読めない⇒他人に流されずに自分の意見が言える
・好きなことは延々とやり続けてしまう⇒興味のあることはとことん集中して、取り組むことができる
また、興味のある物事に関しては、大量の情報を記憶したり引き出したりできる場合もあります。

特性は必ずしも弱みではなく、強みになることもあります。どうしたら快適に生活できるのか、その人自身を生かすことができるのかを考えることが大切です。思わぬ才能を発揮できるかもしれません。
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