【専門家監修】感覚統合とは?「不器用さ・落ち着きのなさ」と発達障害(ASD・ADHD)の関連、感覚統合療法の遊びまで解説
ライター:医師・専門家監修|発達障害・支援のキホン
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感覚統合とは、複数の感覚を整理したりまとめたりする脳の機能のことです。
子どもが集団生活で、不器用さや集中力の続かなさが目立ってきた、鉛筆がうまく持てずマスの中におさまるような字が書けない、きれいに紙を折れないなどの場合、「感覚統合」がうまくいっていない可能性があります。そのメカニズムと解決方法を探っていきましょう。
監修: 高畑脩平
藍野大学 医療保健学部 作業療法学科 講師
NPO法人はびりす 理事
作業療法士。NPO法人はびりす理事。専門は読み書き障害の子どもへの支援。著書に「子ども理解からはじめる感覚統合遊び 保育者と作業療法士のコラボレーション (クリエイツかもがわ)」ほか。
NPO法人はびりす 理事
感覚統合とは?
この記事で分かること
- 感覚統合とは?7つの感覚(固有受容覚・前庭覚など)の基本的な仕組み
- 「不器用」「落ち着きがない」のはなぜ?感覚統合のつまずきで起こる困りごと(感覚過敏・動作・情緒など)
- 発達障害(ASD/自閉スペクトラム症・ADHD/注意欠如多動症)と感覚統合の関連性、失敗体験による二次的な問題
- 「うちの子は?」と感じたら。家庭でできる感覚発達チェックシートと専門機関の相談先
- 感覚統合療法(OT)とは?自宅や保育園でもできる「感覚統合遊び」の具体例と体験談
- なぜ発達の土台が重要?感覚が「学習」や「運動」につながるまでの5つのステップ
感覚統合とは、複数の感覚(触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、固有受容覚、前庭覚)を整理したりまとめたりする脳の機能のことです。このはたらきによって、周囲の状況の把握とそれをふまえた行動ができるようになります。
感覚統合がうまくいかないと、不注意、集中ができない、コミュニケーションが上手にできないなど、日常生活のさまざまな場面で困りごとが生じることがあります。
また、LD・SLD(限局性学習症)、DCD(発達性協調運動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)といった発達障害の症状には、感覚統合がうまくいかないことが関わっている場合があります。
私たちは、光や音など、たくさんの刺激に囲まれながら生活しています。そのたくさんの刺激が身体に加わっていることを感じるはたらきを感覚といいます。
人間の感覚には、すでによく知られている五感(触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚)に加えて、固有受容覚(手足の状態・筋肉の伸び縮みや関節の動きを感じる感覚)、前庭覚(身体の動きや傾き、スピードを感じる感覚)といった合計7つの感覚があります。
これらの感覚は、生活していると、絶えずさまざまな感覚器官から入ってきます。私たちの脳は、このたくさんの感覚をきちんと分類したり整理したりすることができ、これを統合といいます。
この統合という機能は言わば交通整理をしている警官のようなものです。たくさんやってくる車を警官がきちんと整えることでスムーズに車が走ることができるように、身体に入ってくる感覚に対して統合機能が正しくはたらくことで、正しく感覚を整理し、取り入れることができます。しかし交通整理ができていないと、車はどこを走っていいか分からなくなり、混乱し、渋滞してしまいます。統合がうまくいかないと、次々にやってくる感覚の強弱を調整したり、感覚を受け入れる量を調節することがうまくできず、混乱してしまうという状態を引き起こしてしまうのです。
つまり、次々と身体に入ってこようとするこの7つの感覚を整理したり分類したりするのが感覚統合です。このはたらきによって、その場そのときに応じた感覚の調整や注意の向け方ができるようになり、自分の身体を把握する、道具を使いこなす、人とコミュニケーションをとるというような周囲の状況の把握とそれをふまえた行動ができるようになります。
感覚統合がうまくいかないと、不注意、集中ができない、コミュニケーションが上手にできないなど、日常生活のさまざまな場面で困りごとが生じることがあります。
また、LD・SLD(限局性学習症)、DCD(発達性協調運動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)といった発達障害の症状には、感覚統合がうまくいかないことが関わっている場合があります。
私たちは、光や音など、たくさんの刺激に囲まれながら生活しています。そのたくさんの刺激が身体に加わっていることを感じるはたらきを感覚といいます。
人間の感覚には、すでによく知られている五感(触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚)に加えて、固有受容覚(手足の状態・筋肉の伸び縮みや関節の動きを感じる感覚)、前庭覚(身体の動きや傾き、スピードを感じる感覚)といった合計7つの感覚があります。
これらの感覚は、生活していると、絶えずさまざまな感覚器官から入ってきます。私たちの脳は、このたくさんの感覚をきちんと分類したり整理したりすることができ、これを統合といいます。
この統合という機能は言わば交通整理をしている警官のようなものです。たくさんやってくる車を警官がきちんと整えることでスムーズに車が走ることができるように、身体に入ってくる感覚に対して統合機能が正しくはたらくことで、正しく感覚を整理し、取り入れることができます。しかし交通整理ができていないと、車はどこを走っていいか分からなくなり、混乱し、渋滞してしまいます。統合がうまくいかないと、次々にやってくる感覚の強弱を調整したり、感覚を受け入れる量を調節することがうまくできず、混乱してしまうという状態を引き起こしてしまうのです。
つまり、次々と身体に入ってこようとするこの7つの感覚を整理したり分類したりするのが感覚統合です。このはたらきによって、その場そのときに応じた感覚の調整や注意の向け方ができるようになり、自分の身体を把握する、道具を使いこなす、人とコミュニケーションをとるというような周囲の状況の把握とそれをふまえた行動ができるようになります。
感覚統合がうまくいかないとは?
反対に感覚統合がうまくいかないと、どのようなことが起こるでしょうか。
【感覚統合がうまくいかないときの例(先生の話を静かに聞くというシーン)】
周囲から見ると、落ち着きがない、集中力がないと捉えられがちですが、その背景には感覚統合のトラブルがあるかもしれません。
【感覚統合がうまくいかないときの例(先生の話を静かに聞くというシーン)】
- 扇風機の音が気になる聴覚)
- 窓の外を歩いている人が気になる(視覚)
- 着ている服のタグが気になる(触覚)
- 給食の匂いが気になる(嗅覚)
- なかなか集中して話を聞くのが難しい
周囲から見ると、落ち着きがない、集中力がないと捉えられがちですが、その背景には感覚統合のトラブルがあるかもしれません。
感覚統合につまずきがあると出る影響は? 感覚過敏や発達障害とも関係がある?
感覚統合がうまくいかないと、情緒面、対人面、言語面など日常生活のさまざまな場面で困ったことが起こることがあります。以下で感覚統合がうまくいかないと、どのようなことが起きるのかについて挙げました。
感覚面
- 触られることを極端に嫌がる
- ドライヤーや泣き声など特定の音が嫌いである
- 自分で頭を叩く
- いつまでもジャンプする
感覚面では感覚過敏・感覚鈍麻があらわれるケースが多いです。感覚過敏とは、特定の感覚刺激に対して過剰に反応してしまう状態を指し、反対に感覚鈍麻とは、感覚刺激に対して反応が鈍く、子どもによっては自分からより強い刺激を与えようとする状態のことを言います。感覚刺激を上手にコントロールして整理することができず、それが原因で子どもが苦しい思いをすることがあります。
【専門家監修】感覚過敏・鈍麻への対応ガイド。発達障害の子どもが「嫌がる・気づかない」理由
情緒面
- 不注意、集中ができない
- 順番が待てない、すぐに怒る
- 気分の切り替えができない、こだわりがある
情緒面での問題としては、集中力が続かない、自分の感情を抑えることが難しく、衝動的に行動してしまうという傾向がみられます。それゆえに順番待ちができず割り込みをする、自分の想定外の結果を柔軟に受け入れられず、集団で決めたルールや時間などが守れないということがあります。
言語面
- 言葉が出てこない
- 話しかけても振り向かない
- 自分が思っていることをうまく言えない
- 助詞の間違い
言語面では、言葉を使ったコミュニケーションが上手にできない、伝えたい気持ちがあっても言葉に出して相手に伝えるということが難しい、というような苦手意識をもつ傾向があります。
対人面
- 友達とうまく遊べない、みんなと同じ行動ができない
- ルールの理解ができない
対人面でのつまずきは、情緒面や言語面でのつまずきとの関連が強いです。友達どうしで決めた遊びのルールや法則を理解することが苦手なために、友達とうまく遊べない。また、衝動的な行動をしてしまうため友達から距離を置かれてしまい、一緒に遊ぶことができないという場合もあります。
動作面
- じっとしていられない
- 跳び箱、縄跳びやボール投げなどが大きな運動が苦手
- ひも結びや箸の使い方など細かな運動が苦手
動作面では、情緒面での問題がそのまま動作に表れることがあります。つまり、集中力が続かない・自分の感情をコントロールできないという情緒的問題がある場合、じっとすることができない、そわそわしてしまうという直接的な動作に表れるということです。また、感覚統合の発達過程であるボディイメージの形成、手指の機能分化がうまくいかず、身体を大きく使った運動や手先の細かな動きを必要とする動作が苦手であると感じてしまうことがあります。
感覚統合の心理的・二次的問題
感覚統合に問題がある場合、さまざまな活動に失敗することがどうしても多くなります。これを、感覚統合がうまくできないということを理解していない周囲から「怠けている」「不器用だ」という見方をされてしまうことがあります。このような周囲からの評価によって子どもは自信を失ってしまうことがあります。
感覚統合の難しさと、発達障害との関係は? 感覚統合療法とは
数々の発達障害の症状には、感覚統合がうまくいかないことが関わっている場合があります。感覚統合の仕組みを理解することは発達障害への理解にもつながります。感覚統合の仕組みをもとに生み出された感覚統合療法は、LD・SLD(限局性学習症)、DCD(発達性協調運動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)がある子どもによく利用されている療育方法でもあります。
「6年間の感覚統合遊びの成果?自転車や縄跳びもできるように」発達障害がある子どもの感覚統合療法の体験談
発達障害がある子どもに感覚統合という面でつまずきがある、感覚統合療法を受けているという体験談をご紹介します。このお子さんは2歳の時点でASD(自閉スペクトラム症)、DCD(発達性協調運動症)と診断されたそうです。DCD(発達性協調運動症)には、手・目・足のそれぞれの部位の動きを一緒に行う運動(キャッチボール、縄跳びなど)が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確だであったり、困難であったりする特徴があります。
2歳の時に主治医に書いていただいた診断書を見返してみて、「発達性協調運動障害」の文字を見つけ、やっぱり感覚統合が必要だったのだと、改めて思いました。
現在の年齢(小学三年生)になり、療育を受けられるところがなくなったので、いろいろ家庭でできることを調べていると、訓練に通っていたときにやっていた遊びがどのようなことに関係しているか、分かってきました。
たとえば、
・ボールプールに入ることは、ボールの感触が背中に伝わることによって、自分の背中を認識できる
・ビーズコースターを使うことは、手と目の協調運動を促す
などです。
6年間の訓練の成果かどうかはわかりませんが、自転車に乗れるようになったり、縄跳びがとべるようになったりしています。
※「発達性協調運動障害」は、最新版『DSM-5-TR』以降「DCD(発達性協調運動症)」という診断名に変更されました。
【専門家監修】DCD(発達性協調運動症)とは?具体的な特徴や対応法、子どもの体験談
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感覚統合に問題があるかも…と思ったら?
子どもが感覚統合に問題があるかもしれないと感じた場合、どのように支援していけばいいかについて紹介します。
◇感覚統合検査、チェックシートなどで自分の子どもの傾向を調べてみる
日本感覚統合学会ではこれまでの研究結果をもとに開発された感覚発達のチェックシートを公開しており、誰でもダウンロードすることができます。このチェックシートに沿って子どもの感覚統合の発達状態やどこにつまずきがあるのか確認することができます。ぜひ参考にしてみてください。なお、チェックシートの結果だけで子どもの状態を判断するものではないので、目安として利用することが大切です。
最終的な解釈については専門家に相談することがおすすめです。
◇感覚統合検査、チェックシートなどで自分の子どもの傾向を調べてみる
日本感覚統合学会ではこれまでの研究結果をもとに開発された感覚発達のチェックシートを公開しており、誰でもダウンロードすることができます。このチェックシートに沿って子どもの感覚統合の発達状態やどこにつまずきがあるのか確認することができます。ぜひ参考にしてみてください。なお、チェックシートの結果だけで子どもの状態を判断するものではないので、目安として利用することが大切です。
最終的な解釈については専門家に相談することがおすすめです。
◇感覚統合療法を受けてみる
感覚統合のつまずきへの支援には、感覚統合療法を取り入れることも1つの方法です。感覚統合療法では、作業療法士(OT)が子どもに寄り添いながら、子どもが「楽しい!」と思うような遊びや運動を通して、感覚機能の未熟だったり苦手だったりする部分を伸ばしていくことをねらいとしています。感覚統合療法に興味がある方は、自治体の療育センターやリハビリ、小児科医などの医療機関へ足を運び、相談してみるのも一つの手かもしれません。
◇感覚統合が促進されるような遊びや活動をやってみる
感覚統合は、日々の活動や遊びを通して楽しく高めることができます。ボールを投げ合いっこする、積み木を高く積み重ねていく、ブランコ遊びなど身近にあるおもちゃや遊具でも感覚統合を促進するような遊びにつながります。家庭や保育・学校環境でできる感覚統合を高める遊びは以下の書籍に紹介されているので、参考にして取り入れてみるのもよいでしょう。
感覚統合のつまずきへの支援には、感覚統合療法を取り入れることも1つの方法です。感覚統合療法では、作業療法士(OT)が子どもに寄り添いながら、子どもが「楽しい!」と思うような遊びや運動を通して、感覚機能の未熟だったり苦手だったりする部分を伸ばしていくことをねらいとしています。感覚統合療法に興味がある方は、自治体の療育センターやリハビリ、小児科医などの医療機関へ足を運び、相談してみるのも一つの手かもしれません。
◇感覚統合が促進されるような遊びや活動をやってみる
感覚統合は、日々の活動や遊びを通して楽しく高めることができます。ボールを投げ合いっこする、積み木を高く積み重ねていく、ブランコ遊びなど身近にあるおもちゃや遊具でも感覚統合を促進するような遊びにつながります。家庭や保育・学校環境でできる感覚統合を高める遊びは以下の書籍に紹介されているので、参考にして取り入れてみるのもよいでしょう。
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感覚統合と子どもの発達の関係性とは?
感覚統合と発達の関係
発達段階の子どもにとって、物事ができるようになるにはさまざまなステップがあり、一定の順序があります。
例えば、「テーブルで食事ができるようになる」ためにはまず、身体のバランスを調整する前庭覚と筋肉の動きを感じ取る固有受容覚が育つことによって「きちんとした姿勢で一定時間座ることができる」ようになることが必要です。そして姿勢の発達が進むと、手や指などの末端の動きが発達していきます。この発達によって、「お皿を持ってお箸を使うことができる」ようになります。いくつかのステップを一つひとつクリアしていくことで、最終的な目標である「テーブルでの食事」ができるようになります。
例えば、「テーブルで食事ができるようになる」ためにはまず、身体のバランスを調整する前庭覚と筋肉の動きを感じ取る固有受容覚が育つことによって「きちんとした姿勢で一定時間座ることができる」ようになることが必要です。そして姿勢の発達が進むと、手や指などの末端の動きが発達していきます。この発達によって、「お皿を持ってお箸を使うことができる」ようになります。いくつかのステップを一つひとつクリアしていくことで、最終的な目標である「テーブルでの食事」ができるようになります。
例えば「テーブルでの食事がなかなかできない」など、“気になる行動”があったとき、根気良く付き合ってもなかなか解決しなければ、子どもの“発達段階のある過程が抜けている”可能性があります。
この例の場合、チェックするポイントがいくつかあります。食事が上手にできる発達段階のひとつ前のステップ「身体のバランスを保つ」ということがテーブルに座らせる以外の動作でもきちんとできているか、「お箸を持つことができない」のであればほかの手や指の動作は問題がないかなど、発達のステップを一段階降り視点を変えて、子どもの行動を見直してみましょう。そこで問題を見つけることができるかもしれません。
この例の場合、チェックするポイントがいくつかあります。食事が上手にできる発達段階のひとつ前のステップ「身体のバランスを保つ」ということがテーブルに座らせる以外の動作でもきちんとできているか、「お箸を持つことができない」のであればほかの手や指の動作は問題がないかなど、発達のステップを一段階降り視点を変えて、子どもの行動を見直してみましょう。そこで問題を見つけることができるかもしれません。
「どうしてこんな行動するのだろう…」発達段階の過程が抜けるメカニズムとは?
ところで、なぜ“発達段階のある過程が抜ける”という現象が起こり得るのでしょうか。メカニズムをみてみましょう。
子どもにはもともと「成長したい!」「自分でやりたい!」という欲求があり、この欲求に従って、子ども自身がまるで積み木を積み重ねるように発達の段階を踏んでいきます。しかし、この段階はそれぞれ多少順序が入れ替わったりとばされたりしても次の発達段階に進めるようになっていて、そのため見た目上では感覚統合の発達が進み、順調に成長しているとみなされることが多いのです。
ですが、ゆがんだり傾いたりしている土台の上に積みあがった積み木はぐらぐらと不安定ですよね。それと同じように、保護者としては、「自分の子どもは順調に成長している!」と思っていたはずなのに、あるとき「どうしてこんな行動をするのだろう…どうして同い年の子みたいにできないのだろう…」と、子どもの特定の行動に対し課題を感じることがあります。その場合、実はもっと前に達成されているべき段階、土台部分に原因がある可能性があるのです。
集団行動において困りごとが顕在化する場合も、人間関係がその原因のすべてではない場合があります。例えば「すぐ友達に手を出してしまう」など、乱暴な動作が多いという背景には子どもの固有感覚の発達がうまくいっていないことがあるかもしれません。
本人は軽く肩を叩いているつもりが、実際には「痛いほどの強い力で叩いてしまっていた」、ものをただ置くだけのつもりが「強く叩きつけてしまっていた」、これらの行動は固有感覚の未発達によって力の調節がうまくできないことが本当の原因かもしれません。
子どもにはもともと「成長したい!」「自分でやりたい!」という欲求があり、この欲求に従って、子ども自身がまるで積み木を積み重ねるように発達の段階を踏んでいきます。しかし、この段階はそれぞれ多少順序が入れ替わったりとばされたりしても次の発達段階に進めるようになっていて、そのため見た目上では感覚統合の発達が進み、順調に成長しているとみなされることが多いのです。
ですが、ゆがんだり傾いたりしている土台の上に積みあがった積み木はぐらぐらと不安定ですよね。それと同じように、保護者としては、「自分の子どもは順調に成長している!」と思っていたはずなのに、あるとき「どうしてこんな行動をするのだろう…どうして同い年の子みたいにできないのだろう…」と、子どもの特定の行動に対し課題を感じることがあります。その場合、実はもっと前に達成されているべき段階、土台部分に原因がある可能性があるのです。
集団行動において困りごとが顕在化する場合も、人間関係がその原因のすべてではない場合があります。例えば「すぐ友達に手を出してしまう」など、乱暴な動作が多いという背景には子どもの固有感覚の発達がうまくいっていないことがあるかもしれません。
本人は軽く肩を叩いているつもりが、実際には「痛いほどの強い力で叩いてしまっていた」、ものをただ置くだけのつもりが「強く叩きつけてしまっていた」、これらの行動は固有感覚の未発達によって力の調節がうまくできないことが本当の原因かもしれません。
「ほかの子と一緒に同じ行動ができずいつも1人で行動している」背景には聴覚の感覚統合に原因があり、指示内容を正確に聞き取って理解することが難しい、大きな音、ざわざわとした人ごみから発せられる音に拒絶反応を示すからであるかもしれません。
このように、子どもの気になる行動には、感覚統合の発達が関係していることがあります。だからこそ子どもの成長を見守る保護者としては、子どもの行動や言動、子ども同士の関わり方などをよく観察することを心がけましょう。
このように、子どもの気になる行動には、感覚統合の発達が関係していることがあります。だからこそ子どもの成長を見守る保護者としては、子どもの行動や言動、子ども同士の関わり方などをよく観察することを心がけましょう。
感覚統合の発達において重要なサイクル
感覚が統合され、子どもが自分でいろいろなことができるようになるためには、子ども自身のチャレンジ精神がとても重要です。
「感覚は脳の栄養素」と言われることがありますが、子どもは多くの刺激を受け、好奇心からさまざまなことに興味を持ちます。成長するにつれて自分から刺激を求めたり、新しいことに対して「やってみよう!」と思い行動します。そして「できた!」という達成感と成功体験を得、さらに楽しくて刺激が得られる活動にチャレンジしていくという循環により感覚統合がすすむのです。この繰り返しに、難しく複雑な活動もできるようになっていくのです。
「感覚は脳の栄養素」と言われることがありますが、子どもは多くの刺激を受け、好奇心からさまざまなことに興味を持ちます。成長するにつれて自分から刺激を求めたり、新しいことに対して「やってみよう!」と思い行動します。そして「できた!」という達成感と成功体験を得、さらに楽しくて刺激が得られる活動にチャレンジしていくという循環により感覚統合がすすむのです。この繰り返しに、難しく複雑な活動もできるようになっていくのです。
感覚が統合されて成長していくプロセス
※理学療法と作業療法 19 (11), 767-775, 1985-11-15 『講座 小児の運動発達 5.運動行為の発達と感覚統合』 土田玲子の資料をもとに作成
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◇第一段階 基礎感覚(前庭覚、固有感覚、触覚)と視覚、聴覚の発達
感覚統合の発達は、生まれながらに備わっている、感覚統合において重要な役割を果たす前庭覚・固有感覚・触覚に視覚・聴覚が加わり、見る・聞く・触るなど、刺激を感じ取るところから始まります。
例えば、視覚・聴覚共に未発達の生まれて間もない赤ちゃんであっても、外から自然とさまざまな刺激に晒されます。触覚によって手でお母さんのおっぱいを捉えて母乳を吸い、抱っこやおんぶをされることで自分の身体が動いたり傾いたりするということを前庭覚や固有感覚によって捉えます。このように、生まれつき備わっている基礎感覚に加えて視覚や聴覚が発達すると、より自覚的に多くの刺激を取り込むようになります。
基礎感覚について詳しく知りたい場合は、分かりやすくまとめてある以下のページもご覧ください。
感覚統合の発達は、生まれながらに備わっている、感覚統合において重要な役割を果たす前庭覚・固有感覚・触覚に視覚・聴覚が加わり、見る・聞く・触るなど、刺激を感じ取るところから始まります。
例えば、視覚・聴覚共に未発達の生まれて間もない赤ちゃんであっても、外から自然とさまざまな刺激に晒されます。触覚によって手でお母さんのおっぱいを捉えて母乳を吸い、抱っこやおんぶをされることで自分の身体が動いたり傾いたりするということを前庭覚や固有感覚によって捉えます。このように、生まれつき備わっている基礎感覚に加えて視覚や聴覚が発達すると、より自覚的に多くの刺激を取り込むようになります。
基礎感覚について詳しく知りたい場合は、分かりやすくまとめてある以下のページもご覧ください。
発達ナビ親子のヒント 1人ひとりの「感覚の特性」を考えよう!よく聞く感覚統合ってなあに?
https://h-navi.jp/teaching/professional_articles/100004
◇第二段階 姿勢・眼球運動のコントロール
第一段階で基礎感覚などによる刺激をきちんと感じ取ると、前庭覚と固有受容覚が統合されるようになります。それにより、重力に対して身体を持ち上げ、持続的に姿勢を保つことができるようになり、身体の中心部である首や体幹などの中枢系が発達していきます。具体的には、首が据わり、体幹がしっかりして身体が安定します。また、体幹と首が安定すると、眼の動きも細やかに、多様に発達していきます。動いているものを見失わずに見続けたり、並んでいるものを眼だけで順に追ったり、視点を細やかに移したりすることができるようになります。
◇第三段階 ボディイメージの形成、運動コントロールの基礎
体幹など自分の身体の中心がしっかり発達すると、徐々に身体の末端まで意識が向くようになってきます。そのはじめとして、自分の身体がどれくらいの大きさで、手足がどれくらいの長さなのかというようなボディイメージが形成されるようになります。これによって他の人やものとの距離感を正しくつかめるようになります。
また、運動コントロールもだんだんできるようになります。運動コントロールとは、不慣れな運動に関して、自分で身体の各部位を動かすタイミングを考えながら運動を実行する動きのことを指します。この第三段階でつまずきが見られる場合、身体の動きがぎこちなかったり、ものや人によくぶつかってしまったりします。
第一段階で基礎感覚などによる刺激をきちんと感じ取ると、前庭覚と固有受容覚が統合されるようになります。それにより、重力に対して身体を持ち上げ、持続的に姿勢を保つことができるようになり、身体の中心部である首や体幹などの中枢系が発達していきます。具体的には、首が据わり、体幹がしっかりして身体が安定します。また、体幹と首が安定すると、眼の動きも細やかに、多様に発達していきます。動いているものを見失わずに見続けたり、並んでいるものを眼だけで順に追ったり、視点を細やかに移したりすることができるようになります。
◇第三段階 ボディイメージの形成、運動コントロールの基礎
体幹など自分の身体の中心がしっかり発達すると、徐々に身体の末端まで意識が向くようになってきます。そのはじめとして、自分の身体がどれくらいの大きさで、手足がどれくらいの長さなのかというようなボディイメージが形成されるようになります。これによって他の人やものとの距離感を正しくつかめるようになります。
また、運動コントロールもだんだんできるようになります。運動コントロールとは、不慣れな運動に関して、自分で身体の各部位を動かすタイミングを考えながら運動を実行する動きのことを指します。この第三段階でつまずきが見られる場合、身体の動きがぎこちなかったり、ものや人によくぶつかってしまったりします。
◇第四段階 手指の機能分化・言語機能
<手指の機能分化>
さらに発達が末端に及ぶようになると、手指を細かく動かすことができ、力の入れ具合の微調整ができるようになります。鉛筆やはさみなど手先のこまかな動きを必要とする道具の操作、箸の使用、靴ひもを結ぶという動作が可能になります。
<言語機能>
これまで習得し、統合してきた感覚をもとにつくられたイメージと言葉(聴覚情報)を結びつけることで、言語機能が発達します。
りんごを例にとると、
(1)さまざまな感覚でりんごを捉える
子どもがりんごを見て、「赤い、まるい」(視覚)、鼻を近づけて「甘いにおい」(嗅覚)、触ってみて「つるつる」(触覚)、「固くて重みがある」(固有受容覚)、食べてみて「甘酸っぱい」(味覚)、「サクサクと音がする」(聴覚)、と今まで活用してきた感覚を使ってりんごを捉えます。その中で、大人からの「りんご、おいしいね」という言葉を聞き、自分が今まで感覚で捉えてきたものに言葉が結びつけられます。
(2)感覚の統合と概念の形成
このような感覚の統合のくりかえしと「これはりんごだ」という言葉との結びつきによって、「赤くてまるくてつるつるした触感で、甘酸っぱい味のするもの」=「りんご」という双方向の概念がつくられます。一度概念がつくられると、色や形などが変わっても「りんご」であると理解できるようになります。さらに、この感覚統合と概念の形成を繰り返すことで論理的思考や行動の順序立てができるようになり、文章を話す力がつきます。
◇第五段階 学習や運動の達成・高度化
今まで挙げてきた感覚統合がくりかえし成功することで、最終的にある程度の集中力を必要とする教科学習や、自分自身の行動を振り返り客観的に評価すること、自分の衝動・欲望を抑制することができるようになります。感覚統合のくりかえしによって子どもが自分の力でできることが増え、自信や自尊心も高まります。
<手指の機能分化>
さらに発達が末端に及ぶようになると、手指を細かく動かすことができ、力の入れ具合の微調整ができるようになります。鉛筆やはさみなど手先のこまかな動きを必要とする道具の操作、箸の使用、靴ひもを結ぶという動作が可能になります。
<言語機能>
これまで習得し、統合してきた感覚をもとにつくられたイメージと言葉(聴覚情報)を結びつけることで、言語機能が発達します。
りんごを例にとると、
(1)さまざまな感覚でりんごを捉える
子どもがりんごを見て、「赤い、まるい」(視覚)、鼻を近づけて「甘いにおい」(嗅覚)、触ってみて「つるつる」(触覚)、「固くて重みがある」(固有受容覚)、食べてみて「甘酸っぱい」(味覚)、「サクサクと音がする」(聴覚)、と今まで活用してきた感覚を使ってりんごを捉えます。その中で、大人からの「りんご、おいしいね」という言葉を聞き、自分が今まで感覚で捉えてきたものに言葉が結びつけられます。
(2)感覚の統合と概念の形成
このような感覚の統合のくりかえしと「これはりんごだ」という言葉との結びつきによって、「赤くてまるくてつるつるした触感で、甘酸っぱい味のするもの」=「りんご」という双方向の概念がつくられます。一度概念がつくられると、色や形などが変わっても「りんご」であると理解できるようになります。さらに、この感覚統合と概念の形成を繰り返すことで論理的思考や行動の順序立てができるようになり、文章を話す力がつきます。
◇第五段階 学習や運動の達成・高度化
今まで挙げてきた感覚統合がくりかえし成功することで、最終的にある程度の集中力を必要とする教科学習や、自分自身の行動を振り返り客観的に評価すること、自分の衝動・欲望を抑制することができるようになります。感覚統合のくりかえしによって子どもが自分の力でできることが増え、自信や自尊心も高まります。
まとめ
感覚統合の発達には子ども自身の「楽しそう!」「やってみたい!」という気持ちと周囲の励まし、成功体験ができるような環境づくりと工夫が重要です。
感覚統合がうまくいかない子どもに対して「ちゃんとしなさい」「~してはいけないよ」と言っても、子どもにとっては何がいけないのか、どうしていけないのか分からない、分かってはいるけどやめられないという場合もあります。また、うまくできないという不安から緊張をもたらし、ますます失敗してしまうという悪循環に陥り、ストレスを抱えたり自信をなくしてしまったりすることがあります。
保護者や周りの大人は、子どもができていないことだけに着目するのではなく、できていないという背景には感覚統合がうまくいっていないのではないか、感覚の使い方がうまくいっていないことが影響しているのではないか?と考えてみるとよいかもしれません。
子どものある動作が気になる、どうしてこんなに不器用なのか、ほかの子と一緒にできないのか...そう思ったら、一度その動作を支える"感覚"の発達に戻ってみましょう。そして、子どものやる気、成長体験を大事にしながら、もう一度感覚統合を積み上げなおしてみることが、子どもの感覚の発達や困りごとの解決につながるかもしれません。
感覚統合がうまくいかない子どもに対して「ちゃんとしなさい」「~してはいけないよ」と言っても、子どもにとっては何がいけないのか、どうしていけないのか分からない、分かってはいるけどやめられないという場合もあります。また、うまくできないという不安から緊張をもたらし、ますます失敗してしまうという悪循環に陥り、ストレスを抱えたり自信をなくしてしまったりすることがあります。
保護者や周りの大人は、子どもができていないことだけに着目するのではなく、できていないという背景には感覚統合がうまくいっていないのではないか、感覚の使い方がうまくいっていないことが影響しているのではないか?と考えてみるとよいかもしれません。
子どものある動作が気になる、どうしてこんなに不器用なのか、ほかの子と一緒にできないのか...そう思ったら、一度その動作を支える"感覚"の発達に戻ってみましょう。そして、子どものやる気、成長体験を大事にしながら、もう一度感覚統合を積み上げなおしてみることが、子どもの感覚の発達や困りごとの解決につながるかもしれません。
参考文献
乳幼児期の感覚統合遊び
クリエイツかもがわ
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学校・家庭で楽しくできる 発達の気になる子の感覚統合あそび (発達障害を考える心をつなぐ)
ナツメ社
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親子で楽しめる 発達障がいのある子の感覚あそび・運動あそび
ナツメ社
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