【専門家監修】ASD(自閉スペクトラム症)の子どもの0歳~6歳、小学生、思春期まで年齢別の特徴、診断や治療、支援、接し方など

ライター:医師・専門家監修|発達障害・支援のキホン
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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10367004258

ASD(自閉スペクトラム症)とは、以前自閉症やアスペルガー症候群などの名称で呼ばれていた診断をまとめてできた診断名です。社会的なコミュニケーションの困難さ、限定された行動、興味、反復行動などの特性が見られ、年齢や環境などによってさまざまな困りごとが生じてきます。ASD(自閉スペクトラム症)の子どもの0歳~6歳の未就学期、小学生、思春期ごとに表れやすい困りごと、診断、治療法、支援や子どもに対する接し方について紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

ASD(自閉スペクトラム症)とは?

このコラムで分かること

  • ASD(自閉スペクトラム症)の定義と、0歳~6歳・小学生・思春期など成長段階ごとに変化する特性や困りごと
  • 3歳児健診などをきっかけとした早期発見のポイントや、医療機関での具体的な診断・検査方法
  • 児童発達支援や放課後等デイサービス、障害者手帳など、利用できる公的な支援制度と経済的サポート
  • 「視覚的に伝える」「予定を予告する」など、子どものパニックを防ぎ安心させるための具体的な接し方
  • 二次障害を防ぐための早期療育の重要性と、保護者が一人で悩まないための相談窓口
ASD(Autism Spectrum Disorder:自閉スペクトラム症)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られ、日常生活や社会生活に困難を生じる発達障害の一つです。英語のAutism Spectrum Disorderの頭文字をとってASDと略されます。

ASD(自閉スペクトラム症)は幼少期に気づかれることが多いと言われていますが、特性の表れ方には個人差があるため就学期以降や成人期になってから困りごとが生じて診断を受ける場合もあります。

ASD(自閉スペクトラム症)の原因

ASD(自閉スペクトラム症)の医学的原因は現在のところ明確にはなっていませんが、さまざまな要因が関係した先天的な脳機能の障害によるものと考えられています。保護者の愛情不足や育て方が原因ではありません。

ASD(自閉スペクトラム症)の子どもの特徴【0歳~思春期】

ASD(自閉スペクトラム症)は、3歳から6歳くらいまでに診断を受けることが多いと言われています。ただ、年齢や周囲の環境との相互環境によって特徴の表れ方は異なり、乳幼児期から表れる子どももいれば、思春期以降に顕在化することもあります。

ASD(自閉スペクトラム症)の子どもの特徴の一例

・人や物に対する興味の偏りがある
・コミュニケーションを取るのが困難
・特定の刺激や活動に対するこだわりがある
・言葉の遅れがある
・臨機応変に対応するのが苦手
・感覚に過敏がある
・状況に合わせた話し方をするのが苦手
・興味のあるものにはとことん没頭する など

特徴には個人差があり、すべての子どもに当てはまるわけではありませんが、一つの参考としてご覧ください。以下では、大まかな年代別の特徴の表れ方を紹介していきます。

0歳~6歳(乳幼児~小学校入学前)

子どもの発達には個人差があるため、言葉の遅れなどがあってもASD(自閉スペクトラム症)の特徴なのか判断が難しいため乳児期に診断を受けることは少なく、3歳ごろから診断を受ける子どもが多くなります。
しかし、診断前でも幼児期全体を通してみると、以下のような特徴的な行動をとっていたことが多いと言われています。

■人や物に対する興味の偏りがある
視線を合わせようとしない子どもが多いと言われています。ほかにも一人遊びをし続ける、ほかの子どもへの興味が薄い、名前を呼んでも振り返らないなどの特徴が見られることがあります。
また、定型発達の子どもは興味があるものを指で指して相手に伝えようとするのに対し、ASD(自閉スペクトラム症)がある子どもは指さしをして相手に興味を伝えることをしない傾向があります。

■コミュニケーションを取るのが困難
ASD(自閉スペクトラム症)の子どもは会話においても特徴が見られることがあります。一方的に言いたいことだけをしゃべる、質問に対してうまく答えられないなどの特徴があります。言葉以外にも、身振り手振りなど言語外のコミュニケーションが苦手という特徴も見られることがあります。

■特定の刺激や活動に対するこだわりがある
ASD(自閉スペクトラム症)の子どもは、特定の刺激や活動にこだわりがみられることがあります。例を以下でご紹介します。

・くるくるまわるものをずっと見ている
・ドアを意味もなく開け閉めする
・お気に入りのおもちゃをひたすら並べる
・道順が違うとパニックになる
・遊具やおもちゃを使う順番を待てない
・活動の切り替えが難しい など

■言葉の遅れがある
ASD(自閉スペクトラム症)の子どもの中には、年齢別の発達の目安と比べて、言葉を発するのが遅かったり、語彙がなかなか増えていかないという場合があります。

6歳~12歳(小学校入学~卒業)

■集団の中で困難を感じることが多い
人の気持ちや意図を汲み取ることが苦手な傾向があるため、年齢相応の友人関係を育むことに困難がある場合があります。クラスメイトなど周りの子どもにあまり関心がなく、マイペースに自分の好きなことに熱中する傾向があります。また、後述する感覚の過敏性から人が多い場所が苦手で集団の活動に参加することが難しい場合もあります。

■臨機応変に対応するのが苦手
予定の変更に対応することが困難で、きちんと決められたルールを好み、場面に応じて臨機応変に対応することが苦手な傾向にあります。

■強いこだわりを持つ
日常生活において特定の物事や順番などにこだわりを持っていることが多く、いつもと手順が変わると混乱してしまうことがあります。

■感覚に過敏がある
視覚、聴覚、触覚などの感覚に過敏がある子どももいます。ほかの人には気にならない光や音などに過敏に反応したり、肌着のタグが触れるなどの感覚がひどく不快だったりと、子どもによって過敏の表れ方は異なります。また、過敏の反対で感覚の鈍さが見られる感覚鈍麻(どんま)がある子どももいます。

12歳~(小学校卒業後)

■状況に合わせた話し方をするのが苦手
敬語や丁寧語の使い分けが難しいなど、立場や状況に合わせた話し方をするのが苦手な傾向があります。

■人の気持ちや感情を読み取るのが苦手
人が何を考えているのかなどを推測するのが苦手な傾向があり、皮肉や比喩などの微妙なニュアンスの理解が困難で、相手の言葉を言葉通り捉えることで思わぬトラブルになることもあります。

■雑談が苦手
目的の無い会話をするのを難しく感じる場合が多いです。聞き手の興味関心にかかわりなく、自分の興味関心があることを一方的に話し続けることがあります。

■興味のあるものにはとことん没頭する
特定の物事に強いこだわりを持つ傾向があります。そのため、興味のあることにとことん没頭し豊富な知識を身に付けることも多いですし、その分野で大きな成果をあげられることもあります。

ASD(自閉スペクトラム症)の二次障害

ASD(自閉スペクトラム症)がある子どもは、学校の勉強や対人関係などでさまざまな困りごとが生じることにより、思い悩んでしまうこともあります。そしてその状態が長く続くことで、不登校や引きこもり、抑うつ状態などの二次障害につながることもあり得ます。

こうした二次障害を予防するためには、なるべく早いうちから特性の理解や環境調整など、適切な支援を行うことが大切です。
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ASD(自閉スペクトラム症)の診断

ASD(自閉スペクトラム症)は子どもや特性によっても違いはありますが、おおむね3歳ごろから診断を受けることがおおいと言われています。診断では問診、行動観察、心理検査などの結果をもとに、診断基準と照らし合わせて判断されます。

問診

問診では医師から保護者に現在困っていることや発語など生まれてからの発達の経過、1歳半や3歳児健診の結果などを尋ねていきます。
問診表が前もって渡されるか、病院のWebサイトからダウンロードできる場合もあるので、事前に話す内容をまとめておくとよいでしょう。

行動観察

行動観察では医師が子どもの様子を観察してASD(自閉スペクトラム症)など発達障害の兆候を探っていきます。子どもが待合室にいる様子を見たり、何か作業や遊びをしてもらってその様子を観察したりといった方法があります。

心理検査

ASD(自閉スペクトラム症)など発達障害の診察では、心理検査と呼ばれる子どもの知能や発達の様子を測る検査が実施されます。代表的な検査には田中ビネー知能検査V、WISC-V、日本版KABC-Ⅱ、新版K式発達検査などがあります。

そのほかにも併存している疾患の有無などを検査したうえで、医師が総合的に判断します。

ASD(自閉スペクトラム症)の診断は子どもの場合は児童精神科、小児神経科、発達外来のある総合病院などで受けることが可能です。基本的に予約制なのであらかじめ確認しておきましょう。また、市町村保健センターなどでは心理検査を受けられる場合もあります。

下記のサイトでは全国の発達障害専門の小児科がリストアップされています。受診の際の参考にしてみてください。
参考:日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」
https://service.kktcs.co.jp/smms2/c/jscn/ws/jscn/List.htm?t=https://www.childneuro.jp/themes/childneuro/relation/licenselist_dd.html

ASD(自閉スペクトラム症)の治療方法

ASD(自閉スペクトラム症)の根本的な治療法は確立していません。しかし、特性に合わせたサポートや環境調整などを行い、本人や家族が苦手なことへの対応方法や回避方法を身に付けられるようになることで、困りごとを減らしていくことが可能です。

特性に合った支援

ASD(自閉スペクトラム症)の子どもの困りごとは、ASD(自閉スペクトラム症)の特性と環境とのミスマッチによって起こると考えられています。

そのため、特性を把握して子どもに合ったコミュニケーション方法や環境調整の方法、それに困難をカバーできるツールの使い方を身につけるなど、その子に合った支援を行うことで困りごとを軽減させていきます。

例えば視覚に過敏がある子どもの場合、一人で自室で勉強している時には集中できても、学校の教室だと刺激が多すぎて集中ができないことがあります。その際に、教室での席を周りの動きが目に入らない先頭の席にする、パーティションで視界を区切るなどその子に合った支援を行うことで、困りごとを減らしていくといった方法があります。

また、児童発達支援/放課後等デイサービスといった公的支援サービスを利用することもできます。詳しくは後述する5章でご紹介します。

薬物療法

ASD(自閉スペクトラム症)の治療では、薬物療法が行われることがあります。ASD(自閉スペクトラム症)の特性からくるかんしゃくやこだわりを緩和するために用いられるほか、併存する疾患の症状を緩和するためにも用いられます。

薬物療法は効果が出るまで時間がかかるほか、副作用が生じることもあります。気になることがある際は、主治医に相談しながら治療を進めるようにしましょう。

ASD(自閉スペクトラム症)の子どもへの支援

児童発達支援/放課後等デイサービス

児童発達支援と放課後等デイサービスは、児童福祉法に基づき障害のある子どもに対して日常生活や集団生活の困難を解消するための支援を提供するサービスです。

児童発達支援は0歳から6歳までの小学校入学前の子どもが対象で、放課後等デイサービスは小学校入学以降の子どもが対象となっています。
どちらのサービスも障害者手帳や診断がなくても、市町村保健センター、児童相談所、医師などにより支援の必要が認められれば利用することが可能です。詳しいことは自治体の障害福祉窓口などでご確認ください。
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合理的配慮

合理的配慮とは園や学校などにおいて、障害のある子どもの困難を解消するために行われる配慮のことです。例えば刺激に敏感な子どもに対して教室の席を工夫したり、テストは別室で実施したりする配慮があります。

ほかにも合理的配慮の例は以下のようなものがあります。
・聴覚過敏の子どもにイヤーマフの使用を許可する
・辛くなった時に落ち着くための部屋を用意する
・予定の変更がありそうな時はあらかじめ予告する など

合理的配慮は本人や保護者と通っている園の担当、学校の担任、スクールソーシャルワーカーなどが相談しながら可能な範囲で実施していきます。
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障害者手帳

障害者手帳とは障害のある人が取得することができ、障害の種別や等級によりさまざまな福祉サービスを受けることができる公的な証明書です。障害の種別によって身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3つがあり、総称して障害者手帳と呼ばれています。

ASD(自閉スペクトラム症)など発達障害のある人は、精神障害者保健福祉手帳が対象のほか、知的障害(知的発達症)を伴う場合は療育手帳も対象です。

精神障害者保健福祉手帳は自治体の障害福祉窓口、療育手帳は児童相談所がそれぞれ窓口になっています。
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自立支援給付

障害者手帳以外がない場合にも受けることができるサービスがあります。その一つが障害者総合支援法に規定されている「自立支援給付」で、ショートステイなどの介護サービス、医療費や補装具の費用の助成などさまざまなサービスを受けることが可能です。

自立支援給付を利用するには、自治体の障害福祉窓口に申請して受給者証の交付を受ける必要があります。
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経済的な支援

上記以外に、障害の程度や状態等によっては、特別児童扶養手当などの経済的な支援、障害者控除などの税控除が受けられる場合があります。どのような支援があるか知りたいときは、自治体の障害福祉窓口などにお問い合わせください。
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ASD(自閉スペクトラム症)の子どもへの接し方

ここでは、ASD(自閉スペクトラム症)の子どもと接する際に、工夫したいポイントを紹介します。
主に以下のようなポイントがあります。

・具体的に伝える
・一度に一つのことを伝える
・注意をひいてから伝える
・あらかじめ予定や全体の流れを伝える
・口頭だけでなく写真やイラストなど視覚的な方法で伝える
・予定変更の可能性がある場合は、あらかじめ伝える
・子どもにとって安心できる場所を用意する など


例えば「少し座ってて」と伝えても「少し」がどのくらいかわからず実行できないことがあります。そのため、「6時まで」など具体的に伝えるようにしましょう。また、その際に言葉だけでなく実際の時計を使って説明するのも効果的です。

ただ、ASD(自閉スペクトラム症)という診断に関わらず、子ども一人ひとり個性は異なります。その子の様子を見て、適切な接し方を探していくことが大事です。

ASD(自閉スペクトラム症)に関する相談先

子どもがASD(自閉スペクトラム症)かもしれないと思っても、いきなり医療機関を受診するのは抵抗があるという方もいると思います。そういった時は、まず無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用する方法があります。できる限り早期に相談し、ASD(自閉スペクトラム症)に対して正しい知識を得られるとよいでしょう。家庭だけで困りごとを抱えるのではなく専門機関に相談しアドバイスをもらうことで、本人や保護者の負担も軽減できるかもしれません。

子どもについて相談できる身近な窓口の例
・市町村保健センター
・児童相談所
・子育て支援センター
・児童発達支援センター
・発達障害者支援センター
・自治体の子育て窓口 など

まとめ

ASD(自閉スペクトラム症)は発達障害の一つで、対人関係やコミュニケーションの困難、特定の物事への強いこだわり、感覚過敏または鈍麻などの特性が見られます
ASD(自閉スペクトラム症)は子どものころから言葉の遅れやこだわり、対人関係などの困難によって気づかれ、3歳ごろから診断を受けることが多いと言われています。

ASD(自閉スペクトラム症)の特性からくる困りごとは、子どもの成長と小学校入学など環境の変化にしたがって変わっていきます。つらい状況が続くことで、不登校など二次障害につながることもあるため、早いうちに子どもに合った支援を行っていくことが大切です。

いきなり医療機関を受診するのは抵抗があるという場合は、市町村保健センターや児童相談所など身近な専門機関に相談することも方法の一つです。
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