ASD(自閉スペクトラム症)の子どもの0歳~6歳、小学生、思春期まで年齢別の特徴、診断や治療、支援、接し方など【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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ASD(自閉スペクトラム症)とは、以前自閉症やアスペルガー症候群などの名称で呼ばれていた診断をまとめてできた診断名です。社会的なコミュニケーションの困難さ、限定された行動、興味、反復行動などの特性が見られ、年齢や環境などによってさまざまな困りごとが生じてきます。ASD(自閉スペクトラム症)の子どもの0歳~6歳の未就学期、小学生、思春期ごとに表れやすい困りごと、診断、治療法、支援や子どもに対する接し方について紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

ASD(自閉スペクトラム症)とは?

ASD(自閉スペクトラム症)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られ、日常生活や社会生活に困難を生じる発達障害の一つです。英語のAutism Spectrum Disorderの頭文字をとってASDと略されます。

ASD(自閉スペクトラム症)は幼少期に気づかれることが多いと言われていますが、特性の表れ方には個人差があるため就学期以降や成人期になってから困りごとが生じて診断を受ける場合もあります。

ASD(自閉スペクトラム症)の原因

ASD(自閉スペクトラム症)の医学的原因は現在のところ明確にはなっていませんが、さまざまな要因が関係した先天的な脳機能の障害によるものと考えられています。保護者の愛情不足や育て方が原因ではありません。

ASD(自閉スペクトラム症)の特徴【0歳~思春期】

ASD(自閉スペクトラム症)は、3歳から6歳くらいまでに診断を受けることが多いと言われています。ただ、年齢や周囲の環境との相互環境によって特徴の表れ方は異なり、乳幼児期から表れる子どももいれば、思春期以降に顕在化することもあります。

ここでは、大まかな年代別の特徴の表れ方を紹介していきます。特徴には個人差があり、すべての子どもに当てはまるわけではありませんが、一つの参考としてご覧ください。

0歳~6歳(乳幼児~小学校入学前)

子どもの発達には個人差があるため、言葉の遅れなどがあってもASD(自閉スペクトラム症)の特徴なのか判断が難しいため乳児期に診断を受けることは少なく、3歳ごろから診断を受ける子どもが多くなります。
しかし、診断前でも幼児期全体を通してみると、以下のような特徴的な行動をとっていたことが多いと言われています。

■人や物に対する興味の偏りがある
視線を合わせようとしない子どもが多いと言われています。ほかにも一人遊びをし続ける、ほかの子どもへの興味が薄い、名前を呼んでも振り返らないなどの特徴が見られることがあります。
また、定型発達の子どもは興味があるものを指で指して相手に伝えようとするのに対し、ASD(自閉スペクトラム症)がある子どもは指さしをして相手に興味を伝えることをしない傾向があります。

■コミュニケーションを取るのが困難
ASD(自閉スペクトラム症)の子どもは会話においても特徴が見られることがあります。一方的に言いたいことだけをしゃべる、質問に対してうまく答えられないなどの特徴があります。言葉以外にも、身振り手振りなど言語外のコミュニケーションが苦手という特徴も見られることがあります。

■特定の刺激や活動に対するこだわりがある
ASD(自閉スペクトラム症)の子どもは、特定の刺激や活動にこだわりがみられることがあります。例を以下でご紹介します。

・くるくるまわるものをずっと見ている
・ドアを意味もなく開け閉めする
・お気に入りのおもちゃをひたすら並べる
・道順が違うとパニックになる
・遊具やおもちゃを使う順番を待てない
・活動の切り替えが難しい など

■言葉の遅れがある
ASD(自閉スペクトラム症)の子どもの中には、年齢別の発達の目安と比べて、言葉を発するのが遅かったり、語彙がなかなか増えていかないという場合があります。

6歳~12歳(小学校入学~卒業)

■集団の中で困難を感じることが多い
人の気持ちや意図を汲み取ることが苦手な傾向があるため、年齢相応の友人関係を育むことに困難がある場合があります。クラスメイトなど周りの子どもにあまり関心がなく、マイペースに自分の好きなことに熱中する傾向があります。また、後述する感覚の過敏性から人が多い場所が苦手で集団の活動に参加することが難しい場合もあります。

■臨機応変に対応するのが苦手
予定の変更に対応することが困難で、きちんと決められたルールを好み、場面に応じて臨機応変に対応することが苦手な傾向にあります。

■強いこだわりを持つ
日常生活において特定の物事や順番などにこだわりを持っていることが多く、いつもと手順が変わると混乱してしまうことがあります。

■感覚に過敏がある
視覚、聴覚、触覚などの感覚に過敏がある子どももいます。ほかの人には気にならない光や音などに過敏に反応したり、肌着のタグが触れるなどの感覚がひどく不快だったりと、子どもによって過敏の表れ方は異なります。また、過敏の反対で感覚の鈍さが見られる感覚鈍麻(どんま)がある子どももいます。

12歳~(小学校卒業後)

■状況に合わせた話し方をするのが苦手
敬語や丁寧語の使い分けが難しいなど、立場や状況に合わせた話し方をするのが苦手な傾向があります。

■人の気持ちや感情を読み取るのが苦手
人が何を考えているのかなどを推測するのが苦手な傾向があり、皮肉や比喩などの微妙なニュアンスの理解が困難で、相手の言葉を言葉通り捉えることで思わぬトラブルになることもあります。

■雑談が苦手
目的の無い会話をするのを難しく感じる場合が多いです。聞き手の興味関心にかかわりなく、自分の興味関心があることを一方的に話し続けることがあります。

■興味のあるものにはとことん没頭する
特定の物事に強いこだわりを持つ傾向があります。そのため、興味のあることにとことん没頭し豊富な知識を身に付けることも多いですし、その分野で大きな成果をあげられることもあります。

ASD(自閉スペクトラム症)の二次障害

ASD(自閉スペクトラム症)がある子どもは、学校の勉強や対人関係などでさまざまな困りごとが生じることにより、思い悩んでしまうこともあります。そしてその状態が長く続くことで、不登校や引きこもり、抑うつ状態などの二次障害につながることもあり得ます。

こうした二次障害を予防するためには、なるべく早いうちから特性の理解や環境調整など、適切な支援を行うことが大切です。
次ページ「ASD(自閉スペクトラム症)の診断」

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